ポテンシャル採用は、求職者のポテンシャル(潜在能力)に着目して採用し、採用後の育成に力を入れて戦力化する採用手法です。知識・経験不足やスキル不足で転職活動に不安がある人や、新たな業界にゼロからチャレンジしたい人にとって、ポテンシャル採用を行う企業への応募はキャリアアップのチャンスです。
この記事では、ポテンシャル採用と新卒・中途採用との違いや、ポテンシャル採用に応募するメリット・デメリットのほか、ポテンシャル採用を積極的に行っている業種・職種などについて詳しく解説します。
ポテンシャル採用とは今後の伸びしろを重視する採用手法のこと
ポテンシャル採用は、求職者の現時点での知識・スキルや経験ではなく、ポテンシャルや今後の伸びしろを重視する採用手法です。
ポテンシャル採用が活発化している背景には、新卒採用・中途採用市場ともに長引く売り手市場の影響があります。売り手市場とは、求人を出しても求職者が集まらなかったり、内定を出しても辞退されてしまったりと、買い手(企業)より売り手(求職者)が有利な状態にある市場のことです。
近年は少子高齢化で売り手市場が続き、どの企業でも将来性ある若手人材の採用が難しくなりました。即戦力の人材も、企業間の獲得競争が激化して、思うように採用できないのが現状です。そこで、経験者かどうかは問わず、一度社会に出た人材を広く採用するポテンシャル採用に注目が集まっているのです。
ポテンシャル採用を行う業界は多岐にわたりますが、人手不足が顕著な業界、成長速度が速く採用が追いつかない業界などで特に積極的に行われています。
ポテンシャル採用とその他の採用の違い
ポテンシャル採用は、ほかの採用手法とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、ポテンシャル採用とその他の採用手法との違いについて具体的に解説します。
新卒採用との違い
新卒採用は、原則として年に1度の一括採用で、その年度に学校を卒業予定で、就業経験のない若者を対象としています。最近では、留学などで就職活動開始までにブランクがある学生を想定し、卒業後3年までを新卒として扱う企業も増えました。
「将来性を重視して採用する」という意味では、ポテンシャル採用は採用段階での活躍見込みが未知数の新卒採用に近い性質を持っているといえるでしょう。
第二新卒採用との違い
第二新卒採用は、ポテンシャル採用と同じく経験が浅い人を積極的に採用するものですが、一般的に社会人経験3年未満の層を指しています。入社時期は4月が多く、新卒採用といっしょに研修を受けることも。
一方、ポテンシャル採用は、通年採用で時期を決めずに行われることが多いでしょう。対象となる年齢は明確に決まっておらず、主に20代全般の求職者を指すことが多いようです。
中途採用(キャリア採用)との違い
ポテンシャル採用は中途採用の一種ですが、一般的な中途採用が「キャリア採用」として即戦力の確保を目指すのに対して、即戦力にはならないことをわかった上で、将来の活躍に期待して採用します。つまり、応募時点での知識・スキルや経験はあまり問われません。
中途採用(キャリア採用)では、募集するポジションにおいて必要な知識・スキルや経験を保有していることが判断基準になるのに対して、ポテンシャル採用の場合は、知識・スキルや経験が少ないことを前提として人柄や意欲によって採用を決定します。業務未経験者や社会人経験が浅い人にも、十分チャンスがある採用手法だといえるでしょう。
求職者目線で見たポテンシャル採用のメリット
転職を考えている人にとって、ポテンシャル採用での応募で得られるものは何でしょうか。ここでは、求職者目線で見たポテンシャル採用のメリットをご紹介します。
知識・スキルや経験、実績がなくても応募しやすい
ポテンシャル採用では、新卒で就職してすぐに退職し、専門的な知識・スキルや、応募業界での経験と実績が足りていない人など、一般的な中途採用(キャリア採用)では採用されにくい人でも内定が得られる可能性が高くなります。ポテンシャル採用を行う企業は、応募者に現時点での知識・スキル、経験などを求めていないからです。
また、働き方と価値観の多様化に伴って、前職を短期間で退職していることは、必ずしもマイナスに働くわけではなくなりました。自分のやりたいことを見極めて選んだ道であり、応募書類や面接で前向きな退職理由を語ることができれば、「仕事に対するモチベーションが高い人材」「自分のキャリアを主体的に考えている人材」として評価されます。
特に、海外大学の卒業や海外留学、ワーキングホリデーなどの経験は、多様なキャリアと価値観を持った人材の採用を目指す企業にとっては欲しいもの。気になる企業には積極的に応募しましょう。
