明けましておめでとうございます。元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本年もどうぞよろしくお願いします。
2022年は企業人事の方向けではなく、個人の方へのメッセージを記事のテーマにいたします。本日のテーマは、外資系で求められる英語力についてです。TOEICの点数を上げようと勉強されている方が多い中、どのくらいの点数を目指せば良いのかわかっていると効率が良いです。
「英語がペラペラでないと外資には入社できない」とよく誤解されますが、実際には、英語力が求められる部署や職種もあれば、あまり必要でないケースもあります。良く聞かれる外資系で求められる英語力の目安について、25年間、9社の外資系人事でたくさんの社員の方を見てきた肌感覚を共有します。
最初に私はTOEIC信奉者ではないことをお伝えしておきます。点数が高くても話せない人がいることは理解しています。ただ、ビジネス英会話に問題ない方で、TOEIC850点以下の方にお目にかかったことがないのも事実です。英語で必要とされるロジカル思考などを身につけた上でTOEICを受ければ、850点くらいは取れるということなのでしょう。このコラムでは必要な英語力をTOEICの点数でお話しします。外資・日本法人の人事が一番の目安にするのはTOEICだからです。
15年前くらいまで、外資系で求められる英語力を説明するのは簡単でした。ほとんどの場合が、役職の上下で決まっていたからです。時は流れ、現代は役職の上下だけでは求められる英語力が決まらない時代です。
現在は、実際に職場で外国人と接するかどうか、グローバルに仕事をしているかどうかが鍵になります。実例を挙げます。法務部のNo.2で、上司の法務部長は日本人です。自分が仕事で英語を使うことはほとんど無いのが実情です。かたや技術部の24歳のエンジニア。人手が足りず海外と連携して進めるプロジェクトの、メンバーに任命されました。日々のEmailのやり取り、毎週の定例ビデオ会議など頻繁に英語に触れる機会があり、役職はスタッフですが英語は必須です。役職の上下を問えば、エンジニアの方がかなり下ですが、グローバルに仕事をしているのでより高い英語力が必要です。
4つのカテゴリーごとに求められる英語力
求められる英語力について4つのカテゴリーに分けて説明します。
1. マーケティング & 人事
この2部署は、社内で求められる英語力が最も高いです。スタッフでTOEIC750-800点、マネジャーでTOEIC800-850点、本部長でTOEIC900点くらいは必要です。
まずマーケティングですが、数字で測れる売り上げに貢献している部署であると同時に、広告など感性に関する会話が多い部署でもあります。「キービジュアルが何となくピンと来ない」など、ゼロイチで割り切れないことをたくさん表現する必要があります。またグローバルに使って良いテンプレート・ロゴ・フォント・レイアウトなど、本社からの制約が一番厳しい部署でもあり、時々は本社に掛け合って交渉もするのでかなりレベルの高い英語力が必要です。
次に人事。こちらは「人」を扱っているので、「メンタルにダウンしたマネジャーについて本社の耳に入れておこう」「ある社員が結構な時間ネットサーフィンをしていると垂れ込みがあったけど、この先どう調査するか」など複雑な状況を英語で説明することが多いので、英語力はかなり必要です。
この仕事に高い英語力は必要なのだろうかと迷ったら、仕事の内容が「ゼロイチで割り切れるか」「数字でだいたい説明がつくか」を考ると、わかりやすいです。答えがNOで、「言葉」で説明しないと成り立たない仕事であれば、高い英語力が必要です。
2. かなり多くの部署
スタッフでTOEIC600点、マネジャーでTOEIC800点、本部長でTOEIC900点くらい必要です。
日本人のTOEIC平均点は2019年のデータで、523点です。しばらく英語に触れていないと、最初のTOEICのスコアは低いかもしれませんが、中学英語を学んでいればTOEIC600点を取るのはそれほど難しくはありません。忘れていた英語を思い出せば良いからです。TOEIC800点にするには、読む・書く・話す・聞くの4要素の実力を少しつけることになりますが、目標を立てて努力すれば実現可能です。
3. 営業・技術・社内IT
スタッフでTOEIC500点、マネジャーでTOEIC650-700点、本部長でTOEIC800点くらいが求められます。
まず営業ですが、上記のスコアは顧客が日本人向けであることを想定しています。外国人向けのセールス、国外営業は上記のスコアでは勿論足りません。お客様が日本人の時、会話は日本語でなされるのでセールス・パーソンに高い英語力は必要ありません。とは言え、社内で回ってくる英語のEmailを読む機会もあるので全く英語ができないと採用されない可能性が高いです。
役職があがると他部署にいる外国人の管理職と仕事で関わることも出てくるので、少しずつ高い英語力が必要になります。本部長でもTOEIC800点で良いのは、営業のトップに就く方は「コミュニケーション力」がもともと高い人材が多く、度胸で乗り切ったり愛嬌で相手の懐に入っていけるからです。
技術部門、SEやプログラマーは本来ゼロイチの世界で生きており、文法というルールはあるけれど基本的にフィーリングが大事な語学は、得意ではないことが多いです。私はIT企業に2回在籍したことがあり、英語ができる日本人エンジニアを探せなくて往生しました。裏を返せば、英語ができる日本人エンジニアは、年収を劇的に上げることができる職種No.1ということになります。
こちらも役職が上がるとともに求められる英語力は少しずつ上がりますが、本部長でも会話力を含めると800点くらいで十分です。
4. 工場・物流の現場
業種によって工場が国内にある場合、ラインの組み立てスタッフに英語力は必要ではないですが、リーダーになった途端、使っている機器のマニュアルを読んでスタッフに説明する場面が出てきます。AI翻訳の進化で、リーダーでも英語が必要ない時代が来るかもしれませんが、現時点ではマニュアルが100%日本語になっていることはないので、リーダーになったらTOEIC500点くらいはないと務まらないのです。
まとめ
全ての部署を4つのカテゴリーに分けて、役職ごとに必要な英語力の目安について解説しました。あくまで目安なので、800点と書いてあっても、760点の方にもチャンスは当然あります。
書類上の点数より、実際に何とかできる英語での「コミュニケーション力」を企業は求めています。いつもポジティブで人と仲良くなることが得意なタイプなら、仕事で点数以上のコミュニケーション力を発揮できます。
「目安」の点数にとらわれず、トライしてみたいと思ったらぜひ外資系に挑戦して欲しいです。最初は英語力が足りなくても職場で自然と鍛えられますし、手軽に英語を学べるツールがたくさんある素敵な時代なので、本人次第で何歳からでも英語を学ぶことは可能です。頑張りましょう。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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