元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。外資系に転職したいけれど、英語力が足りないかもしれないと悩んでおられる方のために、英語力強化のヒントを2回に渡ってお届けします。
今でこそ私は、英検1級・TOEIC 960点保持者だとプロフィールに書けますが、留学も海外駐在も経験していないので、英語が全くできなくて困った時代はもちろんあります。英会話力ゼロからTOEIC960点までの道のりを気楽に読めるコラムにします。
はじまりの夏
すべての始まりは大学3年生の夏でした。私の父は商社マンで、ドイツのデュッセルドルフに単身赴任していました。私は「成人式の振袖はどうせ1回か2回しか着ないから要らないので、夏休みにドイツに行きたい」と親と交渉しました。交渉は成立し、私は大学3年生の夏1カ月を、ドイツで過ごすことになりました。
驚いたことに、当時40歳以下位のドイツ人はほとんど全員英語が話せました。私は自分の周りに帰国子女がいるような環境にはいなかったので、日本とのあまりの差に驚いてしまいました。
一番ショックだったのはあるガーデンパーティーでの出来事でした。参加者は日本人の夫婦、デュッセルドルフ支社で働いているドイツ人の夫婦、そしてハンガリーから亡命してきたという4人組を合わせて50人くらいでした。日本人もドイツ人もハンガリー人も、母国語の影響を受けてアクセントはありますが、配偶者を含めて全員英語が話せたのです。
「ザ・カルチャーショック」でした。中学・高校・大学の2年間、トータル8年間も英語を勉強してきたはずの私は、なぜ英語が話せないのでしょうか? “My name is Mikako Suzuki”と”How do you do?”しか話せなかったのです。しかも学校で習った”How do you do?”を使ってる人がいないではないですか。
私はかなり外交的で愛想が良いので、きっとそんな場でもニコニコしていたのでしょう。周りの人から話しかけられて、どうしたら良いのかわからなくなりました。自分の名前と今晩はと挨拶しかできなくて、会話を続けるのはとても無理です。この場からいなくなりたいと悲しくなりました。
一方で、こうも思いました。「英語が話せたら、いろんな国の人と話ができて楽しそう。英語が話せなくて残念!」未来の異文化大好き人間の片鱗が、顔を覗かせていたのかもしれません。
英語の勉強法
私は21歳の夏に決めました。「英語を話せるようになる」。さて、意気込んだのは良いのですが、具体的にはどうすれば良いのかがわかりません。帰国後、英語の習得に詳しい方に相談しました。私の場合、一応大学受験で英語をとっていて文法は忘れていても思い出すだろう、自分の中にある英語を外に出す練習さえすれば英会話力は上がっていくはずとのことでした。また同時に、自分の中にもっと英語を貯める努力をした方が良いと、アドバイスをいただきました。
まず「話す」については、英会話学校でグループレッスンを取り始めました。当時はそのぐらいしか選択肢がなかったのです。
グループレッスンのデメリットは、生徒が何人もいるので自分が話せる時間が少ないことです。今なら、オンライン英会話を受けると思います。先生がネイティブであるかどうかは、20歳過ぎてしまった人にとっては関係ありません。
外資系で25年間、たくさんの社員を見てきて、20歳を過ぎたら英語圏に留学したとしても、ネイティブの発音にはならないとわかっています。20歳過ぎた方はネイティブの発音を目指さずに、アクセントがあってもとにかく英語を話せるようにすることが肝心。先生がネイティブかどうかに拘るのは意味がないです。
私なら、例えばセブ島の英会話学校で、安価にその代わり頻度を上げて1:1のレッスンを取ると思います。
会話力を上げるにあたって、旅行英語ではなくビジネス英語を話せるようになりたいのであれば、「英文法」の基本が身についていることは必須です。砂の上に城は立たないので、文法が分からないまま会話の練習を続けることは時間とお金の無駄です。
英文法に自信がない方は、それこそ中学校の英語の教科書で良いので、最低限の英文法を復習することをお勧めします。それが近道だからです。
「聞く」ことに関しては当時FEN(Far East Network)というラジオがあり、聞くことにしました。正直、早口すぎて何を言っているのか全く聞き取れませんでしたが、しばらく続ければなんとかなるのかなと楽観的に構えました。
楽しければ上達するかなと洋画を字幕なしで観ようとしましたが、映画の英語ほど難しいものはないと分かったのでこちらは時期尚早と諦めました。
FENを聴くことは半年ほど続けましたが、あまり効果があるように思えませんでした。多分、レベルが高すぎたのでしょう。もう少しゆっくり発音してくれる教材を使った方が効率的と感じ、今でいうヒアリングマラソンのような教材を買いました。
今なら、YouTubeもpodcastもあるので、自分のレベルより少し上くらいの内容を頻繁に観たり聴いたりすることをお勧めします。
語学学習の速さを決める5つの要素
私は、語学の習得の早さを決める要素は5つあると思っています。
1. 英語が好きかどうか? - 好きこそ物の上手なれ、英語学習を継続する最大のモチベーションです。
2. 継続力があるか? - 英語を学ぶには積み上げることが必要です。
3. 記憶力は良いか? - 単語や熟語やフレーズを覚える必要があるので、1年でも若い方が有利です。
4. 音感は良いか? - 音痴だと発音が拾えない可能性は高いです….
5. 感性は鋭いか? - 自分が使った単語が少し強すぎたかもしれないことを、相手の表情・仕草から読み取れるかです。鈍感な人はこのアンテナが低いので、上達が遅れます。
いくつ「YES」と答えられたでしょうか?
実は、私は「継続力」が致命的に無い人間です。人生で最後までやりきれたのは英語しかない、お恥ずかしい人間なのですが、なぜ英語だけは続いたのかと聞かれれば、「好きだから」です。
実際のところは、「語学学習が好きなのか」それとも「異文化が大好きだからそのための手段である語学学習をいとわなかったのか」どちらなのかはわかりません。「好き」な気持ちのパワーは、どれほど継続力がなくても乗り越えられるのですから凄いものです。
その後
文系の大学生で暇だったので、帰国した大学3年生の9月から1日6時間英語の勉強をして、卒業するまでに英検1級を取ることができました。
これでめでたし、めでたしなら良いのですが、人生そう甘くはありません。
日本GEに入社して、社内の2割がアメリカ人駐在員という職場で、毎日英語を使っていたのに、初めてのNY出張でギャフンという目に会いホテルで泣いたお話はまた次回。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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