元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、最近話題にのぼることが多い「ジョブ型雇用」です。このサイトには転職を考えている個人向けの記事をアップしているので、本日は「個人」にとってのメリットと言う観点から解説したいと思います。
ジョブ型雇用とは
ジョブ型雇用とは、組織が必要な人材の仕事内容を明確にした職務記述書、(Job Description)を元に採用するものです。それぞれの仕事内容・目的・責任・裁量権の範囲などが細かく決まっています。
中途採用のプロセスにおいて、非常に優秀だが求められている経験・スキルを持ち合わせてない候補者が出てきた場合、ジョブ型雇用の場合はポジションを作り出してまでその人を採用すると言う事はまずしません。最初にJDありきだからです。
ジョブ型雇用はスペシャリストを育成します。社内だけでなく社外でも価値ある人材に育つことができ、個人にとっては転職が可能になります。労働市場は少しずついろんなことができる人材ではなく、専門分野でスキル・経験値を積み上げた人材を求めているので、転職しやすいのはジョブ型雇用の企業で育った人材です。ちなみに外資系は全てジョブ型雇用です。
ジョブ型雇用のもとで、社員のキャリア形成の責任は本人にあります。このまま専門性を高めた方が良いのか、もしかしたら適職は他の領域にあるのではないかと考え行動するのは本人です。
例えば営業部員がマーケティングに非常に興味があり、同僚の仕事を聞いていても自分にできるのではないかと思ったとします。この時自発的に動くべきは社員本人です。日ごろから培っておいたマーケティング部署内の人脈を生かして詳しく情報を得たり、自分から社内のオープン・ポジションに応募したりするなど、積極的にアクションを取ることが求められます。
オープン・ポジション制度とは、現職に最低2年いる社員が他部署の求人に極秘で応募できるシステムで、直属の上司に相談することなく応募できるのがメリットです。外資系において会社主導の部署をまたぐ異動はほとんど起こらないので、動きたいと思ったら社員自らがイニシアティブを取る必要があります。
キャリア形成の鍵を本人が握ることを、ジョブ型雇用のデメリットと捉える考え方もあるようですが、25年間の外資系勤務から「メリット」でしかないと考えます。自分に主導権があれば自分次第で歩む道を変えることが可能になります。すべてを会社に委ねたら、転勤・移動を命じられた時に自分の意志を挟む余地がなくなり従うしか選択肢がなくなります。
メンバーシップ型雇用とは
メンバーシップ型雇用では「最初に人材ありき」で、この人の力が最大限に発揮できるのはどの部署だろうという俗人的観点で、会社が主導権を握って配置をします。社員本人が自分の専門領域を選べないことがほとんどです。
ンバーシップ型雇用の社員にとっての最大のデメリットは、スペシャリストが育成されにくいことです。最近キャリア相談を受けた男性の悩みは、経理部にいて自分に非常に合っているし本人もハッピーなのですが、その会社の慣例からすると、5年おきに配置転換が起こり、過去の慣例から推測するに多分2ヶ月後にITに異動になると分かっていることです。彼は経理の仕事を極めたいと思っており、ITの仕事には全く興味がありません。異動辞令が出たときに本人が拒否する権利は無く、拒否した場合はイコール退職するになるそうです。
現在の仕事を適職だと感じて仕事をしているハッピーな社員が、会社主導の異動を恐れて転職を考え始めるとは人事的にはなんとも残念な話です。メンバーシップ型雇用の企業では、残念ながらこのようなケースが発生してしまいます。
また、メンバーシップ型雇用においては職務範囲がはっきりしないので、社員が辞めて人手が足りないことを理由に本来の仕事以外のことを長期間引き受けざるを得ないこともあります。その分がボーナスの査定に反映されたり、業績評価に加点されたりするのであれば受け入れることができるでしょうが、メンバーシップ型雇用の企業においてはみんなで助け合って仕事をすることは当たり前とする風潮があります。
草野球的にボールを落とさないためにチームの危機を助けるのは当たり前と考えられ、特別に加点される事はありません。この点をフェアと不満に感じる人は、ジョブ型雇用の企業に転職することを勧めます。 ジョブ型雇用の企業においては、個人のJD以外のことを長期間頼む場合は、本人と話し合いが持たれますし負荷の大きさによって年間の業績評価やボーナス査定に反映されます。
まとめ
「ジョブ型」・「メンバーシップ型」と言葉ばかりが先行し、自分に合っているかどうか心配になる人もいるかもしれませんが、社員にとって「ジョブ型雇用」は自分の専門性・スキル・経験値を高めることができるシステムなので、どうか安心してください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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