「LinkedIn(リンクトイン)」は、世界最大規模のビジネス特化型SNSです。「ビジネスパーソンは登録していて当たり前」といわれる海外に比べて、日本ではなかなか浸透していませんでした。しかし近年、外資系企業を中心に、転職活動においてLinkedInが使われるケースが増えています。
ここでは、外資系企業への転職にLinkedInを使うことのメリット・デメリットや活用方法、注意点などを解説します。
LinkedInとは
LinkedInは、アメリカ・シリコンバレーの企業であるLinkedInが、2003年から提供しているビジネス特化型のSNSです。世界では200ヵ国以上、8億3,000万人以上(2022年4月時点)が利用しています。2016年には、同じアメリカのマイクロソフトが262億ドル(当時の日本円で約2兆8,000億円)という多額を投じてLinkedInを買収したことでも話題となりました。
LinkedInの特徴は、ビジネスに特化したSNSであること。LinkedInには転職活動やソーシャルリクルーティング(SNSを活用した採用活動)、人脈開拓、ソーシャルセリング(SNSを活用した潜在顧客に対する営業活動)など、ビジネス上の関係性構築を目的として登録しているユーザーが多く、そのほとんどが実名かつ顔出しで登録しています。海外のビジネスパーソンにとって、LinkedInはいわば名刺代わりの役割を果たしているのです。
LinkedInには、個人アカウント所有者が無料で作れる会社ページ(キャリアページ)がありますが、このページ内に自社の求人票を紐付けられるようになっています。採用活動をLinkedInの会社ページ内で完結できることは、採用担当者の省力化につながるでしょう。また、転職希望者にとっても、情報収集から応募までをLinkedIn内で完結できるため、利便性は高いといえます。
こうしたビジネスに特化した性質から、海外におけるLinkedInは、転職の成功に欠かせないツールとして活用されているのです。
日本でのLinkedIn普及が遅れた理由
LinkedInは、2011年に日本上陸したものの、FacebookやTwitter、後発のInstagramなどに比べて国内での普及は遅く、登録者数が伸び悩んでいました。
普及が遅れた背景には、当初はメイン言語が英語で日本仕様にローカライズされておらず、一般的な日本人にはユーザーインターフェーイス(UI)に親しみにくさがあったといわれています。
また、日本の営業職のあいだでは、「足で稼ぐ」「直接会って話す」という日本のビジネスの在り方が重視されていたことも、ビジネス特化型SNSであるLinkedInの普及を阻む要因でした。LinkedInの上陸当時、国内においてSNSをビジネスに活用することは一般的ではなく、FacebookやTwitterなどのようなSNSは、極めてプライベートな空間だったことも原因のひとつといえるでしょう。
しかし2017年、LinkedIn日本法人代表に、元Yahoo! JAPAN執行役員CMOの村上臣氏(現Google日本法人 検索担当ゼネラルマネージャー)が就任してからは、扱いにくかったUIの改善が進み、ユーザーが増加しています。ここ数年は、転職活動に有効なツールとして活用されることが増え、現在の国内登録ユーザー数はおよそ280万人まで増加しているのです。
日本でLinkedInが注目されている理由
今になってLinkedIn熱が高まりつつあるのは、なぜでしょうか。2022年現在、LinkedInが注目されている3つの理由について解説します。
リファラル採用が盛んになった
少子高齢化、働く人の価値観の多様化、さらに多様な人材の登用が進んだ現在。人材獲得競争は激化の一方で、人材不足はいっそう顕著になっています。
こうした中、従来のように転職サイトに求人を出して応募を待つ採用手法では優秀な人材を確保できないため、「リファラル採用」といわれる手法を取り入れる企業が増加しました。
リファラル採用とは、自社で働く社員に友人・知人を紹介してもらう採用手法。自社との親和性が高く、エンゲージメントも高い社員に、「この人は自社に入社しても、すんなりとなじめて活躍できそう」と思う人材を紹介してもらいます。そのような人材を採用することで、通常の転職サイトなどを利用した採用プロセスに比べてコストを抑えられるのと同時に、定着率を高められる方法です。
LinkedInでは、自社の空いているポジションに最適な人材がLinkedIn上にいた場合、その人材とつながりのある自社の社員を可視化するプロダクトを実装できます。これによって、採用担当者が該当社員に呼びかける形で、精度の高いリファラル採用を進められるのです。
