元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。外資系にまつわる都市伝説の一つに、「英語がペラペラでないと外資系には入社できない」があります。現実は、高い英語力が求められる部署や職種もあれば、最初はあまり必要ないケースも存在します。本日は、外資系で求められる英語力の目安をテーマにします。
15年前くらいまで、外資系で求められる英語力を説明するのは簡単でした。ほとんどの場合が、役職の上下で決まっていたからです。上級職になると海外本社や外国人と接する機会が増えるので、おのずと高い英語力が必要でした。時は流れ、現代は状況がもっと複雑で、役職の上下で求められる英語力が決まらない時代です。
つまり、実際に職場で外国人と接するかどうか、グローバルに仕事をしているかどうかが鍵になります。実例を挙げます。法務部のNo.2で、上司の法務部長は日本人です。自分が仕事で英語を使うことはほとんど無いのが実情です。かたや技術部の24歳のエンジニアです。人手が足りず、海外と連携して進めるプロジェクトのメンバーに任命されました。好む好まざるに関わらず、英語に頻繁に触れることになります。日々のEmailのやり取り、毎週の定例ビデオ会議、役職はスタッフですが英語は必須です。実際に職場で英語を使うかのかどうか、どのくらい外国人と一緒に仕事をするのかは、面接の過程でぜひ確認したい項目です。
英語力の目安
現代では実際に職場で英語を使うかどうかの確認が大切とわかったところで、各部署・役職で必要とされる英語力の目安について解説します。
この仕事に高い英語力は必要なのだろうかと迷ったら、「ゼロイチで割り切れるか」「数字でだいたい説明がつくか」と考るのがわかりやすいです。答えがNOで、いろいろ「言葉」で説明しないと成り立たない仕事なのであれば、高い英語力が求められると思ってください。
Staff | Manager | Director | |
---|---|---|---|
a) マーケティング、人事 /th> | 750-800 | 800-850r | 900 |
b) 営業、技術、社内IT | 500 | 650-700 | 800 |
c) 工場・物流の現場 | 不要 | リーダー以上は500点以上* | リーダー以上は500点以上* |
a)&b)&c) 以外の部署 | 600 | 800 | 900 |
※本社勤務のメンバーに必要な英語力は、a)に準ずる
1. マーケティング & 人事
この2部署は、社内で求められる英語力が最も高いです。スタッフでTOEIC750-800点、マネジャーでTOEIC800-850点、本部長でTOEIC900点くらいは必要でしょう。
まずマーケティングですが、数字で測れる売り上げに貢献している部署ですが、同時に広告など感性に関する会話が多い部署でもあります。「キービジュアルが何となくピンと来ない」など、ゼロイチで割り切れないことをたくさん表現する必要があります。またグローバルに使って良いテンプレート・ロゴ・フォント・レイアウトなど、本社からの制約が最も厳しい部署でもあり、時々は本社に掛け合って交渉もするので英語力はかなり必要です。
次に人事。こちらは「人」を扱っているので、「メンタルにダウンしたマネジャーについて本社の耳に入れておこう」「ある社員が結構な時間ネットサーフィンをしていると垂れ込みが人事にあったが、この先どう調査するか」など複雑な状況を英語で説明することが多いので、英語力はかなり必要です。
2. かなり多くの部署 (上の表でa), b) & c) 以外)
スタッフでTOEIC600点、マネジャーでTOEIC800点、本部長でTOEIC900点くらい必要です。
日本人のTOEIC平均点は2019年の国別データで、523点です。しばらく英語に触れていないと、最初のTOEICのスコアは低いかもしれませんが、中学英語を学んでいれば、TOEIC600点を取るのはそれほど難しくはありません。忘れていた英語を思い出せば良いからです。TOEIC800点にするには、読む・書く・話す・聞くの4要素の実力がさらに必要になりますが、目標を立てて努力すれば実現可能です。
私はTOEICを受けた時点では帰国子女でも海外駐在組でもありませんでしたが(2011~2012 オーストラリア在住)、960点取れました。日本にいてもTOEIC900点超えは可能です。帰国子女でなくTOEIC900点を超えている人を10人くらいは、元の同僚や部で簡単に思い浮かべることができます。
3. 営業・技術・社内IT
スタッフでTOEIC500点、マネジャーでTOEIC650-700点、本部長でTOEIC800点くらいが求められます。
まず営業ですが、上記のスコアは顧客が日本人向けであることを想定しています。外国人むけのセールス、国外営業は上記のスコアでは勿論足りません。お客様が日本人の時、会話は日本語でなされるので、セールス・パーソンに高い英語力は必要ありません。とは言え、社内で回ってくる英語のEmailを読む機会もあるので全く英語ができないと採用されません。
役職があがると、他部署にいる外国人の管理職と仕事で関わることも出てくるので、少しずつ高い英語力が必要になります。本部長でもTOEIC800点で良いのは、営業のトップに就く方は「コミュニケーション力」がもともと高い人材が多く、度胸で乗り切ったり愛嬌で何とかしたりできるからです。
技術部門、SEやプログラマーは本来ゼロイチの世界で生きており、文法というルールはあるけれど基本的にフィーリングが大事な語学は、得意ではないことが多いです。私はIT企業に2回在籍したことがあり、英語ができる日本人エンジニアを探せなくて往生しました。逆を返せば、英語ができる日本人エンジニアは、年収を劇的に上げることができる職種No.1です。
こちらも役職が上がるとともに求められる英語力は少しずつ上がりますが、本部長でも会話力を含めると800点くらいでしょう。
4. 工場・物流の現場
こちらは管理職かどうかで、英語がそもそも必要かも変わってきます。読者に該当される方があまりいない職種なので詳細は割愛します。
まとめ
特に初めての転職では、面接官のカリスマ性や給与の額などで決めがちになり、企業の本質が見えないことも多いのでよく調べることをお勧めします。
転職は現職があるうちにした方が圧倒的に有利ですが、精神的に疲れて続けられなくなった時は、くれぐれも無理をしないで心身を休めて新たなスタートを切ってください。応援しています。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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