元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、これからの人事に求められるスキルです。

AI & DXと言う単語をメディアで耳にしない事がない時代となりました。データ分析はAIが行った早くて正確でしょうし、仕事によってはロボットに頼んだ方が効率が良いと言う時代に突入しています。

あまりデータと関係なさそうな人事の分野も影響を受けます。 人でなくてもできる仕事をAIがやってくれる時代にこそ、「企業は人なり」が一層当てはまると言えます。人間だからこそ発揮できる価値を見つけ、活かすべきなのです。

CHROに求められること

いわゆるCHRO(人事最高責任者)を目指す方は、今まで以上に戦略的である必要があります。オペレーショナルな日々の業務に埋もれず、部下に任せもしくは部分的にAIに任せ、自分はもっとマクロな視点で大きな戦略を考えられる力量を持ちたいです。 近い将来、投資家と直接話せるほど、会社の経営状態を把握していることが求められるでしょう。生粋の人事より、営業出身者など、他部署を経験している人材の方が有利になるかもしれません。

人事マネージャーに求められること

次に人事マネージャーに求められることについてです。例として採用担当マネージャーを挙げてみます。 日本でも最先端を行く企業ではすでにAIでの面接が始まっており、一次面接はAIが行っている場合があります。今まで面接官の属人的なスキル・経験・勘に頼っていた選抜が、AIによって行われるわけです。

オンラインサロンのメンバーが、4年前にNZエアラインとオンライン面接した時、すでにAI面接だったそうで、日本でも広がっていくでしょう。 対面をよしとする文化が根っこにあるので、どのくらいのスピードで広がるかは注視したいところです。今のところ国内ではAIが通さなかった履歴書や面接の動画を、念のために人事がマニュアルで再スクリーニングしていることが多く、AIの決めた合格・不合格が100%正しいと言う結論になっているそうです。

これからの採用担当マネージャーに求められる一番重要なスキルは、いかに面接官として優秀かではなく、採用の戦略を立てられるかになっていきます。 様々なデータが抽出できるようになり、出てきたデータをいかに戦略に活かせるかという意味で、データ分析力が必要になります。研修セクションは、なんとか費用対効果を計算できないかと部門から求められそうです。福利厚生・労務・海外人事・HRBPなど全ての人事に「データ分析力」が今より求められることになるのです。

AIの到来とともに、データ分析力が人事の人間に必要になると言うのは皮肉です。イメージとしては、「人間」を扱うので「感情」「心理」「人間関係のもつれ」など、フィーリングに頼る部署と思われがちですし、今まではそうでした。 これからは、社員の生産性を上げるため、ワーク・ライフ・バランスをより高めるために、人事に眠っている様々な指標データを駆使する時代です。

元部下で、外資の人事本部長と話をしたところ、「自分の部下でデータ分析が得意なのは、福利厚生チームのメンバー位なので、これから人事のメンバー全員にどうやってデータ分析力をつけるのかは頭が痛い」と話してくれました。 彼女自身は、CHROになるために「もっと経営を理解できるようにならないと」と言いながらため息をついていました。

時代が変わると、同じ職業に求められるスキルセット・マインドも変わります。AI & DXは大きな変化をもたらし、ルーティンの計算など人間の生産性を挙げてくれるメリットがありますが、自分自身に求められるスキルセットが変わるという側面を持っています。人事にいる自分には関係ないと思わずに、将来を見据えて必要な情報を早めに入手することをお勧めします。

まとめ

自分は最先端の情報を入手できるタイプではないと思ったら、情報入手が得意な方とネットワーキングして、人事として付加価値が高い人材になることを目指しましょう。

2021年、これが最後の記事になります。皆様お読みいただきありがとうございました。ますますのご活躍と人事としての飛躍を心よりお祈り申し上げます。

2022年は、転職を考えている候補者の方向けの記事を連載することになります。

来年度もどうぞよろしくお願いいたします。

プロフィール 

Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)

株式会社AT Globe 代表取締役社長　　

GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。１万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を８回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。

診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講

STAR面接技法 認定講師

ホフステード6次元異文化モデル　認定講師

お茶の水女子大学卒業。

著書

2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版）

2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」（日本実業）