「今の会社でいつまで働けるかわからない」「どんな仕事でも通用するスキルが欲しい」と悩んでいませんか?終身雇用制度が崩壊した現在の日本では、常に転職を視野に入れながら働いている人も多いことでしょう。そこで今回は、業種や職種にかかわらず通用する、「ポータブルスキル」について解説します。ポータブルスキルを理解することで他業種への転職も有利に進められますので、ぜひ参考にしてみてください。
ポータブルスキルとは?
ポータブルスキルは、「業種や職種にかかわらず、どんな仕事でも活かせるスキル」を指す言葉です。厚生労働省が提唱した言葉で、これからの時代の働き方で特に重要な能力と考えられています。
ポータブルスキルは、直訳すると「持ち運びができるスキル」という意味がありますが、英語圏では「transferable skills(移転可能なスキル)」と表現されることもあります。このことから、「どんな仕事にも持ち込むことが可能な汎用性の高いスキル=ポータブルスキル」と覚えておくといいでしょう。
ポータブルスキルが重要視されるようになった背景には、下記のような理由が挙げられます。
終身雇用制度の崩壊
終身雇用制度の崩壊は、ポータブルスキルの重要性を高めたといえるでしょう。なぜなら、業界や企業独自のスキルだけを磨いていた場合、転職先の企業の働き方に対応できなくなるためです。
終身雇用制度が機能していたかつての日本では、新卒から定年まで同じ会社に継続して勤務する人も多くいました。そのため、「企業や業界特有の専門的なスキル」を磨くことが、昇給や出世といったメリットにつながりやすかったといえるでしょう。
しかし、現在の日本では、転職が一般的になり、生涯にわたって同じ企業に勤めるという人は少なくなりました。新しいことに挑戦したり、海外で働いたり、自ら起業をする可能性もあるでしょう。働き手がキャリアを積む過程で転職を重ねるというスタイルは、もはや一般的となっています。
このような背景もあり、「専門的なスキル」よりも「どんな企業・業界でも役立つスキル」を磨くことがより重要になっているのです。
ITの発展による働き方の変化
IT化による働き方の変化も、ポータブルスキルの重要性を高めているといえるでしょう。これは、どのような状況でも活躍できる人材が求められるようになったためです。
昨今ではテレワークを導入する企業が増加し、職種や業種によっては「いつでも」「どこでも」働ける環境が整いつつあります。また、今後もITの進歩によって働き方が大きく変わる可能性は少なくありません。
しかし、もしもポータブルスキルを持ち合わせていない人材の場合、旧態依然とした働き方にとらわれて新しい仕事のやり方に適応できなくなる場合があります。
ITの発展によるめまぐるしい環境の変化に対応するためにも、ポータブルスキルを磨くことが大切といえるでしょう
グローバル化
ポータブルスキルが求められる要因として、グローバル化も挙げられます。なぜなら、国内外の企業と競争する場合には、幅広いスキルが求められるからです。
先述したITの発展などにより、日本企業のグローバル化は大いに加速しました。しかし、グローバルに活躍するということは、それだけ競争相手が増えることも意味します。
すると、これまでのように専門的なスキルだけを伸ばしても、競争に打ち勝てないといった場面も増えてきました。
こうした状況を打開するためにも、特定のスキルだけでなく幅広く活躍できるポータブルスキルも備えた人材が必要とされているのです。
具体的なポータブルスキル
ここまで解説したように、ポータブルスキルは多くの仕事で求められる重要な能力です。では、具体的にはどのような能力がポータブルスキルといえるのでしょうか
前提として、「どこからどこまでがポータブルスキルなのか」という明確な線引きはありません。また、「特定の資格を持っているからポータブルスキルがある」といえるものでもありません。身につけるべきポータブルスキルは一人ひとりのキャリアイメージによって異なり、誰にでもあてはまる正解はないと考えていいでしょう。
ポータブルスキルの基準としては、厚生労働省が掲げる下記の3つの項目が参考になります。
専門技術・知識
業種や職種が変わっても通用する能力であれば、専門技術・専門知識もポータブルスキルにあてはまります。外国語など汎用性の高い特別な技術を有する人材は、市場価値が非常に高いといえるでしょう。また、業界に対する理解が深ければ、他業種でも知識を活かせる可能性があります。
しかし、技術や知識を持っているだけでは、ポータブルスキルがある人材とはいえないでしょう。専門的な技術・知識をどんな場面でも有効活用するためには、後述する「仕事のやり方」と「人との関わり方」のスキルも磨いておく必要があるのです。
仕事のやり方
仕事の効率化を図り、スピーディーに進める能力は、どんな業種や職種でも必要になるでしょう
厚生労働省が仕事の進め方で重要視しているのは、下記の3点です。
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課題を明らかにする能力
