元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日の記事は、初めて外資系に転職する人向けに、給与・福利厚生についての考え方や適正年収について参考になるサイトの紹介をテーマにします。
初めて外資系企業に転職する時、候補者は「給与が上がる」ことを大きく期待します。どのぐらい上がるのかを考える前に、外資における中途採用者の給与の決まり方を説明します。
外資系は成果主義で、年齢・性別など、個人の属性は全く考慮されず給与が決まります。一般論で言うと、優秀な人が社内で昇給を毎年続けていくより、転職をした方が給与は大きく上がります。つまり、転職した時の最初の給与額は後々に影響を与えるので非常に重要なのです。それでは、現在の年収を聞かれたときに、盛って伝えれば良いかというとそうではありません。理由は2つあります。
正しい年収を伝えたほうが良い理由
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外資系でも7〜8年前から、入社の時に前年度の源泉徴収票を提出することが求められるようになりました。つまり、現職の給与額はいずれ露呈します。
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外資の給与制度は、Job Grade制です。例えば、SEのグレード4 のベースサラリーは600万円から750万円と決まっています。社内での公平性を保つために、中途採用者の給与をここからはみ出さないように決めるのが王道です。
既存のJob Gradeの給与幅に候補者の年収が収まらない場合は、そもそもグレード4で採用すべきではないのですが、非常に優秀でどうしても欲しいとなれば、現金以外の手段で給与「パッケージ」を大きくすることを、企業サイドは考えます。昔ならストック・オプション、今ならRSUです。RSUはRestricted Stock Unitの略で、一定期間経ったら株式を受け取る権利が付与される株式制度で、社員が短期間で辞めることを防ぐ役割もあります。(RSUの詳細の説明はここでは割愛します。)
外資系は成果主義だと言いました。つまり、給料が高いと言う事は、それだけ期待値も高くなり、ハイプレッシャーで競争が激しい職場の可能性は高いです。知人に、日系のメーカーからGAFAに転職した人がいます。聞いた瞬間に「GAFAの企業文化には合わないんじゃないかなぁ」と思いましたが、すでに転職が決まって喜んでいる人を前に私は何も言いませんでした。
彼の給与パッケージは、年収600万円から1400万円にアップしました。1年後の現在、彼は転職して日本の大手企業にいます。合わなかったのです。給与だけを見れば下がりましたが、現職の給与の高さを考慮され、最初の日系企業での年収よりかなり高い給与をもらっています。
外資系は成果主義なので、応募ポジションのJob Gradeに伴う給与のバンドと、候補者の経験値・スキルを照らし合わせて、給与が決まると説明しました。そこに加味されるのが現職の給与です。現在の給与より低い金額を提示するのは極めて失礼な話です。
起こりうる2つのケースは以下になります。
現年収より低い金額が提示される2つのケース
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大手企業からベンチャーへの転職
このタイプの転職に年収減が伴うのはほぼ確定ですが、短期間で実力がつくことと個人の裁量権が大きいことが、ベンチャー企業勤務の大きなメリットなので、次の職場に何を求めるかの優先順位によっては十分選択肢になります。 -
どうしてもやりたい仕事に、経験値・スキルが足りないのに採用されることになった
成果主義の外資が経験不足とわかっていて採用する場合は、年収が下がるのは致し方ありません。将来への投資と思って、経験値・スキルを上げることに全力投球しましょう。
上記のいずれにも該当しないのに、現在の給与より低い給与パッケージを提示されたら、企業の品格を問うべきです。外資9社の人事に勤務したことがある人間としてアドバイスを求められれば、「その会社はやめたほうがいい」と答えます。どのくらい社員を大事にする会社なのかが現れているからです。
転職後、「しまった」になることが多いのは、給料よりも福利厚生制度です。ワーク・ライフ・バランスが非常に重要な場合は、社員の働きやすさに関わる制度が存在するだけでなく、使われているかどうかは必須の確認項目です。制度が存在していても使いにくいのでは、中途採用で転職したばかりの人にとって「使えない」制度を意味するからです。
企業の評判・給与水準などについて参考になるサイトを2つ紹介します。
企業の制度について参考になるサイト
1. OpenWork
社員の口コミサイトで、まず以下の項目がどう評価されているかを5点満点のスコアで見ることができます。
待遇面の満足度・社員の士気・風通しの良さ・社員の相互尊重・ 20代での成長、環境・人材の長期育成・法令遵守意識・人事評価の適正感。
それ以外にも月間残業時間の平均や有給消化率等などの具体歴な数字の他、「働きがい・成長」「ワーク・ライフ・バランス)「退職検討理由」など様々な項目に対し、詳しいコメントを読むことができます
年収・給与の項目もあり、職種別に、平均値等が掲載されているので、自分の人材としての適正価格、もしくは転職後の予想年収を知りたい場合はチェックしてください。
2.OpenMoney
転職先が知名度ある企業なら、このサイトに無料登録することでJob Gradeごとの年収平均値、年収の構成など、年収パッケージに関する情報が確認できます。
例えば年収800万円だとします。確約されている基本給と変動する業績ボーナスの比率など詳細が分かります。企業によって給与システムが異なり、転職先での手取りの月額給与を憶測するのは難しいので、このサイトの情報は有益です。比較的新しいサイトで、情報量が豊富とは言えないので転職先が知名度のある企業なら、チェックしてみてください。
人材としての自分の現在の適正価格を理解し、外資に転職したら年収はどうなるのかを予想するために、また内定での提示額からさらに交渉したいときの目安を探すために、前出2つつのサイトをフル活用してください。
まとめ
外資系は成果主義、人材には経験値・スキルに基づく現在の適正価格があることを理解して、初めての外資への転職を成功させてください。応援しています。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
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