デジタル化のできていない業界にテクノロジーを持ち込むことで、新たな産業構造を作っているラクスル株式会社。
前回、CTOの泉様にラクスルのビジネスについて、そして泉様のこれまでのキャリアについてお話を伺いました。(前回の記事はこちら)
今回は、ラクスルのエンジニアチームについて、そして採用についてお話を伺ってまいりました。
エンジニアチームについて
- 入社当時エンジニアは何名いらっしゃったんですか?
8~9人ですね。確か、私が10人目という感じでした。
- 入社当時から役員として?
最初はシステム部部長という堅い肩書で、その後CTOに突如任命されました。そして、2017年10月に取締役に就任しました。
- そこから現在の40名弱くらいまでエンジニアが増えてくる間、すべての採用に関わられてきたのでしょうか。
そうですね。色々な方に協力していただきながらですが。
- エンジニアの方たちを採用する際に、どういったポイントを見ていますか?
おっさんぽい人ですね。笑というのは冗談ですけど、先ほど言った通り、結構会社としては地味なことをやっていると思っています。ビジネスロジックも割と複雑ですし、結構気質的にはB2CのサービスよりはB2Bのサービスに近いなと思っていて。やっていることも結構渋いんですよね。社内で話す内容も「コート90のチラシが…」なんて出てきて、渋いんです。地味なんだけど結構深くてディープな世界なんです。
先日ディー・エヌ・エーのエンジニアの方と話をしていた時に「泉さんから聞く話がめちゃくちゃ面白かった」と言ってもらえたんですが、。今までブラウザでのパフォーマンスチューニングなどの課題を持っていた人が、突然「物流での一般のスポット注文におけるマッチング」みたいな話を聞くと、何だこれは!って思うみたいです。
障害にしても、「システム障害で依存関係があるサービスが落ちた」という話ではなくて、「地震が起きました」とか、「大雨が降りました」とか・・・同じ技術を使った課題解決の話でもちがった世界がみえる衝撃があったのではないかと思います。
- 規模が全然違う感じがしますね。
そうですね。それって通常のテクノロジーの話と全然違うじゃないですか。今まで触れていないことに対して興味を持って関わりたいとか、そこに面白みを感じてくれる人というのは、結構マインドとして大事だし、そういう人は楽しめるのではないかなと思います。
- こんなに面白い世界が実はここにあったんだみたいな。
うちの20代の若手もちょっとおっさん臭い人多いんですよね。囲碁をやる人とか・・・
- そういうキーワードでおっさんみたいなということですか笑
そうですね。囲碁をやる人とか、少し物静かであまりやんちゃな感じはしない人が多いですね。ヤングな感じはあまりないです笑 その代わり落ち着きはあります。
- いい意味でのおっさん的な、渋いところに魅力を感じるような方ということですね。
いいんですかね、このままおっさんアピールで笑
分かりやすい魅力でないところを魅力と思える人、気づける人という感じでしょうか。
- マインドセットみたいなところで言うと、表面的な面白さではなく、もう一歩先の見てくれの面白さだけではないところまで突っ込んで奥を見ようとするマインドは皆さん持っているのではないかなと思うのですが。
そうですね。もう一つあるとしたら、時間軸に対する耐性、忍耐力なものもあるかもしれません。やはり産業を変えていくというのはそんなに簡単ではありません。物流もこれまで4年かけてようやくここまできたというのを考えると、エンジニアの転職の中では3年でも結構長いねみたいになるけど、ようやくそれで一つ仕上がるとか、あるいはその兆しが見えてくるという環境に対する耐性はあると思います。
私が「ハコベル」という物流のサービスに関わり始めたのが2017年10月くらいだったのですが、ここに軸足を置いてやるのであれば2~3年くらい覚悟してやらないとだめだなと直感しました。そうしたら一つのフェーズが終わるところまででやっぱり2~3年くらいかかるんですよ。ですので、そういった胆力みたいなものもすごく大切だと思います。
逆に、「とりあえず2、3打席出て、6割でホームラン打つ」みたいなマインドの人はあまり勝てないですね。「コツコツとバントでゴロを転がしてみて」みたいなことを出来る胆力は必要なんじゃないかなと思っています。
- 「早く成果を上げたい」、「早く一人前になりたい」というのも悪くはないかもしれませんが、産業構造を変えていくというので見ると、もっとどっぷり腰を据えて取り組める人のほうが良いということですね。
そうですね。もう少し長い時間軸で見た方がいいなと思いますね。2、3か月で成果が出なくてちょっと悩むなというのは困るなと。
- まだ2、3か月なんて全然だよって
そうですね。ここまで来るのに10年かかっていますもん。その時間軸に対する許容は必要だと思います。
もちろんスキルセットや自分の成長という部分ではもっと貪欲であっていいと思いますけど、プロダクトでインパクトを出すとなると、2年前に仕込んだものがようやく立ち上がるというのはざらにあるので。
- そういった他のウェブサービスとは違う時間軸というのは面白いですね。
そうですね。その良いところは、例えば設計するにしても何か懸念が残るところがあれば、「納得いくまでやってからリリースしようぜ」等の意思決定がし易いかなと思います。あとは、システムのお掃除する時間は取りやすいですね。なぜなら数年のスパンで考えると、別に1日、2日縮めたからといってだから何?って感じじゃないですか笑
だからといって仕事を緩くやれるわけではありません。先日「ハコベルコネクト」というサービスのリリース前にもメンバーと「泉さんこれ、エンドポイントの設計がちょっとぐちゃぐちゃになっていますよね」って30分くらい話をして、「よし、全部掃除しよう!」ってなりました。リリースの最後2週間くらいのタイミングでたぶん1週間くらいかけてエンドポイントの整理をして、スマホから見るURLも全部変えて動くようにして。その結果、そこからの拡張がそれでしやすくなりました。
- 急がないということですか?
