日系企業、外資系企業それぞれに良いところ、そうでないところがあるわけですが、外資系勤務の明らかな魅力の一つは、年齢・性別が関係ないことです。今回は、25年間の外資人事生活の中で目撃した、最も出世が早かったエンジニアの話を共有します。
最も出世が早かったエンジニア
シリコンバレーに本社があるIT企業の人事部長をしていた時、技術本部の某セクションでシニア・マネジャーが転職のため辞めました。セクションには20名のエンジニアがいました。
「後任をどうするか?」。現在少し力が足りなくても、背伸びすれば務まるようであれば、社内の人間を昇進させたいのが企業の本音です。理由は2つあり、マネジメントが辞めるたびに外部から採用していると、社内からは出世できないと思われて、既存社員のモチベーションが下がります。もう一つの理由は採用コストです。
当時このセクションには、そのままシニア・マネジャーに昇格できる人はいないように見えていました。しかし技術本部長から、「田中さん(仮称)にやらせてみてはどうだろう。前回、アメリカ本社からビジターが来た時のプレゼン大会、堂々としていてなかなか立派な出来栄えだった。彼は化けるかもしれない」と提案を受けました。
私は田中さんのことをよくは知らず、本音を言えば気難しい少しオタク的なエンジニアなのかなと思っていました。ですが、外資系において人事権はライン(部署)にありますので、私は技術本部長の判断を支持しました。
シニア・エンジニアからマネジャーに昇格した彼は、メキメキとリーダーシップを発揮するようになりました。器が人を育てると言う言葉もありますが、実はもともと「将」の器だったようです。
この頃、彼のセクションでは、メンタルヘルスを壊した社員や他部署との人間関係をこじらせて、おおごとに発展している社員など問題が多発していました。人事権はライン(部署)にあると言いながら、通常は「採用」についてはラインが最終決定をし、トラブルは人事に押しつけるマネジメント・メンバーが圧倒的に多いのですが、彼はまるで違いました。自分の配下で起きていることなのだからと、前出の試用期間を終えたばかりでうつ病だと出社しなくなった社員に会うために、池袋のルノアールに出向くことまで一緒にやってくれたのです。
彼が幾つかのトラブルにどう対処するかを見ていて、全体を俯瞰して小さなことでオタオタしないこと、正しい判断力、社員を切り捨てない姿勢など、明らかにリーダーの器であることを強く感じるようになりました。
「私は、なぜこの人をオタク的なエンジニアだと思ったのだろう。」と本人にさりげに聞いてみたところ、「出世して人の上に立つのは面倒くさそうだったので、なるべく目立たないようにしていた」との返答が返ってきて、外資にも出世したくない人はいるのだと知りました。
技術本部長と別件で話をしていた時に田中さんの話になり、田中さんを非常に高く評価していることがわかりました。個性が強いエンジニア集団を見事にまとめ、本社との間に自分がうまく入って調整し、成果を上げているとのこと。「1年でシニア・マネジャーに昇格させるのは早いかな?」と聞かれたので、「ここは外資なので、ある人材に昇格に値するスキル・経験値・マネジメント能力があるのなら、特に待つ理由はないのではないでしょうか?」と答え、彼は翌年、シニア・マネジャーになりました。
その後、ある難しいお客さんからのオーダーをめぐり営業ともめた時も、プロジェクトを見事にリードして会社に多大な貢献をし、2年でディレクターになり85名の部下もちに出世しました。
田中さんの場合、シニア・エンジニア→マネジャー→シニア・マネジャー→ディレクターと3年間で高速出世を成し遂げ、給与は倍になっています。すべての人材に当てはまるわけではありませんが、このように実力とリーダーシップがある人材が年齢など関係なく昇進できるのが外資で働く大きな魅力の一つです。マネジメントに興味があり、早く昇進して自分が見える風景を変えたい人は、外資系で切磋琢磨することをお勧めします。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。