転職活動を経て内定、あるいは内々定の段階で企業側の担当者と内定者のあいだで行われる面談が「オファー面談」です。オファー面談をうまく使うと、複数企業の条件をじっくりと比較検討した上で、転職先を絞り込むことができます。
この記事では、オファー面談の概要や確認すべきポイントのほか、スムーズな交渉方法などについて解説します。
オファー面談とは企業と内定者によって内定後に行われる面談
オファー面談は、企業と内定者により、内定後に行われる面談のことです。実際に働き始めた後の処遇についてのすり合わせが行われるため、「処遇面談」「条件面談」などと呼ばれることもあります。
オファー面談は、主に「労働条件のすり合わせ」や「就業後に担当する業務内容の確認」「入社意思の確認」の3つを目的としています。
「面談」と聞くと、1次面接や2次面接、役員面接などと同じように、企業が応募者を選ぶための「面接」を思い浮かべるかもしれません。しかし、オファー面談が行われるのは内定後。オファー面談は選考フローとは切り離されており、企業側の採用意思はすでに確定しています。オファー面談は内定者を評価するものではないので、企業側からオファー面談の打診があっても、気負わずに臨むといいでしょう。
なお、オファー面談は内定者からの要望によって行われることもあります。
オファー面談の内容
オファー面談では、企業と内定者のあいだでどのような内容を話すのでしょうか。ここでは、オファー面談の具体的な内容を解説します。
労働条件のすり合わせ
オファー面談の主な目的は、企業が労働条件について通知し、その内容について内定者とすり合わせを行って、企業と内定者の認識を共有することにあります。
労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。労働条件を明示する理由は、就業後に内定者と「こんなはずじゃなかった」とか「聞いていた話と違う」といったトラブルに発展したり、内定者の早期離職の原因になったりするからです。
労働条件の通知は、内定者にとって重要なプロセスです。1次面接や2次面接で聞きそびれたことがあれば、オファー面談を利用して明らかにしておきましょう。給与が基本給のみの明示だった場合、残業代や交通費、賞与などについても確認しておくと安心です。
注意したいのは、すべての企業がオファー面談で労働条件を提示してくれるとは限らないこと。企業によっては労働条件通知書のやりとりのみとなることもあるため、必要であれば自分からオファー面談実施を依頼するようにしてください。
業務内容・労働環境の確認
オファー面談においては、就業後のミスマッチを回避するため、内定者が担当する予定の業務内容や労働環境などについて説明してくれるケースもあります。採用担当者のほか、直属の上司になる人や、先輩社員が面談に同席してくれることも。
実際に働く上司や先輩に仕事の内容や所属部署の雰囲気の話を聞いて、企業の魅力やおもしろさに気づき、これまでより期待度が上がることも十分に考えられます。一方で、具体的な業務内容を確認したところ、求人段階と内容が大きく変わっていたり、社風に合わないと感じたりする可能性もあるでしょう。内定をもらっている他企業と冷静に比較・検討するためにも、業務内容・労働環境は確認することをおすすめします。
入社意思の確認
企業側は、内定を出した人が自社に本当に入社してくれるかどうか、できるだけ早く知りたいと考えています。もし内定を辞退されれば、再び募集をかけて、採用活動を再開しなければならないからです。オファー面談には、内定者に諸条件を提示し、自社に入社する確度を見極める場としての役割もあります。
内定者がオファー面談で確認するべきポイント
オファー面談は、内定者が選考中に企業側に聞けなかったことを聞き、疑問点を解消するチャンスです。ここでは、後悔のない転職をするために、オファー面談で聞くべき6つのポイントについて解説します。
1 業務内容
オファー面談においては、企業側から労働条件の提示と、業務内容の大まかな説明があるのが一般的です。仮に労働条件の明示のみで終わってしまいそうなら、必ず内定者側から業務内容の細かな点について確認する必要があります。所属部署や職種は同じでも、市場環境の変化や人事異動、前任者の離職などによって、求人内容と実際に取り組む業務内容が変わっていることがあるからです。
仮に同じ営業職であっても、扱う商材やターゲットによって、アポイントの取り方や営業手法が異なります。新規顧客中心の個人営業と、既存の法人顧客に向けたルート営業では、まったくの別物であり、前職の経験の活かし方も変わってきます。自分がイメージする業務内容と現実の業務内容にずれがないか、不安を残さないよう細かく確認するようにしましょう。
併せて、自分が果たすべきミッションについても把握しておく必要があります。企業側があなたに期待していることがわからなければ、転職後の成果に対して正当な評価を得ることはできません。企業側の期待と自分がやりたいこと・やれることにずれがないようにしてください。
2 給与・年収
転職の理由に「給与アップ」を掲げる人は多いでしょう。仕事をする上でモチベーションを左右する要因にもなるため、オファー面談で必ず確認してください。給与・年収について確認するポイントは次のとおりです。
給与・年収交渉についてはこちらの記事もご覧ください。
転職時の給与・年収交渉はOK?交渉タイミングや事前の準備は?
