日系企業に比べて、報酬が高く設定されていることで知られる外資系企業。転職の軸を年収アップに置いている人にとって、外資系企業は魅力的な選択肢ではないでしょうか。
ただし、外資系企業の場合、報酬が高い代わりに退職金がないのが一般的です。「退職金がない」と聞くと、退職後の不安から転職をためらう人もいるかもしれません。
この記事では、外資系企業への転職を検討している人に向けて、外資系企業に退職金制度がない理由や退職金制度のメリット・デメリットのほか、退職金の代わりになる制度などについてご紹介します。
外資系企業に退職金制度がない理由
日系企業の多くは、一定期間就業した従業員に、退職金としてまとまった金額を渡します。退職をする人は、そのお金を元手に転職活動をしたり、アーリーリタイア後の生活費や活動資金にあてたりします。一方で、ほとんどの外資系企業では、日系企業のような退職金の概念はありません。
まずは、外資系企業に退職金制度がない理由について、詳しくご紹介します。
外資系企業は退職金の代わりに成果主義で報酬が高い
外資系企業といってもその種類はさまざまで、日系企業に比べてそれほど年収が高くない外資系企業も存在します。しかし、日本で事業を展開している外資系企業の多くは、グローバル市場に進出するだけの資金力があり、日本で優秀な人材を採用するために給与水準を高めに設定していることが多いといえます。
外資系企業は基本的に実力主義で、結果を出した分だけ報酬に反映されます。企業や職種によっては、働き盛りの早い段階で、日系企業でもらえる退職金分まで稼いでしまうことも珍しくありません。
外資系企業には終身雇用・年功序列制度がない
日系企業では、不況下においても安定的に労働力を確保し、中長期的に人材を育成する目的で、新卒から定年まで終身雇用して年功序列で評価する仕組みが採用されてきました。退職金は、定年までひとつの会社で勤め上げた人の退職後の生活保障や、会社への長期にわたる貢献をねぎらうことが目的です。勤続年数が長い人ほど、優遇される傾向にあります。
しかし、終身雇用も年功序列も、日系企業ならではの文化で、いずれも外資系企業には存在しません。外資系企業では、転職を繰り返しながらキャリアアップしていくのが一般的で、長く勤めることを良しとする風土も、勤続年数を評価する考え方も基本的にはないからです。
外資系企業には、一定の勤続年数があることを条件とする退職金制度はフィットしません。外資系企業に退職金制度があっても、実際に支給要件となる勤続年数を満たす人は、決して多くはないといえるでしょう。
外資系企業は老後資金の考え方が違う
日本では、退職金でまとまったお金を得て、それを老後資金にあてるのが一般的です。定年を間近に控えた人たちの多くは、退職金の金額を想定して第二の人生の計画を立てます。
一方、外資系企業に勤める人にとっての老後資金は、報酬から少しずつ貯蓄に回して貯めたり、資産運用で十分な金額まで増やしたりと、現役時代から自力で蓄えていくものとされています。外資系企業では、退職金を分割して月給に上乗せし、先払いしているようなものといえるでしょう。
また、海外は日本よりも資産運用の意識が高いといわれます。老後資金についても、現役のあいだに稼いだお金を増やして準備する人が多いのです。
日本銀行が2022年に公表した「資金循環の日米欧比較」の「家計の金融資産構成」を見ると、日本の一人あたりの金融資産の割合は「現金・預金」が半分以上を占めており、資産形成に対する保守的な傾向が顕著です。
一方、アメリカは「株式等」が「現金・預金」の3倍近く、「保険・年金・定型保証」も全体の3割を占め、投資に積極的です。欧州エリアは「現金・預金」が3割強、「株式等」が約2割、「保険・年金・定型保証」が全体の3割で、こちらは偏りなくさまざまな形で金融資産が構成されているといえます。
外資系企業にある退職金の代わりの制度
退職金制度がない外資系企業に転職した場合、老後の生活資金はすべて自己責任で準備するしかないのでしょうか。実際のところ、多くの外資系企業では、外資系企業の価値観にフィットする形で退職金の代わりになる制度を用意しています。
ここでは、外資系企業にある退職金の代わりとなる、代表的な3つの制度をご紹介します。
パッケージ(特別退職金)制度