プライベートのつながりと切り分けられる
LinkedInには、リファラル採用に役立つプロダクトのように、企業・求職者両方のビジネスをサポートするさまざまな仕組みが用意されています。つまり、LinkedInは完全にビジネスシーンのみで活用し、FacebookやTwitterではビジネスの話をしないといった、切り分けが実現するのです。
「プライベートな関係性の中で仕事の話はしたくない」、あるいは「ビジネスの関係者にプライベートなつながりを知られたくない」という場合、便利なSNSといえるでしょう。
自分の職務経歴を公開し採用担当者やリクルーターとつながることができる
LinkedInは、ビジネスにおける自己紹介ツールとして活用できるSNSです。プロフィールページに学歴、職歴、保有資格やスキル、得意分野などの情報を盛り込めるため、新たに知り合った人にもすぐに「自分は何者か」「どんな強みがあるか」を知ってもらえるのです。
アイコンに「Open To Work」の表示をつけると、「仕事を探している」メッセージとなります。これまでの経歴やスキルを載せたり、「Open To Work」を表示したりすることで、採用担当者やリクルーターからスカウトが来る可能性が高まります。
外資系企業への転職活動にLinkedInを使うメリット
LinkedInの普及に伴って、一般的な日本人ユーザーでも、転職活動にLinkedInを活用するようになりました。とりわけ、LinkedInが有効に働くとされているのが、外資系企業への転職活動です。続いては、外資系企業への転職活動において、LinkedInを使うメリットを紹介します。
ビジネス用SNSとして人脈が広がる
現在、主にLinkedInに参加しているのは、基本的に「ビジネス上のつながりを広げ、ビジネスに活かしたい。ビジネスにおいて成長したい」と考えている高感度のビジネスパーソンです。Facebookではプライベートな関係のユーザーとビジネス属性のユーザーが混在しがちなため、投稿が適切なのか、判断に迷うこともあるでしょう。
LinkedInは、プライベートな飲み会や旅行の投稿をすると削除要請を受けることもあるほど、ビジネスに特化したSNSです。つまり、自他のプライベートな情報に左右されることなく、ビジネスにフォーカスした関係を築くことができるのです。
名刺や履歴書・職務経歴書の代わりになる
海外でビジネス上の関係者と初めて会うと、LinkedInアカウントの有無について確認されることがあります。名刺交換などによって知り合った人の名前を検索し、Facebookの友達申請をすることは、これまで日本でも行われてきましたが、LinkedInはより名刺に近い使い方をされているといえます。また、ほかのSNSよりも詳細かつ信頼性の高いプロフィールが閲覧できるのも、LinkedInの特徴です。
国内でLinkedInユーザーが増加しており、さらにコロナ禍でオンライン商談が一般化したことも追い風となって、今後のLinkedIn活用スタイルは海外に近くなっていく可能性は高いでしょう。
そこで、プロフィールを充実させておけば、自分を知ってもらうツールとしては名刺や履歴書・職務経歴書と同等の効果を発揮します。プロフィールを見た企業や転職エージェントから、スカウトメールが届くケースもあるので、詳細に記入して、内容を充実させるようにしてください。
利用者が比較的少ないため先行者利益が得られる
LinkedInの日本におけるユーザー数は着実に増えてきているものの、ビジネスや転職活動に使いこなしているユーザーは、まだそれほど多くありません。
今のうちに登録し、フル活用できるようにしておけば、新しいツールに敏感なビジネスパーソンとのつながりが築きやすくなるでしょう。また、優秀な人材の採用のためにLinkedInを活用している、あるいは活用を検討している採用担当者の目にもとまりやすくなるはずです。
転職活動に関する情報収集ができる
LinkedInには、高感度のビジネスパーソンや企業が、次々と有用な情報を投稿します。ある業界に特化したニュースや、仕事に今すぐ役立つ情報、イベント情報、プレスリリースなどの投稿も少なくありません。
LinkedInに登録することによって、希望する業界・職種の市場動向、気になる企業に関するさまざまな情報が収集できるため、転職活動における応募書類のネタや面接の話題づくりに役立つでしょう。
