欧米の企業で広く用いられている、ゼネラルマネージャーという役職。国内では外資系企業を中心にこの職に就いている人がいるほか、日本企業にも同名のポジションが用意されていることがあります。
ここでは、ゼネラルマネージャーの概要と業務内容、求められるスキルのほか、外資系企業と日本企業における役割の違いなどについて解説していきましょう。
ゼネラルマネージャーとは管理職のひとつ
ゼネラルマネージャー(General manager:GM)とは、経営や経営企画に関して決定権を持つ管理職です。
ゼネラルマネージャーという役職は、主に欧米の企業で用いられます。役員に近い上位の管理職のひとつで、現場を管理するマネージャーを管理する役職です。また、ゼネラルマネージャーは、自身の配下組織もしくは社内のすべての組織に対して決定権を持つと同時に、業績に関する責任を負うのが一般的です。日本国内の外資系企業のゼネラルマネージャーも、概ね同様の役割を担っています。
日本国内企業におけるゼネラルマネージャー
日本企業でも、最近はゼネラルマネージャーという役職名が使われているケースが見られます。その場合、欧米の企業とは少し異なり、マネージャー(部長)の上位職という意味合いで用いられることが多いようです。
例えば、従来の事業部長、事業統括部長、本部長、支店長、工場長、総支配人、大企業の部長などをゼネラルマネージャーと呼ぶことがあります。多くの場合、欧米の企業のゼネラルマネージャーと比べると、決定権も責任範囲も大きくありません。社長やCEOがゼネラルマネージャーの業務を兼務していることもあります。
このように、日本企業のゼネラルマネージャーは、会社によって名称の使い方、業務内容、責任範囲が大きく異なるので注意してください。
ゼネラルマネージャーの仕事内容
続いては、アメリカを中心とした本来のゼネラルマネージャーの仕事内容について見ていきます。ペプシコ・インクの元社長であり、ハーバード・ビジネス・スクールの教授でもあったアンドラル・E・ピアソンの論文「Six Basics for General Managers(ゼネラルマネージャーのための6つの基本)」にもとづいてご説明しましょう。
職場環境の形成
ゼネラルマネージャーの重要な仕事のひとつに、必要に応じて職場環境を形成することが挙げられます。
事業コンセプトにもとづいた目標設定、評価制度の整備などを通じて、適切な職場環境の形成に取り組まなければなりません。
ただし、会社にはそれぞれ独自の職場環境があります。それは、会社の設立以来、受け継がれてきた財産のようなもので、社員のモチベーションや価値観、慣習的な仕事の進め方などに大きな影響を与えることも少なくありません。
ですが、時には職場環境そのものが、経営方針や企業戦略の障害となることがあります。そのようなことが起こった場合は、これまでの会社の文化を踏襲しながら、より現状に適した職場環境へと成長させ、社員たちに根づかせるよう工夫をします。
企業戦略の策定
ゼネラルマネージャーは、企業戦略(あるいは事業戦略、ビジネス戦略)の策定にイニシアティブと責任を持ち、その取り組みを主導していく立場の役職です。短期的な目標設定だけではなく、各事業における中長期的な戦略ビジョンも明確化し、実行に移して売上や利益の向上を目指します。
戦略を立てる方法は企業の状況によって異なりますが、現状の事業展開における課題を見つけ、それを解決するための具体的なビジネスアイディアや施策を考えるといったやり方が一般的です。
人員配置と予算配分
ゼネラルマネージャーにとって、企業戦略をより効果的かつ円滑に実行していくには、適切な人員配置と予算配分が欠かせません。
まず、ミッションを達成するためには、そのミッションに最適な人材を見極めることが大切です。そうして見極めた人材を、バランス良く業務に割り振ることで、社内の経済的健全性を確保することにつながり、結果として利益最大化への布石となります。
また、将来を見越して設備投資をしたり、必要に応じて利益の低い事業を取りやめたりして、経営戦略を効果的に進められるような予算を配分することも、ゼネラルマネージャーの仕事のひとつです。
人材育成
マネージャーの選任や育成は、多くの場合、その部門長などが担当します。ただし、時にはゼネラルマネージャーみずからが、人材を育成することもあります。
その場合は、社内外から潜在能力を持つ人材を見いだし、ポストとタスクを与え、成功した場合の報酬も用意します。そして、大きな成果を上げるスターパフォーマーへと育てていくのです。
組織の構築
会社にとって、機能的で強固な組織を作り上げることも、ゼネラルマネージャーの重要な任務です。時には、組織構造の再編成や改革を進めなければならないこともあるでしょう。
組織改革を進めるのに最も効果的なのは、マネージャーやリーダーなど、そのポストに適切なスタッフを配置・登用することです。そのためにも、常にゼネラルマネージャーは、人材の配置や育成について検討しておかなければなりません。
