外資系企業に、漠然と「高年収」というイメージがあるのではないでしょうか。実際、外資系企業勤務者の平均年収は、日系企業勤務者の約2倍にあたる、およそ800万円といわれています。額面だけを見れば、確かに高年収にカテゴライズされるかもしれません。
しかし、両者の給与の内訳は大きく異なります。代表的な例が「ボーナス」でしょう。外資系企業への転職を考えるにあたり、日本人がこれまで慣れ親しんできたボーナスは引き続きもらえるのか、心配になっている人もいるかと思います。住宅や車のローンの支払いでボーナス返済をしている人であれば、なおのことです。
そこで今回は、外資系企業でボーナスがどのように扱われているのか、詳しく解説します。外資系企業への転職を検討中の人は、ぜひ参考にしてみてください。
日本のボーナスは定期給与と別に支給する給与
「bonus」を英和辞典で引いてみると、「特別手当(支給品)」や「思いもかけぬ贈り物、おまけ」といった意味が出てきます。一般的に日本においては、「従業員に毎月支払われる固定給とは別に支給される給与」の意味で用いられることが多いでしょう。具体的には、夏・冬に臨時に支給される一時金を指します。
日系企業で支給されるボーナスは、「賞与」や「夏季手当」「年末手当」「期末手当」、労使交渉の場だと「年間一時金」と呼ばれる場合もありますが、基本的にはどれも同じような意味合いです。明治時代から続いている日系企業の文化といっても過言ではないでしょう。
ボーナスの種類は大きく分けて3種類
歴史のある日系企業のボーナスは、3種類に分けられます。日本では長らく基本給連動型が中心でしたが、1990年代のバブル崩壊後に日系企業の業績が悪化。そのタイミングから業績連動型に移行する企業も増えています。
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基本給連動型ボーナス
基本給連動型ボーナスは、多くの日本企業で採用されている形態のボーナスで、基本給と連動してボーナスの総額が算出されます。「基本給の◯ヵ月分」と表現されるケースが一般的です。
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業績連動型ボーナス
業績連動型ボーナスは、組織や部門、個人の業績に連動して支給額が変わる成果主義型のボーナスのこと。成果に応じてボーナスが増えるため、まさに「馬の鼻先にニンジンをぶら下げる」ように、従業員のモチベーションを高めやすいというメリットがあります。
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決算賞与
決算賞与とは、企業の業績が好調な場合に「従業員への利益分配」として決算月前後に支払われるボーナスです。業績が良いときはいいのですが、不振に陥ると真っ先にカットされる可能性があります。
ボーナスの支払時期や回数、支給そのものは法律で決められていない
日系企業なら、必ずボーナスが受け取れるわけではありません。毎月の固定給(基本給プラス諸手当)は毎月1回以上、特定の期日に支給することが労働基準法で義務づけられています。一方で、ボーナスの支払いについては法的に定められておらず、日系企業で働いていたとしても、ボーナスが必ず支給される保証はないのです。
昨今のコロナ禍によって打撃を受けて業績不振に陥った企業がボーナス支給を見送ったという報道は、記憶に新しいところではないでしょうか。
また、支払時期や回数も法律で定められていないため、会社の規定に左右されます。年に3回ボーナスを支給する企業もあれば、一度も支給しない企業さえあるのが実情です。
さらにいえば、ボーナスは退職時期によって減額される可能性も。ボーナス算定期間中に勤務したものの支給日前に退職したことでボーナスを約8割減額され、裁判となったケースがあります。この裁判において裁判所は、約8割カットは認めなかったものの「約2割のカットは違法にならない」としました。
このように日系企業のボーナスは実に不安定なもの。これらの理由から、「ボーナスは日系企業在籍におけるメリットである」とは言い切れないでしょう。ボーナスを含めた日系企業の平均年収より外資系企業の平均年収のほうが高い現状を考えると、ボーナス支給にこだわって日系企業に居残るのは得策とはいえないかもしれません。
外資系企業で日系企業のようなボーナスはある?