海外の求人情報を常にキャッチアップできる
LinkedInには、外資系企業の求人情報が掲載されています。会社ページが充実している企業も多く、日系グローバル企業や外資系企業への転職希望者には最適なSNSといえるでしょう。特に、外資系企業ではLinkedInだけに求人情報を掲載している企業もあるため、レア求人に出合える確率も高いのが特徴です。
外資系企業への転職活動にLinkedInを使うデメリット
外資系企業への転職活動にLinkedInを使うことで、下記のようなデメリットが生じることもあります。便利なツールですが、デメリットも把握した上で活用するようにしましょう。
現職に転職活動がばれるおそれがある
LinkedInで公開する個人情報や、その公開範囲に注意していたとしても、閲覧可能な情報から「そのユーザーが誰であるか」を推測できる可能性は、決してゼロにはなりません。投稿内容や公開範囲には注意が必要です。
また、LinkedInは転職活動にもよく使われているビジネス特化型SNSであると世間に認知されつつあるため、LinkedInを使っているだけで「転職活動をしているのではないか?」と疑われる可能性もあります。
活用しているのは外資系企業が中心である
LinkedInで求人を公開したり、会社ページを使用したりしている企業の多くは外資系企業で、日系グローバル企業の普及率や活用率はまだ低いのが現状です。外資系企業以外への転職を目指す場合は、従来の転職サイトや転職エージェントを活用した転職活動のほうが、有効な情報を集めやすいといえます。
すぐに転職したい人には向いていない
LinkedInを利用する企業の多くは、掲載した職務経歴や投稿などから垣間見える、求職者の「人となり」をじっくりと見て、オファーや採用可否を判断したいと考えています。裏を返せば、すぐに採用しなければならないポジションについては、LinkedIn以外の方法を用いて採用活動を行っている場合が多いといえます。
その意味で、「今すぐに転職したい」という求職者にとって、LinkedInの転職活動はマッチしているとは言い難いでしょう。
LinkedInを活用した転職活動に向いている人とは?
LinkedInは、多くのビジネスパーソンにとって、活用価値のあるSNSです。続いては、特にLinkedInの活用に向いているタイプについて解説します。
外資系企業へ転職したい人
外資系企業において、採用活動にLinkedInを使うことは、もはや当たり前のことになっているといえるのではないでしょうか。外資系企業の中には、LinkedIn以外に求人公開していないケースも散見されます。通常の転職サイトでは出合えないような求人も多く、外資系企業に転職したい人にとっては、大いにチャンスを広げてくれるツールなのです。
自分の市場価値を客観的に評価してほしい人
LinkedInで自分のプロフィールを公開しながら転職活動をすると、あなたの職務経歴に興味を持った企業からオファーが舞い込みます。そのオファーの条件や数によって、自分の市場価値を判断できるはず。
すぐに転職したいとは考えていなくても、客観的な視点で自分のプロフィールの強み・弱みを把握できるため、今後のキャリアプランを考える上でも役立ちます。
将来のために人脈を広げておきたい人
海外との親和性が高いLinkedInは、国境や業界の壁なく、あらゆるビジネスパーソンとつながれるSNSです。今すぐ転職をするつもりがなかったとしても、LinkedInを使ってさまざまな人脈を広げておいて損はありません。それがやがて、魅力的な仕事の打診や紹介につながっていくこともあるでしょう。
外資系企業へ転職するためのLinkedIn活用ポイント
外資系企業への転職にLinkedInを活用する場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。外資系企業への転職には、下記のポイントを押さえておきましょう。
名刺や履歴書代わりとして顔写真やプロフィールは掲載・公開する
LinkedInを通じて転職活動をする際には、必ず顔写真を登録しましょう。LinkedInが名刺や履歴書代わりだと考えれば、写真を掲載するのは当然のこと。実際、あなたのビジュアルがわかるだけで、閲覧数やつながりを求める人の数は一気に増えます。
職務経歴書のように、あなたの人となりや仕事上の強みがわかるよう、プロフィールもできるだけ詳しく記載してください。
目にとまりやすいよう、日本語・英語両方でプロフィールを作成する
