外資系企業に対し、「結果が伴わなければすぐクビになる」「一方的にクビになる」といったイメージを抱いている人は少なくありません。日系企業から外資系企業への転職を考えていても、「家族や将来のことを思うと、リスクが高くてなかなか踏み切れない」という人もいるのではないでしょうか。
ここでは、「外資系企業はクビになりやすい」というイメージの真偽を検証し、外資系企業で働くメリットについて考えます。
外資系企業でも簡単にクビになることはない
「外資系企業はクビになりやすい」というイメージは、本当なのでしょうか。正直なところ、終身雇用・年功序列・企業内労働組合といった日本的経営を維持する日系企業の雇用は、外資系企業に比べてはるかに温情的です。特に目立った成果がなくても、真面目に勤めてさえいれば昇進するようなことは、外資系企業ではないでしょう。
外資系企業の多くは実力主義、成果主義です。終身雇用の考え方はなく、徹底した合理主義で、評価のポイントは「成果を出したかどうか」につきるといっていいでしょう。裏を返せば、「成果を出せない人は評価されない」ということですから、実績次第では雇用の継続に黄色信号が灯るのは確かです。また、外資系企業はジョブベースで人材を採用するため、日本支社の撤退や部門の廃止などによってポジションがなくなれば、異動でなく退職になる可能性があります。
日本の労働基準法を守る必要がある
成果主義とはいえ、外資系企業でも成果が出ないからすぐにクビということはありません。ましてや、「入社して間もないうちにわけもわからずクビ」などという理不尽なことが、まかり通ることもありません。
なぜなら、外資系企業であっても、日本国内に会社として存在している以上、日本の労働基準法が適用されるからです。
労働基準法の解雇の条件とは?
労働基準法では、従業員に非があるといった何らかの理由がある場合でも、その理由が客観的で社会的相当性がなければ、解雇することができません。さらに、企業がやむをえず従業員を解雇する場合、少なくとも解雇を予定する日の30日前に予告しなければならないと定めています。この条件は非常に厳しく、企業側から解雇を言い渡すのは難しいでしょう。
また、企業側に理由があるとして解雇する場合、余剰人員を整理するいわゆるリストラがありますが、この場合も次に挙げる4つの要件を満たさなくてはならず、決して簡単ではありません。
-
人員整理の必要性
経営が傾いていて存続が危ういため、人員を削減せざるをえない解雇の場合、企業は経営指標などにもとづいて、どれだけ経営が苦しく、何名削減する必要があるのか(何名削減することによって経営がどれくらい改善するのか)を示す必要があります。
-
解雇回避努力義務の履行
他の策を何も講じず、ただ解雇を言い渡すだけでは、企業は従業員に対する責任を果たしたとはいえません。役員報酬の削減、全体的な賃金のカットといったさまざまな手段を使って、解雇を回避する努力をしたかどうかが重要です。
-
被解雇者選定の合理性
経営が苦しいからリストラするという場合に、解雇者を公平に選定したかどうかです。私情が含まれているなど、客観的に見て明らかに公平性を欠いている場合は、合理性に欠けると判断されます。
-
手続きの妥当性
一方的に解雇を言い渡すのではなく、被解雇者に対する説明と協議を十分に行い、理解を得る努力をしたかどうかが問われます。
例外的にクビになることがある?
例外として、ハイリスクハイリターンの採用を行っている一部の企業では、「結果が出せないなら即退職」ということが起こりえます。解雇ではなく、企業と従業員双方の合意の上での退職になりますが、成果が出せなかったら退職するという前提での採用は、なかなか日系企業では見られません。
ただし、こうした企業では、採用の段階で企業と労働者のあいだに「結果がすべてである」という共通認識があり、成果を出しているあいだは、他の企業に比べて圧倒的に高い年収が支払われています。このような場合、たとえその会社で成果が出せなかったとしても十分な能力があり、少し希望年収を下げるなどすれば、転職が可能と思われます。そのため、クビになっても納得して受け入れることができるでしょう。
成果が出ない場合、パフォーマンス改善を求められることも
では、実力主義・成果主義の外資系企業で結果が出せない期間が続いた場合、どのような経過をたどるのでしょうか。
成績が振るわない期間がしばらく続くと、企業側からPIP(Performance Improvement Program)という業績改善プログラムが実施されます。PIPは、プログラムを通じてどうなりたいか具体的なゴールを定め、提示された課題に一定期間内で取り組み、個人の業務・成績改善、能力向上などを図るものです。期間中は定期的に上司と面談をして、状況を共有します。PIPの結果、業績が上がれば、問題なく通常業務へ復帰することになります。クビはもちろん、減給や降格などもありません。
ただし、PIPを行っても改善が見られない場合には、給与額やインセンティブは下がることもあります。場合によっては、異動を促されたり、退職勧奨を伝えられたりすることもあるようです。