- 仕事を効率的に進める上でまず大切になるのは、課題を明らかにすることです。そのためには、情報収集や分析を行い、適切に現状を把握する能力が欠かせません。 -
計画を立てる能力
- 課題を設定した後は、それを達成するために計画を立てる必要があるでしょう。計画は漠然としたものではなく、目標となる数値から期間、関係者の数など具体的に決めることが大切です。 -
実行する能力
- 課題を解決に導くためには、実行力も必要になります。この場合の実行力には、自身の役割を果たす力だけではなく、メンバーのスケジュール管理や何か障害が見つかったとき、臨機応変に対応する柔軟性なども含まれます。
なお、上記のように順序立てて課題を解決するためには、論理的思考力も必要になると考えられます。
これらの能力を兼ね備えた人材は、たとえ業種や職種が変わっても仕事を効率的に進め、大きな成果をあげられるはずです。
人との関わり方
人と一切関わりのない仕事はまれであるため、人間関係のスキルはどの業種・職種にも通用する能力といえます。
コミュニケーション能力に長けていれば、部下の評価や指導、育成といったどんな企業にもあるプロセスを効率的に進められます。上司からの指示に従う素直さや、自身の役割を理解して動く能力も対人スキルといえます。また、顧客や取引先など、社外の人と信頼関係を構築することは、どのようなビジネスにも役立つでしょう。
ただし、仕事におけるコミュニケーション能力とは、単に社交性だけを指すものではありません。
例えば、リーダーシップを発揮してチームを引っ張るような人材には、自分の主張を強く持って相手を納得させる能力などが求められます。また、メンバーに的確な指示を下す統率力も必要です。
一方、相手の意見や要望に耳を傾け、配慮する能力も仕事に大きく貢献します。このような人材は場の空気を読むことができるため、プロジェクトの補佐に向いています。
ポータブルスキルを身につけるには?
人によって、身につけるべきポータブルスキルの内容は変わってきます。では、自分が必要とするポータブルスキルを見極め、身につけるためにはどう行動すればいいのでしょうか?
3つのポータブルスキルを意識して仕事を行う
まずは、前述の「課題を明らかにする能力」「計画を立てる能力」「実行する能力」という、3つのポータブルスキルを意識して仕事に取り組むことが大切です。
また、現在の仕事で扱う専門的な技術や知識のうち、ほかの業界にも役立ちそうなものがないか常に探りながら仕事をするといいでしょう。
具体例を挙げると、IT業界に勤務している人の場合、プログラミングの知識はほかの業界でも役立つ場合があります。ほかにも、財務会計やマーケティング、語学力など、ポータブルスキルとして扱える技術・知識はさまざまです。
自分の強み・弱みを洗い出し、強みの活かし方・伸ばし方を検討する
自分でもまだ気づいていないポータブルスキルがあるかもしれません。そのため、一度自身の強み・弱みを洗い出し、どんな業界にも通用する汎用性の高い能力を探してみるのがおすすめです。
例えば、スケジュール管理の能力も、鍛え方次第でポータブルスキルになる可能性があります。単に期限を守るだけではなく、もしものトラブルに備えて予備の人的リソースを確保するなどの施策を講じることができれば、プロジェクトリーダーとして有用なポータブルスキルを持っているといえるでしょう。
また、客観的な意見を取り入れるために、仕事の上司やキャリアコンサルタントなどに相談するのもいいかもしれません。独りよがりな視点ではなく、周囲の人がメリットを受けられるようなスキルを探すことが大切です。
弱みはどう改善するか、付き合うかを考える
自身のウィークポイントと、どう向き合うかも大切です。
例えば、自身の欠点として「決断力の弱さ」を挙げ、もっとスピーディーに行動を起こさなければと考えている人がいたとします。
しかし、この一見弱みに見えるポイントも、捉えようによっては「じっくりと検討をし、慎重に意思決定を行える」という強みに転じる場合があります。
自身が弱みだと思っている部分にも、良い側面が存在する可能性があります。その上で、自分のウィークポイントとどう向き合うかを考えましょう。
ポータブルスキルは転職希望者以外にも重要
今回は、業種や職種の垣根を越えて通用する、ポータブルスキルについてご紹介しました。
ポータブルスキルが重要になるのは、転職希望者だけではありません。近年はグローバル化や新しい技術の発達によって今までなかった事象が起こる可能性がある時代といえます。いつ、何が起こるか予測がつかないからこそ、日頃からポータブルスキルを意識して仕事に取り組む必要があるでしょう。
また、このように不安定な経済環境を表す「VUCA」という言葉もあります。VUCAについて詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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