インタビュアー: Haruka Toshikawa, Masaki Murata
制作: RGF Professional Recruitment Japan Marketing Team
変革期である自動車業界において、最先端の技術を提供し続けるAVL社。今回は、その日本法人AVL Japanの取締役であり、アドバンストシミュレーションテクノロジー事業部にて事業部長をされている馬立様に、AVLのAST事業部のビジネスや強みなどについてお話を伺ってまいりました。
第1回:米玉利社長のインタビューはこちら
第2回:ITS事業部 事業本部長 西口様のインタビューはこちら
これまでのご経験と現在の業務について教えていただけますか?
大学は明治大学工学部(現理工学部)の機械工学科を卒業した後に、富士通関係の空調に特化した会社でエンジニアとしてキャリアをスタートしました。
そこでものづくり、設計に関わった経験というのは、エンジニアを離れた今でも結構活きています。そもそも昔からモノ作り自体に興味があって、エンジニアの道を選んだので、エンジニアとして働いた経験が、私自身のコアになっています。
新卒で入社した会社でエンジニアとして7年ほど働いていたのですけれども、30歳前後のタイミングで、技術者を突き詰めるというのは、私の性格からするとちょっと違うかなということを思い始めました。そこからビジネス側の仕事の方にシフトしていきまして、2000年入りましたら、製造業向けのエンジニアリングのソフトやソリューションを扱う会社に営業として転職しました。
AVLに入る直前の仕事はシーメンスで、車に非常に強い音振動系のエンジニアリングのソフトウェアや、測定機器、エンジニアリングサービスに携わり、その事業部のカントリーマネージャー的な立場で仕事を行っていました。
その後2018年6月にAVLに入社したので、ASTに近しい仕事という点でいいますと、20年ちょっと従事しています。
AVL Japanに入社された理由を教えていただけますか?
私自身、エンジニアリングに関わる仕事というのが、やりがいを得られるというのは前から感じていました。もちろんシーメンスも、エンジニアリング的に非常に優秀な会社ではあるのですが、やはり車というのが日本の製造業の花形ですし、新しいことは必ず車から始まりますので、そういった最前線に今一度立ち返りたいなという思いが強くあり、AVLに入社することにしました。
AVLが最前線に立っているというのはどのあたりで感じられたのでしょうか?
私がAVLに入社する3、4年前から感じていたことは、お客さんご自身が新しい分野に対しての投資や技術構築に、あまり時間を割けないといった状況が生まれているということです。極端な言い方をすると、お客様自身が何をすればいいかがわからないという状況かもしれません。
そのような状況において、お客様のスタンスも、単に提示したスペックを満たす製品を納品するのではなく、より良いものや、今後必要になるであろうモノを提案して欲しいという方向に変わってきました。
実際、お客様自身もやらなければいけないことがたくさんある中で、ヒントになるようなアイディア、気づき、Insightを提供してくれるような会社とお付き合いをする傾向が非常に強くなっています。
一例で言うと、単に商品を納品するだけでなく、買っていただいたモノがちゃんと製品開発に使われるようなプロセス作りまで支援するというところまで踏み込んでいくことが、近年は求められています。
加えて、要求・要件というもの自体もお客様ご自身が決めることが難しくなっている。それに対して、グローバルの知見を持っている会社が、こういったベストプラクティスがあります、こういった事例がありますということをベースにして、提案していくことを求められるケースが増えています。
