近年、国を挙げて推進されている「DX」は、今後ますます浸透していくと考えられます。同様に、DXを推進していく「DX人材」の需要も拡大していくでしょう。
そこで今回は、DX人材が求められている業界や、DX人材の転職に有利なスキル・経験について解説します。DXの定義についても解説しますので、これからDX人材を目指したい人も参考にしてみてください。
DXとは何か?
DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術やデータを活用して、企業のビジネスモデルを変革することを指します。
今、日本では国を挙げてDXが推し進められ、さまざまな業界でDX人材が求められています。まずはDXについて正しく知り、なぜ需要が高まっているのかを把握しておきましょう。
経済産業省によるDXの定義
経済産業省が2019年7月に取りまとめた「『DX推進指標』とそのガイダンス」では、DXを下記のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
IT技術の進歩でビジネスが多様化する一方で、既存のITシステムはすでに老朽化が進んでいます。そんな状況では、さらなる事業の成長は望めません。
DXを推進することで最新のシステムを構築し、そのシステムを活用することで新たなビジネスモデルを生み出し、発展させることができるのです。
DXの具体例としては、Amazonが有名です。Amazonは、巨大なECプラットフォームを構築することで、それまでの「実店舗へ買い物に行く」という常識を塗り替え、「自宅にいながら何でも手に入る」という通販の魅力を世の中に浸透させました。
このように、DXは企業の働き方だけでなく、ユーザーの行動をも変化させるのが特徴です。
デジタル技術で企業のビジネスモデルを変革するDX
DXは、単なる「IT化」を指す言葉ではありません。
IT化は、「デジタル技術導入によって業務の効率化」を目指すものですが、DXの場合は「デジタル技術を活用してビジネスモデルを作り変えること」が目的となります。
2018年9月に経済産業省の研究会が発表した「DXレポート」では、「2025年の崖」という問題にふれています。
これは、「データの活用やシステムの刷新による経営改革を行わなかった場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」という問題です。この発表は、各企業の経営陣にとっても大きな衝撃だったでしょう。
DXレポートでは、既存のITシステムはアドオンやカスタマイズを重ねたことで複雑化・ブラックボックス化していることや、それに伴うデータ流出をはじめとするセキュリティ問題などが、具体的に言及されています。
だからこそ、DXを推進し、新たなデジタル技術やビジネスモデルに柔軟に対応できるシステムを作り上げる必要があるのです。
DX推進の背景
DXが急速に浸透し、推進されている背景には、政策はもちろん、一般情勢も大きく関係しています。続いては、考えられるDX推進の具体的な理由をご紹介します。
DXの認知度が向上
前述した「2025年の崖」問題の発表以降、DXという言葉は広く認知されるようになりました。そのため、これまでDXに無関心だった数多くの企業の経営陣も危機感を持ち、DXへの取り組みを開始しています。
リモートワークの推進とEC利用の活発化
新型コロナウイルス感染症の拡大も、DX推進を加速させている理由といえます。
「新しい生活様式」により、リモートワークが推奨され、人々の働き方は変容しています。その結果、リモートワークに必要なネットワークの整備やウェブ会議ツールなどの導入が急がれ、以前にも増してDXの必要性が高まっているのです。
また、外出自粛によるネットショッピングの必要性が増えたことも、DX推進を後押ししています。
官公庁でのDX人材募集
2021年9月1日に新設される「デジタル庁」では、「マイナンバーに関するネットワークシステムの構築」や「情報システムの整備」など、専門性が高い分野に取り組み、民間からも職員を登用する予定です。
また、農林水産省も2024年までに省内のデータサイエンティストを100人に増やすことを目標として掲げており、DX人材の需要は高まっています。
DX人材の転職に有利な経験やスキル
DX人材とは、DX実現に向けて具体的な取り組みができる人材を指します。具体的には、「顧客や市場、業務内容に精通しており、データやデジタル技術を活用して何かできるかを理解し、実行できる人材」がDX人材といえるでしょう。
では、DX人材が転職する上で有利なキャリアやスキルには、どのようなものがあるのでしょうか。企業がDX人材として求めるスキルや経験について解説します。
エンジニアとしての実務経験
DX領域では、ITシステムの実装やインフラ構築などを担う人材としてエンジニアが必要になります。そのため、エンジニアとして実務経験を積んでいる人材は重宝されるでしょう。
エンジニア経験者の多くは、ウェブやアプリケーションなど、基本的なITの仕組みを理解しているため、DXにおいても力を発揮できます。
プロジェクトマネジメントのスキル
