転職先企業の内定を得て入社するまでの重要なプロセスに、現職との「退職交渉」があります。お世話になった会社に退職の意思を伝えるには、それなりに勇気が必要です。「上司や同僚を困らせてしまいそうで気が引ける」「引き止められずに円満に退職したい」と考える人も多いでしょう。
今回は、退職交渉の流れのほか、スムーズに退職するための交渉時のポイントや、退職を引き止められた際の対処法などについて解説します。
退職日を話し合って決める退職交渉
退職交渉とは、転職などの理由で現職を退職する意思を固めたとき、退職日を決めるための具体的な話し合いのことです。
期間の定めのない雇用の場合、労働者には民法第627条第1項によって「退職の自由」が認められています。つまり、労働者による労働契約の解約制限はなく、法的には退職希望日の2週間前に伝えれば良いとされています。ただし、企業によっては、就業規則で「退職希望日の1ヵ月前には申告すること」「同業他社への転職活動は在職中には行わないこと」といった独自ルールを定めている場合もあります。
近年は、退職意思を退職者本人の代わりに伝えるサービスがあるように、「退職交渉など不要。現職にどう思われても構わない、法的に問題はない」という考え方もあります。
しかし、同業界に転職する場合はもちろん、異業種に転職した際にも、どこかで現職との接点が生まれる可能性はあります。元上司や元同僚が、近しい業界・企業に転職してくることや取引先になることも考えられます。
新しい仕事に影響を及ぼすことを避けるためにも、できるだけ良い関係性を維持したまま退職しましょう。
一般的な退職交渉の流れ
退職交渉は、どのように進めていけばいいのでしょうか。円満に退職するための一般的な退職交渉の流れを解説します。
1. 転職先から内定の通知を受け取る
退職交渉をスタートする最適なタイミングは、「内定通知を受け、転職先を確定したらすぐ」です。
転職活動を始めてすぐ、「転職活動中で転職する予定である」などとほのめかしてはいけません。翻意して現職に残る決断をした場合や転職先が決まらなかった場合、気まずい思いをしながら働かなくてはならないからです。
2. 退職意思を伝えて交渉を開始する
直属の上長に退職の意思を伝え、退職交渉を開始します。電話やメールの文面で退職を報告するのは誠意に欠けるふるまいです。必ず時間を取ってもらい、辞意を口頭で伝えるようにしてください。
面談を設定する際、直接言いづらいのであれば、メールやビジネスチャットで「ご相談したい件があり、お時間をいただけますか」と打診してもいいでしょう。
3. 退職日を設定する
上司に報告・交渉して退職に対する合意が得られたら、具体的な退職日を設定します。後任の決定や引き継ぎにかかる日数、有給休暇取得予定日数などを踏まえて、最終的な日にちを決めましょう。
その後、希望する入社日を転職先企業に伝えることも忘れないようにしてください。
4. 社外に退職を共有する
上司があなたの退職を職場内に共有した後、会社の了解を得て取引先や社外関係者などに共有します。注意したいのは、上司の発表前に自分で公表すること。「社外への共有は退職の◯日前から」というルールがある場合もあります。顧客へのフォローや社内の人員調整などを行う会社側への配慮を怠らないようにしてください。
5. 業務の引き継ぎを行う
会社側から退職の発表があり、あなたの後任が決まったら、責任を持って引き継ぎを行います。転職先企業への入社予定日までに終わるよう、引き継ぎは計画的かつ正確に進めましょう。
後任を社外から採用するなどの事情から、後任の確定と引き継ぎが進まないことも考えられます。その場合は、あなたが後任に直接引き継がなくても問題が起きないよう、事細かに引継書を作成する必要があります。
6. 退職届を提出し、貸与品を返却する
退職日あるいは有給休暇消化前に、退職届を人事担当者に提出します。会社に様式があればそれに従い、ない場合は自分で作成します。
最終出社日には、会社からの貸与品を整理・返却してください。健康保険証、社員証、会社の経費で購入した備品、ノートパソコンなどが返却対象となることが多いでしょう。
7. 挨拶回りをして退職する
手続きをすべて終え、退職日を迎えたら、お世話になった社内の人たちに挨拶回りをして、退職します。
退職交渉をスムーズに進めるためのポイント
退職交渉を円満に終わらせるには、どのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。続いては、退職交渉をスムーズに進めるためのポイントを6つご紹介します。
就業規則と社内手続きを確認しておく
退職に関する細かなルールは、企業ごとの就業規則によって異なります。退職交渉を始める前、さらにいえば転職活動を始める前に、必ず就業規則を確認しましょう。
就業規則に「退職は退職予定日の1ヵ月前に報告すること」と記載されていれば、そのルールに則って報告してください。「法的には2週間前の報告でいいはずだ」などと強引に退職交渉を進めると、上司や同僚の心証を悪くし、場合によっては退職や転職先企業への入社が予定より遅れて、多方面に迷惑や損害を与える可能性もあります。
直属の上司に退職の意思を伝える
あなたが転職先企業の内定を得た後、始めに退職の意思を伝えるのは直属の上司となります。
日々、接していた存在だけに、退職を切り出すのは気まずいかもしれませんが、仮に伝聞の形で退職を知ることになれば、上司のメンツやあなたへの信頼は失われるでしょう。また、部下の退職は上司の人事評価にも関わる問題のため、できるだけ早く報告し、退職交渉をスタートさせてください。
退職相談ではなく退職報告をする
退職に後ろめたい思いを抱いていると、上司との面談で「退職しようかと思っていて…」と相談口調になりがちです。
