USCPA(米国公認会計士)の資格に興味を持っている人は多いでしょう。しかし、「USCPAになると、どんなメリットがあるの?」「USCPAと日本の公認会計士の違いがわからない」といった疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、USCPAの概要や取得するメリットについてご紹介します。USCPAが有利に働く転職先や日本国内でUSCPAを取得する方法についてもご紹介しますので、キャリアアップ・スキルアップを狙いたい人はぜひ参考にしてみてください。
USCPAとは?
USCPAは、「United States Certified Public Accountant」の略で、アメリカの各州が認定する公認会計士の資格のことです。アメリカの資格ではありますが、日本を含む世界中のさまざまな国で受験できることから、認知度が高いビジネス資格といえます。試験科目は、下記の4種類となります。
<USCPAの試験科目>
・Financial Accounting & Reporting(財務会計)
・Regulation(諸法規)
・Auditing & Attestation(監査および証明業務)
・Business Environment & Concepts(ビジネス環境および諸概念)
また、USCPAの資格を取得するには、試験に合格するだけではなく、実務経験を通してライセンスを取得しなければなりません。アメリカの資格であるため、取得するには高い英語力も要求されます。
日本の公認会計士との違い
USCPAと日本の公認会計士には、いくつかの違いがあります。
まず、日本の国家資格である公認会計士は、受験資格に制限が設けられていません。一方、USCPAは4年制大学の学位やビジネス単位・会計単位の取得といった受験資格要件があります。
試験の難度については、日本の公認会計士よりUSCPAのほうが合格率は高いです。公認会計士の合格率は10%前後、勉強時間は約3,000時間が目安といわれていますが、USCPAは合格率30%前後、勉強時間は約1,500時間が目安です。
日本の公認会計士の資格を取れば、日本国内で公認会計士としての監査や会計の業務を行ったり、独立開業したりすることが可能です。しかし、USCPAはあくまでアメリカの公認会計士資格であるため、日本では会計士として会計業務を行うことができません。
米国公認会計士協会は他国とMRAという相互承認協定を結んでいる
USCPAは、アメリカ国内でしか使えない資格と誤解されることがあります。しかし、USCPAには、MRA(国際相互承認協定)という仕組みがあり、アメリカ以外にもオーストラリアやカナダ、香港などで会計士として働けるのです。
USCPA取得者は、MRA導入国の適性検査と単位要件をクリアするだけで、各国の会計業務に従事できるという強みがあります。そのため、USCPAは、国内でしか通用しない日本の公認会計士資格に比べて、国際的な認知度が高いのです。
なお、米国公認会計士協会は、日本の公認会計士協会とMRAを締結していません。そのため、USCPAを取得しても、日本国内で会計士として働くことはできないのです。
USCPAを取得するメリット
日本国内で会計士として働けないとしても、USCPAを取得するメリットは少なくありません。USCPAを取得するメリットを、ひとつずつ見ていきましょう。
キャリアアップできる
USCPAの取得は、キャリアアップにつながります。これは、アメリカの会計基準に対する理解が深まるためです。
日本と海外では、採用している会計基準が異なります。そのため、日本の国家資格を取得するだけでは、本国の会計基準に則って業務を行う外資系企業などでは、評価されにくい傾向があるのです。
しかし、USCPAを取得して、アメリカの会計基準に理解があることを証明でき、本社がアメリカにある外資系企業などでも、経理として活躍できるでしょう。
英語力の証明となる
USCPAの試験問題はすべて英語で出題されるため、USCPAの取得が英語力の証明にもなります。USCPAの試験に合格するには、英語のリーディングスキルとライティングスキルが必須です。その中には、「クライアントとの相談において、会計士としての専門的な回答をする」といった高度な設問もあります。
そのため、USCPA取得者は、会計士としてのスキルだけではなく、実用レベルのビジネス英語スキルも持ち合わせていると証明することができるでしょう。外資系企業やグローバル企業への転職を有利に進めたい方にも、USCPAは有効です。
アメリカ以外の国でも会計士として働ける
