元・外資系人事部長、現グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日のテーマはWell-beingです。
秋はカンファレンスの多い季節です。人事の領域でも様々なカンファレンスが開催されており、最新トレンドを入手する絶好のチャンスです。この秋、Well-beingという単語をよく耳にします。「精神的にも身体的にも、そして社会的にも満たされている状態」を指す言葉が、なぜこんなにも旬なキーワードなのか、また具体的にどんな施策が考えられるのかを振り返ります。
大きな時代背景として、ミレニアル世代(諸説ありますがここでは、1981年-1994年生まれ)とZ世代(1995年-2002年生まれ)の台頭が考えられます。日本でも2025年には人口の50%を占めるだろうと言われるこの2つの世代は、人生における価値観がそれまでの世代とは異なります。
以前は、「キャリアとプライベートを切り分けない」「社会的な成功を追い求める」傾向にありましたが、ミレニアル世代・Z世代は、「やりがい」「社会貢献」「コミュニティ」を大事にしたい気持ちが強く、自己犠牲を払ってがむしゃらに働くことを良しとする人材は少ないのが特徴です。
株主最優先で当然の考え方を受け入れていた世代とは一線を画し、ステークホルダー(企業に対して利害関係を持った人)が優先されるべき、その中にもちろん株主も含まれるけれど、顧客・地域社会などと並んで「自分たち社員」も含まれると考えています。
少子高齢化が加速して人材不足が進む将来を見据えると、彼らを人材として確保し優秀な人材に辞めないでもらうためには、彼らが重視している”Well-Being”をどのように提供できるかを考える必要があります。
企業側がWell-being施策を導入する主な目的
企業側がWell-being施策を導入する主な目的は、以下の3つです。
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社員にやりがいを提供することで離職率を低下させる
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社員のエンゲージメントの向上
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社員の心身の健康度を上げる
これらを満たすという意味で、2016年にユニリーバ・ジャパンが導入した人事制度「WAA」が参考になります。
WAAは、すべての社員が それぞれのライフスタイルを継続して楽しむことで自分らしく働き、生産性を高めることを目的としています。 パンデミックのために、にわかに作成された制度ではなく、将来を見据え、社員がもっと時間的拘束を感じないで、より自由に仕事ができるよう策定されています。
「WAA」は”Work from Anywhere and Anytime”の略で、働く場所・時間を社員が自由に選べる制度です。
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上司に申請すれば、理由を問わず、会社以外の場所(自宅、カフェ、図書館など)でも勤務できる。
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平日の6時~21時の間で自由に勤務時間や休憩時間を決められる。
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全社員が対象で、期間や日数の制限はない。
WAAの導入により、さまざまな働き方が可能になります。
さらに、Google社が従業員のウェルビーイング向上が、組織の生産性向上に重要であると2012年より導入している「プロジェクト・アリストテレス」も参考になります。 「プロジェクト・アリストテレス」では社員の「心理的安全性」の担保が軸になっており、社員がリスクのある行動を取った時、それが他者から受容される状態が望ましいとされています。例えばチーム内で1人のメンバーが失敗をした時に、周囲からネガティブな反応ばかりが返って来ると心理的安全性が低く、失敗を受容し「よくやった、次はこうしてみてはどうだろう」などとフォローしてもらえる場合は心理的安全性が高いと考えます。 企業内のウェルビーイング向上が、結果として生産性の向上にもつながる具体例といえます。
労働人口を構成する世代が交代することを視野に入れ、Well-beingを重視した人事制度の構築こそが、将来の優秀な人材確保・離職率の低下につながります。まずはマクロの制度設計を行い、導入可能な施策から取り入れていきましょう。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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