元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。今年は、8月の転職市場が思ったほどスローダウンしませんでしたね。通年であれば最終決定権を持つ本社からの駐在員が夏期休暇で帰国し、日本人社員も長めの夏休みを取るので8月はdead monthになりがちです。ですが今年は特に東京の人が旅行できないので、著しいスローダウンは起こらなかったようです。これから秋を迎え転職活動を本格化させたい人も多いことでしょう。
これまでの外資系人事での経験、個人の方々とのキャリア相談を通して、外資系で成功する人の共通点について考えることが多い昨今でした。そこで「外資系で成功する7つの要素」を本日のテーマにします。
専門性
外資系は成果主義です。会社に対してどのくらい貢献できるのかがはっきりしていてこそ、高い給与が支払われる仕組みです。様々な異分野の仕事が少しずつできるジェネラリストは、この企業文化においてはあまり価値がありません。複数の部署を移動した末にマネジメント能力が買われて、役員の席に座ると言う事は起こりえません。
ある分野のスペシャリストで、いざとなれば自分も腕まくりをして部下の先頭に立てるだけの知識・経験がある人がリーダーに任命されます。外資系市場においては、確固たる専門性があることが何より大切です。
唯一の例外は、30歳位までの若い人材です。ここだけはキャリアがまだ確立されていなくても、潜在能力が高いと判断してもらえれば転職が可能です。
アサーティブネス
相手の立場に関係なく、ほどよく自分の意見、YES/NOを伝えることができる力です。外資系には自己主張が強い人材が集まりますので、特に外国人の比率が高い職場の場合、大人しい人は意見がない人間だとレッテルを貼られがちであり評価されないリスクもあります。
どちらかと言うと内向的または控えめで、自分の主張を打ち出すことが難しい人は、例えば簡単な日常の中で、「私も同じでいい」ではなく「私は○○がいい」と言う練習をすることをお勧めします。いきなり英語の会議で、自分の主張を述べるのはかなりハードルが高いですが、ビジネスに関係ないことを日本語で話すことは気持ち次第で可能だからです。延長線上でいつか英語でも自分の意見を言えるようになっていきます。
想定外に対処する力
ホフステード6次元異文化モデルの文化の切り口に、「不確実性回避」があります。要は「石橋を叩きたい」文化であるかどうかを測る指標です。ご想像通り日本は、不確実性回避92 (0から100で数字が大きいほど度合いも高い)で、石橋を大いに叩きたい文化です。
この数字はアメリカが46、イギリスが35、中国が30です。「とりあえずやってみよう」の傾向が高い彼らと仕事をすると、急に方向が変わったり、実はグローバル展開の前に熟考されておらず事態が大きく変わったりすることが頻繁に起こり得ます。その度に大きなストレスを感じていると、目の前の船を急旋回させることができず、長期的に見て機能しないことになります。
前もって準備をしておきたいタイプ、現場でアドリブを効かせるのがあまり得意でない人は、そもそも外資系には向いていないです。
英語力
外資勤務というと、まず必要なのは英語力なのではと思った方もいるかもしれません。確かに、「たかが語学されど語学」の側面もあり、全くできなくても困りますが、英語はあくまでもコミュニケーションのツールでしかありません。
もちろん海外で働きたい場合は英語力に遜色があっては困りますが、外資系の日本法人に勤務したい場合、応募するポジションに求められる英語力をしっかり確認することが重要です。必要な英語力のレベルが役職の上下で決まった時代は終わり、今は実際にどのくらい海外とやり取りをするかが肝心です。「外資系」と聞いて不安になることがない反面、入社してみたら求められる英語力が高すぎて困ったという話はよくあります。面接の段階で確認していなかったことが原因です。
プレゼンテーション力
日本企業でのプレゼンテーションの目的は、情報の共有かもしれません。しかし外資系企業でのプレゼンは、かなりの程度パフォーマンスといえます。ある人材の能力と実績をPRする場なので、非言語の伝達力(ジェスチャー、立ち姿など)も含め絶対に失敗しては困ります。
確かに年に数回しか実際には顔を見ない人が、英語プレゼンを見ただけで仕事ができるかどうかを判断するのはおかしいと、最初の頃は違和感を覚えるでしょう。私もそうでした。でも、それが欧米の企業文化なのです。
職場で英語でのプレゼンが必要になってきたら覚悟して、このスキルを磨くことが大切です。英語プレゼンはビジネススキルで、向上させることが可能なので基本を学び練習することで見違えるほど上手になれます。
チームプレーヤーのふりができる力
前出のホフステード異文化モデルには、集団主義 vs 個人主義の指標もあります。こちらもご想像通り日本に比べると、欧米の会社は個人主義です。その割には、会社のミッションステートメント(社訓)に、”チームワーク”とか”グローバルチーム”と言う単語が並ぶことが多く矛盾しているように感じることもあります。
もしかしたら、文化的に苦手だとわかっているから、わざと意識して書いているのかもしれません。会社員として組織で業績をあげるためには、外資・日系に関係なく、多くの人の力をうまく借りて仕事ができる力は重要です。実は人事のキャリアが長かった私は、生まれながらにチームプレイヤーではありません。職場では隠していました(笑)。外資系で求められるレベルのチームプレー力を持っているように振る舞っていたというのが真実です。
直属の上司との距離感を保てる
日本企業は、まだ年功序列的な要素が大きいので、誰かが抜きん出て出世するのが難しい仕組みです。しかし外資系では、業績が認められれば年齢・性別・人種に関係なく早く出世することが可能です。このときの評価を誰がするかと言うと、直属の上司です。彼/彼との関係を最低限普通に保っておく事は外資系においては非常に大切です。
キャリア相談で、出世の芽を上司に摘まれているという話を深く聞くと、上司との人間関係が最悪になっていることが多いです。ゴマをする必要はありませんが、外資系では生殺権を上司が持っていることを忘れずに、せめて「普通」と言える人間関係を保ってください。
今日は、外資系で必要な成功の7か条についてお伝えしました。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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