先述のとおり、USCPAを取得すればアメリカに加え、MRAを結ぶ各国でも会計士として働けるというメリットがあります。
全米各州の会計委員会が加盟している「NASBA(全米州政府会計委員会)」によれば、2021年現在、米国公認会計士協会では、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、香港、アイルランド、メキシコ、スコットランドの公認会計士協会とMRAを締結しています。
こうした国々で会計士として働くためには適性検査と単位要件をクリアしなければなりませんが、各国の公認会計士試験を受け直す必要はありません。USCPAは働き方や転職の選択肢が大きく広がる資格といえるでしょう。海外への移住を検討している人にもおすすめの資格です。
USCPAを取得していると有利な転職先
先述のとおり、USCPAを取得しても日本国内では会計士として仕事をすることができませんが、USCPAを取得するために学んだ知識が、転職に有利に働く業界があります。どのような業界で、どのようにスキルを活かせるのか、解説します。
監査法人
近年では特に、中堅監査法人がUSCPA取得者の採用に積極的です。その中には、日本の公認会計士の資格を持たず、USCPAの資格だけを持って監査法人で働いている人も少なくありません。
USCPA資格が特に活きるのは、企業の財務諸表が適正であるかどうかをチェックする「会計監査」です。近年では、日本に進出するアメリカ系企業も増えており、アメリカの会計基準に従って作成された財務諸表を監査する機会も多いため、USCPA取得者の需要が高まっています。
また、監査法人では、企業の経営リスクを減らすためのアドバイザリー業務も行っています。昨今では、多くの企業がグローバル化に伴い、苛烈な競争の中に身を置いているため、USCPA取得者の観点からのアドバイスが必要になるケースもあるでしょう。
会計事務所・税理士事務所
会計事務所や税理士事務所でも、USCPAの資格を活かせます。これは、国際税務や国際事業の部門などで、一定のニーズがあるためです。
日系・外資系問わず、企業のグローバル化が進む中で、会計や税務と国際性を掛け合わせて活躍する事務所も増えてきています。USCPAの取得によって得られる知識は、このような事務所で働く上でも役立ちます。
事業会社
USCPAを取得すれば、グローバルに活躍する事業会社への転職も有利になるでしょう。このような事業会社の経理部門では、国際的な会計基準にもとづいて業務を進める必要があるためです。
また、USCPA取得者は、会計業務を英語でこなせる人材としても重宝されるでしょう。
コンサルティングファーム
USCPAの資格は、コンサルティングファームへの転職でも有利に働きます。例えば、財務会計に特化したコンサルティング会社や、コンサルティング会社内の財務会計を専門とした部署などで、USCPAを取得した人材が求められます。
また、近年増加している国境を越えたM&A(企業合併・買収)のトランザクションサービスでは、USCPA取得者の存在が欠かせません。ほかにも、外資系企業が関係する事業再生業務などでもUSCPAの資格が活きるでしょう。
外資系企業
外資系企業は、国際会計基準(IFRS)を採用しているケースが少なくありません。また、外国人の同僚や上司、提携企業などとやりとりする場面が多く、英語での会計業務が必須となります。
そのため、国際的な会計基準を理解し、会計分野のビジネス英語スキルを持つUSCPA取得者は、外資系企業にも転職しやすいといえます。
USCPAを日本で取得する際の注意点
USCPAは、アメリカで認定される資格ではありますが、日本でも取得することが可能です。ただし、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
USCPAの受験資格は州ごとに異なる
アメリカでは、州によって法律が異なるため、受験の際は出願州を選択しなくてはなりません。また、受験資格要件も州によって異なります。受験資格要件については、いずれの州でも4年制大学の学位は必要ですが、単位取得数の条件が州によってまちまちです。
試験自体は全米共通なので、出願州によって試験の難度が変わるわけではありません。自身の条件に合った州に出願するといいでしょう。主な受験資格要件は、下記のとおりです。
<USCPAの主な受験資格要件>
・4年生大学の学位
USCPAを受験するには、すべての州で4年制大学の学位が必要になります。
日本の大学で取得した学位の場合、各州が指定する学歴評価機関で評価を受ける必要があります。学歴評価は時間がかかるため、早めに申し込むことが大切です。
・単位要件