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転職後の給与が具体的にいくらなのか
求人票に給与が◯万~□万円と幅を持たせて記載されているときは、あなたが転職した段階で、給与がいくらからスタートするのかを事前に、あるいは面談時に聞くようにしてください。なお、転職エージェントを利用している場合は、オファー面談前にすべての金額が確定した状態となっているため、基本的にはオファー面談は最終確認の場となります。 -
給与は昇給の見込みがどれくらいあるか
条件を提示され、「内定時の給与には多少不満があるが、入社後に少しずつでも上がっていけばいい」と思い込んでしまうのはNGです。もし、内定時の給与が上限であれば、当然ながら年収アップは見込めないからです。昇給の有無や上げ幅(場合によっては下げ幅)も、オファー面談前に確認しておくようにしてください。 -
賞与や各種手当などはどうなっているのか
給与に賞与や残業手当・みなし残業手当、住宅手当などの各種手当が含まれているのか、別途支給されるのかなどについても、確認しておきたいポイントです。賞与が支給されるならば、支給月や過去の支給実績などについて聞くようにしましょう。
3 評価制度
内定者としては、転職先企業の評価制度がはっきりしないと、入社後に何を指標にして努力すれば良いのかがわからなくなってしまいます。自分なりの基準でがんばっているのに認められない状況は、モチベーション低下や早期離職につながるリスクもあります。オファー面談では、どのような評価制度があるのか、どの評価制度が給与にどう反映されるのかといったポイントについて確認しておくようにしてください。
4 就業場所
就業場所は、オファー面談で確認を忘れがちな項目のひとつです。市場環境の変化で営業拠点が増減したり、店舗移転が決まったりして、求人票に記載されている勤務地が変わっていることも考えられます。必ず「どこで働くのか」を確かめるようにしてください。
コロナ禍を経てリモートワークを採用する企業が増加しましたが、近年は対面でのコミュニケーションを重視し、出社勤務と併用している企業もあります。あなたがリモート勤務を重視するならば、週に何日リモート勤務可なのか、完全リモートワークも可能なのかなども確認しておいたほうがいいでしょう。
転勤の有無も、大切な確認事項です。全国に拠点を展開している企業においては、転勤前提の採用であるケースもあります。キャリアのどのタイミングで転勤になる可能性があるのか、転勤を選ばないことも可能なのかなど、自分のキャリアプラン・ライフプランも考えて確認しておくようにしてください。
5 就業時間
就業時間は求人票に記載されていますが、職種などによっては異なるケースがあります。就業時間の企業側に対する確認は、「残業を嫌がっている」という印象を与えるようで、内定者側からは聞きづらいかもしれません。しかし、ワークライフバランスを保つ上でも重要な項目であり、「繁忙期にはどの程度の残業が発生するか」を確かめることをおすすめします。
なお、就業時間に関連して、オファー面談で確認しておきたいことは下記の5つです。
<就業時間に関してオファー面談で確認すべきポイント>
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業務に繁忙期と閑散期がある場合、それぞれの就業時間
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残業の頻度と平均残業時間
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みなし残業時間を超えたときの対応
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有給休暇取得率
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休日出勤の頻度
6 福利厚生・社内制度
企業の福利厚生や社内制度は、企業によって大きく異なります。社内制度によっては働きやすさやキャリアアップのしやすさ、ワークライフバランスなどに影響を及ぼすこともあるので、オファー面談のタイミングで明らかにしておくべきでしょう。
<福利厚生・社内制度に関してオファー面談で確認すべきポイント>
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年間休日(企業が定める1年間の休日数)
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特別休暇
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育児休業(男性育休取得を希望するときの取得日数も確認)
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退職金制度
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自己啓発へのサポート
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家族手当、住宅手当、書籍購入補助、資格手当などの有無・支給条件
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キャリアアップ支援制度
利用に際し、一定期間の勤続継続が条件になる福利厚生や社内制度もあります。利用条件なども念のため聞いておいたほうが安心です。
オファー面談の種類と違い
オファー面談は、原則として内定者に対して行われる面談です。オファー面談が行われるタイミングは、「内定承諾前」と「内定承諾後」の2つです。内定承諾前と内定承諾後では、オファー面談の内容にどのような違いがあるのかを解説します。
内定承諾前のオファー面談