高年収だとみなされることの多い外資系企業ですが、外資系企業で日系企業のような賞与の制度や文化が存在するとは限りません。外資系企業の給与制度について見ていきましょう。
外資系企業はボーナスの制度がないことが多い
結論からいえば、基本的には外資系企業にボーナスはありません。その理由として、外資系企業の多くが「年棒制」を採用しているからです。
年俸制とは、年初に年間給与を算出し、月ごとに12分割されて割り当てる制度のこと。「日系企業におけるボーナスは年間給与に含まれている」と考えれば、腹落ちしやすいのではないでしょうか。ですから、ボーナスがない代わりに、毎月の給与額は高くなる傾向があるのです。
一部の外資系企業にはボーナスがあることも
ボーナスは日本では一般的な制度ですが、世界的に見れば珍しい制度(文化)です。当然のことながら、外資系企業の多くはグローバルスタンダードに則り、年俸制を採用しています。
しかし、日本独自の給与文化に理解を示してか、ボーナスを支給している一部の外資系企業も存在します。
<ボーナスを支給する外資系企業の特徴>
・日本で長期にわたって運営されている企業
・日系企業と合同出資で設立された企業
これらの一部の外資系企業のボーナスは、固定給に対し、プラスαの要素である日系企業のボーナスとは本質的に異なります。
それは、本来の年俸制であれば12分割する給与をあえて14~17分割し、数ヵ月分をボーナスにあてるような対応をしているから。あくまで年俸を分割しボーナスと見せているだけであって、ボーナスがあってもなくても、実は総支給額に差はないのです。
外資系企業のボーナスにあたる制度
年俸制を採用する外資系企業の報酬は、年初に決定した年俸(総支給額)がすべてです。労使交渉はもちろん、個人の業績がすばらしかったり決算が好調だったりしても、従業員に臨時的なボーナスが支給されることは基本的にありません。
ただし、「ベース」と呼ばれる基本給以外に、報酬が追加支給される制度があります。ここでは、外資系企業において、日本のボーナスにあたる制度についていくつか解説していきましょう。
目標達成率で決まる「インセンティブ制度」
成果主義である外資系企業の年俸は、ベースと目標達成率に応じ支給される「インセンティブ」で構成されています。目標には企業目標と個人目標があり、まずは「企業の目標を100%達成する」ことがインセンティブを支払う前提条件です。
その上で、「個人目標をどれだけ達成したか」によってインセンティブの支給額が変わります。ベースとインセンティブの比率は業種や職種によって異なりますが、営業職ではインセンティブの比率が高めに設定される傾向があります。
似たようなものに月間売上金額の○%が支給される「フルコミッション制度」がありますが、こちらは「歩合」と捉えるべきものです。
評価基準は企業によってさまざまですが、成果を出せば出すほど給与に直結する点はどの企業も共通。大きな成果を出せば年俸の60%ものインセンティブが支給される企業もあります。まさに、実力主義の外資系ならではの制度といえるでしょう。
優秀な成績を上げた人をたたえる「アワード制度」
アワードは、企業への貢献度に応じてチームや個人を表彰する制度で、日本における新人賞やMVPのような「賞」のことです。
アワードは一般的に、年に一度開かれる総会で表彰されます。ただし、アワード制度で支給されるのは、会社の株式や賞品など、現金ではないケースも。あくまで、たたえるための制度であり、日本のボーナスと根本的に異なる制度のため、額面として期待するものではないでしょう。
自社の株式に関わる「ストックオプション/ストックアワード制度」
ストックオプション制度やストックアワード制度は、現金ではなく自社の株式を従業員にインセンティブとして与える制度のこと。一定の条件や在籍期間を満たすと株式が取得可能です。
ストックオプションとは、「一定の価格で自社の株式を買うかどうか選択できる権利」。そのため、株式を買うかどうかは個人の判断に委ねられています。
一方のストックアワードは、条件を満たすと「会社の株式そのものを無償で取得」できるもの。ただし、ほとんどのストックアワード制度は、株式の取得が確定するまでは自由に処分できず、配当もできないルールになっているのです。
外資系企業のボーナスはやはり成果主義
外資系企業のボーナスの仕組みは、日系企業のそれとは大きく異なります。ほとんどの外資系企業は年俸制を採用しており、総支給額は年初に決定します。それ以上の収入を求めるのであれば、成果に応じて支払われるインセンティブの獲得を狙うのが一番です。
インセンティブは企業・個人目標を達成しなければ得られない一方で、成果さえ上げれば大幅な収入アップを見込めます。ですから、営業職などの売上に直結しやすいポジションに向いている制度といえるでしょう。反対に、事務職などはインセンティブを得にくい可能性があります。
いずれにしても、ベースとインセンティブの比率などは、企業はもちろん、業種や職種によって異なります。外資系企業に転職を考える際には、給与体系の仕組みをしっかりチェックしてください。
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