焦らないですね。急ぎはするけど焦らないです笑
- なるほど。でも、ちゃんとクオリティの高いものを作ることに対して軸足を置いているから、早く出さなきゃいけないという訳ではないんですね。
もちろん早くスピーディーに出すことを面白いという人もいると思いますけど、私は作るんだったら長く使われてほしいし、1年後の自分ないしは周りの人から何だこの酷いコードはと言われるのも嫌ですし。まぁ、そこに対する心配は無いんですが笑
そうならないように、あまり負債を残さないようにするのも大事だと思います。そういった時間的許容があるのもラクスルらしいなとは思います。
一緒に働きたい方は?
- 同じような質問になるのですが、これから一緒に働く、迎え入れるとなると、どんな方に来てほしいですか?
繰り返しになりますが、じっくりモノづくりに取り組める人ですね
あと触れていないことで言うと、ビジョンへの共感ですね。結局これだけ長いことをやる場合、そこに自分の信じられる何かが必要だと思っています。そういったときに、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンに対して共感があるというのは重要だと思っています。
我々はテクノロジーを持ち込んで、非効率なところに新しい産業構造を作っていくんだ!というミッションに対して前向きになれる、共感できるというのは必然だなと思いますね。長くいる以上、それがないと大変だと思います。
- 我々が紹介した方も何名かご採用いただいているのですが、たしかに最終的にはプロダクトのビジョンや会社のビジョンに共感したからというのが決め手になっているなという感想はあります。
- グローバルという観点のお話を伺いたいと思います。現在ベトナムのオフショア拠点もあるかと思うのですが、ラクスルさんの中でのベトナムの活用方法や、あえて海外のベトナムを利用している重要性、こんな形でうまく連携を取っていますみたいなところはありますか?
今いる現戦力だけですべてをやろうとすると、既存の事業の進捗を止めてしまうんですよね。そして、成長のスピードに対して採用のスピードが追い付かないという状況もあります。
となった時に、足元のかなり複雑なプロセスを磨く、リファクタするというところを行っていると、今後のために色々な弾を仕込んだりすることが出来なくなってしまいます。
今は印刷と物流と広告とそれぞれの事業でフェーズ感がかなり違うのですが、一旦、印刷というところで区切っていくと、所謂技術負債のところをどのように解決するのかというところにエースエンジニアも張っているし、どちらかと難易度が高いのもそこになるので、まずその部分に力を入れてやっているというのもあります。だからと言って未来への仕込みをギブアップするかというと、それも出来ません。
ですので、未来への仕込み≒新しいことにトライするというときに、ベトナムのチームを活用しているというのが今までやってきたことです。
今後はリビルドのようなところ、つまり今のものを良くするというよりは新しく作っちゃえ!みたいなところで彼らにお願いし始めるというのを考えています。繰り返しになりますが、オフショア活用のパターンというところでは新規の仕込みみたいなところをやってもらっています。
こんな事やりたいけどエンジニアリングリソースが足りないから出来ないみたいな状況が続くとビジネスメンバーもフラストレーションたまってしまいますし、そういったところで海外に頼れるところがあればいいなという考えです。
- 通常他社さんですと、オフショア拠点は保守運用みたいなところで活用されているかと思いますが、ラクスルさんは逆なんですね。
そうなんです。逆なんです。逆である理由は、既存サービスのドメイン知識が複雑なので、それを伝達するコストがかかるということやそもそもサービス感覚の掴みづらさというのがあります。
我々が提供しているサービスは、LINEなどの「私の身近にあるサービス」では無く、どちらかというとプロ向けのものになります。そういったところの複雑性、あるいは身近なものではないからサービスのイメージを持てないとなると困るので、出来るところを適切に切り出してやっていただいています。
- なるほど。サービスの特性を考えると、逆に新規の仕込みといった部分のほうが彼らに当てはまるということですね。他のオフショアを活用されている企業さんと異なる活用の仕方は非常に興味深いです。
- ちなみに社内にもグローバルメンバーがいらっしゃいますが、今までのお話を聞く限りこのマーケットを理解するのが難しいのではないかなと思っています。そういった中で、皆さんどのようなところに共感をもってご入社されたのでしょうか。
国籍関係なくそういったビジネスモデルが面白いとか、ビジネスモデルの目のつけどころが面白い。そこのユニークさや単純にカルチャーがフィットしているなど、割と人それぞれだなというのがあります。
■グローバルメンバー声
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前職の同僚が多く会社として面白く働けそうな感じがした
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ビジネス自体が非常に面白く、やってみたいと思った。
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ビジョンに共感を持った
- 実際にグローバルメンバーの方にお話を聞くと、皆さんそれぞれ違った視点でラクスルさんのことを気に入って入社されたんですね。
- ちなみに今後の構想ではビジネス及び人材という側面で、グローバル方向に進もうと考えていますか?それともまだ日本のマーケットで勝負していきたいと考えていますか?
