収入やスキルアップを目的に副業を希望する社員は増えています。 働き方改革の流れで副業を認める企業は増加し、2018年には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が厚生労働省により制定されました。基本的に、副業を認める方向で書かれています。
2020年以降、本業の業績が不振の会社が出て、企業としては好むと好まざるとに関わらず、副業を認めざるを得ない状態のケースもあります。マイナビが2020年10月に発表した「働き方、副業・兼業に関するレポート(2020年)」によれば、副業・兼業を認めている企業は全体で49.6%になっています。 働き方の多様性を望む声が高いことを考えると、この流れのまま副業容認は加速していくでしょう。現在、副業を禁止している企業も他人事ではなくなる日が来るかもしれません
この記事では、以下の3点について解説します。
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副業を会社が禁止することは法的に問題ないか
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人事としての副業に対する懸念点
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副業の社内規定/ガイドラインに織り込みたいポイント
1. 副業を会社が禁止することは法的に問題ないか
厚生労働省の副業ガイドラインでは、「労働者が労働時間以外の時間をどのように使うかは、基本的には労働者の自由」とされています。つまり法律上、労働者の副業は禁止されてはいません。
もちろん例外は存在します。以下は副業が認められない、もしくは制限される例です。
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公務員が営利企業の役員の役員を兼業する
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公務員が営利企業で自営を兼業する
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業務上の秘密が漏洩する場合
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競業により自社の利益が害される場合
現在、副業を禁止している企業の人事の方は、法律をよく調べた上で副業を希望する社員が出た場合、どのように対処するのかを考えておく必要があります。
2. 人事としての副業に対する懸念点
法的な制約がわかったところで、社員の副業について人事として考えられる課題を挙げてみます。
a. 本業の就業時間中に副業をする社員がでないか
私の周囲をみても、2タイプが存在します。企業にとって理想形である、本業と副業の就業時間をきちんと分けられる、つまり就業時間中には連絡があってもメッセージを読んで返したりしない社員。もう1タイプは、残念ながら就業時間中であっても、つい副業をしてしまう社員です。
企業は就業規則で決められた労働時間に対して給与を支給しているので、本業の就業時間内に副業をされるのは避けたい状況です。現在テレワークが多くて社員の動きが見えず、実態がつかみにくいのは頭が痛い課題です。
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副業ガイドライン策定時に、就業時間は本業に費やす時間であることを明記する
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就業時間などが書かれている就業規則の条項数にも触れる。
b. 社員が長時間労働になって体調を崩さないか?
「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にも「安全配慮義務」が記されています。企業からすれば、「社員が就業時間外に何をしても自由。たとえ副業のし過ぎで長時間労働になり体調を崩しても、企業に責任があるわけはない」と言いたいところです。
しかし、「副業・兼業の場合には、副業・兼業を行う労働者を使用するすべての使用者が安全配慮義務を負っている」ので、社員が本業と副業の両方の働きすぎで倒れた場合、企業の責任が問われます。
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副業申請の際に、副業に費やす予定の時間数を書いてもらうことにすることで、 企業を守る手段にするしかないでしょう。
c. 情報漏洩の可能性
製品/商品、顧客に関する情報が漏れる可能性はゼロとは言えません。漏洩した情報の種類によっては企業のイメージに大打撃を与えますので、この点に配慮した社内規定が必要です。
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副業申請の際に、秘密保持契約を結ぶ。
d. 本業との副業が同じ内容で境界線がなくなる
例えば、ある製品の営業が、副業でも同じ製品を売ることにした場合、前項目の情報漏洩の可能性は高まります。また、製品が売れた場合に勤めている企業、副業の自分の会社のどちらに売り上げを立てるかなど、少しづつ倫理に抵触する事態にもなりそうです。本業と同じ副業は原則認めないことが、企業を守ると言えます。
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社内の副業ガイドライン策定時に、本業と協業する副業を原則認めないことにする。
まとめ
き方改革を受けて、より多様な働き方を望む労働者が増えています。例えば、テレワークもその一つで、30代のキャリア相談をしていると「著名な大企業でもテレワークを全く認めないと公言している企業は、応募先から外す」と明言する候補者が多いです。 副業も労働者が「やってみたい」と思っている仕事に、挑戦する機会があるか無いかの自由度に関わる大きな項目で、今後は副業ができない会社は採用先としての魅力を失うリスクすらあります。押さえるべき点を押さえた上で、社員のモチベーションを高め外部へ流出することを避けるために「副業許可」を手段として使ってみてはいかがでしょうか?
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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