インタビュアー: Haruka Toshikawa, Masaki Murata
制作: RGF Professional Recruitment Japan Marketing Team
世界中の様々な自動車メーカーの開発支援を手掛けるAVL社。その日本法人AVL Japanの取締役であり、ITS事業部にて事業本部長をされている西口様に、AVLのITS事業部が提供する価値などについてお話を伺ってまいりました。
はじめに、これまでのご経験と現在の業務を教えていただけますか?
鈴鹿高専という国立の高専を出た後、東京農工大学に編入をして、学部を卒業後に、イーストマン・コダックの、当時あった横浜の研究所に就職しました。そこで5年ぐらい勤めて、その後AVLに移ってきています。AVLに移ってきたのは、AVL JAPANが出来た年なので、1995年です。
AVLに入ってからは、ソフトウェアエンジニア、コミッショニングエンジニア、アプリケーションエンジニア、プロジェクトマネージャー、プロジェクトマネージャーのリーダー、技術部、その当時でいうとオーダーフルフィルメントの部長を経験しました。その後事業部制に変わってからは、テストベッドの事業部の事業部長になった後、ITSの事業本部長になりました。その間に執行役員から取締役、常務取締役になっていきました。
イーストマン・コダックではどんなお仕事をされていましたか?
メカニカルエンジニアとして研究所に勤めていました。当時イーストマン・コダックは、宅急便の伝票のようなスリップを秒速20インチくらいで高速スキャンする業務用の高速スキャナーの開発をしていて、その開発に携わっていました。その後、某外資系企業から発売されたデジタルカメラの開発に関わる仕事を担当しました。
イーストマン・コダックからの転職のきっかけを教えていただけますか?
その当時、イーストマン・コダックが多角経営から選択と集中で本業に回帰しますということで、イメージング産業に回帰するというタイミングでした。その結果として、いくつかの研究所は閉鎖になり、次の仕事を探さないといけなくなった人も多くいました。そんな中で、私自身はカメラやスキャナーといった領域にいたこともあり、会社に残ることになってはいたのですが、いろいろ考えた結果、転職活動をすることにしました。
AVLを選んだ理由に関しては、私はキャリアを外資からスタートしたので、引き続き外資がいいなと考えていたというのが第一にありました。
ただ、その頃の外資企業は、モノを仕入れて売るみたいな商社っぽい業態の企業が多く、私のやりたい事とは違っていました。そんな中で、AVLは外資の中では技術に携われる数少ない外資系の会社だったこともあり、縁があって入社することになりました。
当時はどれくらいの規模の会社でしたか?
私の社員番号が17なので、入社当時は20人いなかったと思います。
大企業から20人規模の外資系企業に転職することに躊躇はしませんでしたか?
会社の規模とかにはあまり意識はなくて、自分がやりたいことが出来そうな会社であれば、どこでもいいかなって感じだったので、正直チャレンジだと思ったことはありませんでした。
入社後様々なご経験をされ、役員になられたというご経歴は、AVLの中では珍しいケースなのでしょうか?
そこまで特殊ではないと思います。もちろんステップアップするといってもポストが限られるので、件数としてはそこまでたくさんある訳ではないです。ただ、AVLは外資なので、いわゆる日系企業のようなピラミッド構造ではなく、フラットに近い組織なので、実力があればステップアップすることは可能です。実際、エンジニアから上がって部長になっている人もいます。
開発の環境が変わってきている中で、お客様はAVLの知見やノウハウに期待されている
ITSの事業部について、特徴と強みを教えていただけますか?
ITSの事業は、自動車などのモビリティを開発するためのツールを提供しているのですが、AVLにはエンジニアリング事業部やソフトウェア事業部もあるので、単に試験をするような設備を要望に応じて提供するだけではなくて、将来に向けた開発環境の提案をできるというところが強みだと思います。
将来の開発の提案・提供というはどういったことなのでしょうか?
