「幅広い仕事を経験したい」「もっと視野を広げたい」と考え、異業種への転職を希望する人は多くいます。しかし、異業種への転職は同業種への転職に比べて難度が高くなる傾向があり、準備不足で挑むとなかなか内定を得られません。
異業種への転職を成功させるには、異業種転職しやすい業種や年齢別に求められるスキルなどを知り、ポイントを押さえた活動をすることが重要です。この記事では、異業種への転職のメリット・デメリットのほか、異業種間の転職が多い職種や成功のポイントなどを解説します。
異業種への転職はハードルが高い?
異業種への転職とは、これまで経験してきた業種を離れて、まったく別の業種へ転職することです。
一般的に異業種への転職は、同業種内での転職に比べて難度が高いとされてきました。これは、同業種内での転職であれば前職の経験や蓄積してきたノウハウがそのまま活かせるのに対して、異業種への転職では転用できるスキルや知識が限定されるからです。
業種が違えば、これまでの仕事の手法が通用しないことも少なくありません。異業種への転職を志す場合、過去の成功体験や常識はいったん白紙に戻して、社会人としてリスタートを切る覚悟が必要です。
しかし、実際には転職者の多くが異業種へ転職しており、特に珍しいわけではありません。「異業種への転職は難しい」というイメージが先行して転職をためらう人がいる一方で、異業種へのキャリアチェンジを成功させる人は少なくないのです。
ビジネスを取り巻く環境が多様化・複雑化し、将来の見通しが立てにくい「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)の時代」ともいわれる今、イノベーションを起こせる人材として異なる業種からの採用を積極的に行う企業が増えていることも、異業種への転職を後押ししています。
終身雇用や年功序列が半ば崩壊し、継続的に成長できる機会を求める働き手が成長産業を志すようになったこともあり、今後も異業種間の転職は確実に増加していくでしょう。
異業種への転職パターン
一言で異業種への転職といっても、パターンはひとつではありません。異業種への転職には次の2つのパターンがあり、難度にも差があります。
異業種の同職種に転職する
これまでのスキルを活かしたいという転職で多いのが、職種は変えずに業種だけ変えるというパターンです。例えば、「不動産の営業から、インターネット広告の営業へ」「メーカーの経理からIT企業の経理へ」などが具体例です。この場合、営業や経理としての基本的なスキルは転職先でも使えるため、即戦力としてアピールできます。ですから、転職の難度は少し下がるでしょう。
とはいえ、業種が変われば扱う商材も変わり、同じ作業でも用語や考え方、進め方が異なります。過去の経験をそのまま活かせるとは限らないことに注意が必要です。
異業種の異職種に転職する
未経験の仕事にチャレンジしたい人が目指すのが、これまでとは違う業種かつ異なる職種に転職するパターンです。例えば、「メーカーの販売職から、建設業の事務職へ」「通信業の営業から、インターネット業のWEBコンサルタントに」といったケースが該当します。異業種、かつ異職種へのチャレンジはさまざまな選択肢の中でもかなり難度が高く、即戦力を求める企業で採用に至ることはほぼありません。
未経験者を歓迎している企業でも、ほかの応募者の中に職種経験者がいれば評価に差がつく可能性が高く、厳しい結果になることが多いでしょう。停滞する状況に風穴を開けたいと思っている企業や、未経験ならではのアイディアに期待する企業ではチャンスがあります。
また、異業種かつ異職種のへ転職では、過去の経験や価値観にとらわれることなくスムーズに順応できる若い人ほど有利です。一般的に20代から30代前半までが、異業種かつ異職種への転職のチャンスが大きい世代で、30代後半から40代以上にかけてはマネジメントスキルなど、プラスαのスキルがないと厳しくなります。異業種への転職を成功させるには、年齢も重要な要素といえるのです。
異業種への転職のメリット
異業種への転職は、新たなスキルや視野が獲得できるなど、成長につながる点が大きな魅力です。代表的な4つのメリットについて、詳しく見ていきます。
新たなやりがいやスキルを得られる
異業種では未経験の仕事に多く携わることになるため、新たなやりがいやスキルを得られる余地は大きいでしょう。「旧態依然とした経営から抜け出し、意思決定から実行までのスピードが速い会社で働きたい」「自社製品のないコンサルティングファームにいたので、事業会社で自社製品を売ってみたい」「新しい知識やスキルを身につけて、会社とともに成長したい」といった理由で異業種への転職にチャレンジする人も多くいます。また、現職では叶いにくい要望を叶えられるのも魅力です。
