近年、注目度が高まっている「BATIC」という資格をご存じでしょうか。BATICは会計に関する資格ですが、ハイスコアを取得すれば、会計だけではなく英語のスキルもアピールでき、グローバル企業でも活躍できるかもしれません。
そこで今回は、BATICの概要や、ハイスコアを取得することで転職に有利になる企業・職種について解説します。BATIC取得までの流れも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
BATICとは?
BATIC(Bookkeeping and Accounting Test for International Communication:国際会計検定)は、東京商工会議所が主催する民間資格です。「国際会計基準」による会計スキルのレベルを測り、国際社会で活躍できる会計人材を育てる目的があります。
BATICの受験には学歴や年齢、性別、国籍などの制限はなく、試験当日に日本国内に居住している人であれば誰でも受験可能です。
ただし、試験はすべて英語で出題され、英語で解答する必要があるため、相応の英語力が要求されます。
BATICの試験内容
BATICの試験科目は「会計と簿記の基本概念」「取引と仕訳」「財務諸表分析」「内部統制」など、経理・会計に関する基礎知識や応用力を問う内容です。
なお、BATICは、2021年4月に試験内容や認定基準がリニューアルされました。以前は基礎科目となる「Subject1(英文簿記)」と専門性の高い「Subject2(国際会計理論)」に分かれていましたが、現在の試験では、英文簿記に関する内容のみ出題されます。
BATICのレベル
BATICは、TOEICのようなスコア制を採用しており、試験で合否を決めるものではありません。400点満点で、取得したスコアによって称号が付与されます。
現在、BATICで付与される称号は、下記の3つです。
<BATICの認定基準>
・初級レベル(50%):Entry
・中級レベル(80%):Middle
・上級レベル(90%):Advanced
リニューアル前は、「Subject1」と「Subject2」の合計1,000点のうち、取得スコアに応じて「ブックキーパーレベル」「アカウンタントレベル」といった称号が認定されていましたが、こちらも2021年4月のリニューアルによって廃止されています。
ただし、リニューアル前の検定で700点以上取得している「アカウンティングマネジャーレベル」(700~879点)と「コントローラーレベル」(880~1,000点)は認定期間が3年のため、2021年4月以降であっても、認定期間中は有効とみなされます。
BATICが注目を浴びている理由
なぜ、BATICという資格が注目されているのでしょうか。その理由のひとつに、世界的にIFRS(International Financial Reporting Standards:国際会計基準)の導入が進んでいるという背景があります。BATICの有用性と併せて解説します。
IFRS(国際会計基準)を導入する国内企業が増えている
BATICの人気が高まっている理由として、「日本国内でも、IFRSを導入する企業が増えていること」が挙げられます。
IFRSは、「世界共通の会計基準」を目指して、ロンドンを拠点とする民間団体である国際会計基準審議会が作成した会計基準です。2005年には、EUの上場企業に適用が義務化されました。現在では世界の110を超える国と地域で採用されています。
IFRSを導入すれば、海外に子会社を持つ日本国内の企業でも、経理業務がシンプルになるというメリットがあるのです。
近年では、日本国内の企業も海外進出を目指してIFRSを導入するケースも増えてきています。BATICを取得すればIFRSについても理解できるため、今後もニーズは高まっていくでしょう。
USCPAとの親和性が高い
BATICが注目される背景には、「USCPA(U.S. Certified Public Accountant:米国公認会計士)との親和性が高い」という理由もあります。
IFRSの理解にもつながる資格としてはUSCPAのほうが有名ですが、資格取得にかかる費用が高額だったり、難度が高く独学での取得が難しかったりといったハードルの高さがネックです。
BATICは、独学でもハイスコアを狙える資格です。また、IFRSにもとづいて出題されるため、USCPA受験の足掛かりとすることもできます。
日本国内でもUSCPAの注目が高いため、USCPAの受験者数増加に伴い、BATICの知名度も向上していくのではないでしょうか。
英語と会計の両スキルの証明になる
BATICでハイスコアを取得していれば、会計と英語のスキルを兼ね備えていることをアピールできます。
会計と英語のスキルをアピールするには、「日商簿記検定」と「TOEIC」でハイスコアを取得することでも可能です。しかし、これだけでは、会計の専門用語を英語で理解できるという証明にはなりません。
その点、BATICは会計や簿記に関する試験問題がすべて英語で出題され、記述問題の解答も英語で書く必要があります。そのため、BATICでハイスコアを取得すれば、高い英文簿記スキルを持っていることの証明になるのです。
BATICが転職に有利になる企業や職種とは?