業務の監督
事業計画や施策の運用が順調に進んでいるかどうかを監督するのも、ゼネラルマネージャーの仕事です。問題や課題は早期に見つけ出し、必要な対策を講じて改善を図ります。また、状況の変化にも柔軟に対応する必要があるでしょう。
ゼネラルマネージャーとほかの役職との違い
企業によっては、ゼネラルマネージャーのほかにシニアマネージャーがいたり、海外に進出している企業であればカントリーマネージャーがいたりと、名前がよく似ている役職もあります。また、企業の経営にも決定権を持つゼネラルマネージャーと、CEO、COOとの役割の違いはどのようなところにあるのでしょうか。
続いては、シニアマネージャー、カントリーマネージャー、CEO、COOとゼネラルマネージャーの違いを説明していきましょう。
シニアマネージャー:ゼネラルマネージャーを補佐するポジション
シニアマネージャーは、上級のマネージャーです。通常のマネージャーより上の立場がシニアマネージャーで、さらに上位にゼネラルマネージャーがいます。ゼネラルマネージャーとシニアマネージャーが両方いる場合、シニアマネージャーはゼネラルマネージャーを補佐する立場にあることが多いでしょう。
カントリーマネージャー:海外の支社と本社との橋渡し役
カントリーマネージャーは、企業の海外支社や関連会社の経営を担う役職です。企業が海外に進出する際には、その国の法律や文化、慣習に沿った経営戦略を策定する必要があります。カントリーマネージャーは、そうした海外支社や関連会社と本社との橋渡し役として人材採用や育成を行い、事業を展開していきます。
CEO:経営全般に責任を負う企業のトップ
CEO(Chief Executive Officer:最高経営責任者)は、経営方針などを決定して経営全般に対する責任を負う企業のトップで、ゼネラルマネージャーよりも上位の役職です。
CEOはアメリカの会社法で定められている役職名ですが、日本企業では社長がCEOを兼任して名乗るケースが増えています。
COO:業務実行の責任者
COO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)は、CEOが決めた経営方針に従って業務を実行する責任を負う役職で、CEOに次ぐポジションです。
なお、アメリカではCEOとCOOは、各企業の取締役会または株主総会で選任・解任されます。
ゼネラルマネージャーに必要なスキル
特に欧米の会社では、ゼネラルマネージャーは会社の経営陣に近い役職です。だからこそ、ゼネラルマネージャーにはさまざまなスキルが求められます。
最後に、ゼネラルマネージャーに必要とされるスキルについて見ていきましょう。
経営者としての目線・行動力
ゼネラルマネージャーには、経営者と同様の俯瞰的な目線と、計画を遂行していく行動力が求められます。
経営者と同じスキルセット、マインドセットを持つことで、事業の成功に加えて企業価値そのものを押し上げていくことも意識するようになるでしょう。事業戦略の策定においては、俯瞰的に市場動向を見定めて先を読み、自社の財務状況を把握して戦略を細かくコントロールするといった決断力や行動力を発揮していくことが重要です。
リーダーシップ
ゼネラルマネージャーには、時には現場で陣頭に立って指揮をとるようなリーダーシップが必要とされます。また、社内のマネージャーを束ねて、意思統一を図ることも必要でしょう。
重要なプロジェクトを立ち上げるときは社員のモチベーターとなり、プロジェクトに問題や停滞が生じたときにはフォローアップも行うといった柔軟性も求められるのです。
コミュニケーションスキル
コミュニケーションスキルもまた、ゼネラルマネージャーが手腕を振るうために必須のスキルです。ゼネラルマネージャーには、自分の意思をわかりやすく伝えるだけではなく、必要に応じて迅速に情報を共有することが求められます。
また、「問題が発生したときには、すぐに報告や相談を受けつける」「スタッフの声に耳を傾ける」「部署間など異なる意見の調整を図る」といったことを、円滑に行っていかなければなりません。
日頃から、周囲のスタッフと適切なコミュニケーションをとっておくことができれば、配下のマネージャーや現場のスタッフから大きな信頼やリスペクトが得られます。コミュニケーションスキルは、業務をスムーズに進めるために必要なスキルなのです。
ゼネラルマネージャーは企業の経営陣に近い存在
ゼネラルマネージャーは、経営に関わる役職でありつつも、いかに現場を効率的に動かし、良い方向に向かわせるかを考えて指示を出す立場でもあります。
ゼネラルマネージャーを目指すのであれば、こうした役割について理解を深め、実践するようにしてみてください。
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