視野や可能性が広がる
長く同じ業種で仕事をしていると、どうしても見る世界が限定されてしまいます。考え方や価値観も固定され、ルーティンワークのように業務をこなすことが増えるでしょう。
業種や職種が変われば見える世界も変わり、視野が広がります。前職とはビジネスモデルも方針も違う業種で働くようになると、知らず知らずのうちに限定していた自分の可能性が解放され、新たな強みが見つかることもあります。
大幅な年収アップも可能
厚生労働省の「令和2年雇用動向調査結果の概況」によれば、転職者のうち前職よりも収入が増加した人は34.9%、減少した人は35.9%、変わらなかった人が28.4%で、およそ3分の1は年収が上がっていることになります。
年収はさまざまな要因で決定されますが、平均給与が低い業種から平均給与が高い業種に転職すると、大幅な年収アップが実現することもあるでしょう。
市場価値が高い人材になれる
転職してビジネスモデルが異なる仕事を経験すると、新たな知識やスキルを習得することができます。
同じ職種の仕事を続けるとしても、異業種で経験を積めばビジネスパーソンとしての市場価値を高められます。
異業種への転職のデメリット
異業種に転職することは、メリットばかりではありません。一般的に選考の段階でも難度は上がりますし、入社後にもミスマッチが起きるリスクがあります。代表的なものとして挙げられる3つのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
自分の経験が伝わりづらいことがある
採用選考の段階でのデメリットですが、業種や職種が変わると、過去の華々しい経験を志望先企業にうまく伝えられない場合が少なくありません。「アップセルを重ね、売上を◯倍にした」「◯◯のプロジェクトで開発を主導し、××できるシステムを作り上げた」といった経験があったとしても、他業種の人にはそのすごさがまったく伝わらない場合があるのです。
そのため、過去の経験を「コミュニケーション能力」「折衝能力」「顧客のニーズを聞く力」といった、汎用性の高いスキルに言い換えてアピールする必要があります。
入社後のミスマッチが起きることもある
業種のイメージだけで転職を決めたり、過去のやり方に固執していたりすると、「こんなはずではなかった」といった感情がわきやすくなります。
たとえ同じ職種であっても、業種が変われば仕事の内容も変わります。仕事分担の範囲やチームメンバーとのやりとりの仕方、業務プロセスなども異なることがほとんどです。「未経験からのチャレンジである」ことを忘れず、謙虚に仕事に取り組むことが大切です。
異業種への転職でなくても入社後にミスマッチが起きる可能性はあるので、業種が変わるのであればなおさら、そのリスクを意識しましょう。
場合によっては年収が下がる可能性もある
即戦力とは言い難い未経験者の場合、いったん給与水準は低く設定され、その後の活躍に応じて給与を上げていくことがほとんどです。異業種への転職で年収が上がるケースがあるのは確かですが、業種も職種も未経験であればキャリアはリセットされると考えましょう。
年収に重きを置く場合、異業種かつ異職種への転職は慎重に検討する必要があります。
異業種でもスキル・実績を活かしやすいい職種
異業種からの人材採用に積極的かどうかは、業種によって傾向があります。下記で紹介する業種は、異業種からも積極的に採用していて有力な選択肢です。
コンサルティング
DX(デジタルトランスフォーメーション)など、最新のテクノロジーを活用した業務・ビジネスモデルへの改革需要が高まり、コンサルティングニーズは増加しています。
その結果、コンサルタントの人数が不足し、採用人数を大幅に増やしている企業が少なくありません。依頼元の業種が幅広いため、官公庁やヘルスケア、流通、小売など、多様な業種の知識に精通した人材を広く求めていることも特徴です。
異業種から積極的、かつ大量に人材を採用している業種であり、未経験でも十分にチャンスがあります。
人材サービス
人材サービスは、異業種からの転職者が多い傾向があります。人材サービスのコンサルタントが行うのは、求職者の相談対応です。異業種でコンサルタントや営業として顧客にアドバイスを行った経験やさまざまな実務経験があれば、その業種の知識を活かして求職者にアドバイスできます。
IT