「パッケージ」とは特別退職金のことで、従業員に任意の退職を勧奨する際に支払われるお金です。外資系企業は成果を出せば報酬に反映される成果主義ですが、その分、成果が出ないときの評価もシビアです。海外では、なかなか成果が出せない従業員を解雇することもよくあります。
日本の場合、従業員は労働基準法をはじめとした法律で手厚く守られており、簡単に解雇することはできません。そのため、外資系企業はパッケージ制度を提示することで自主的な退職を促すのです。
ただし、パッケージは企業ごとに定める任意の制度です。すべての外資系企業で必ずもらえるとは限りません。また、パッケージの額面に影響する要素もさまざまです。外資系企業に就職する際には、パッケージの有無や金額の決定方法について、確かめておくといいでしょう。
確定拠出年金制度
外資系企業の老後資金対策としてよく利用されているのが「確定拠出年金(Defined Contribution Plan)」です。確定拠出年金は、加入者が決められた掛金を拠出して運用し、拠出額とその運用益との合計額で給付額が決まります。
確定拠出年金には、個人が加入して運用する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と、会社が運用して出た利益を積立金にプラスして退職時に支払う「企業型DC(企業型確定拠出年金)」があります。企業型DCの場合は、転職時には転職先の企業型DCか、iDeCoに移換する必要があるので注意してください。
インセンティブ制度
インセンティブ制度とは、目標の達成レベルに応じ、当該従業員へ報奨(インセンティブ)を与える制度です。実力主義の外資系企業では、年俸とは別に成果に応じたインセンティブを支給するのが一般的です。人によっては、かなりの額になることもあるでしょう。インセンティブ制度を貯蓄したりうまく運用したりすれば、老後資金に充当できます。
退職金制度のメリット・デメリット
日系企業で多く導入されている退職金制度は、導入を義務付けられているわけではありません。ここでは、退職金制度のメリットとデメリットについてご紹介します。
退職金制度を利用するメリット
退職金制度を利用するメリットは、大きく4つに分けられます。具体的には次のとおりです。
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長期間勤務するモチベーションやエンゲージメントが高まる
退職金制度は、長年勤務したことを評価し、勤続年数に応じて支払われる性質のお金です。退職金制度があることで、「この企業の成長のためにがんばろう」「定年まで地道に貢献しよう」といった責任感を引き出すことが可能になります。役職・成果に応じて金額が変動するタイプの退職金なら、より従業員のモチベーションを高め、従業員は高い成果に向かって邁進することができるでしょう。 -
老後の資金を会社負担で用意することで従業員の安心感が高まる
退職金は、会社が用意する老後資金のようなもの。長く誠実に勤めていればある程度の額が用意されるため、従業員は安心して老後を迎えられます。ただし、健康寿命が延びていく中で企業の退職金額は減少傾向にあり、退職金制度だけに頼った老後計画は破綻するおそれもあるので注意が必要です。 -
もらえる金額が計算しやすい
資産運用は、うまくいけば資産を大幅に増やせる可能性がある反面、失敗したときのリスクもあります。最終的にいくらになるかは現時点で把握しにくく、老後の計画が立てにくい側面もあるのが現状です。
退職金は、ある程度の金額が想定できるため、従業員が「何にいくら使うか」「足らない分をどう補うか」を早くから計画しやすいのが特徴です。万が一企業が倒産しても、原資が残っている場合や、債権回収で原資が増えた場合は、従業員は退職金を受け取れる可能性があります。 -
税制上の優遇を受けられる
長年ひとつの企業で勤め上げた労に報いるという性質上、退職金は退職所得控除によって納税額を抑えられる上、ほかの所得とは切り離して計算する「分離課税」が認められています。これらの税制優遇が受けられるのが退職金制度の特徴ですが、この先、退職金課税が見直される可能性もあるので注意が必要です。
退職金制度を利用するデメリット
退職金制度を利用するデメリットは、大きく分けて2つ挙げられます。具体的には次のとおりです。
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早期退職したらもらえないこともある