日本の自動車メーカーさんは、常により良い開発の方法、より良いクルマ作りを目指されています。その中で、ヨーロッパのクルマづくりの手法や、グローバルで培ったより良いクルマづくりの方法、そのより良いクルマづくりに必要な開発環境というものの知見やノウハウに対して大きな興味を持たれています。
最近だと、特にテスラや中国がすごく進んでいるので、日本の自動車メーカーさんも、ヨーロッパの自動車メーカーさんも、彼らがどのようにスピード感をもって良いクルマを開発しているのか興味を持たれています。
AVLはエンジニアリングをやりながら、そういった先進的な企業に対して設備の提供もしているので、各メーカーはAVLと一緒に仕事をすることによって、そういった将来に向けた設備や開発手法の戦略に対する提案を得られると期待されています。
自動車メーカーが新しい設備を導入する際に、その時に必要な設備に加えて、将来についての提案・提供も行うのでしょうか?
直近でいうと、例えばトヨタのWovenに代表されるように、Software defined vehicleという、ハードウェア主導のクルマづくりから、ソフトウェア主導のクルマ作りが注目されています。ハードは変えずに、お客様に納めたクルマをソフトウェアでアップデートしていくという時代になったときに、開発のやり方を変換しないといけないと自動車メーカー各社も考えているのですが、まだまだ分からないことが多いのが現状です。具体的に何をどう変えて仕事のやり方を変えることで、ハードメイン開発からソフトウェアメインの開発に移行できるのか。その移行した時、どんな姿になっているべきなのか。今後その姿に移行するために、どういう課題があって、どういう打ち手を打っていかなきゃいけないのか。こういった様々な検討すべき内容に関して、みなさんとても興味を持たれています。
お客様との打ち合わせの中では、AVLはそれに対してこうアプローチするべきだと思っていますというお話をさせていただき、そのアプローチを達成するためには「AVLの製品だったらこういう製品を導入すると、その課題を解決できますよ」という提案をさせていただいています。
ITSにおける電動化に向けた取り組みを教えていただけますか?
電動化に関しては今に始まったことではなくて、10年以上前から設備としては取り組んでいて、提供もしています。ここ最近でいうと、以前は電動化というと、モーターを開発する設備やインバーターを開発する設備、そしてバッテリーを開発する設備がメインでした。
それが今は徐々に幅が広がってきていて、燃料電池や、水素エンジンといった、どちらかというと電動化という括りよりは、カーボンニュートラルという括りのビジネスに変わってきている印象です。
現在はより幅広い領域で電動化に関わる設備を導入させていただいているので、ITSの利上比率は大型設備の導入ということで言うと、6割~7割ぐらいは電動化設備だと思います。
他の事業部と一緒にプロジェクトを進めることはありますか?
案件にもよるのですが、他の事業部と連携して一つの仕事に対応するケースは一定数あります。例えば、何か新しいエンジンを開発する上で、お客様に対してエンジニアリング部隊がエンジニアリングをサポートして、それを開発するための設備もAVLから買うといったケースです。
また、AVLが扱っている領域全体の話を一括でしたいといったお客様に対しては、各部署が連携しながら一緒に取り組んだりします。
グローバルとの連携や最新情報の共有は、どのような仕組みで行っていますか?
基本的に現在進行中の案件や納品完了した案件はもちろんのこと、各個別のプロジェクトに関する情報は、グローバル全体で活用されているIT基盤ですべて共有されています。ですので、その基盤を通じて確認することが出来るようになっています。
新しい製品やサービスに関しては、毎年本社で行われるセールスカンファレンスで紹介されていて、すべてのメンバーではないですが、世界中からかなりの数の営業担当が集まってきます。
また、営業向けの製品トレーニングや、エンジニア向けの製品トレーニングは、社内にいくつかのカリキュラムがあって、それに申し込んで本社でトレーニングを受けたり、担当の方に来てもらってトレーニングを受けたりすることがあります。
お客様はAVLにしか出来ない提案を求めている
ITSのお客様と、お客様が求めているものを教えてください。
やっぱり日本のお客様がAVLのITSに期待していることは、欲しいものを提供してくださいということよりは、何が必要かを提案してくれることです。
単に欲しいものを納品してくれるだけでなく、将来の設備や、将来あるべき手法、それに基づくソフトウェアやハードウェアの提案のような、AVLでないと出来ない領域を求められていますし、我々もそれを提供しています。
お客様は基本的に完成車メーカーですか?
