元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日のテーマは、「1 on 1 ミーティングを組織に取り入れる」です。
1 on 1と書いて「ワン・オン・ワン」と読むミーティングは、上司が定められた頻度で直属の全ての部下と、30分から1時間のミーティングを行う制度のことを指します。
日本企業を活性化するために、ぜひ人事制度として取り入れて欲しいシステムです。かつての日本企業は終身雇用を保証できましたが、サントリーの45歳定年制で明らかなように、終身雇用や年功序列制度は崩壊しています。会社が一方的に社内異動で社員を動かすのではなく、社員本人がキャリアを主体的に考えるべき時代と言えます。
なぜ今 1on 1か
1. テレワークの広がりとともに、上司から部下の姿が見えない
同じ職場にいれば、社員の様子が視界にあり、何を感じているのかを立ち話から推測できることも多いです。テレワークが長引く中、部下の姿が見えないので、上司は余計に「部下が何を考えているのかわからない」と思い込みがちです。 1on1 という場があることで、自然に状態を把握できますし、テレワークの中で部下が抱えている不安を拾い一緒に解決することができます。
2. 日本企業の多様性の高まり
中途採用者が行われるようになり、子育てや介護などでフルに勤務していない社員も増える中、個々の社員が直面している課題・キャリアの悩みを把握する必要が生まれています。セクション単位の会議では、どうしても全体最適な方向に落ち着きますが、各社員にモチベーション高く働いてもらうために時間効率が高いのが、1 on 1の仕組みです。
1 on 1 ミーティングのメリット
1 on 1 ミーティングの目的は、仕事の進捗を確認することではなく、キャリア形成に対する考え・課題・そのほか部下が困っていることを聞くことです。通常ならわからないかもしれない「辞めたい」と思っていることを事前に察知し、特に外部に流出しては勿体ない社員であれば、社内異動を起こすことで退職を避けることができます。
上司と部下には仕事上の利害関係がありますが、1 on 1ミーティングを続けることで、双方の「一人の人間」としての理解が深まって絆が強くなり、何か問題があった時すぐに相談してもらえるようになります。
上司にとっては、傾聴・コーチングスキルを磨く絶好の機会であり、あまり得意でない人こそ積極的に取り組んで欲しいです。
上司にとってのメリットを並べましたが、部下にとってのメリットは、上司とキャリアの方向性について話す機会が持てることです。自分の将来をどうしたいのか、メンターを社内で探して欲しいとか、社内異動についてもリスクなく話せれば、キャリア形成を主体的に行おうとするモチベーションが上がります。上司と良好な関係にあれば、たまにはガス抜きのミーティングになることもあるでしょう。
1 on 1のやり方
外資系のスタンダードは、2週間に一回、定まった日時に30分間ミーティングを持つです。そうは言っても直属の部下が多い場合は、2週間に1回では常に1 on 1ミーティングを行っている状態に陥りますので、その場合は4週間に1回でも致し方ないです。それ以上間が空いてしまう1 on 1は、効果がないと言われています。
ついつい、現在進行形の仕事・プロジェクトの進捗状況の話ばかりをしがちですが、1 on 1ミーティングの目的は、社員のキャリア形成を助けることです。冒頭、目の前の仕事の話になることは仕方ありませんが、「社員のキャリア」について言及することを忘れないようにしましょう。
人事の役割
人事制度として導入する際に、部下を持つ全ての役職者を対象に、1 on 1ミーティングの目的・理想の頻度・模範的なやり方などの社内研修を行うことが理想です。 人それぞれでやり方がブレないようにすることができますし、何より1 on 1の重要性を理解してもらうことができます。
1 on 1ミーティングは、上司がどんなに忙しくても簡単にキャンセルすべきではありません。自分の上司がちゃんとやってくれていないのに、隣の部署の上長はちゃんと全員とできていたりするのを見ると、やってもらえない社員のモチベーションが非常に下がることを忘れずに伝えたいです。 外資でも、1 on 1ミーティングがごく自然に行われている組織も、まだ定着していない組織もあり、トップ・マネジメントの姿勢と人事の関与の仕方が最大の原因です。
1 on 1 ミーティングを制度化することで、一人一人の社員が自らのキャリアを形成しようというマインドを持てるようにしたいものです。終身雇用を保証できない今、日本企業の活性化に繋がります。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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