これらの点において、AVLは強みを持っています。それは、PTEはもちろんの事、バーチャルな世界でのシミュレーションを提供するAST、実際に実験して検証を行えるITSという3つの事業部があるという部分が大きな理由です。
単なる物売りではなく、提案できることがASTの強み
AST事業部の特徴と強みを教えてください。
ひとつめの特徴は、エンジニアリング会社の中にあるということもあって、お客様には、必ず検証済みのシミュレーションツールをご提供しているという点です。
近年のトレンドとして、電動化の流れが起きています。開発は電気自動車になればなるほど、実機ベースのものから、バーチャルにシフトしていくため、AVLの中で、バーチャルの解析を提供しているASTの役割もより重要になってきます。ただし当然ですけど、単純な、実験で取ってきたデータをもとにしたシミュレーションだと、実験をとっていないことはシミュレーションできません。特にBEV(Battery Electric Vehicle)はまだまだ作り始めのフェーズですから、どこのメーカーさんもあまり蓄積がない状況です。そうすると、現物と同じような振る舞いをするバーチャルのシミュレーションが必ず必要になってきます。
AVLのASTには、物理式によるシミュレーション技術を構築しているため、あらゆる条件に対応できる予測モデルを提供できることが強みです。
ふたつ目の特徴が、AVLが提供しているシミュレーションは、様々なツールと連携できるという点です。
多くのお客様は、すでに様々なソフトウェアを利用されていて、ご自身で様々なモデルを作られています。当然ですが、長年ご利用されているものを入れ替えるというのは、なかなかハードルが高くなります。そのため、ASTでは、すでに今ある資産を有効活用しながらひとつのシミュレーション環境を作っていくことが出来るようにしています。つまり、様々なツールを繋ぎ合わせることが出来るというのが、私たちの特徴です。
現在の日本におけるASTの売り上げの中で、電動化向けのものの割合はどの程度でしょうか?
新規に関しては半分以上が電動化向けのものです。もちろん、今まで通りICE向けのビジネスもあるのですが、それは既存のものの保守管理やアップデートがメインの継続ビジネスになります。純粋に新規でソフトウェアのライセンスを売るとかプロジェクトをするというものに関しては、電動化が半分を占めています。
それから、電動化に限らず、いわゆるカーボンニュートラルという事で言うと、水素のエンジンや、代替燃料のエンジンの研究といった分野もあります。このようなカーボンゼロに向けた活動の業務の一環として、数多くのお客様に引き合いをいただいている状況です。
世の中の電動化の流れが、ASTのビジネスにプラスに働いている状況という事でしょうか?
今後も、いわゆるバーチャル系のソフトウェアは増えていく可能性は高いです。
電動化に関していうと、蓄積したノウハウ的には、内燃機関の開発のものに比べると多くはありません。ただし、お客様は電動化に適用可能な要素技術を数々蓄積されています。
大手の自動車メーカーを含め、多くのお客様は、このようなノウハウを、きちんと信頼性を持って検証できるかどうかというところに苦労されています。
AVLは、社内に実験部隊とエンジニアリング部隊を一緒に持っています。また、開発自体も、お客様から委託を受けて実際に行う、PTEがいたりします。これらをすべて持っているからこそ得られた知見から、お客様が何に困っていらっしゃるかというのは、ある程度理解することが出来ると考えています。このような技術やノウハウと、これまでの実績を併せて、お客様に対して提案型でお話しすることによって、より我々のソリューションを評価していただけるような、そういう環境になっているのではないかなと思います。
AVLは、モノづくりの最先端に携われる会社である
ASTのお客様とそのお客様が何を求めていらっしゃるかを教えていただけますか?