ビジネスモデルや組織構造まで作り変えるDXは、特定の部門や個人の働きだけでは実現しません。実現するには企業が一丸となって行動する必要があるため、DX領域ではプロジェクトマネジメントのスキルも重要になります。
プロジェクトマネジメントのスキルとは、納期や予算、人員などを適切に管理し、内外とコミュニケーションをとりながらプロジェクトを成功に導くための能力です。
コンサルティングの経験やスキル
ビジネスの課題点を見つけ出して変革を促すDX領域では、コンサルティングの経験やスキルを活かせる場合があります。コンサルティングファームやツールベンダーのコンサルタントなどの経験がある人は、DX人材として活躍しやすいでしょう。
先進技術(AI、IoT)に関する知見
DX領域の業務においては、IT技術に関する基礎知識だけではなく、先進技術についても知見を持っておく必要があるでしょう。なぜなら、IT分野では、頻繁に新しい技術が生まれているからです。
AIやIoT、ブロックチェーンなどの先進技術に関する知識を自社システムに活かせば、DXをさらに推進できるかもしれません。常に最新技術のトレンドを追い、積極的に取り入れていくことが大切です。
DX人材の需要が高い業種
DX人材の需要が特に高い業種として、コンサルティングファームやツールベンダー、SIerが挙げられます。続いては、DX人材の需要が高い業種で、どのような求人があるのかを解説します。
コンサルティングファーム
戦略コンサル、ITコンサルなどのコンサルティングファームでは、クライアント企業のDX推進を支援することがあります。具体的には、DXやマーケティングの戦略策定、各種ツール導入支援などです。
DXをワンストップで支援するコンサルティングファームも多く、営業からコンサルタント、プロデューサー、プランナーなど、幅広い職種の求人があります。DX人材であれば、このようなファームで活躍しやすいといえるでしょう。
ツールベンダー、SIer
ツールベンダーやSIerでは、DXを推進するツールやシステムを扱っている場合も少なくありません。
中でも、マーケティングに関わるMA(マーケティングオートメーション)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)などの需要が拡大しており、これらを扱うツールベンダーやSIerでは、DX人材の採用を強化しています。
DX人材の需要が高い職種
幅広い業界で求められているDX人材ですが、具体的にどのような職種でDX人材が求められているのでしょうか。DX人材需要が高い職種について、必要とされるスキルと併せてご紹介します。
営業
コンサルティングファームやツールベンダー、SIerでは、営業でもDXに関する知見を持った人材が求められています。特に、各種ツールやシステムの営業では、デジタル技術や市場のニーズにも精通したDX人材の需要があるのです。
営業は、DX推進を検討するクライアント企業に対して、コンサルティングやプロジェクト受注に向けた営業活動などを行います。デジタル技術に対する知見だけでなく、クライアントと良好な関係を築くコミュニケーションスキルや論理的思考力、提案力なども求められるでしょう。
コンサルタント
DX領域のコンサルタントは、クライアントのDX戦略を策定したり、プロジェクトの企画立案を行ったりする業務などを行います。そのため、プロジェクトマネジメントのスキルやマーケティングの知識などがあれば、転職を有利に進められるでしょう。
ただし、コンサルタントは企業によって業務内容が大きく異なるため、応募する前に担当業務の範囲などを確認しておく必要があります。
プロデューサー
プロデューサーは、DX戦略のためのツール・システムの導入や、プロジェクトを推進するポジションです。クライアントだけでなく、自社の各事業部門とも良好な関係を築きながら、プロジェクトの全プロセスを統括します。
マネジメントスキルやリーダーシップに加え、業界に関する深い理解、市場の動向の変化を読み解く能力も必要になります。
事業会社のDX推進担当
コンサルティング会社やSIerだけではなく、企業内でDXを推進する企業も増えてきています。そのため、上記のような経験を持つ人材は、大企業をはじめとするさまざまな企業で求められています。
日本では社内でDXを進めるための知見や経験を持っている人があまり多くないのが現実です。そのため、DXにかかわる経験を持つ人材の需要は、今後より高まっていくでしょう。
DX人材は幅広いフィールドで活躍できる
今回は、DX人材の需要が高まる業種や職種のほか、転職に有利なスキルについてご紹介しました。
DX人材の需要は今後も高まると考えられているため、ITやプロジェクトマネジメントのスキルを磨けば、さまざまなフィールドで活躍できるようになるでしょう。
また、DX人材が転職する上で大切なのは、「その企業がDXによって何をしようとしているのか」を把握することです。自身が保有するスキルを棚卸して、どのようなプロジェクトであれば貢献できるか考えてみてください。
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