BATICでハイスコアを取得することで転職に有利に働くのは、具体的にどのような企業や職種でしょうか。その理由も併せてご紹介します。
外資系企業
日本に子会社を置く外資系企業の多くは、IFRSを導入しています。これには、本国にある本社との経理業務を簡略化するという目的もあります。そのため、IFRSに関する知識があるBATIC取得者は、転職で有利になるでしょう。
また、外資系企業では、同僚や上司が外国人であるケースもあるため、会計業務に関わる英語が理解できるBATICのハイスコア取得者が活躍できるはずです。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームでも、BATICの資格が役立つ場合があります。
コンサルティングファームのクライアントの中には、海外進出を目指す企業も少なくありません。このようなクライアントに対してはIFRSで支援を行う必要があり、BATICハイスコア取得者が活躍できるといえるでしょう。
また、グローバル企業の経理部門に対してコンサルティング業務を行う際にも、BATICの資格が役立ちます。
FP&A
FP&A(Financial Planning & Analysis:財務計画・分析)とは、財務的な視点から企業の分析・管理を行い、戦略を立てる職種、または業務のことです。FP&Aはまだ日本では認知度が低く、外資系企業などで採用されるケースがほとんどです。そのため、業務を行う上では、ビジネス英語のスキルを持っているとよりいいでしょう。
また、FP&Aのポジションがある企業では、IFRSを導入していたり、導入する企業と取引したりするケースも少なくありません。そのためFP&Aは、ビジネス英語やIFRSの知識を持つ、BATICのハイスコア取得者が活躍できる職種のひとつといえます。
BATICの受験方式と事前準備について
BATICは現在、受験方法が2つあり、試験日前や試験当日に準備するものが受験方法によって異なります。それぞれの受験方式と準備するものについて解説します。
受験方法はIBT方式とCBT方式
BATICの受験方法は、受験者のコンピューターでオンライン受験する、「IBT(Internet Based Test)方式」を採用しています。
ですが、オンライン受験の環境を整えることが難しい人のため、テストセンターで受験する「CBT(Computer Based Testing)方式」も用意されているのです。
現在、CBT方式は2023年度までの実施とされていますが、2022年度以降については見直しされる場合があります。
また、IBT方式は多肢選択式と記述式の2構成で出題されますが、CBT方式を選択した場合は、多肢選択式のみです。
BATIC試験前日までに準備が必要な物
IBT方式を選択した場合は、試験前日までに受験環境を整えておく必要があります。必要な機器は下記のとおりです。
なお、CBT方式を選択した場合は、事前に準備が必要な物はありません。
<BATIC試験に必要な機器>
・インターネットに接続されたPC
・ヘッドセットの一部ではないコンピューターの内部カメラまたはWebカメラ(タブレットやスマートフォンをカメラにすることは不可)
・ヘッドセットの一部ではないコンピューターの内部マイクまたは外部のマイク(ヘッドセットやイヤホンは使用不可)
・コンピューターの内部または外部のスピーカー
・キーボード
BATIC試験当日に必要な持ち物
BATIC試験当日には、氏名、生年月日、顔写真がそろって確認できる身分証明書をはじめ、いくつか準備しておかなければならない物があります。
BATIC試験当日に必要な持ち物は、下記のとおりです。
<BATIC試験当日に必要な持ち物>
・身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどの原本)
・電卓(関数電卓・プログラム機能は除く)またはそろばん
・計算用紙(両面白紙・A4サイズ以内・1枚限り)
・計算用紙記入用筆記用具(1本限り)
CBT方式を選択した場合、試験会場にメモ用紙が準備されています。
BATIC試験の流れ
続いては、BATIC受験の申し込みから成績照会をするまでの流れについて見ていきましょう。
1. 申し込み
BATIC試験の申込方法は、IBT方式、CBT方式ともに、インターネット受付のみとなっています。受験の申し込みは、試験期間のおよそ14日前から開始されます。申込期限は希望受験日の7日前までです。
BATICを申し込むには、東京商工会議所の「東商検定IBT受験個人申込」ページでユーザーアカウントを登録します。そして、希望する試験日と試験時間を設定し、受験料の支払情報を入力しましょう。BATICの受験料は、5,500円(税込)です。
支払情報を入力する際には、クレジットカード決済かコンビニ決済が選択できます。
コンビニ決済を選択した場合、受験料の支払いに必要な情報を参照するためのURLがメールで送られてきますので、コンビニで受験料を支払いましょう。
コンビニ決済の場合は支払期限があり、期限を過ぎると自動的に受験申込がキャンセルとなります。また、コンビニ決済の支払期限は、希望受験日の10日前までになりますのでご注意ください。
なお、BATICの試験は、受験票が発送されません。支払いが確定したら、試験の予約完了時の確認メールが届きます。このメールに試験の日程や時間、試験に関する注意事項が明記されていますので、確認してください。
CBT方式を選択した場合は、試験会場の案内もこのメールに記載されています。
2. 受験する
試験時間は、IBT方式、CBT方式ともに70分です。
IBT方式を選択した場合は、試験開始の20分前にオンラインで本人確認や試験の説明などがあります。CBT方式を選択した場合は、5分前までに会場に入場します。
IBT方式を選択した場合の試験日当日の試験開始までの流れは、下記のとおりです。
<IBT方式の試験日当日の流れ>
1. マイページにログインして、受験するBATICの受験画面を開く
2. 受験開始時刻の20分前に「試験開始」ボタンをクリックする
3. ビデオ通話が開始され、試験委員が本人確認をする
4. コンピューターの動作確認、カメラの設定など、受験環境をチェックする
5. 試験開始
試験の終了時刻になると、試験終了画面が表示されます。
3. 成績照会
試験が終了すると、マイページの試験結果画面が表示されます。マイページから成績レポートの表示やダウンロードが可能です。
CBT方式を選択した場合、試験終了後にスコアレポートが配布され、試験終了から約3時間後を目安に、マイページから成績レポートがダウンロードできます。
BATICを取得すれば転職が有利になる
BATICでハイスコアを取得すれば、会計業務を英語で行える人材としてアピールすることが可能です。そのため、海外に本社を置く外資系企業などへの転職を希望する人は、取得を検討してみるといいでしょう。
また、BATICは東京商工会議所が主催していることもあり、日商簿記検定とも親和性が高い検定です。すでに日商簿記検定を取得している人は、プラスアルファのスキルとして英語力を磨き、BATICに挑戦するのもおすすめです。
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