同じプロダクト開発でも、受託開発(SIer)か自社開発かでは、開発の目的や仕事の進め方が大きく異なり、責任者に求められることも異なります。SIerの場合は、期日までに事前に決めた要件に沿ったプロダクトを開発・納品することが必要です。自社開発であれば、利益が回収できるプロダクトのアイディアを出すこと、できるだけ早いリリースと、ユーザーの反応を見て改修することが必要でしょう。
Tさんは業界にこだわらず、自社開発のPdMを目指して転職活動をスタートしました。最終的に絞った2社のどちらに進むべきか迷ったとき、「将来的につながる会社選びを」というRGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンの担当コンサルタント・加藤のアドバイスが役に立ったといいます。
「仕事を続けながら転職活動を進め、納得のいく会社選びをするには、第三者のサポートが不可欠だと思った」とTさん。現在は広告関連のSaaSを提供する企業でPdMとして活躍するTさんに、キャリアの捉え方が変わったという今回の転職について、体験談を伺いました。
<転職者>
Tさん・30代(SI業界PM→SaaS企業PdM)
異動をきっかけに志向性に気づき、転職を決意
――前職は新卒から長く勤務されたそうですね。
Tさん:新卒で入社し、2021年3月に退職するまで12年勤務しました。
学生時代は工学部に在籍していたので、周囲は電気系やメーカー系に就職する人が多かったんです。私自身もそうした業界を視野に入れていたのですが、ふと「テレビの画質を今より向上させても、幸せにはつながらないな」と思ってしまって。経済学でいうところの「限界効用」ですね。
消費者の満足度がすでに頂点に近いところでは、幸せに直結する仕事ができないと感じて、ITを使った仕組みづくりで広く幸せを届けられるような会社を探しました。
――いくつか選択肢があったと思いますが、特に前職に魅力を感じた理由は?
Tさん:昔でいう共同システムのように、社会課題の解決につながる仕組みを作っている点ですね。世の中の利便性を広く向上させる仕事をしている会社なら、自分のやりたいことができるのではないかと思いました。
――実際に入社してみて、いかがでしたか?
入社から9年間は、前職の研究所で開発したAIエンジンによるサービスを、企画・開発・運用していました。いわゆる自社サービスの企画開発です。
前職は、基本的にはSIerなので珍しい部署でしたが、私には合っていて仕事は楽しかったですね。
――12年のうち9年はとても長いですね!
Tさん:10年目に、いわゆるSIerとしての仕事をする部署に異動になり、SEやPMを経験しました。長く勤めた部署からの異動でしたが、当初は「隣の芝生を見てみよう」くらいの気持ちで楽しみにしていたんですよ。
ところが、実際に仕事をするうちに、だんだんと自社サービスをやりたい気持ちが募ってきて。「自分で考えて作る」ことが好きだったんだなと、自分の志向性に気づきました。
――自社サービスとクライアントワークの両方を経験したからこそ、やりたいことに気づけたのかもしれませんね。
Tさん:1社にいながら2つの経験ができたことは幸運でしたし、いい機会をいただいて感謝しています。部署を異動してからも学ぶことは多くありましたが、3年経っても自社サービスへの思いは強いままでした。
そこで、前職に区切りをつけることを決め、2020年の秋口に転職活動をスタートした次第です。
見送りになった理由を考え、業界を絞り込んだ
――当然、転職活動は初めてでしたよね。どのような方法を、なぜ選択したのか教えてください。
Tさん:まずは、「転職活動をしようかな」と思ったときに見たサイトで紹介されていた、エージェント2社に登録しました。あとは、ヘッドハンティング型の転職サイトですね。自分に合った、条件の良い求人を受け身で待てると聞いて、前職の仕事と両立しやすいと考えました。
――企業選びでこだわったところは?
Tさん:一番のポイントはサービスであること。職種はPMまたはPdMで、ITがおまけでなく主力の会社を希望しました。条件面では、前職の年収を維持できること、勤務地が東京であることの2つですね。
――活動は順調に進みましたか?
Tさん:いや、実はけっこう落ちたんですよ。後々、加藤さんには「転職活動では平均的な範囲内ですよ」と言っていただきましたが、当時は「見送り」の返答をもらうたびにかなり落ち込みました。
でも、経験を積むうちに、少しずつ「どうして見送りになるのか」がわかってきたんです。結局のところ、今持っているスキルと会社が求めるスキルがマッチすることが原則で、それがないと書類は通過しないんですよね。
それに気づいてからは少しずつ業界を絞り込み、通過の確率を上げていきました。
――そういう状況のときに、加藤からコンタクトがあったわけですね。
Tさん:はい。スカウトメールをもらって、カジュアル面談をしてみませんかと。最初は、別の案件を念頭に面談を設定してくださったようなのですが、話をするうちに「こちらのほうが合いそうだから」ということで、2社をご紹介いただきました。2020年の12月だったと記憶しています。
担当コンサルタント・加藤から:思わぬ企業との縁を結べるのがエージェントの強み
別の案件を想定してTさんにスカウトメールをお送りしました。しかし、関わってきたプロジェクトの幅広さ、さらには自社サービスの研究から企画・開発・運用まで携わった経験があり、SIに移られていることなどを詳しく伺っているうちに、今回転職を果たした企業によりマッチすると感じ、急遽別の企業もご紹介させていただきました。
企業が希望する要件の中には、求人票に文字で起こしにくいような抽象的な事柄が含まれており、私たちは企業と何度も話して、すり合わせを行いながら求める人物像を把握しています。スキルや経験などの条件で絞り込むだけでは見つけられない、本当にマッチする企業に出合えるのは、企業と深いつながりがあるエージェントならではといえるでしょう。
リモートワークの合間にオンライン面接を組み込み、スピーディーに進行
――選考は2社同時進行だったのですか?