ITは、インターネットの急速な普及によって人材の需要が拡大しているため、異業種からも積極採用しています。製造業や広告・出版・マスコミのクリエイティブ系職種の人がITの同職種へ転職するケースもあります。
ITで求められる技術は日々進化しているため、柔軟性とモチベーションが高い若い世代は、特に歓迎されやすいでしょう。
ベンチャー・スタートアップ企業
業種とは少し異なりますが、新しいビジネスを展開している成長過程のベンチャー・スタートアップ企業では、「自社にない経験を買う」という意味で異業種でも中途人材を積極採用しています。組織拡大に伴って新たなポジションが発生することも多く、基本的に人材は不足気味です。
募集職種の経験がなかったとしても、社会人としての経験や総合力を評価されて採用に至るケースもあります。
新規事業を進める企業
新規事業に取り組む企業も、ベンチャーやスタートアップと同じく、外部からの刺激を重視しています。異業種・異職種の人でも、新たな事業づくりに携わった経験がある人や、チームをまとめられる人などが求められています。
年代別・異業種への転職で必要なスキル
異業種への転職を成功させるには、年齢も重要な要素です。転職活動は、年齢によって採用難度や求められる経験・スキルが変わります。年代別に、異業種への転職に必要なスキルを見ていきましょう。
20代で異業種へ転職する場合
20代のうちは、異業種への転職もそれほど困難ではありません。20代で卓越したスキルを持っている人はまれなので、企業側も課題解決能力や柔軟性などのポータブルスキルを評価する傾向があります。応募する職種の十分な実績やスキルがなくても、将来性が評価されて採用される場合があるでしょう。
30代で異業種へ転職する場合
30代になると、異業種への転職のハードルは20代に比べて少し高くなります。30代には即戦力としての知識や実績を期待する企業の意向が強まるからです。
30代で異業種に転職する場合、ポータブルスキルだけではなく、実績や専門的な知識・スキルが求められます。
40代で異業種へ転職する場合
40代で異業種に転職する場合は、専門分野での卓越した知見やスキル、マネジメント経験が問われます。リーダーとしてチームを統率してプロジェクトを達成した経験や、部下の指導・教育を行った経験が評価のポイントとなるでしょう。
50代で異業種へ転職する場合
50代では、異業種・異職種への転職はかなり厳しいと言わざるをえません。職種も未経験となると、ポテンシャル採用が有効な若年層に勝ち目があります。
異業種にチャレンジしたいのであれば、職種での経験値でほかの候補者に差をつけなければなりません。実務経験に加えて人生経験も豊富な50代ならではの対人スキル、マネジメントスキルなどもアピールポイントになります。
異業種への転職を成功させるためのポイント
異業種への転職は同業種への転職に比べると難度が高めですが、ポイントを押さえれば転職活動を有利に進めやすくなります。自身の経験とスキルが、応募先の企業で活かせることをアピールすることが重要です。ここでは、異業種への転職対策の具体的な方法を確認していきましょう。
経験・スキルをどう活かせるのか、自己PRで明確に伝える
異業種の同職種へ転職する場合、これまでの経験やスキルを活かしてどう貢献できるのか、具体的に伝える必要があります。自身の経験・スキルの中で、志望先の仕事内容にマッチするものをピックアップして、自己PRで伝えましょう。
特に30代以上の転職では、応募する業務に活かせる専門的なスキルやマネジメント経験などをアピールすることが大切です。
転職の目的やキャリアプランを論理的に説明できるようにする
異業種に挑戦するのには、何かしらの目的や目指すキャリアがあるはずです。異業種への転職ならではの壁にぶつかっても、乗り越えて活躍できるような明確な目的があるか、企業側も確認したいと考えています。
企業側の納得が得られるような、論理的な説明を準備しておきましょう。
応募企業の業種・社風・事業内容を研究する
転職活動では入社後のミスマッチを防ぐため、応募前に企業の社風や事業内容を十分に研究する必要があります。業種へのイメージだけで転職を決めるのは、ミスマッチのもとです。スキル・経験を転職先で活かせるのか、やりたい仕事ができるのか、納得できるまで確認しましょう。
選考が進み具体的な職務内容が見えてきた段階で、入社後に求められるスキルや評価のポイントを確かめるのがおすすめです。
また、大手企業からベンチャー企業への転職など、企業の在り方がまったく違う転職をした場合、教育体制や評価方法などに大きなギャップを感じることがあります。応募企業のWEBサイトを確認したり、セミナーに出席したりして、勤務環境や社風などを事前に確認するのがおすすめです。
