転職活動をしている、もしくはしたことがある人なら、求人情報に「ミドル世代」の文字を見かけたことがあるのではないでしょうか。一般的にミドル世代は中高年層を指す言葉ですが、転職市場においては求人媒体や企業によって定義が異なります。
ここでは、転職市場におけるミドル世代とは何歳から何歳までを指すのかについて解説し、ミドル世代が転職する際の成功のコツやよくある失敗例を紹介します。
転職市場におけるミドル世代とは?
一般的にミドル世代というと中高年、つまり40~50代半ばくらいまでを指しますが、転職市場におけるミドル世代に該当する年代は少々異なります。
東京都が設置した、都民向けの雇用・就業支援を行う「東京しごとセンター」のWEBサイトでは、29歳以下向けの求人を「ヤングコーナー」、30~54歳向けの求人を「ミドルコーナー」、55歳以上向けの求人を「シニアコーナー」と区切って紹介しています。
転職エージェントや求人サイト、求人を出す企業の認識によって多少の差異はあるものの、求職者を「ヤング(若手)」「ミドル」「シニア」の3つの層に分けた場合、東京しごとセンターとほぼ同じ年齢層を想定していると考えていいでしょう。
<転職市場における年齢層>
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ヤング世代…29歳以下
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ミドル世代…30~54歳
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シニア世代…55歳以上
こうした言葉は、2007年の雇用対策法の改正によって、労働者を募集する事業主は年齢に関わりなく均等な機会を与える義務が生じたことで使われるようになりました。年齢を理由に不採用とするなどの行為が禁止されたため、求人票などでも積極的に年齢制限をうたわなくなっています。
ミドル世代の転職事情
若手時代に幅広い経験や知見を蓄積してきたミドル世代は、まだ体力もある働き盛りです。職場で責任のある仕事を任されている人が多くいます。
一方で、キャリアの停滞や企業の将来性への不安感、働き方の見直しなどから、転職を考える人も少なくありません。業界再編や組織の若返りなどで早期退職の対象となり、退職金を得て新たなステージへ向かおうとする人もいます。こうしたミドル世代の転職には、どのような傾向があるのでしょうか。
少子高齢化や働き方の多様化による働き手の減少などを受けて、ミドル世代の採用ニーズは拡大しています。年功序列、終身雇用が当たり前の頃とは時代が変わり、35歳が転職の限界でそれ以降の年代の転職は困難とする「35歳転職限界説」は、過去の定説になりつつあるのです。
その証拠に、リクルートワークス研究所の「中途採用実態調査」(2019年)によれば、中途採用した人員の年齢層で10代・20代(51.4%)を上回るのは30代(57.2%)です。40代も44.6%と健闘しており、ミドル世代の台頭が見られます。
アフターコロナを見据えて事業拡大に乗り出す企業が増加し、採用市場がさらに活発化すれば、ミドル世代の採用ニーズもより高まるでしょう。
企業から求められるミドル世代の能力
企業は、何を期待してミドル世代を積極的に採用しているのでしょうか。ポイントは、専門性や人間性、対応力、フットワークの軽さなど、ヤング世代やシニア世代にはなく、ミドル世代だからこそ持っている能力です。
専門性
企業がミドル世代を採用するにあたって、ポテンシャルに期待するケースは少ないといえます。「経験や知識は乏しいが、伸びしろが感じられる」「実績はないが、意欲があって期待したくなる」といった理由で採用に至るのは、ヤング世代までであることがほとんどです。
ミドル世代を採用する際は、管理職などのハイポジションでの活躍や、スペシャリストとしての貢献を期待しています。つまり、ミドル世代に求められるのは、突出した専門性といえます。例えば、マネジメント、業務管理、エンジニアリングの知識やスキル、営業戦略・営業企画などです。これまでの業務経験や業務外での学び、専門的な資格の取得など通して得た専門性を、具体的にアピールできるといいでしょう。
