「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げ、今までデジタル化が進んでいなかった業界にテクノロジーを持ち込むことで新たな産業構造を作り出しているラクスル株式会社。
成長著しい彼らは、創業10年目の節目を迎え、さらには先日東証一部へ鞍替えも行いました。
今回、テック企業でありながら、一般的なテック企業とは少し違った時間軸で物事を見ている同社の取締役CTOの泉様にラクスルについて、さらには同社のエンジニアについてお話を伺ってまいりました。
テクノロジーの導入で非効率さを変えていく
- 本日はよろしくお願いいたします。
まず、ラクスルさんは印刷、物流、広告という業界でビジネスを展開されていらっしゃいますが、何故これらの市場に目を付けたのでしょうか?
この会社のテーマとしては、大きく2つあります。巨大産業というところと、まだデジタル化されていない非効率が是正できるチャンスが大きいところです。そういったレガシーが残っている市場にテクノロジーを導入することで、その非効率さというものを変えていく。
なるべく既存のものを破壊することなく、効率化が可能なところを的確にターゲティングし、仕組みを作って変えていくということをやっています。
市場選定というところでお話しすると、まずは非デジタル、そして巨大産業というものがある中で、一番初めに目を付けた印刷という分野は、もともとCEOの松本がA.T.カーニー時代に印刷業界をリサーチしていた中で非効率に気付いたことがきっかけです。
印刷業界ではいくつかの大企業が存在しており、それ以外の多くの中小企業が団栗の背比べ状態で存在しています。そして次に目を付けた物流業界も同じような産業構造で大企業の寡占市場になっています。このようにどちらもテーマとしては共通するものがあります。
私たちは決して新しいビジネスを簡単に作っているわけではありません。実際、印刷にしても10年かけてようやくここまで成長させていますし、物流もスタートしてから4年目といったように、長い時間をかけています。
今後も3~4年で1個くらいのペースで新しいビジネスを仕掛けていくというのが続いていくのではないでしょうか。その最新版がテレビCMサービスというところですね。
- ポイントとしては、巨大で非デジタルというところということですか?
そうですね。テクノロジーが入ることによって、非効率がどんどん改善されて効率化されていく余地のある産業ということです。
- なるほど。
- そういえば先日東証一部に鞍替えをされました。改めまして、おめでとうございます。一部に鞍替えをされて、いかがですか?
社内は良くも悪くも花が飾られる以上に何が起きたかといわれると、特に何もないですね。相変わらずプロダクトチームはちゃんとユーザーと向き合っているし、ビジネスは事業と向き合っているし、そこで浮つく感じは全くありません。
逆にもう少し浮ついても良いのでは?と思うくらいです。普通はもう少し浮ついているじゃないですか笑
- 確かに「一部上場したぞ!」みたいな形で鐘を鳴らしたり、華やかだったりするイメージがありますよね。
一応セレモニアルなことなのでそれは別にいいと思います。ですが、だから現場がフォーカスを変えたなどはありません。
- それでは一部に鞍替えをして何か変わったことはありますか?
当たり前のことを言うと、それだけのリライアビリティというか、信頼がきちんとあるという部分だと思います。
もちろんその分我々自身もガバナンスにおいてもそうですし、マインドの引き締めみたいな部分でもしっかりしないといけません。
- より公共性が高くなっていくということですかね?
そうですね。その責任感は持ちましょうというのは当然あるかなと思います。
- 様々な企業様がシェアリングエコノミーという軸でビジネスを展開されている中、ラクスルさんは株価も含めてかなり伸びている要因や強さの源泉はどこにあるのでしょうか?
