元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、初めての転職先に早く馴染み、貢献を始めるコツです。
普段は、どのように「転職するか」についてのTipsが多いコラムですが、本日は初めての転職で、新しい会社に早く溶け込むにはどうしたら良いかをテーマにします。
大事なポイントが3つあります。
1. 比較しない
1番大事なのは、前職と現職を比較しないことです。新卒で入社した会社は様々な意味で大きな影響を与えます。あまり職場が好きでなかったとしても、実はその企業の価値観・仕事のやり方が刷り込まれています。前職と現職は異なって当然ですし、比較したところで差が埋まってストレスが無くなるわけではありません。
比較することのデメリットは、態度に出てしまうことです。現職の社員は、前の職場を盛んに引き合いに出す中途採用の社員を好ましく思うでしょうか? 答えはシンプルにNoです。
以前、某大手日系企業に25年勤務した方を、かなり上の役職でお迎えしたことがあります。何かというと「前の会社は」が飛び出して周囲は大変でした。公けの場では誰も何も言いませんでしたが、「そんなに前の会社が好きなら、どうして転職したんだ」と陰で悪口を言われていました。この方のNGは、悪意はなかったとしても「前職と現職を比較する」です。比較をやめられなかった本人も、カルチャーギャップに悩まされたのかもしれません。残念ながら半年後くらいに、外資は合わないと自分から退職されました。
2. より謙虚に振る舞う
ある分野の専門家として、またはマネジメントの一員として転職すると、今までとは違う仕事のやり方に戸惑うかもしれません。また業界を変えた場合は、最初は勝手がわからず職場の皆さんに助けてもらわないと、効率良く仕事が出来ないはずです。
確かに外資ではアサーティブを良しとしますが、転職直後は尊大に振る舞って知ったかぶりをせず、頭を低めにして周囲の方々の話をよく聞くことが、後に成功する鍵になります。いかにも「私はデキる人材です」という態度の新しい社員を、助けてくれる奇特な人はそうはいません。最初こそ謙虚さが大切です。
以前、日系の大企業から鳴り物入りで転職してきた部長がいました。「俺はできるんだ」オーラを放ち、周囲を少し見下げている発言もあるなど、人事としては入社直後から心配でした。時間が経つにつれ、確かに経験とスキルのレベルはかなり高いけれど、米系IT企業は根回しの程度が低く突発事項が多いため、想定外対応力が足りないことが露呈しました。部下と信頼関係が築けていれば、彼らの力を借りて乗り切れたはずですが、散々「俺様」宣言をしてしまったので、助けてくれる部下がいない孤立状態に陥りました。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、けだし名言です。転職直後は周囲に助けてもらわないと効率良く仕事ができないので、謙虚でいてください。
3. 基本的な仕事のやり方の違いを早く習得する
人は、慣れたコンフォートゾーンから出て新しい価値観・仕事のやり方・考え方に遭遇すると、どちらかと言うと感情的にはネガティブに触れる傾向にあります。自分が慣れていたモノが正しく、違和感ある新しいモノは間違っていると思いがちです。
8回転職してつくづく、会社ごとに仕事のやり方は違うと学びました。文房具の購入を実例に取ります。私のこれまでの経験では3通りの購入方法があります。
a) 各部署で好きに購入して良い
b) 誰もがよく使う文房具は全社一括で購入してあるので取りに行く。共有スペースにストックが無い文房具は、会社指定の業者から購入する
c) 全ての文房具を購買経由で購入する必要がある (すぐ入手できない可能性があるので早めに頼まないといけない)
文房具をどう買うかだけで、これだけ違うのです。ITインフラ、経費の精算方法、承認を必要とするレベル・手段など、ありとあらゆる仕事のやり方が違うでしょう。
ここで前職と比較して「非効率だ」と言ってみても、自分の生産性が下がるだけです。基本の仕組みに慣れることが、転職先で早く貢献をスタートできるようになる鍵です。
そして、この基本的な仕事のやり方を覚えるに当たっては、気軽に聞けて教えてもらえる人間関係を部下や同僚と築けているかが重要になります。
まとめ
初めて転職をする時、在籍年数が長いほど前職を引きずりがちです。職種によっては業界が変わることもあると思いますが、最も企業文化が変わるのは業界を変える時です。前職との「違い」を楽しむくらいのゆとりを持って比較せず、謙虚に振る舞って周囲に新しい職場に馴染むプロセスを助けてもらえる人でいてください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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