かつて、ITエンジニアはプログラマーとして開発に携わり、システムエンジニア(SE)やプロジェクトリーダー(PL)、プロジェクトマネージャー(PM)とキャリアアップするのが一般的でした。しかし、IT技術は劇的に進化し、トレンドは目まぐるしく変化しています。IT業界も複雑化し、マネジメントや設計など、上流工程に関わる人だけでなく、特定の技術を持ったさまざまなスペシャリストが求められるようになりました。
選択肢が増えた分、自分がどのようなキャリアパスを描くべきか、悩む人も増えたのではないでしょうか。ここでは、ITエンジニアにどのようなキャリアがあるのか、キャリアパスの考え方についても解説します。
キャリアパスとは?
ITエンジニアのキャリアパスといっても、そもそもキャリアパスという言葉になじみがない人もいるのではないでしょうか。
キャリアパスの本来の意味は、ある職位や職業に就くまでのステップについて、順序や道筋を意味するものです。かつては終身雇用や年功序列が当たり前の中、従業員がその企業での将来像を描き、日々の仕事のモチベーションとなるように、企業が従業員に提示するものでした。
しかし、現在のキャリアパスは、「仕事における最終目的を決め、そこにたどり着くまでの道筋」という意味で使われることが多くなっています。ITエンジニアのキャリアが多様化する今、自分の将来を見据えておくことが重要といえるのです。
「エンジニア35歳定年説」がささやかれていた理由
ITエンジニアとしてのキャリアパスについて、以前は「エンジニア35歳定年説」がささやかれていました。法律では65歳定年制が義務化されていますから、もちろん、この「35歳」は法で定められたものではありません。
では、なぜエンジニア35歳定年説が生まれたかというと、大きく下記のような理由があります。
35歳から体力が低下する
35歳定年説は、2000年頃から聞かれ始めた言葉です。理由はいくつかありますが、ひとつは労働環境でしょう。
この頃から、ITエンジニアの人材不足や急な仕様変更、顧客折衝などで長時間労働が常態化しており、激務のため体力が必要な職種といわれていました。35歳前後から体力が衰え始め、激務には対応できなくなってきます。そのため、ITエンジニアからのキャリアチェンジを余儀なくされる人が多かったのではないかと考えられます。
35歳から学習能力が低下する
35歳定年説が生まれた背景には、学習能力の低下もあります。IT業界は日々新しい技術が登場し、常に情報をキャッチアップしなければなりません。しかし、35歳頃から人の学習能力や意欲は低下するとされています。
トレンドの激しいIT業界で最新技術についていけなくなるため、プログラミングの知識や技術は頭打ちになり、そうなれば能力給の上昇も期待できません。結果的に、現場でプログラミングを行うITエンジニアから、ポジションやキャリアの転換を図る必要がありました。
管理職に就く人が増える
35歳頃から管理職になる人が多いことも、エンジニア35歳定年説の理由です。ITエンジニアに限りませんが、35歳頃から管理職にステップアップする人が増えてきます。IT業界は平均年齢が低いため、なおさらその傾向があるのです。
単純に、年功序列型で人件費が高騰し、人月をベースとした単価と合わなくなるため、35歳を超えた頃からITエンジニアとして現場で働く人が減ると考えられるでしょう。
多様化するITエンジニアのキャリアパス
働き方や体力・意欲などの理由で、かつてはエンジニア35歳定年説がささやかれていましたが、働き方改革の推進などにより、労働環境は改善されつつあります。また、体力や意欲などは個人差がありますし、誰しもが管理職になりたいわけではないでしょう。
新たなプログラミング言語やITシステムが続々と誕生し、ユーザーニーズも高度化する中、ITエンジニアに求められることも多様化しました。かつては単独で進められた開発も、より専門性の高いスペシャリスト同士の協力が必要になっています。
今までは、スペシャリストはその技術が必要とされるものの、「管理職になれない人」のようなイメージを持たれることもありました。現在では、専門性が評価されるようになり、現場で技術を極める選択肢も珍しくありません。
ITエンジニアとしての、スキルや経験を活かしたほかの職種も登場し、ITエンジニアのキャリアは多様化しています。自分がどのようなキャリアパスを描きたいか、よく検討した上で能動的に行動することが必要です。
現在のITエンジニアが目指せるキャリア
これまでは、プログラマー、システムエンジニア、プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーとステップアップするのが一般的だったITエンジニアですが、目指せるキャリアは増加しています。
ITエンジニアが多様なキャリアパスを描くために、上記のようなポジション以外で現在のITエンジニアのスキルや経験を活かせる職種をいくつか紹介しましょう。
セールスエンジニア
セールスエンジニアは、営業を技術的にサポートする職種で、プリセールスやFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)などと呼ばれることもあります。
顧客のIT環境のヒアリングや自社IT製品の技術の説明などを行うほか、導入後の技術的なサポートを行ったり、顧客の意見を開発側に正確に伝えたりといった業務を行います。営業にIT製品や技術についてレクチャーしたり、営業からの技術的な質問に答えたりといったことも、セールスエンジニアの仕事です。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、クライアントのITに関する経営や業務の課題の原因を分析し、解決策の提案や実行支援などを行う職種です。
