元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは外資系と日本企業の大きな違いです。日本企業から外資への転職を考えている方は適性を確認してください。すでに外資にいてストレスを感じている方は、その理由がわかり腑に落ちることを願っています。
もちろん、すべての差について解説するのは紙面の都合で難しいので、今回は大きな違いについてお伝えします。
1. 企業文化
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外資系企業 – 個人主義
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日本企業 – 集団主義
外資系企業の個人主義はどこに一番現れるかというと、JD(Job Description)=職務記述書を超えた仕事を、気軽に引き受けないこと。日本人が多いので全くやらないということではありませんが、仕事に穴があかないように全員草野球で球を拾うという精神はないです。事情でJDを超えた仕事を部下に頼む必要がある時は、一方的に指示するのではなくきちんと理由を話して依頼するのが基本です。
日常のわかりやすい例にすると、ランチタイムは個人の時間なので、一人で食べたい人、気の合う同僚と食べる人など様々なのが外資。毎日ランチのメンバーが同じで、時にはその中に上司もいるという習慣は存在しないのが、外資系の個人主義の日常例です。
2. 経営サイクル
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外資系企業 – 短期的視野
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日本企業 – 長期的視野
東京商工リサーチがまとめた全国「老舗企業」調査によると、2017年に創業100年以上となる国内企業は3万3069社に達することが分かっています。日本企業が長期計画に基づき、人材を育成しながら経営していくのに対して、外資系の企業は本社の国にもよりますが、比較すると短期的視野で経営されています。アメリカに100年超える企業は何社あるのかサーチしましたが、信憑性があると言い切れるデータに辿り着けないのは、長く続くことが重視されていないことの表れとも言えます。
外資系が短期的視野で経営されていることは、「想定外」「変化」が起こりやすいことに繋がります。急に起きる変化に対処するのが得意かどうかは、外資に向いているかどうかを判断する一つの大きな指標です。
3. 最終決定権
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外資系 : 海外本社にある
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日本企業 : 日本にある
この指標も重要です。例えば、人事で給与・昇格制度を変更したいとします。本社が決めている大枠の中に収まる変更であれば問題ありませんが、ゼロから日本法人独自の制度を作ることはまずできないです。日本企業の場合は、プランを作成するのは本社がある日本なので、ゼロから作成することができます。この差は大きいです。
マーケティングのブランディング戦略に携わっているとします。外資系では本社が決めたポリシーに則る必要があり、日本市場へカスタマイズするときには詳しい説明が必要です。ブランド力が高い外資では、交渉しても日本側の提案が通らない可能性もあります。
外資系で昇進すると、本社と日本法人の間に挟まれることが多くなります。外資に勤めるからには、この「最終決定権は日本法人にない」点を割り切らないと、ストレスを溜めることが多くなります。
4. 求められるコミュニケーション能力
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外資系 : ほどよく主張できる、明確に説明できる、YES/NOが言える力
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日本企業 : 周囲と和するコミュニケーション力
外資系では主張が強い外国人社員と仕事をすることになります。文化的な背景で90の実力を130に見せる人もいるわけなので、「謙譲の美徳」は存在せず「能ある鷹は爪を見せる」ことが重要になります。キャリアの個人相談で、非常に謙虚な方には外資系をお勧めしないことも多いです。どちらが良い悪いではなく、企業文化・勤めている人材のタイプが違うからです。
日本人が得意な「ハイコンテクスト」のコミュニケーション、つまり行間を読んだり、腹芸をしたり、あ・うんの呼吸は外資系では通じないです。相手が空気を読む文化で育っておらず察するという行為をしてくれないため、口に出した言葉そのままだけが伝わることになります。ロジカルでなかったり、説明が足りていなかったり、曖昧な単語選びをしていると誤解を招きます。
例えば「前向きに検討します」「善処します」「相談します」は、外資系では使われないフレーズです。外国人社員に、検討・善処・相談した結果を必ず聞かれることになるので、明確でない言葉を使わない習慣が身についた社員ばかりだからです。
まとめ
本日は、外資系企業と日本企業の大きな特徴の違いについて、振り返ってみました。日本企業から外資系への転職を考えている方のヒントに、また既に外資系勤務であられる方が、「あぁそうだった」と思えたら幸いです。外資系・日本企業のどちらが良い悪いはないですが、どちらが自分に合っているかは存在しますので、キャリアの方向性を決める前に客観的に振り返ってください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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