退職金は、原則として定年まで勤めた人に対して支払われます。早期退職した場合、退職の理由によっては支払われない場合があるので注意が必要です。
企業が早期退職者を募る「早期退職優遇制度」に応じた退職であれば、定年退職した場合より多くの退職金を受け取れる可能性があるものの、自己都合退職では減額になることが多いのが現状です。退職金の支払規程は企業によって異なるため、一切支払いが受けられないこともあります。 -
退職金として支払われる分の給与を、在職中には受け取れない
退職金の支払方法には、定年時にまとめて払う方法と、定年からしばらくのあいだ、年金のように少しずつ支給する方法があります。退職金前払い制度を導入している一部の企業では、在職期間中の給与・賞与に退職金が上乗せして支払われることもあるものの、基本的には退職金を在職中に受け取ることはできません。
外資系企業と日系企業との比較
厚生労働省が実施した「平成30年就労条件総合調査」によると、退職手当制度があると答えた日系企業の割合は、80.5%でした。今も多くの企業が長期間の勤務を前提とした採用・育成の方針であり、退職金制度も定着しているといえます。一方、外資系企業で退職金制度がある企業はごくわずかです。
制度の有無で比較すると日系企業のほうが安心できそうですが、退職金制度は法律上の義務ではないことに注意が必要です。運用は各企業の判断にゆだねられているため、支給金額や支給方法も企業によってさまざまで、退職金制度を廃止する企業も少しずつ増えています。
外資系企業の場合、退職金はなくても、ベースの報酬やインセンティブは充実しているのが特徴です。例えば、年収が日系企業と200万円違えば、勤続38年で7,600万円の差が生まれることになります。貯蓄・運用次第では、日経企業と同等、もしくはそれ以上の生涯年収を得ることが可能です。
外資系企業の成果主義の中でも着実に結果を出せる人であれば老後に対する不安もなく、働くことができるはずです。
退職金のない外資系企業で老後資産を残すには?
退職金のない外資系企業で働く場合、老後資産の残し方を早くから考えておく必要があります。最後に、外資系企業で老後資産を残す方法を3つご紹介します。
毎月貯金する
毎月、手堅く貯金することは、老後資産を残す方法のひとつです。日本の円の低金利が続く2023年現在、預金利子は非常に低く、付与される利息分にはほとんど期待できません。しかし、毎月決まった金額を貯蓄しておけば、定年時には一般的な退職金と同程度、あるいはそれ以上の金額を貯められる可能性があります。
「インセンティブ分は必ず貯蓄する」「毎月◯万円は貯蓄に回す」など、自分なりの貯蓄ルールを決めて着実に実行するのがおすすめです。
資産運用する
資産運用も、老後資産を残す方法に挙げられるでしょう。具体的には、報酬の一部を貯蓄と運用に分散し、個人投資家のための税制優遇制度であるNISAや投資信託などを活用して、長期的に資産を増やすといった方法があります。
自分に合った運用方法がわからないときは、ファイナンシャルプランナーに相談するのもひとつの手です。
企業型DCを活用する
外資系企業では、老後資金を得る制度として、企業型DCを導入している企業が多く見られます。毎月の給与から一定額を自動的に運用に回すことができるため、自力での運用に不安があったり、企業が提携しているファンドで運用したいと考えていたりするなら、企業型DCを導入する外資系企業への転職を目指すといいでしょう。なお、企業型DCで出た運用益は、退職するタイミングで報酬に上乗せする形で支払われます。
老後まで見据えた外資系企業探しは転職エージェントに相談を
外資系企業には、日系企業のような退職金制度がないケースがほとんどです。老後への不安が拭えず、外資系企業への転職を躊躇する人もいるかもしれません。
しかし、外資系企業もさまざまな老後資金対策を用意しています。退職金が課税強化される可能性がある一方で、外資系企業への転職で給与のベースアップができれば、短期間で日系企業の退職金以上の貯蓄を達成することも夢ではありません。
確定拠出年金制度がある企業、外資系企業でも退職金制度がある企業、今より年収アップが見込める企業など、外資系企業もさまざま。老後資金まで見据えて転職を考えている人は、外資系企業の事情に精通した転職エージェントへの相談がおすすめです。
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