実はつい1カ月ほど前に、AST事業部の主要トップ10のお客様に対してアンケート調査を行いました。
その中で、「シミュレーションを導入していくにあたっての課題は何でしょうか」というご質問をさせていただいたところ、圧倒的に多かったのは新規分野での技術開発でした。
2番目が、新しいノウハウ、技術といったものを、どのように社員に教育していくかということ。3点目がノウハウ自体についてでした。
つまり、新しい分野において、新しい技術を構築していかないといけないが、そのための時間があまり取れない。そして、実際に構築したとしても、社内で教育する時間もない。もとより、新しい技術自体を構築するノウハウも不足している。
このような実態が、今回のアンケート調査から見えてきました。
ですから、先ほどもお話しした通り、お客様は、単に製品を提供するだけでなく、そのお客様が今抱えている課題をベースとして、提案して欲しい、アイディアが欲しいというふうに考えていらっしゃると、我々は思っています。電動化といった新しい分野に関して、特にそういう傾向が強いのではないかと思いますね。
お客様が求めているものに対してASTが提供できる価値は何ですか。
ただ製品を納品するのではなく、技術支援といったところを含めてご提供可能な点です。単なる物売りではなく、開発にあたってどういったものが重要かというのを、AVLでは様々なプロジェクトを通じて蓄積しています。このような知見をベースにして、お客様に対して、我々から逆に解決策を提案できるというのが、ASTが提供できる価値だと思います。
お客様へ提供する価値のクオリティをさらに上げていくには、どんな人材が必要でしょうか。
私自身が大事にしていることが2つあります。
ひとつはシンプルに捉えるということです。どんなに複雑でも、支配的な要因というのはその背後に隠れているはずであって、それをできるだけ大局的にとらえて、二つか三つの要素に落とし込んでいくという考え方は、とても大事だと思っています。
逆にそのぐらいにまとめると、当然ですけれどもメッセージは周りに伝えやすくなりますし、周りはそれを実践しやすい。
これは私に限らず、こういった複雑化する世の中、特に自動車業界のような変革期にあるところでは、物事をなるべくシンプルに捉えるというのは昔以上に大事なのかなと思いますね。
ふたつ目が、謙虚であることです。謙虚さというのはとても重要ですし、日本人の強みだと思っています。
基本的に、学ぶことは誰からでもありますので、誰に対しても対等な目線で接することによって、周りの意見を受け入れやすくなりますし、自分自身も学びやすくなります。そういった意味でも、謙虚でいるということは、自分を高める。それから他の人から貪欲に知識を吸収するってことの源泉じゃないかなと思いますね。
このような、物事をシンプルに捉えられて、誰に対しても謙虚でいられるというのが、ASTがお客様に提供する価値のクオリティをあげていく事にも繋がってくるはずです。
今後どのような方にAVLに入社してほしいですか?
営業の方で言いますと、今エンジニア、もしくは過去エンジニアで、ビジネスに興味がある方に来ていただきたいと思っています。つまり、これまでモノづくりをやってこられた方で、今後はビジネス寄りのキャリアを歩みたいと考えている方です。
今後AVLの営業として一番求められてくるのは、お客さんが話していることがしっかり理解できることです。だからこそ、モノづくりのご経験をお持ちの方で、ビジネス側にシフトしたいという方に関しては、今後ぜひとも来ていただきたいと考えています。
また、エンジニアの方で言いますと、ご自身で開発経験をお持ちの方です。AVLは、お客様に対して受託のプロジェクト等を使って、技術構築のご支援等をしている会社です。もちろん他社にもそういった会社さんはあるのですが、他の企業では、そういった部隊は基本的に海外にあって、そちらで対応することになります。
しかし、ASTはほとんどの場合、日本で対応しています。そのため、このようなハイレベル業務を行うためには、単にソフトウェアがわかるということだけでなく、それを適用するアプリケーション、つまり開発する製品自体の方が重要となります。
ですから、ご自身で開発をされてきた方で、積み重ねてきた知識をベースにして、日本の製造業の方々のお役に立ちたいと思っている方に応募していただきたいなと思います。
最後にAVLへ転職をご検討の方にメッセージをお願いいたします。
AVLの一番の強みは、独立系だということです。そのため、短期的な投資家の意見等に左右されず、自社の信念のもと、将来必要になるであろう課題に対して、必要であれば先行投資も惜しみなく行える会社です。
エンジニアリングという観点でのさまざまなチャレンジに喜びを感じられる方、エンジニアだ、営業だということに関わらず、モノづくりの最先端に関わりたいという方にとっては、AVLは最適な会社だと私は思っています。
また、AST事業部は今後間違いなく伸びていかないといけない部隊です。そういう意味で、非常に明るい未来があると同時に、会社の期待も当然大きいので、それなりの責務を負っていかなければいけない。だからこそ、成長が出来るけど、責任感を持って仕事をしたいという方にはぴったりの場所だと思います。
ありがとうございました。
クライアント情報
企業名:AVL Japan K.K.
本社:〒211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1200番地 KDX武蔵小杉ビル8階
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