外資系企業や日系グローバル企業への転職を目指すなら、プロフィールは日本語と英語の両方で作成し、掲載しておいたほうが確実に声はかかりやすくなります。
現在のLinkedInは日本向けにローカライズされていますが、海外由来のSNSであり、参加者には外国のビジネスパーソンが多いことを心にとめておいたほうがいいでしょう。
LinkedInに備わる転職に有効な機能をフル活用する
ビジネス特化型SNSであるLinkedInには、転職活動に役立つさまざまな機能が搭載されています。
個人情報を登録したら、まずは「Open to Work」のフラグを立て、求職中であることを採用担当者やリクルーターにアピールしましょう。また、「コンタクト機能」を使い、自分のネットワーク内にいるコンタクト(ネットワーク内のメンバー)につながりのリクエストをして、じわじわと人脈を広げてください。
<LinkedInの主なコンタクトの種類>
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1次コンタクト:直接つながりがあるLinkedInユーザー
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2次コンタクト:1次コンタクトとつながりのあるLinkedInユーザー
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3次コンタクト:2次コンタクトとつながりのあるLinkedInユーザー
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グループメンバー:自分が参加しているグループ内のメンバー
上記カテゴリーに属さない人とつながりを持ちたい場合は、有料機能の「InMail」機能を使って連絡をとることが可能です。転職先を探す上でどうしても気になる企業があって、実際に働いている人に話を聞いてみたい場合などに活用するのがおすすめです。
また、条件に該当するキーパーソンを探したいときは、企業名・役職で検索できる機能が役立つはずです。
LinkedInを転職に活用する際の注意点
LinkedInは転職活動に有用なビジネス特化型SNSですが、それゆえに注意しておくべき点もあります。ここでは、LinkedInによる転職活動の注意点を解説します。
スパムやフェイクアカウントに関わらない
海外と密接につながっているオープンプラットフォームであるLinkedInには、詐欺やフィッシングなどを目的としたフェイクのアカウントが多少なりとも存在します。うっかりコンタクトをとると、あなたの個人情報を悪用されたり、現職の情報を聞き出そうとしたりすることもあるでしょう。それは、ビジネス領域の情報まで広く開示しているLinkedInだからこそ生じるリスクです。
開示されている情報の内容をよく確認し、あやしいプロフィールのアカウントとは安易につながりを持たないようにしてください。
LinkedInで偽名・匿名は使わない
LinkedInの利用規約において、プロフィールには本名を使用しなくてはならないと定められています。フェイク・スパムアカウントに個人情報を知られたくない、現職の同僚に転職活動しているのを見つかりたくないなどの理由で、虚偽の身元を作成したり、身元を偽ったりすることは禁じられています。LinkedInでは、必ず実名を使いましょう。
LinkedInでの転職活動が現職にばれないように注意する
LinkedInを活用して転職活動をしていることが現職の上司や人事担当者、同僚などにばれないよう、情報公開範囲は慎重に設定する必要があります。投稿内容に転職活動にまつわる投稿をする際にも、慎重さが肝心です。場合によっては、現職の関係者が見られないように、あらかじめブロックしておく、またはつながらないことも有効でしょう。
外資系企業への転職は、LinkedInと転職エージェントの併用がおすすめ
外資系企業への転職を目指す人にとって、コストも手間もかからないLinkedInは非常に有効なツールです。ただし、活用方法によっては、現職に転職活動がばれるリスクがあったり、あるいは企業とのつながりを構築できず、結果(内定)に結びつかなかったりすることもあります。
LinkedInを使って効率良く、手間のかからない転職活動を考えている人には、外資系企業や日系グローバル企業とのつながりが強い転職エージェントの併用がおすすめです。
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