元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは「中途採用のクオリティーを高める」です。
前回、常時雇用者が301名を超える企業は、2021年4月1日付けで、中途採用者の比率を公開する義務が生じると解説しました。(前回の記事はこちらから) 少子高齢化の日本が労働力を確保し組織を活性化するために、今後は外資・日系関係なく中途採用をせざるを得ない時代になります。
これまで、多くの日本企業で新卒採用がメジャーな採用手段だった一番の理由は、企業文化を浸透させたかったからです。社会人経験がなく、他に比較対象がない人たちに、「会社とはこういうものです」と自社の文化を植え付け一生涯、忠誠心を持って働いてもらうことが前提でした。 時は流れ、大手の日本企業さえ終身雇用を守れない時代が到来しました。 絶対的な労働力の減少は残念ながら起きるので、好むと好まざるにかかわらず、女性や外国人を雇わざるを得ない時代が来るのです。
GEのカリスマ経営者だったジャック・ウェルチ氏は、”Change before you have to.” (強制的に変化させられる前に、自ら変化しろ)との名言を残しています。中途採用の重要性を再認識し、未来に備えて企業のシステムを整えるだけでなく、採用面接官としての腕を磨く必要性を理解したいです。
独立してから他社の採用活動をお手伝いする機会に恵まれ、さまざまなケースを見てきました。その経験から、自社での採用活動がうまくいかない場合の原因は2つあると思っています。
職務記述書(Job Description)が存在しない、もしくは不明瞭
どのような人物を求めているのか、ハードスキルである経験値や専門性と、ソフトスキルであるコミュニケーション能力など、求人ポジションに必要な要件が絞れていないことが多々あります。探している人物像が明確でないと、面接に現れた候補者の属人性に左右されて採用するリスクがあり、採用ミスにつながります。中途採用の時は特に、オープンポジションに求められる要件は何かを書き出し優先順位をつけることが重要です。
>面接スキルが足りない
面接にも場数が必要です。最初の頃はどの候補者が良いのかハッキリ見極めることすら難しいかもしれません。高い経験値を持つ面接官が社内に存在しない場合は、2人1組になって面接しお互いのフィードバックを交換して、判断ミスが無いようにするなどの工夫が大切です。
面接にあまり慣れていない人でも、見誤ることが少ない面接技法にBehavior Interview(行動様式型)があります。人間は習慣の動物なので、今までの行動パターンを繰り返す可能性が高いという考え方に基づいています。非常にわかりやすい例をあげると、最初の職場の在籍年数が3年、2社目も3年、3社目が2年半の場合、面接で候補者が「次の職場では長く働きたいと思っています」と言ったとしても、「たぶん3年くらいで辞めるだろう」と判断できるというセオリーです。
実際の面接で使う技法として、便利なのがSTARです。
S(Situation):過去の状況について
T(Task):その時の課題は何か
A(Action):どういう行動を取ったか
R(Result):その結果は
このフレームワークに沿って面接をしていくと、ハッタリが得意な候補者を見抜くことができます。私が実際に経験した例では、外資の物流会社でサプライチェーンのNo.3のポジションが空いていました。ある候補者の最終面接で、「これまでで一番大きな功績について教えてください。どのようなプロジェクトで、どんな難しい課題がありましたか?」 と質問しました。「部署をまたがるシステムをつくったことが大きな実績で、すんなり行かず大変でした」と答えが返ってきたので、「どのようなプロジェクトで」「何人が関わり」「納期までどのぐらいの時間があって」「どんな課題が具体的にありましたか」「その課題をどのように解決しましたか」などと聞いていきました。
この候補者の実例では、回答が漠然としていて私ははぐらかされているような感覚を持ったのです。それでも詳細を得ようと具体的な答えを求めて質問を続け、最終的に候補者の大風呂敷がわかってしまいました。確かに部署をまたいではいるけれど、「システム」とは大きなExcelシートであり、大変だったのは他部署からヒヤリングをする時間を十分に割いてもらえなかったからだとわかりました。
一番大きな実績の割には中身があまり無い事と、基本的に自分の100の力を160位に見せる人だとわかり、採用を見送りました。表面だけを見て、「部署をまたぐシステムを構築した」と言われれば、大きな功績のように聞こえますが、STARに基づいて事実を引き出していくと実態がわかるわけです。
まだ面接経験の少ない方でも、STARのフレームワークに沿って質問する練習を重ねると、優秀な面接官になれます。 人事の仕事はさまざまですが、採用ミスの少ない面接官としての腕は大事なスキルです。 履歴書を眺めて、どこを深堀りすべきかを事前によく考え、想定質問をSTARに基づいて考え、次の面接から試してみてください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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