前述の通り、参入しているマーケットの市場規模が大きく、さらにデジタル化による開拓の余地も大きいというところでしょうか。
もともと3兆円といわれる商業印刷のマーケットがある中で、今後どれだけEC化が進んでいくのか。例えば今ドイツでは商用印刷の約50%がECになっていますが、今の日本は4~5%くらいです。これからまだ10倍くらい伸びていく可能性が大いにあります。
ですので、例えば50%がECになって年間の市場の売り上げが年間1.5兆円くらいになった時にビジネスとして凄いことになってくるというのは、割と既定路線と言えると思います。
このように株価の安定性というのはマクロの設定によって決まっている部分が7~8割くらい説明がつくのではないかなと思います。
また、社会インフラになるようなサービスというところを目指してビジネスを行っているので、そこの部分の安定性というのもあります。
私たちは非可逆的なサービスを作っていると思っています。それは何かというと、例えば印刷で言えば今まではお客様が工場と相対して見積もりを取って、交渉して、そこからUSBでデータを送って、直しが入って、さらに1~2週間経って納品といった流れでした。
それが、ネットでファイルをアップロードしたらすぐにチェックが入って、クレジットカードで決済して終わりという状態になると、その世界は前の状態に戻ろうとはしないじゃないですか。
ですので、一度デジタル化の世界に入ってしまうと、こちら側が伸びるしかありません。そこの安定性というのもあると思います。
- もともと一度変えてしまったら元に戻れない非可逆的な業界に目を付け、産業の構造が変わっていくようなビジネスモデルということですね。
- ちなみにラクスルのビジネスをメインで考えられているのは、松本社長ですか?
そうですね。やはりCEOとしては時間軸の長いところでの思考というのはあります。私の役割はどちらかというと、それを実行していくうえでどのようなプロセスで行うべきかを考える側です。よりプロダクトやサービスよりの部分ですね。
ちなみに今までのサービスでいうと、物流と印刷はCEOの松本のイニシアチブで始まり、テレビCMはCMOの田部が始めました。
それでは松本社長は今も引き続きCEO、経営業もやりながら新しいビジネスを生み出しているということですね。
- 泉さんが前職ディー・エヌ・エーからラクスルさんに転職された経緯を教えていただけますか。
私もディー・エヌ・エーでのキャリアを今後どうしようかなと考えていて、色々なオプションを探していました。
当然自分で会社を立ち上げるみたいなことも考えていたのですが、ラクスルに決めた理由を一言で言ってしまうと、この会社は何かが頭一つ抜けているなと感じたからです。
2015年の4月頃に悶々として上司と話したりしていたのですが、その時期に丁度前職で一緒だったラクスルのCFOの永見と再会し、色々と会社のことを聞く中で松本とも話をしました。
青臭い話ではあるのですが、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というラクスルのビジョンがすごく気に入ったんですよね。世界は良くなる系のことを言っている会社は割と沢山あるんだなと思っていましたが、その中でもラクスルは実際のビジネスモデルだったり、成長の堅調さがとても良かった。
ただこれはラクスルのテックカンパニーとしてのブランディング課題でもありますが、実際に中を見てみるとすごくポテンシャルがあるのに、外から見るとあまりアピールポイントが見えづらい印刷発のベンチャーなんて中々ピンとこないですよね。
AIやってますとか、データ分析ゴリゴリやってますとか、パフォーマンスチューニングやっていますとか、トラフィックこんなに出ていますとか。
印刷のベンチャーってそういう分かりやすい感じではないですよね。
- 確かに。
ただ、一方で事業性みたいなところで考えると、エンジニアとして何かものを作るのならば、やはり意味のあるものを作りたいし事業に貢献できるものを作りたいという想いはあります。
>加えて私の技術力や技術の組織を支える力みたいなことが、何かきちんと意味のあるものに繋がりたいとは思っていたので、その部分がすごく私のイメージと合致しました。これがビジョンの話と、システムが出せるポテンシャルがきちんと事業に結びつくなと直感したという部分です。
加えて個人的な理由ですが、テック組織がまだしっかりと作りきられているわけではなかったということがあります。当時はそれこそfreeeさんとか、メルカリさんとか、Sansanさんのように、エンジニアが100人以上いて割と仕上がっている感があるわけではなかったというのも自分の個人的なチャレンジとしては良かったなと思っています。そういった中で経営メンバーとしてやるというのは中々のチャレンジでした。
Vol.2に続く
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