外資系広告代理店への転職活動をスタートする前に知っておきたいのが、外資系広告代理店ならではの社風や採用傾向、求められるスキル、採用面接で注意すべきことなどです。
ここでは、外資系広告代理店への転職活動を始める前に、押さえておきたい基礎知識について解説します。
外資系広告代理店とは?
外資系広告代理店とは、外国の企業が日本で設立した100%子会社(日本法人)、日企業と外国企業や外国人投資家が共同出資で設立した会社、外国の企業が株式を取得して買収した日本企業、外国企業の日本支社のいずれかの形態で経営されている広告代理店です。
外資系広告代理店と日系広告代理店との大きな違いは、フィー制(報酬制)か、コミッション制(手数料制)かというビジネススタイルでしょう。日系の広告代理店は、クライアントに対するメディア枠の販売手数料が売上の多くを占めるため、販売枠に応じて手数料を受け取るコミッション制のところがほとんどです。一方、外資系広告代理店の場合、人件費をはじめとするコストをまえもって見積もり、その中でやりくりするフィー制が一般的です。
世界の広告業界では、次の4グループを4大エージェンシーといい、日本にもグループ企業の広告代理店が数多く進出しています。
WPPグループ
WPPグループは、イギリス・ロンドンに本拠地を置く、世界最大規模の広告代理店です。グループ内にはジェイ・ウォルター・トンプソン、オグルヴィ・アンド・メイザーといった著名な広告代理店があり、日本のプラップジャパンとは2003年から資本提携を行っています。
オムニコムグループ
オムニコムグループはアメリカ・ニューヨークに本拠地を構え、世界各国で事業を展開。BBDOワールドワイドやTBWAワールドワイド、DDBワールドワイドなどがグループ企業にあり、日本の東急エージェンシーと資本提携しています。
ピュブリシスグループ
ピュブリシス(パブリシス)グループは、拠点がフランス・パリにあり、グループにはビーコンコミュニケーションズなどがあります。過去には電通と資本業務提携していたこともありますが、2012年に解消しています。2016年にはグループの各企業や機能を「コミュニケーションズ」「メディア」「サピエント」「ヘルスケア」の4つに再編しました。
インターパブリックグループ
インターパブリックグループは、アメリカ・ニューヨークに拠点を置く世界第4位の広告代理店です。マッキャンワールドグループ、フット・コーン&ベルディングなどが傘下にあります。国内の広告代理店では大広、スタンダード通信社が資本提携しています。
外資系広告代理店の社風に特徴はある?
外資系企業では、はっきりと意思表示し、主体的に動く力が必須です。上司の指示を待っていたり、周囲の空気を読んで黙っていたりすると、「意欲的でない人」という烙印を押されてしまうかもしれません。相手が誰であれ、どんな場面でもしっかり自分の意見を堂々と伝える必要があります。
特に、外資系広告代理店では、発想力や提案力が重要ですから、外資系企業の中でも特に発言の自由度が高く、フランクな社風のところが多いでしょう。
服装もカジュアルな傾向があり、デニムなどプライベートと大差ない服装で出勤する人もたくさんいます。ワークスタイルもさまざまで、新しくておもしろいアイディアを生み出すためであれば、長時間デスクにいる必要はないとする企業が多いようです。企業によっては、フリーアドレス制を導入したり、ソファやラウンジなどで仕事ができるようにしたりして、フランクな働き方を推奨しています。
日系の広告代理店と同様に忙し、遅くまで仕事をしていたり、家に仕事を持ち帰ったりすることもあるようです。ただし、長時間労働を良しとする文化ではなく、「やることをやって早く帰る」「自分が集中できる時間帯に働く」といったスタイルで成果を出す人が評価されます。最近では、ワークライフバランスに配慮する外資系広告代理店も増えています。
また、外資系広告代理店は、営業チームと戦略チームで企画内容を話し合ったり、成果を受けて次のプランを考えたりと、社内のコミュニケーションが頻繁に発生する業種でもあります。他職種との打ち合わせも多く、一人で黙々と仕事をするよりは周囲と協力して物事を作り上げていくという雰囲気の企業が多いでしょう。
ただし、外資系広告代理店は、無駄を徹底的に省いたスピーディーな意思決定を好み、「定例だからとりあえずやっておくミーティング」「何も決まらず、結論を先送りにする会議」といった無駄を嫌います。参加者全員の予定を合わせたり、1ヵ所に集まったりする手間を省くため、チャットやビデオ会議などのツールも駆使されています。
外資系広告代理店の給与・福利厚生の特徴と傾向
基本給に加えて、手当やボーナスが支給される日系広告代理店に対して、外資系広告代理店は年俸制が一般的です。インセンティブがある場合も、その多くは会社の業績に応じて支給される業績給与ボーナスなので、転職の際に提示される額は、基本的に年俸のみであることが多いようです。
日系広告代理店での経験は重宝される傾向があり、応募するポジションで力を発揮できる十分な経験とスキルを有している場合、転職して前職より年収がダウンすることはほぼないでしょう。
例えば、ある大手日系代理店の場合、5年満期の契約社員だと、そこから正社員登用の道が開ける人は全体の2%と非常に狭き門です。そのため、満期を前に外資系に転職するケースがよく見られます。こうした転職希望者は、大部分が前職同等、もしくは前職よりベースアップした給与額で転職を決めています。
ただし、ベースとなる給与額が日系企業より高い分、手当や福利厚生はあまりないことが多いようです。通勤手当を除き、住宅手当や退職金、慶弔金などが支給されない点は日系企業との大きな違いです。
