本日は、米スタンフォード大学ジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア理論”Happenstance Learning Theory”をご紹介します。日本語では、計画された偶発性理論と訳されることが多いです。
従来は、キャリアの軸を絞り着実に積み重ねていくことで、キャリア形成がなされました。人生100年時代にシフトし、社会の構造が劇的に変化する昨今、積み上げていくだけでは十分でないと考えられています。
ではどうするか?クランボルツ教授は、個人のキャリア形成は予期せぬ偶発的な出来事に大きく影響されるものであり、その偶然に対して最善を尽くし、より積極的な対応を積み重ねることによってステップアップできると考えます。
偶然のように見える出来事をもっと活かそうという考え方で、そのために必要な要素は以下の5つになります。
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Curiosity(好奇心)
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Persistence(持続性)
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Flexibility (柔軟性)
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Optimism(楽観性)
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Risk Taking(冒険心)
私のキャリアに重ねて振り返ってみます。私は一度人生が大きくシフトする経験をしています。会社員を辞めたかったわけではないのですが、色々なことが次から次へと起こり、最後は起業せざるを得なくなりました。最初は抗おうと試みましたが、このうねりに身を任せて生きていくのがベストという判断に至ったのです。
きっかけは、オーストラリアのメルボルンから来日していた夫婦の通訳をしたことでした。共通の友人から声がかかり、彼らをサポートしたことがご縁で私はメルボルンに住むことになり、帰国して起業し人生が大きく変わることになります。
1. 好奇心
友達から頼まれた時、オーストラリアから来る夫婦というアイディアが、私の好奇心をくすぐりました。オーストラリアは、アジア・パシフィックの仕事をしていたときに、3回出張が直前で取りやめになったいわくつきの国で、ただ単純に興味があったのです。あの仕事を引き受けた原動力は好奇心だったと言えます。
好奇心をいつまでも持ち、新しいことにアンテナを立てる、試みたことがないことにトライしてみること、変化の大きい時代だからこそ大切にしたいです。
2. 持続性
直接このプロジェクトには結びつきませんが、一つのことをある程度の期間続けることが持続性だとすると、英語を継続して学んだことが引き寄せてくれたご縁だということになります。
この持続性は、得意な方と不得意な方がおられるでしょう。私も明らかに後者に属していますが、人間不思議なもので「好きなこと」だけは続けられるようです。今、仕事や趣味で「好き」と思えることは大事にして育てることをお勧めします。いつか思いもかけない形でポジティブな形で返ってきます。
3. 柔軟性
ルミナ・スパークというアセスメント・ツールでも、私のトップ5の資質とでるのが柔軟性です。性格的なものもあるでしょうが、外資が長く、柔軟に構えざるを得なかったという現実もあります。仕事を引き受けてからの時間が短く、来日してからも想定外が多かった彼らとのやり取りをなんとかこなせました。
特に外資でやっていく場合、想定外のことが多いので柔軟性は大事です。職場において、柔軟性の真逆の発想は「やったことがない」「前例がない」「できないと思う」なので、この種の発言が多い方は、少し考え方を変える努力をした方が良いでしょう。
4. 楽観性
初めてのことにトライする時、非常に大事な資質です。私自身は、「楽観的に生まれる」→「低血圧の病気で超悲観的な10年」→「楽観的」という変遷を経ています。楽観的に構えられるかどうかは、後天的に変化させられる資質だと信じています。もし現在、悲観的になりがちだと思ったら、付き合う方々を変えるのが一番早いです。人間は習慣の生き物ですし、環境の影響を大きく受けますので、周りにおられる方々が悲観的で自分だけ楽観的に振る舞うのは難しいです。
通訳の仕事に話を戻すと、英語を日本語にするのは問題ないですが、質問タイムの「日英」通訳に自信が持てず正直はどうしようかなと思ったのですが、面白そうと感じた直感を信じてやってみることにしました。なんとかなると楽観的に考えたのでした。
5. 冒険心
自分がリスクを取るタイプかどうかを冷静に考えると、必ずしもそうでもないような気がしますが、当時はすでに仕事を辞めており「リスク」というほどのものが無かったのでしょう。なんでもやってみた方が、やらないよりは良いと思えるタイミングに自分がいたので、自分の得意分野の通訳ではないことから発生するかもしれないリスクを取りました。
リスクは事前にどのスケールのものか確認した方が良いですが、全て思い通りに事が運ぶことはないので、どこかで「えい!」と思い切ることも大事です。そもそも自分が思っているほど大きなリスクではないことも多いですから。
まとめ
この仕事が終わって1ヶ月後に、私はメルボルンにいました。偶然とは思えない出来事が数珠玉のように繋がった結果です。起業したのもその延長。人生は不思議で楽しいです。
皆さんがキャリアを考えるときに、これまでのようにゴールを決めて逆算して積み重ねると考えるのは少し無理がある時代になりました。人生に起こる偶発的な事柄を活かし、必要に応じて軌道修正しながら道を切り拓いて行ってください。本日は偶然を活かすキャリア理論、Happenstance Learning Theory(計画された偶発生理論)をご紹介しました。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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