こうした話の切り出し方だと、上司は「まだ相談段階なら引き止めれば間に合う」と判断し、強く引き止めてきます。引き止めは交渉長期化の原因であり、長期化はトラブルの種にもなりかねません。交渉は「相談」ではなく、「報告」のスタンスで臨んでください。具体的には下記のように退職の意思を示すといいでしょう。
<退職意思の報告例>
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来月末で退職したいと思っています。引き継ぎについてご相談したく、今日はお時間をいただきました。
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繁忙期後の◯月を目処に転職が決まりました。後任や引き継ぎについてご相談させてください。
引き継ぎの期間や内容を具体的に提示する
上司と交渉をする前に、引き継ぎのスケジュールや引き継ぎ内容についてのプランを示しましょう。余裕を持ったスケジュールと不安を払拭するような引き継ぎ内容を示すことによって、退職交渉をスムーズに進められるからです。
既存社員の能力や実績にもとづいて組織体制を編成し、今後の事業計画を立てる企業にとって、戦力となる社員が一人でも抜けるダメージは大きいもの。後任を決める時間的猶予がなかったり、作業の引き継ぎを曖昧にしたまま退職したりすれば、上司をはじめ残された社員の負担増大は避けられません。このような残る側の不安要素が解消されるようにしておけば、引き止められる確率は下がります。
組織に業務を引き継ぐ意識を持つ
引き継ぎは、後任の「個人」ではなく、「組織」に行う意識を持ちましょう。仮に、「後任がなかなか決まらない」と言われても、引き継ぎ内容を資料やマニュアルにまとめ、組織に託します。引き継ぎを後任に向けて行おうとすると、後任が決まるまで引き継ぎが進まないおそれがあるからです。
後任がいないことを楯に、退職日を引き延ばされるかもしれません。組織にノウハウを残すつもりで、下記のように要点をまとめた引継書を作成してください。
<引継書にまとめる業務内容の要点>
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業務の内容と目的
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業務の発生頻度
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業務手順
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業務に関係する部署や担当者への依頼の仕方
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業務の完遂までにかかる時間
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ミスしやすい作業内容と注意点
有給休暇の残日数を確認の上、計画的に取得する
有給休暇の取得は、現職への影響を最小限にとどめることを第一に、業務の引き継ぎがすべて終わってから、あるいは分散取得しましょう。そのような退職日までのスケジュールを、事前に引いてください。
有給休暇の取得は、退職を控えている人にとっても大切な権利です。しかし、残りをすべて取得することにこだわりすぎると、円満な退職交渉に影を落としかねません。
退職を引き止められた際の対処法
退職希望者が会社にとって必要不可欠な人材であればあるほど、退職意向を聞いた上司に強く慰留されるでしょう。採用難で人材をなかなか採用できない会社や、専門性が高く、採用に時間がかかりそうな職種の場合も同様です。
退職の引き止めに遭ったとき、どのように対応すればいいのでしょうか。最後に、退職引き止めの対処法をご紹介します。
いったん持ち帰って、検討の時間を設ける
退職の引き止め方が強引だったり、話が平行線をたどっていたり、単なる感情論になっていたりすると感じたときは、「いったん持ち帰らせてください」「検討してみます」と伝え、交渉を止めましょう。
翌日以降、退職の意思が変わらないことを伝え、時間をかけて繰り返し伝えれば、上司も次第にあきらめてくれるはずです。
引継書を用意しておく
業務の正確な引き継ぎは、上司にとって重大な関心事です。「このマニュアルなら後任でもすぐに理解できて、業務に穴が開くことはない」と、上司を納得・安心させられるだけの引継書を作成してください。
やりとりを記録する
言った、言わないの水掛け論になることを防ぐため、退職報告・交渉日と時間、場所、報告した上司の名前、やりとりの内容は、必ずテキストや音声を記録しておきましょう。トラブルになりそうなときに、証拠として活用するためです。
退職交渉の相手を変える
説明をつくしても上司との交渉が一向に進展しないようなら、退職交渉の相手を変えてみるのもひとつの手です。直属の上司のさらに上の上司や人事担当者、経営層との距離が近い職場なら、経営層との直接の話し合いによって、状況を打開できるかもしれません。
円満退職のコツは、転職エージェントに聞いてみよう
退職交渉においては、現職に対して十分に配慮しつつ、「新天地でさらに活躍するために退職する」という意思表明と綿密な計画が重要です。
転職エージェントでは、転職活動のサポートだけでなく、内定獲得後の退職交渉のポイントについてもアドバイスしています。「転職を考えているけど、現職に強く慰留されそうで心配」という人は、ぜひRGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンにご相談ください。
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