そもそも外資系では、「次」を見据えて働くのが一般的
先に述べたように、外資系企業には終身雇用の概念がありません。ひとつの企業に骨を埋めるという考えがないので、働いている人は皆「次」を見据えて働いています。この場合の「次」は、会社内でのキャリアアップばかりではありません。どんなに能力があっても、ポジションに空きがなければ昇進することができないからです。
一般的にジョブローテーションや異動がない外資系企業の社内で昇進を目指すなら、上司が昇進または転職して、ポジションに空きが出るのを待つしかないことになります。そのため、外資系企業で働く人の多くは、転職によってキャリアアップしていきます。
また、より良い待遇を求めての転職も珍しくありません。日系企業への転職では、転職回数が多いだけで「また辞めるのではないか」「人間関係でトラブルを起こしやすいのではないか」などとマイナスに取られがちです。しかし、外資系企業で転職は日常的であり、「キャリアアップのため」という明確な理由があれば、回数はまったく問題視されません。むしろ、能力の高い優秀な人材が転職するのは外資系企業では当たり前のことであり、転職回数はその人の努力の証といえるでしょう。
こうした外資系企業独特の背景から、外資系で働く人は常に自分の市場価値を意識し、急に訪れるかもしれない転職のチャンスに備えてスキルを磨きます。万が一、結果を出せない時期が続いてPIPを行い、結果としてクビを言い渡されたとしても、準備を怠らずにいればスムーズに転職活動ができるでしょう。
雇用の不安定さを補う、外資系企業で働くメリットとは?
これまでご説明したとおり、外資系企業だからといって急にクビを宣告されることはほぼありません。しかし、日系企業に比べれば、雇用が不安定なのは確かでしょう。「定年まで一定の収入が得られればそれで良い」「仕事内容にはあまりこだわりがない」という方には、あまり向いていないかもしれません。
一方、「実力主義の世界で多少の不安定要素があるのは当然」と考えられる人であれば、外資系企業で働くことには多くのメリットがあります。
年収が高い
外資系企業といえば、年収が高いことで知られています。日系企業にはある福利厚生や退職金の制度があまりなく、その分が年収に反映されている点を考慮しても、成果に応じた公平な評価が報酬に反映されるのは大きなメリットでしょう。
シビアな環境で自分を磨き、報酬という目に見える形で、実力を評価してもらうことができます。
スペシャリストとして活躍できる
営業なら営業、経理なら経理というように、ひとつの職種を極めるのが基本的な外資系企業のスタイルです。定期的な人事異動や配置換えなどがないため、スペシャリスト志向の方には最適な環境といえるでしょう。
専門分野を深掘りすることで深めた知識と技術を武器に、企業を渡り歩くという働き方ができるのも外資系企業ならではです。なお、外資系企業でキャリアチェンジを希望する場合、社内のオープンポジション制度を利用し、空いたポストに応募することも可能です。
ワークスタイルの自由度が高い
外資系企業には、会社が求める、またはそれ以上の成果を出すことを前提に、社員にフレキシブルな働き方を許可しているところが多くあります。ツールを駆使して問題なく業務できるのであれば、週に数日は在宅勤務を組み合わせてOKという会社は珍しくありません。そもそも長時間労働をリスペクトする文化がないので、「今日は短時間にたくさんの仕事ができたから、早く帰ろう」という判断も個人に委ねられています。
年齢や社歴に関係なく評価される
外資系企業の評価基準は、成果です。入社年次や年齢などが影響することはほとんどないでしょう。生え抜きで社歴が長い人であっても、中途入社したばかりの若い社員であっても、出した実績を客観的かつ平等に判断し、報酬に反映します。努力に対する評価が目に見えるので、やりがいを持って働くことができます。
イメージに振り回されず、地に足のついた選択を
外資系企業は、成果にシビアで、結果が伴わなければ最悪の場合、退職勧奨されることもあります。「がんばっていれば会社が守ってくれて、定年まで働ける」という昔ながらの日系企業にありがちな考え方とは異なる、厳しい実力勝負の世界であることは確かでしょう。しかし、終身雇用制が崩壊しつつある今、日系企業なら定年まで安定して働けるという保証もありません。転職において大切なのは、「外資系だからこう」「日系企業はこう」というイメージで企業を見るのではなく、環境や仕事内容などを含めて総合的に判断することです。
外資系企業に対する自分の適性を知りたいときは、外資系企業に強い転職エージェントに相談するのがおすすめです。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系企業や日系グローバル企業の業界・業種に深い見識を有するコンサルタントが、企業の文化や社風まで考慮してベストマッチな企業をご紹介します。転職を考えるときは、ぜひご相談ください。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。