「計画的偶発性理論」というキャリアの考え方が注目されています。この考え方によると、個人のキャリアの8割は、偶然の出来事によって決定されるそうです。
では、自分でキャリアプランを描いたり、キャリアアップのために努力したりすることは無駄なのでしょうか。計画的偶発性理論の詳細と、注目されるに至った背景を解説します。
計画的偶発性理論はゴールを決めないキャリアの考え方
計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授によって1999年に発表されたキャリア理論です。クランボルツ教授がビジネスパーソンとして成功した人のキャリアを調査したところ、そのターニングポイントの8割が、本人の予想しない偶然の出来事によるものだったそうです。このことをきっかけに、クランボルツ教授は計画的偶発性理論を提唱しました。
急速に経済のグローバル化が進み、IT技術の進歩が目覚ましい中、未来に何が起こるのか予想することは難しくなっています。社会や企業の状況は、個人の意思でコントロールできるものではありません。キャリアに関しても、外的な要因で計画したとおりにいかないことも珍しくないでしょう。そのような時代背景で、「何をしたいかという目的意識に固執すると、目の前に訪れた想定外のチャンスを見逃しかねない」とクランボルツ教授は指摘しました。
これまでのキャリアプランの立て方は、将来の目標を決めて計画を立て、それに向かってキャリアを積み重ねていくというものがほとんどでした。しかし、変化の激しい時代にあって、将来の社会や会社の状況は個人の意思でコントロールできるものではなく、従来のキャリアプランの立て方は効果的とはいえなくなっています。
そこで、あえて明確なゴールを定めず、現在に焦点を置いてキャリアを考える計画的偶発性理論が注目されているのです。
3つの理論骨子から成り立つ
計画的偶発性理論は、次の3つを骨子として成り立っています。
<計画的偶発性理論の骨子>
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予期せぬ出来事がキャリアを左右する
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偶然の出来事が起きたとき、行動や努力で新たなキャリアにつながる
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何か起きるのを待つのではなく、意図的に行動することでチャンスが増える
計画的偶発性理論によると、個人のキャリアの8割は偶然から作られます。しかし、ただそれが起きることを待っているだけでは、キャリアは広がりません。
予期せぬ出来事が起きた際に行動できるだけの準備をしたり、偶然の出来事に遭遇すべくフレキシブルに行動したりすることで、チャンスが生まれるのです。
目標に固執しない
計画的偶発性理論では明確なゴールを定めないとはいえ、目標を立てること自体が否定されているわけではありません。目標に固執して可能性を狭めるより、目の前のチャンスに気づけることがキャリアの成功につながるとされています。例えば、「絶対に英語教師になる」と決めるより、何か人に教える仕事がしたいと考えたほうがチャンスは巡りやすいでしょう。
むしろ、目標を立てることは、目指したい方向性を決めることになるため、今後のキャリアを考える上で有効です。興味関心があることのほうが、情報は手に入りやすくなるでしょう。漠然とでいいので、どんなことをしたいのか、何を目指したいのか決めておくことをおすすめします。
キャリアアンカー理論と対比される計画的偶発性理論
よく、計画的偶発性理論と対比されるキャリア理論として、組織心理学者のエドガー・シャイン博士が提唱した「キャリアアンカー」があります。キャリアアンカーは、個人がキャリアを選択する際に譲れない価値観であり、自分の適性や理想を踏まえて設定したゴールに向かい、キャリアを積んでいく考え方です。積み重ねた経験によって形成されたキャリアアンカーは、生涯にわたってあまり変わらないとされています。
一見するとまったく別の考え方のように思えますが、キャリアアンカーはライフステージや周囲の環境が変化しても変わらない価値観をもとにキャリアを選択するもの。偶然の出来事が起きたとき、どう対処するのかは個人の価値観によるものですから、計画的偶発性理論とキャリアアンカーは重なる部分もあるでしょう。
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計画的偶発性理論のキーとなる5つの行動特性
計画的偶発性理論では、成功するキャリアを築くために、偶発の出来事が起こるのを待つのではなく、みずから引き起こすべく行動することがポイントとなります。
具体的には、以下の5つの行動特性を持つ人にチャンスが訪れやすいと考えられています。
<計画的偶発性を起こす行動特性>
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好奇心(Curiosity):新しいことに興味を持ち続ける
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持続性(Persistence):失敗してもあきらめずに努力する
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楽観性(Optimism):何事もポジティブに考える
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柔軟性(Flexibility):こだわりすぎずに柔軟な姿勢をとる
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冒険心(Risk Taking):結果がわからなくても挑戦する
起きた出来事や周囲の変化を意識し、受け止める姿勢がキャリアの成功には大切です。これは、新しい出来事や成功体験ばかりではなく、失敗体験にもいえることで、出来事を前向きに捉えることが今後のチャンスへとつながるでしょう。
出会いに関しても同様のことがいえます。たまたま連絡した友人、街で出会った人、SNSでつながった人など、誰から良い知らせがもたらされるかはわかりません。偶然の出会いこそ大切にしてください。
偶然の出来事や出会いを必然へと変えるために最も大切なことは、あらゆる出来事に関心を持つことです。
偶然の出来事は、起きた時点ではどのような結果をもたらすのかわかりません。未来が予想できないほど変化の激しい時代において、用心しすぎるよりも、挑戦してみることが重要です。
計画的偶発性理論で偶然をチャンスに変える
キャリアの8割が偶然の出来事によると考える計画的偶発性理論は、ただ待っているだけで良いというキャリア理論ではありません。偶然という形で舞い込むチャンスを確実なものとするには、自分自身の行動する力が必要でしょう。
広い視野を持ち、柔軟に対応できるように準備をして、偶然の出来事をチャンスにしてください。
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