事業面では正直まだ考えていないというのが率直な答えです。日本のマーケットでもまだEC化率が低い中で、あえてそこを急ぐ必要はないよねというのもありますし。
海外において投資という面では今までもしてきましたが、我々が実際に現地で組織を作ってビジネスをするというのは、今のところないです。そこに対する成長の身幅を見誤って失敗しているケースも多々ありますし。
逆に人材面ではテックにおける労働市場でこのままグローバルに間口を開けないというのは無いと思います。
ただし、そこのフェーズ感やステップ論で言うと、まず会社のカルチャー自体がグローバルというのを受け入れやすいようにするということが必要だと思います。例えばグローバルの比率を少しずつ高める。そのステップも、はじめは日本語が流ちょうな方から入っていただいて、徐々にバーを下げていく。
同時に、今いるメンバーもそこに対するアウェアネスというのを醸成させる必要があり、我々自身もオープンにならないといけません。
語学力という面で見ると、より多くの人とコミュニケーションが取れるということが必要になってきます。
そういった中で、我々も専属の英語講師に入社いただいて、単純に語学だけではなく考え方やカルチャーという部分も変えていこうとしています。
- グローバルメンバーの方に合わせてもらうだけではなく、日本人の社員もグローバル環境にアジャストしていく必要があるということですね。
- 今の時代、英語が話せない方もこれから英語が学べる環境で働いてみたいという日本人の方も増えています。ラクスルさんはそういった方も楽しめるような環境があるんですね。
- それでは最後にラクスルさんへ転職を希望される方のメッセージをお願いします。
CEOの松本の受け売りになってしまうのですが、あまり短期志向で物事を考えない方がいいかなと思います。やはり時にはじっくりやるのも大事だよなと。
テクノロジーの進歩は早いですが、すべての業界が同じようにその速さについて行っているわけではありません。
長い時間でじっくり考えていくというのも、今の時代だからあえて選んでもいいのではないでしょうか。
また、少し強いメッセージかもしれませんが、いくつかの分野で今までデジタル化が進んでいなかった原因は、一定程度ソフトウェアエンジニアの怠惰でもあると思うんですよね。実際、色々なものがコモディティ化されて、小売りだったら小売りの中でものすごく効率化を進めています。バーコードのようなものが生まれて、POSで管理が出来るようになって、マーケティング情報がきちんと流れて、物流も変えてしまうといった形でうまく育ってきている業界もあれば、広告を売るためにデータ分析のスピードがどんどん速くなっていく業界もあるじゃないですか。
そこで何故物流や印刷といった誰も目を向けなかったところに目を向けなかったのかと。例えば、印刷物の折り方や物流のスポットでの給車といったところも標準化がなされていません。むしろ「2トンパワーゲートで」などそこで生まれてくる言葉なんかもあって、かなりバラバラな状況です。
そういったところもデータとして正規化して、みんなが共通言語で話せるように標準化しなくてはいけないし。今もこのような状況になっているのは誰のせいって言ったら、そこに関わる人が少ないというのも全体的な理由だと思います。
今あるテクノロジーを追求していくことと同時に、今まだ無いスタンダードを作っていくというところに目を向けると、まだまだテクノロジーの活躍できる場所は沢山あると思います。
- そういったところに共感できる人は是非ということですね。
- ありがとうございました!
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
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