Tさん:そうです。どちらも12月の頭からスタートして、1月に内定をいただきました。ほとんどオンライン面接で、2社のタイミングを加藤さんがうまく合わせて予定を組んでくれたので、前職の業務に影響を及ぼすことなく面接できたのがありがたかったです。
前職はフレックスの裁量労働制で、2020年はずっとリモートでしたが、対面の面接が前提だったり、2社の面接が別の日だったりしていたら、両立はもっと困難だったと思います。私はほとんど加藤さんにお任せで、隙間時間でスムーズに転職活動を進めることができました。
――相手の温度感がわかりにくいなど、オンラインのデメリットは感じませんでしたか?
Tさん:日常的にオンラインに親しんでいると、面接でも特に違和感なく話せると思います。面接官に気づかれずにメモを見ながら話すこともできますし、現職を早退したり休んだりせずに済むことと合わせて、転職活動ではメリットのほうが大きいのではないでしょうか。
担当コンサルタント・加藤から:面接はオンラインが主体。現職と両立したい方には◎
Tさんがおっしゃるとおり、働きながらの転職活動はどうしても休みを取らなければならない場合がありますが、オンラインが主体になったことで、比較的容易に両立できるようになりました。スケジュール調整という面では、確実に転職希望者にとって有利な状況にあるといえます。
また、コロナ禍になってからは、特にIT系の職種の方はほとんどリモートワークになっている印象です。普段から会議などでオンライン会議ツールに慣れていれば、面接でも戸惑うことなく話せるでしょう。
コンサルタントのアドバイスで、キャリアを長期的に考えるようになった
――2社の内定が出てから、現職に決めるまでに迷いは?
Tさん:正直なところ、最初はもう1社のほうがしっくり来ていたんですよ。現職は前職に近すぎて、ともすれば競合になりかねなかったので、なんとなく不義理な感じがして。
かなり悩んで、星取表を作って検討したほか、加藤さんとは頻繁に電話でやりとりして、考えを整理しました。
――どんなアドバイスを受けましたか?
Tさん:年収や入社前の期待値など、客観的かつ平等に2社を見比べるための観点をいろいろと出してくれました。中でも役立ったのが、「今やりたいことができるか」に加えて、「長期的なキャリア構築を見据えて、自分の市場価値を高められる企業かを見るべきだ」というアドバイスです。
初めての転職で目の前のことばかりを見ていた私には、転職を次へのステップと捉える視点はありませんでしたから、このアドバイスでかなり企業の見方が変わりました。
――最終的に現職に決めた理由と、入社してからの感想をお聞かせください。
Tさん:先程お話しした加藤さんのアドバイスをもとに、自分の成長につながるかを検討の軸に据えて比較して、事業が立ち上がったばかりでゼロに近いフェーズのほうが学べることが多いと考えました。職種はPM、もしくはPdMを希望していまして、現在は希望通りPdM(プロダクトマネージャー)として勤務しています。
実際、0から1を生み出さなければならないチャレンジングなシーンが多く、スキルアップできていると感じています。今後は、さまざまな企業を経験してPdMの仕事を極め、いずれは「プロのPdM」になれたらいいですね。5年くらいのスパンで領域を変えてみることも考えています。
担当コンサルタント・加藤から:企業との相性を見極める、さまざまな視点を提供
後悔のない転職をするには、スキルやパーソナリティ、キャリアプランなど、あらゆる角度から企業との相性を検討することがとても大切です。
私たちコンサルタントは、求職者の短期的な活躍はもちろん、長期的なキャリアプランを実現できるかどうかについても考えます。求職者ご自身が気づいていないポイントまですくい上げられるように、丁寧なアドバイスを心掛けています。
未来を切り拓くには、「まずはやってみる」こと
――最後に、転職を迷っている方にアドバイスをお願いします。
Tさん:私は一度転職を経験したことで、キャリアに対する考え方がかなり変わりました。万が一、転職に失敗しても、それは次のステップに活かせば良いこと。まずはやってみることが大切です。
オンラインでの転職活動が普及したことで、仕事と転職活動を両立することのハードルはかなり下がっていると思います。将来的になりたい自分、到達したいステージに向かって、積極的にチャレンジしてみてください。