大学で「会計単位」「ビジネス単位」を一定数以上取得することが、USCPAの受験資格要件となっています。取得単位数の条件は、グアムでは「会計24単位・ビジネス24単位」、ニューヨーク州では「会計33単位・ビジネス36単位」など、州によって異なります。
試験合格後、ライセンスを取得する必要がある
USCPAは、試験に合格しただけで取得できる資格ではありません。USCPA取得者になるには、試験合格に加えて実務経験を積み、「ライセンス」を取得する必要があります。
ただし、ライセンス取得の条件は、州によって異なります。監査業務の経験が必要な州と不要な州があるほか、中にはアメリカ国内に居住しなければライセンスを取得できない州も存在します。
ワシントン州やグアムでは、日本での実務経験がライセンスとして認められます。また、受験前の実務経験もライセンス取得の実務経験と認められる場合もあるため、各州の取得条件をよく調べてから出願するといいでしょう。
USCPA出願から取得までの流れ
USCPAは、以前は、アメリカ国内でしか受験できませんでしたが、現在は日本国内でも受験が可能です。日本国内でのUSCPA出願から取得までの主な流れについてご紹介します。
1. 出願州を選択する
先述のとおり、アメリカでは州によって法律が異なるため、州ごとに受験条件要件が異なります。出願州を決める際には、受験条件のほか、試験合格後のライセンス取得要件も併せて検討しましょう。
2. 学歴評価の審査を申請する
アメリカ国外の大学で取得した学位や単位については、各州の試験委員会が指定する学歴評価機関で評価を受けなければなりません。
学歴評価は「NASBA(全米州政府会計委員会)」の出願州のページからオンラインで入力し手数料を支払ったのち、英文成績証明書、英文卒業証明書および、受験者のパスポートのコピーを郵送します。入力の前にNASBAのアカウントを作成する必要があります。
成績証明書などの書類は、大学の封筒に入れられ糊づけされている厳封の状態で送付しなければなりません。
評価の結果はNASBAのサイトから確認、および評価結果のダウンロードが可能です。学歴評価は時間がかかるため、早めに申し込みましょう。
3. 願書を申請する
出願する州にUSCPA試験の願書を申請します。オンラインで申請、または申請書を送付など、申請方法は州によって異なりますが、基本的にはNASBAの「CPA CENTRAL」のページから申請が可能です。事前の学歴評価と併せて、受験条件が認められると、受験票(NTS)が送付されます。
4. 試験会場を予約する
日本国内の試験会場は、東京の御茶ノ水ソラシティ、大阪の中津センタービルの2ヵ所のみです。受験票に記載された、6ヵ月の有効期限内に試験会場を予約して受験します。
受験者が日本人の場合は、日本とアメリカで受験が可能です。アメリカで受験する場合は、全米に約300ヵ所ある「プロメトリックテストセンター」で受験の予約をします。出願州に関係なく、好きな場所で受験できます。
5. 受験する
予約した受験日、受験会場にて受験します。
試験は4科目あり、全科目に合格する必要がありますが、一日4科目を受験する必要はありません。NTSの有効期限内であれば数日に分けて受験することもできます。
6. ライセンスを取得、申請する
USCPAを取得するには、試験の全科目に合格後、さらに実務経験を通してライセンスを取得する必要があります。ライセンス取得に関する申請方法については、州によって異なります。
USCPAは国際的な会計業務に役立つ資格
今回は、USCPAを取得するメリットについてご紹介してきました。USCPAは日本の公認会計士に比べて、試験自体は難度が低い傾向がありますが、試験合格後に実務経験を通してライセンスを取得しなければなりません。また、出願する州によって、受験条件やライセンスの取得条件が異なる点にも注意が必要です。
とはいえ、USCPAを取得すれば、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、複数の国で会計業務を行えるというメリットがあります。また、会計士としてのスキルだけでなく、ビジネス英語のスキルがあると証明できることも大きなメリットです。そのため、監査法人や会計士事務所のみならず、外資系企業などへの転職にも役立つスキルといえます。
グローバルに活躍する人材としてキャリアアップを狙いたい方は、ぜひUSCPAの取得を検討してみてください。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
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