未経験前提で知識・スキル向上のための育成をしてくれる
ポテンシャル採用は、採用した人材に業務に関する知識・スキル、経験がないことを前提としています。そのため、採用後に一定のコストをかけてオンボーディング(早期に戦力化するための取り組み)し、中長期的に育成するプログラムを用意していることがほとんど。特に業界未経験者も受け入れる企業では、ゼロから知識・スキルを獲得できる研修体制が構築されていることが多いのです。
未経験領域への転職のため、現在の仕事を続けながら転職活動し、同時に未経験領域の知識やスキルを身につけるのは大変な労力を必要とします。研修体制が充実している企業を選べば、その心配がなくなります。今後のキャリアプランも考えやすくなるはずです。
社会人経験を尊重してくれ、新しい風を吹き込むことを期待されている
新卒採用の場合、企業は新入社員にビジネスマナーや業種・職種に関する知識、基本的なパソコンスキルなどを身につけてもらうための研修を行います。一方、ポテンシャル採用では、経験年数は少なくても社会人経験自体はある人が多く、社会人としての基本的な知識は身についている前提です。そのため、ビジネスマナーなどの研修の実施回数を少なくしたり、研修を実施せずに業務に携わってもらったりすることができます。
ポテンシャル採用で採用された人が、社会人経験を持ちつつも、前職の考え方や仕事の進め方に染まりきっていない点も評価されるポイントといえるでしょう。前職での在籍年数が長いと、その業界や企業のルールや手法が当たり前になり、転職先の方針になかなかなじめないことがあるからです。プロパー社員とは異なる視点や経験を活かして、企業にイノベーションをもたらすことを期待されているのです。
求職者目線で見たポテンシャル採用のデメリット
ポテンシャル採用の応募にあたっては、デメリットがないわけではありません。ここでは、求職者目線で考えられるデメリットをご紹介します。
ある程度の社会人経験は求められる
ポテンシャル採用を含む中途採用では、新卒採用にない付加価値として「社会人経験」があることが必須です。厳密な取り決めはありませんが、1~2ヵ月程度の期間では社会人経験があるとはみなされず、選考では不利になるでしょう。
ビジネスマナーなどの研修をショートカットできて、実務をある程度経験している人材が企業としては欲しいので、最低でも半年~1年程度は前職で仕事をしていることが求められます。
年齢が上がると採用されにくくなる
一般的には、ポテンシャル採用は第二新卒など、転職経験のない20代までを指すことが多いのが実情です。雇用対策法により、募集・採用にあたって年齢制限はできないのが原則ですが、現実的には年齢が上がるにつれて、ポテンシャル採用での転職は厳しくなっていきます。
企業によっては30代前半でも未経験者を採用することがあるものの、基本的に30代以上で未経験分野への転職を希望する場合は、「独学でスキルを身につける」「資格を取得する」など、さらなる努力が必要になってくるのです。
ポテンシャル採用が多い業種・職種
ポテンシャル採用は、応募者の母数を獲得できない中小企業をはじめ、企業に新しい風を吹き込んでイノベーションを起こしたい企業、多様な人材の採用でダイバーシティを進めたい企業など、多様な業界のさまざまな職種で実施されています。
ここでは、特にポテンシャル採用が多い業種や職種を、3つご紹介します。
エンジニア
社会におけるIoTの導入が進み、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)も進む中、システムやネットワークなどの開発を行うエンジニアは、人材不足が続く職種のひとつです。特に、若手人材の不足は顕著で、エンジニアの年齢層の偏りに悩む企業は少なくありません。大企業や有名企業の場合はエンジニアとしての業務経験や実績が必ず求められますが、それ以外の企業においては、エンジニアが足りていないケースも多々あり、未経験でも採用される可能性があるのです。
IT領域のトレンドの変化は速く、常にアップデートし続けるには、日々の変化に柔軟に対応できる若手の力が不可欠。これまで、IT業界での勤務経験がなく、エンジニアとしての実績がない人でも、下記のポイントを押さえれば採用される可能性が高まります。
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IT領域に関心があり、トレンドを把握している