完成車メーカーだけでなく、Tier1、Tier2といった幅広い企業がお客様です。また、業界も乗用車だけでなく、商用、船、建機といったような領域にも広がってきています。
正直、自動車業界自体が、これまで通りの自動車業界の枠組みでは収まりきらない状況です。モビリティというと、今は自動車、船、空飛ぶ車なんかもありますし、それが収まる街も出来ています。ですので、お客様の範囲はどんどん広がってきていますし、今後も広がると思います。
AVLのITSの価値のクオリティを今後さらに上げていく際に必要な事は何でしょう?
提案する価値を向上するという意味でいうと、やはりハード主体の開発からソフトウェア主体の開発に変わっている。すなわち、AVLのITSとして提供する製品のポートフォリオも、ハードを試験するものから、ソフトウェア主体の開発の環境全体を賄うような、ソフトウェア主体の方向にシフトしていくと考えています。
そういう意味でいうと、一回開発した後は同じ商品を長く売り続けるハード主体のビジネスとは違い、ソフトウェア主体のビジネスでは常にアップデートが求められます。つまり、私たちが提供するソフトウェアも、ハードとは比べものにならないスピードで進化をしていかなければいけません。そのため、より本社でのソフトウェアの開発に対して、日本からの要求をタイムリーにフィードバックして、かつ本社側のアウトプットもよりスピードを上げていく必要があると考えています。
市場のニーズに合うものをどんどんスピーディに出していくということですね。
それでは、その価値向上のために、どのような人材が必要でしょうか。
端的に言うと、自分で考えられる人です。
具体的に言うと、単に「日本のお客様はこれが欲しいと言っています」と伝える伝言役ではなく、お客様がそれを求めている背景を理解した上で、将来何が求められるかを考えて伝えられる人。単に右から左に伝言するのではなく、お客さんのニーズとその置かれている環境を理解した上で、将来こうあるべきじゃないかという議論を本社と出来る人が必要です。
今後どのような方にAVLに入社をしてほしいですか?
先程言った通り、自動車業界も急速にビジネスの枠組みが変わってきていますし、日本の自動車業界自体も熾烈な競争にさらされています。そういった正解のない環境の中で、自分でモチベーションを持って、自分で考えて、自分で率先して取り組んでいける人と一緒に働ければ嬉しいです。
加えて言うと、もちろん英語もそうですが、我々の仕事ではヨーロッパと日本のお客さんの橋渡しをするので、異文化を理解出来るということが重要です。海外では日本の当たり前が当たり前ではないので、言わなくてもわかるでしょという暗黙知の上で仕事は出来ません。
最後にAVLへ転職をご検討の方にメッセージをお願いいたします。
AVLで仕事をするときには、常に考えて動いていかないといけないので、退屈はしない会社だと思います。
また、自動車業界に関わるいろいろなメーカーの方や、通常のメーカーでは会えないような役職の方、エンジニアの方と出会える機会があるというのも面白い経験だと思います。それは、普通の自動車だけではなくて、レースだとか、いろいろな分野でも交流を持つことができるので、仕事の幅も、人との出会いもすごく広いと思います。
繰り返しになりますが、AVLは退屈しない会社だと思います。ですので、刺激が欲しい人や、やる気がある人にとっては、自分のスキルをと経験値を上げるのに絶好の環境です。
ありがとうございました。
クライアント情報
企業名:AVL Japan K.K.
本社:〒211-0004 神奈川県川崎市中原区新丸子東3丁目1200番地 KDX武蔵小杉ビル8階
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