前職の仕事の進め方・方針に固執しない
異業種か否かにかかわらず、会社が違えば経営方針や行動指針が異なります。前職での仕事の進め方に固執すると、ほかの社員と歩調が合わなくなる可能性も出てくるでしょう。まずはその業種の風習、企業ならではのやり方やノウハウを受け止め、理解することから始める必要があります。
面接やOJTで軸となる方針や仕事のプロセス、期待される役割を確かめておくと、場に適した振る舞いをしやすくなります。
異業種への転職でよく聞かれる質問
異業種への転職は応募者側も非常に不安ですが、企業側にとっても業種未経験者の採用には少なくないリスクがあるため、慎重に判断しようとします。面接では、候補者の思いの強さや能力を測る質問が多くなるでしょう。
異業種への転職でよく聞かれる質問には、あらかじめ答えを準備しておくとスムーズです。代表的な質問とその答え方の具体例を3つご紹介します。
この業種を志望する理由は?
志望動機を問う質問は、「なぜ、これまでの経験やスキルを活かせる同業種でなく、あえて異業種を選んだのか」という質問を通して、今回の転職にかける思いや熱意、意欲、入社後の活躍の可能性などを推測するためのものです。下記のような企業が知りたい情報を、しっかり盛り込むことを意識しましょう。
<企業が志望動機に関して知りたいこと>
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未経験の業種に進もうと思った理由
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未経験の職種にチャレンジする理由
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数ある異業種の中で、なぜこの業種なのか
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なぜこの会社を選んだのか
単なる憧れではなく、明確な目的を持って業種を選んでいることが伝わる回答がベストです。
業種を変えても活かせるあなたの経験や強みは?
新卒採用と違って、中途採用ではこれまでの仕事を通して得た経験や強みが問われます。これは、異業種への転職であっても変わりません。下記のような経験・スキルをアピールできれば効果的です。
<異業種への転職でアピールしたい経験・スキル>
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若年層なら、ビジネスマナーなど基本的なスキルは身についていること
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これまでの仕事の中で、転職先で活かせる知見や経験
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コミュニケーション能力や忍耐力など、どんな仕事に取り組む上でも求められるスキル
これらを伝えた上で、「わからないこと、知りたいことを自発的に学ぶ意欲があること」などを伝えれば、未経験者に対する企業の不安を期待に変えることができます。
業種が変わってあなたが抱えそうな課題は?
異業種への挑戦で生じる課題を客観的に分析できていて、その解決に向き合うことができるかを問われることも多くあります。企業側にとっては、時間とコストをかけて採用した人材がすぐに離職してしまうのは避けたいところです。業種未経験であるがゆえのさまざまな課題を抱えることが予想されるだけに、課題解決能力の有無は重要なポイントとなります。
異業種からの転職者を採用する以上、企業側も最初から完璧に仕事をこなすことは期待していません。課題から逃げずに取り組む意思を示すため、自分の性格や経験上不足している点を率直に説明し、課題との向き合い方を具体的に伝えましょう。
「わからないことが出てきたとき、後回しにしがちな傾向があるが、すぐに上司に聞いて対応し、セミナーなどでも最新の技術を学び続けるよう努力したい」といった解答が高評価につながります。
ポイントを押さえれば、外資系への異業種転職は可能
外資系企業への異業種からの転職は難しいイメージがありますが、ポイントを押さえれば実現は可能です。アピールの仕方や企業選びに迷ったら、外資系企業の採用に強い転職エージェントを利用しましょう。
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