クライアント企業の業界や業種、市場動向などに対する深い理解が必要とされ、企業の経営層とやりとりすることも珍しくありません。ITツールの導入や現状のツールの改修、ITを利用した業務効率化提案、IT運用コストの削減提案など、クライアントの課題によって解決策は幅広く、IT以外に求められる知識も多様です。
ITアーキテクト
ITアーキテクトは、企業の経営や経営戦略をもとに、ITシステムの設計を行う職種です。経営戦略に沿ったITシステムと、技術的に実現できるITシステムを両立させるために、企画・構想からグランドデザイン、設計までを行います。同時に、開発効率や品質の管理・向上といった開発のマネジメントもITアーキテクトの仕事であり、ビジネスとシステムをつなげるための幅広い知識が必要です。
ITコンサルタントの線引きがあいまいなケースは多いですが、ITコンサルタントが企画したシステムを具体的に実現し、運用する方法を考えるのがITアーキテクトの役割です。
ITスペシャリスト
ITスペシャリストは、ITの分野の特定の領域で一定以上のスキルを持つ技術者を指します。経済産業省では、ITスキル標準(ITSS)が定める6分野で、レベル3以上のスキルをひとつでも習得していることがITスペシャリストの基準としています。
専門性の高いIT技術に関して、知識とスキルの面でプロジェクトをサポートすることが、ITスペシャリストの仕事です。ITコンサルタントやITアーキテクトなどと違い、プロジェクト全体ではなく、一工程に専門家として深く関わります。
フルスタックエンジニア
フルスタックエンジニアは、設計や開発、運用、保守、改修といったITエンジニアの業務すべての知識とスキルを持っている技術者です。マルチエンジニアとも呼ばれ、通常は複数人で行う開発を一人で行うことができ、企業側は人件費の削減が可能なことから需要が増しています。
広範な業務に携わるため、プログラミングはもちろん、OSやミドルウェア、クラウ
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャー(PdM)は、プロダクトに対する責任と最終決定権を持つ立場です。開発フェーズから、マーケティングやUXデザイン、リリース後の改修、カスタマーサクセスなどを一貫して担当し、プロダクトによる利益創出を目指します。
プロダクトのライフサイクルすべてに関わるため、企画、営業、開発、法務、財務といったさまざまな部署を取りまとめることも、プロダクトマネージャーの仕事です。
VPoE
VPoEは、Vice President of Engineeringの略で、エンジニア部門のマネジメントの責任者を指します。エンジニアの採用や管理、育成、評価などの責任を持ち、組織の体制づくりと成長に貢献する仕事です。欧米では一般的ですが、日本では最近注目され始めました。
混同されがちなポジションとしてCTO(Chief Technology Officer)があり、VPoEと同様に技術部門の責任者ですが、CTOは経営サイドの技術領域の意思決定に責任を持ちます。CTOの定めた経営戦略の実現のために、エンジニア側でメンバーをまとめ、業務が円滑に進むように導くのがVPoEです。
エンジニアのキャリアパスを考えるポイント
目指すキャリアによって必要な経験やスキルは違います。早めにキャリアの方向性を決め、対策しておかなければなりません。続いては、エンジニアがキャリアパスを考えるためのポイントについて見ていきましょう。
大きく方向性を決めておく
キャリアパスを考える際、軸となるのは将来どのポジションに就きたいかです。ただし、具体的に今すぐ考えられないという人もいるでしょう。
エンジニアのキャリアパスは、ひとつの分野を極める「スペシャリスト」、幅広いスキルや知識を持つ「ジェネラリスト」、部門やプロジェクトを管理する「マネジメント」と、大きく3つに分かれます。まずは、自分がどの方向に進みたいか考えてみてください。今後選択すべきことが明確になり、転職エージェントなどを利用する際も適切な企業を紹介される可能性が高くなります。
自己分析して目標を明確に
キャリアパスを描く上で重要なのは、自己分析を行うこと。自己分析の方向性は2つあり、ひとつはどのような経験をして、その際に何を感じたかという「自分軸」です。何に向いていて、何をしているときにやりがいを感じるのかがわかれば、目指すキャリアのゴールを定めやすくなります。
もうひとつは、ITエンジニアとしてどのようなスキルがあり、苦手と得意は何かという「スキル軸」です。現在のスキルがわかれば、キャリアのゴールに対してどのようなスキルを伸ばすべきかがわかります。
ITエンジニアのキャリアパスの相談は転職エージェントに
ITエンジニアのキャリアパスは多様化しており、キャリアアップの方向は管理職だけではなくなりました。スキルを極めて生涯現場で活躍することを選んでも、キャリアアップは可能です。
しかし、キャリアパスが多様化したために、自分がどのようなキャリアパスを描くべきかわからなくなった人も増えています。そのような場合は、転職エージェントに相談してみてください。すぐに転職を考えていなくても、ITエンジニアとしての今後のキャリアについて、相談にのることが可能です。自分が目指したい方向を見つけて、着実にステップアップしていきましょう。
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