一方で、ワークライフバランスの充実には、積極的に取り組む企業が目立ちます。「成果を出していれば」という前提はあるものの、日系企業に比べて有給休暇をはじめとする各種休暇が取りやすく、「バリバリ働きたいけど私生活も大事にしたい」人にとっては、働きやすい環境だといえるでしょう。
外資系広告代理店における最近の求人傾向・転職傾向
外資系広告代理店の求人は、通常、クライアントベースでプロジェクトを組み、不足する人材を募集するスタイルが多いです。そのため、転職エージェントを介して転職を目指すときも、ポジションに対して紹介されるより、転職希望者の経験やスキルを伝えておいて、適したポジションに空きが出たら紹介される流れになるでしょう。
外資系広告代理店はほかの業種に比べ、各ポジションのニーズが高く、現在は売り手市場といえます。「転職したい」と思った時点ですぐに転職エージェントに登録して、キャリアプランを伝えておくことをおすすめします。
募集が多いのは、圧倒的にアカウント(営業)チームです。アシスタントアカウントエグゼクティブ、アカウントエグゼクティブ、アカウントマネージャー、アカウントスーパーバイザーという4つのレベルがあり、どのレベルでも通年で人材を募集しています。
クリエイティブディレクター、アートディレクターといったものづくりの部門、商品開発や戦略立案を担うストラテジックプランナーなどの求人については、会社の状況によって求人数やタイミングが異なるため、継続的に動向をチェックすることをおすすめします。
外資系広告代理店に向いている人・採用されやすい人
外資系広告代理店で働くのに向いている人や採用されやすい人には、次のような特徴があります。
外資系・日系を問わず広告代理店で3年以上の経験がある
外資系広告代理店は、即戦力として入社後すぐに活躍できる人材を求めています。一定のスキルを有する人材かどうかを判別する目安としてよく設定されているのが、「3年以上の経験」です。ただし、厳密には3年に満たなくても、それに類する経験があれば可とされる場合が多いです。スキルに自信がある場合は、期間にとらわれすぎず、積極的に応募してみましょう。
指定された入社日に入社できる人
前述したように、外資系広告代理店はクライアントベースのプロジェクト単位で人材を募集するため、プロジェクトの開始に合わせてチームメンバーをそろえることが必須です。指定された入社日までに現職を退職できない人や、何らかの事情で入社日に間に合わない人は、たとえ十分なスキルと経験があっても採用見送りになってしまうことがあります。外資系広告代理店に転職を考えている場合、いつでも行動できるように準備しておくことをおすすめします。
肉体的・精神的にタフな人
外資系広告代理店では、自社の方向性だけを一方的に押しつけるのではなく、かといってクライアントの要望だけに従うのでもなく、両者のあいだに立って上手に調整し、粛々とプロジェクトを進める力が求められます。
時には厳しい判断を求められたり、ハードワークせざるをえなかったりすることもあるため、肉体的にも精神的にもタフであることが重要な要素です。
フレキシブルに対応できる人
外資系広告代理店では、本社の意向などで状況が一転することが少なくありません。突然、プロジェクトの方向性が変わったり、プロジェクトそのものがストップしたりということも十分にありえます。予定外の事態が起きても動揺せず、フレキシブルに対応できる力はとても大切です。
レジュメやカバーレターはどう書く?外資系広告代理店ならではの注意点
外資系広告代理店の転職では、これまでの実績をうまくアピールすることが成功のコツです。
特に、クリエイティブ系の職種を目指す場合は、学生時代や前職までの受賞歴やこれまでに関わった仕事などを、レジュメに詳しく記入して積極的にアピールしましょう。アートディレクター、クリエイティブディレクターでなくとも、ポートフォリオを充実させてください。
営業であれば、前職で担当したクライアント名を記載しておくと、仕事の仕方やプロジェクトの動かし方などがわかり、応募するポジションとの親和性が伝わります。
外資系広告代理店の面接で注意すべきことは?
外資系広告代理店の面接では、それほど奇をてらった質問をされることはありません。志望動機など、一般的な質問に対してどれだけ丁寧に、わかりやすく答えられるかがカギだといえるでしょう。
また、海外とのオンライン面接の際は、英語での対応が求められることもあります。業務に必要とされる英語力はクライアントやポジションによって異なりますが、基礎的な英語力は最低限身につけておいたほうがいいでしょう。
最後に、外資系広告代理店では、前職の関係者などに応募者の実績や勤務状況を確認するリファレンスチェックが必ずといっていいほど行われます。転職を考えている人は、普段から周囲とコミュニケーションをとり、いざというときに自分のことを正当に評価してくれる人を複数名考えておくようにしましょう。
外資系広告代理店への転職は転職エージェントに相談を
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系広告代理店への転職を数多く扱ってきた歴史と実績があります。業種や職種の専門知識を有するコンサルタントがサポートを行うため、業界特有の情報や採用マーケットの動向など、リアルな情報をお伝えできます。
また、キャリアのアドバイスを行うコンサルタントが、企業との調整も行う両面型の転職エージェントであるため、企業が求める人物像に合わせて求職者を推薦することが可能です。外資系広告代理店への転職を考えている人は、ぜひご相談ください。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
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