柔軟性
同じ仕事でも、場所が変わればやり方や考え方が変わることはよくあります。そこで求められるのは、柔軟性です。転職先の文化を知り、先輩、同僚、後輩に敬意を払って対応し、その職場のやり方を取得しようと務めることは、とても重要です。
高い専門性とプライドの高さは、表裏一体であることが多いもの。自分の経験値や成功体験を誇るあまり、若手や同僚の教えをおとしめるような態度をとってしまわないよう、注意が必要です。みずからの技術や知見に自信を持つのはすばらしいことですので、卑屈になる必要はありませんが、新しい環境になじむ努力を忘れてはいけません。
企画提案力
ミドル世代はキャリアが長い分、豊富な経験を活かした企画提案力も期待されるケースが多いです。業界を深く知っているからこそ業務を改善できたり、新たな価値を創造できたりする可能性をアピールできれば、応募企業の評価が高くなるでしょう。
志望動機や自己PRでは、前職で実現した企画などと併せて転職先で何ができるかを伝えると、より説得力が増します。
組織を俯瞰できる能力
ミドル世代には、自分の立場や果たすべき役割を踏まえた上で、組織を俯瞰して捉える視点が求められます。例えば、企業の利益につながる事業計画の立案や、組織の課題を見つけて改善することといった、中長期的な視野での企画や改善業務が挙げられます。
さらに、専門性を活かして社内で講座を開いたり、部下の育成プログラムを立案したりといった、「自分以外の誰かのためになる経験」もアピール材料となります。
マネジメント能力
ミドル世代のうち、技術を極める職人タイプのスペシャリストを除いては、プレイヤーとしての能力だけでなく部下やチームを統率して成果を出せるマネジメント能力が必須といえるでしょう。この場合のマネジメント能力には、企業の理念やビジョンを部下に伝えて浸透させ、1つの目標に向かって努力できるチームを作る能力も含まれます。
マネジメント経験がなく、転職を視野に入れている場合は、現職で積極的にプロジェクトに関わったり、マネジメント領域にチャレンジしたりして、経験を積んでおくことをおすすめします。
ミドル世代が転職を成功させるポイント
ここまで、ミドル世代の転職市場の傾向と企業から求められる能力について解説してきました。これらの能力を有していて、採用市場拡大の波に乗ることができれば、ミドル世代の転職成功率はさらに高まるはずです。
ほかにも下記のように、ミドル世代が転職を成功させるためのポイントがいくつかありますので、詳しく見ていきましょう。
異業種や異職種にも目を向ける
ミドル世代は、これまでの業種・職種で一定の経験値やノウハウを蓄積してきた自負もあって、どうしても熟知している業種、同職種での転職を考えがちです。しかし、技術に特化したスペシャリストを目指すのではない限り、ミドル世代の転職では、「ポータブルスキル」の有無が転職成功のポイントになります。
ポータブルスキルとは、異業種や異職種にも活かせる能力のことで、計画性や業務遂行力、スケジュール管理、対人スキルなどを指します。ポータブルスキルを活かせば、あらゆる業種・職種へ転職できる可能性があるのです。
また、新規事業としてまったく異なる分野に挑戦する企業が増えているため、ミドル世代の経験値がうまくマッチすれば重宝されるはず。業種・職種にとらわれずに転職活動をすることで、思ってもみなかった業種・職種への転職が実現するかもしれません。転職活動の際は視野を広げて、興味のある業界や伸びている業種を見るようにしましょう。
自己分析の見直しをする
豊富な社会人経験を持つミドル世代は、「わざわざ自己分析をしなくても自分のことはよくわかっている」と思うかもしれません。これまでの業務における成功体験や失敗体験から、強みや弱みもある程度認識しているでしょう。
しかし、転職活動を開始してからなかなかいい返事がもらえないようなら、転職活動が長期化する前に一度自己分析をやり直してみてください。これまでのキャリアや選択について、冷静な目で客観的に見直すと、自分では気づいていなかった強みや弱み、価値観などが見えてくる場合があります。
書類対策、面接対策を徹底する