内定承諾前に行われるオファー面談には、「内定者の意向を直接確かめたい」という企業側の意図があります。他企業の内定やオファー面談を控えているときには、無理に結論を出す必要はありません。提示された労働条件を確認して持ち帰り、指定された期日までに検討した上で回答しましょう。
注意したいのは、企業によって内定前に行う面談を「オファー面談」と呼ぶケースもあることです。この場合、オファー面談は選考の一環であり、実質的な最終面接です。応募者の入社意思を確認した上で、企業側が内定を出すかどうかの最終判断をするために行われます。応募者は企業に対して確認したい項目を整理し、企業側が納得する答えを出せる準備をして臨むことが大切です。
内定承諾後のオファー面談
内定承諾後のオファー面談は、労働条件のすり合わせとスムーズな就業に向けた業務内容の確認が目的です。内定を承諾しているときは、すでに転職先の一員のつもりで臨んでください。
オファー面談における正しい交渉方法
オファー面談の場では、自分の要望をどのように伝えるのが正解なのでしょうか。ここでは、オファー面談の正しい交渉方法をご紹介します。
労働条件の交渉は常識の範囲内で行う
労働条件の交渉、いわゆる「条件交渉」は内定者の権利です。しかし、オファー面談は複数の面接を経て、内定をもらった後のすり合わせの場です。求人票に掲載されていた給与額から大幅なアップを迫る、残業や就業時間について私的な事情から過度な要求をするようなことは避けたほうがいいでしょう。
交渉は、求人票に記載されている給与額の範囲内で行ったり、提示条件が違ったときに調整したりするなど、ビジネスにおける常識の範疇で行うのがポイントです。
オンラインでもビジネス向けの服装で臨む
就業時の服装がカジュアルでOKとわかっていても、オファー面談まではビジネススーツ着用が望ましいといえます。昨今はオファー面談を含めてオンラインで行う企業が増えていますが、オンラインであってもビジネスの一環であり、「雇われる側」であることを意識した服装を心掛けてください。
もし、企業側からカジュアルな服装を指定された場合は、ジャケットや襟付きのシャツなど「オフィスカジュアル」や「ビジネスカジュアル」と呼ばれる服装が最適です。
オファー面談の返事は1週間以内に行う
オファー面談を経て、条件面に異存がなければ内定を承諾します。企業側が回答期限を設けているときは、必ず期限内に回答するようにしましょう。
企業側から回答期限の指定がないときや、数週間先の回答期限を指定されていたときでも、一般的には内定通知から1週間以内の返答が望ましいとされています。
「他社の内定通知・オファー面談後に比較したい」とか「家庭の事情で期日までに回答できそうにない」といったときは、早めに採用担当者に連絡し、回答可能な時期を伝えるようにしてください。
丁寧な言葉遣い・言葉選びや態度で接する
企業側の評価を得て、内定を得ているからといって、高圧的な態度で都合の良い要求をしたり、傲慢な態度をとったりするのは当然NGです。入社後、面接をしてくれた相手といっしょに働くことを忘れずに、敬意を持って丁寧な言葉遣いや態度で接しましょう。
条件交渉の際は「給与を上げてほしいのですが何とかなりませんか」と直接的かつ漠然と要求するより、「給与について再度ご検討いただくことはできますか?」と切り出した上で、「現職では◯万円で、同職種だと◯年の実績があります」などと、言葉を選びながら具体例を提示したほうが印象は良くなります。
給与交渉はオファー面談前に行っておく
給与に関する交渉や重要な条件に関する交渉は、内定後からオファー面談前までに行うことがポイントです。オファー面談前に交渉を終わらせておけば、オファー面談時に希望どおりの給与額を提示してもらえる可能性が高くなります。反対に、オファー面談時に給与交渉を行うと、「条件と異なるため、内定は見合わせます」となる可能性もあるからです。
オファー面談に臨む際の注意点
内定後のオファー面談は、企業・内定者双方の入社後ギャップをなくすための重要な機会です。あなた自身が不明点やあいまいな点を残したまま入社しないように、細部まで確認を怠らないようにしてください。
注意したいのは、「給与アップは難しい」といわれた後の交渉や、利己的な要求です。あなたを評価して内定を出してくれた企業への感謝を忘れず、「採用したい」という企業側の思いを裏切らない交渉を心掛けてください。
転職エージェントを利用して転職活動を行った場合は、オファー面談への臨み方が異なります。給与の希望などは、事前に転職エージェントに伝え、代わりに交渉をしてもらいます。つまりオファー面談には、給与などがほぼ確定した状況で臨むことになるのです。給与の直接交渉が苦手な人は、転職エージェントを積極的に活用したほうがいいでしょう。
最後に、オファー面談で現職の給与やポジションを偽って伝える行為は、入社後に大きなトラブルに発展するおそれがあります。条件交渉を有利に進めたいからといって、自分を大きく見せる虚偽申告は禁物です。
オファー面談の交渉で聞きづらいことは転職エージェントに任せよう
オファー面談は、内定後に「業務内容も職場の雰囲気も希望に近いけれど、給与面だけがネック」や「残業時間の多さが気になる」など、少しでも引っかかる部分があるとき、交渉したり確認したりすることが可能です。入社後のギャップをなくすためにも、オファー面談での確認は怠らないようにする必要があります。
とはいえ、給与や残業時間のことは聞きづらいもの。そんなときは、面接の調整から条件交渉まで一貫してすべて行ってくれる転職エージェントの利用をおすすめします。RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、経験豊富なコンサルタントが転職活動の最初から最後まであなたのパートナーとして調整を行います。まずは、お気軽にご相談ください。
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