IT領域に常に興味・関心を持っていることは、エンジニアとして活躍するための絶対条件。業界ニュースや最新技術を情報収集し、IT業界や技術のトレンドについて話せるようにしておくと良いでしょう。また、プログラミングスクールや独学で、事前にプログラミングスキルをある程度身に着けておくと、採用される可能性が高まります。
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IT関連資格を取得している
IT関連資格を有していると、選考で有利に働くことが多いようです。エンジニア未経験者が基礎知識を習得するのに適した国家資格の「ITパスポート試験」、ネットワークエンジニアを目指す人におすすめの「シスコ技術者認定資格」、クラウド関連の「Google Cloud 認定資格」「Microsoft Azure認定資格」など、ITに関する資格取得を目指しておきたいところです。
コンサルタント
昨今、企業が抱えるDXやSDGs(持続可能な開発目標)などの課題を解決する、コンサルティングファームのニーズが高まっています。そのため、コンサルティングファーム各社では、積極的な採用が続いているのが現状です。若手人材からの人気も高く、勢いのある業界といえるでしょう。第二新卒採用やポテンシャル採用を行う企業も目立ちます。
注意したいのは、クライアント企業の経営課題を洗い出し、課題解決と事業成長をサポートするシビアな仕事であること。その性質上、未経験からのチャレンジは決して容易ではありません。面接では、実際の企業の経営課題をもとに、論理的思考力や人間力といったポイントが厳しくチェックされます。
ITベンチャー
ITベンチャーは、ITサービスやソフトウェア、WEBサービスなど、IT関連の事業を行うベンチャー企業です。これまでにないアイディアや革新的なビジネスモデルで社会に新たな価値を提供する企業であり、既存の常識にとらわれない発想ができるポテンシャル採用対象者との親和性は高いといえるでしょう。
ITベンチャーは、採用に関する考え方も先進的です。学歴や過去の実績からわかる人材としての安定性より、企業のビジョンに対する共感性や、人間性から垣間見えるポテンシャルに賭けて採用する傾向があります。未経験からまったく新しいことにチャレンジしたい人や、これから伸びるビジネスに取り組んでみたい人には、おすすめの業種です。
ポテンシャル採用を受ける際の注意点
ポテンシャル採用を受ける際には、いくつか注意しておきたいことがあります。ポテンシャル採用で内定を獲得するため、下記の3点を確認しておきましょう。
転職の軸を明確にして転職活動に臨む
あなたがなぜ転職をするのか、どうして応募先の企業を選んだのか、未経験の職種を目指すのはなぜなのかといった、転職の軸を明確にしてから転職活動することが、ポテンシャル採用で内定を得る秘訣です。
「前職での勤務経験が浅く、採用してくれそうな企業がほかにないから」といった消極的で曖昧な転職理由だと、どんなに取り繕っても書類選考や面接の段階で必ずわかってしまいます。
未経験でも熱意があることを示す
書類や面接などの選考では、入社後に必ず成長していくという意思があることを強くアピールしましょう。経験のない人材に投資するポテンシャル採用において、企業は「求職者の成長の可能性」を見ています。「◯年後にはエンジニアとして上流工程を担当できるようになる」「◯年でチームリーダーを目指す」など、具体的な目標を示すのも効果的です。
自分のビジネスマナーを再チェックする
企業は、面接選考までの電話やメールでのやりとり、面接時の服装や受け答えなどを通じて、あなたのビジネスマナーや社会常識、人間性を推し量ります。知識・スキルや経験をほぼ問わないポテンシャル採用ですが、企業に基本的な社会人経験をチェックされていることを忘れないようにしてください。
応募前に、あなたのビジネスメールの書き方や電話対応、初対面でのあいさつの仕方などができているか、確認しておきましょう。
ポテンシャル採用で希望の仕事に就くには、転職エージェントの利用がおすすめ
ポテンシャル採用で評価される項目は、「ポテンシャル(潜在能力)」や「熱意・意欲」「人間性」など、数値化しにくいものです。応募書類の書き方や面接における回答によっては、なかなかあなたの熱意や人間性が伝わらず、採用されないこともあるかもしれません。
ポテンシャル採用に応募して新たなキャリアパスを築く際には、ぜひ転職エージェントの利用をご検討ください。第二新卒採用やポテンシャル採用のサポート経験も豊富なコンサルタントが、あなたの熱意・意欲を伝えるお手伝いをいたします。
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