経験やノウハウが少なく、ポテンシャルをアピールするヤング世代と違って、ミドル世代にはアピールできるポイントが多数存在します。このことは、ミドル世代のこれまでの努力の証明であり、すばらしいことです。
一方で、応募書類の自己PR欄に経験したすべてを記載すると、「あれもこれも、平均以上にできる」という印象になり、結果としてアピールが弱くなりがちです。面接においても、経験豊富であるがゆえにポイントを絞り込めないと、印象が薄くなってしまうでしょう。自身の経験や強みの中で、企業が求めているスキルや人物像に沿う内容のものをピックアップしてまとめる必要があります。
客観的な市場価値を知る
もし、転職活動が思うように進まないなら、自分が考える自分の価値と、企業が見るあなたの価値に差異があるのかもしれません。その場合は、まずは転職市場における自分の価値を知ることが大切です。
転職市場の価値は、人材の「需要と供給」によって決まります。つまり、自分の経験やスキルを求める企業がどれだけあるか、同じ経験・スキルを持った人がどれだけいるかによって、市場価値は変わります。特にミドル世代は、即戦力が求められるため、企業から求められるレベルも高くなる傾向があるのです。
つまり、自分の市場価値を測るときは、転職を希望する業界・職種の求人動向と、希望する企業が求めるスキルのレベルを把握する必要があります。今の自分に足りないスキルがある場合は、現職で経験してから転職活動を再開するのもひとつの方法です。
ミドル世代によくある転職失敗例
ミドル世代で転職を考える人は多く、採用も決して低調ではありません。しかし、残念ながら転職活動がうまくいかず、長期化する人も少なからず存在します。転職活動に失敗するミドル世代には、どのような特徴があるのでしょうか。
肩書きや収入ダウンが受け入れられない
ミドル世代は、前職でそれなりのポジションまで上り詰め、高い評価を得ている人が多い年代です。ポジションが高ければ、当然ながら年収も高くなります。特に、業界再編や組織の若返りを目的とした早期退職制度を利用して転職を考える人などは、同年代の中でも恵まれた年収水準に達している場合があります。
こうした人の多くは、最低でも同じ水準、もしくは年収アップを条件として仕事を探しがちです。その結果、転職活動が長期化したり、年収だけにこだわって入社したものの、仕事内容に満足できなかったり、社風になじめず苦労したりする人もいます。
入社当初は一時的に年収がダウンしたり、ポジションが下がったりしても、企業の評価制度によっては順調に昇給・昇格する場合もあります。まずは希望年収で探してみて、厳しそうであればいったん条件を緩和して優先順位を見直すなど、柔軟に検討しましょう。転職活動では長期的な目線に立って、「転職の目的を達成できるか」を冷静に判断することが大切です。
同業種・同職種にこだわりすぎる
ミドル世代にポテンシャルを求める企業は多くありません。多くの企業は、ミドル世代が持っている経験値や専門性、マネジメント能力に期待して採用します。そのため、経験が活かせる業種・職種で応募先を決めるのが近道であることは確かです。
しかし、あまりに同業種・同職種にこだわりすぎると、そもそも求人数が少ない業界などでは苦労するかもしれません。
ポータブルスキルが高い人であれば、異業種・異職種でもマネジメント職として採用される可能性があるので、視野を広げてみることも大切です。また、専門性を活かして現場で活躍したい場合も、客層や販売チャネルなどに共通項があれば、即戦力として評価される場合があります。
自分の市場価値を正しく把握し、保有する経験やスキル、強みなどを活かせる領域について、先入観にとらわれることなく検討しましょう。応募先を絞り込みすぎないことによって、チャンスが増えるはずです。
現職と並行して転職活動をするなら、転職エージェントを活用しよう
少子高齢化で労働力人口が減少する中、転職市場におけるミドル世代の存在感はますます高まっていくことが予想されます。現職でも組織の中核として活躍するミドル世代が転職活動をスムーズに進めるには、面接日程の調整や条件交渉などを無料で代行する転職エージェントの活用がおすすめです。
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