経済が停滞し、少子高齢化が進む今、「終身雇用制度の崩壊」という言葉をよく聞くようになりました。早期退職の募集や、異業種への配置転換に伴う賃金カットなどが相次ぎ、経済界のトップが終身雇用制度の見直しを示唆するなど、日系企業を取り巻く状況は大きく変わりつつあります。「今こそ、思い切って実力を試してみたい」と、日系企業から外資系企業への転職を考える人も多いのではないでしょうか。
しかし、日系企業と外資系企業では、文化や風土が違います。良く調べずに転職すると、すぐに「こんなはずじゃなかった」「思っていたのと違う」という、入社後ギャップに苦しむことになるでしょう。短期間で転職を繰り返さないためには、転職を考えた段階でしっかり情報収集をすることが大切となります。
ここでは、転職するなら知っておきたい外資系企業の特徴について、総合的に解説します。
外資系企業の5つの特徴
外資系企業といってもそれぞれ社風は異なりますが、外資系企業に広くあてはまる特徴があります。日系企業と比較しながら、外資系企業の特徴を確認していきましょう。
1 外資系企業は「ジョブ型」
日系企業の人材採用の多くは、「メンバーシップ型」と呼ばれる形です。これは、職種や勤務地を限定せず、「会社のメンバー」として迎え入れるスタイルで、終身雇用や年功序列を前提としています。一括採用した新卒者に研修を行って各部署に配置し、経験や知識を積んだ後は企業の裁量で配置転換を行うことが可能です。
メンバーシップ型採用の社員は、組織に守られながら育ててもらうこともあってか、異動や残業など会社の指示は基本的に断らず、会社の成長に寄与することが最大の責務と考えられてきました。今もそうした考え方を色濃く残す企業が多い一方で、働き方改革の影響などもあり、労働環境の改善に取り組む企業も増えています。
対して外資系企業は、専門性を評価し、職種や勤務地を限定して採用する「ジョブ型」です。日系企業が「就社」なら、外資系企業は「就職」。職種を限定しない新卒一括採用がなく、志望者は自身のスキルにもとづいて特定の職種に応募、採用されます。
外資系企業は異動がないことがほとんどで、基本的にはその企業にいる限り、同じ仕事を続けることになります。現在と違う仕事がしたい場合は、社内で求人が出るのを待って応募するか、転職をするしかないでしょう。ただし、社内異動で未経験の仕事に就くのは、日系企業以上に難しくなります。
2 年功序列ではなく実力主義
日系企業では、いまだに年功序列の考え方がある会社も多いです。実力があっても経験が足りなければ昇進試験が受けられなかったり、明らかに成果を出している若手よりベテランが優先的に昇進したりといったケースが少なくありません。
しかし、外資系企業で出世を決めるのは、実力のみと考えていいでしょう。年齢も性別も経験年数も、関係ありません。上司より良い成績を残しているのにステップアップできないなど、日系企業の昇進の仕組みに違和感や不満を抱えている人もいるでしょう。そういった人にとっては、外資系企業の考え方は公平で納得できるものではないでしょうか。
ただし、安定した結果を出し続けることができなければ、当然ながら自分も後輩に追い越されたり、マイナスの評価をされたりする可能性があります。実力主義であるということは、結果が出ないときの評価も公平であるということを忘れないようにしましょう。
3 日系企業と比べて高収入が可能
日系企業に比べて、外資系企業は年俸が高い傾向があります。理由は次の4つです。
外資系企業が必要とする人材は市場価値が高いから
外資系企業では、志望者の専門性とスキルを評価して採用を決定します。つまり、外資系企業が採用したい人材は、同一の職種であればどの企業でも活躍できるポテンシャルを持った有能な人材であり、市場価値が高いということです。タイミングを逃せば、すぐ他社に奪われてしまうでしょう。
外資系企業の年俸が高い理由のひとつは、こうした熾烈な人材獲得競争に勝ち抜くため、年俸を他社より高く設定して、優秀な人材を囲い込んでいるからです。日本での認知度が低い外資系企業では、採用で勝つために日系企業より良い条件を提示するケースが多く見られます。
企業そのものが高収益体制を維持している
外資系企業が高年俸を実現するには、企業そのものが高収益でなくてはなりません。知名度が高く業界内で圧倒的なシェアを誇るなど、競合他社にない強みを持っている企業は、他社に比べて年俸が高い傾向があります。
日本に進出しているように、グローバル展開している大手企業だということも、外資系企業が高年俸を実現している理由のひとつでしょう。
福利厚生や退職金がない分、今の年俸が高い
愛社精神を育み、環境に魅力を感じて長く働いてもらうために、日系企業はさまざまな福利厚生を提供しています。残業手当、家族手当、住宅手当といった基本給にプラスされる各種手当や、慶弔金の支給、提携施設の割引、健康診断の実施などは、多くの日系企業で取り入れられている福利厚生です。
一方、外資系企業で導入しているのは、基本的に社会保険料を雇用主が負担するという法定福利厚生のみのケースが多いようです。従業員の働きやすさを促進するための法定外福利厚生という概念は、持ち合わせていないところがほとんどでしょう。終身雇用制度もないので、もちろん長期勤続をねぎらう退職金もない場合が多いです。
外資系企業の年俸が高い理由は、日系企業における法定外福利厚生や退職金に相当するお金を、現役で働いているときの年俸に反映しているからと考えられます。ただし、最近では外資系企業でも、福利厚生を充実させる企業が増えてきました。一概に「外資系企業だから退職金や福利厚生がない」とはいい切れないでしょう。
外資系企業と日系企業の年俸を比べる際は、単なる基本給だけでなく、お金に換算できない福利厚生がどれだけ用意されているのか、自分にとってどれだけ有用かも考えてみましょう。
実績に応じたインセンティブがある
外資系企業は、固定費となる基本給よりも成果に応じて支払うインセンティブに比重を置いている場合があります。
従業員が高い成果を出し、会社が潤ったときにインセンティブを支払うようにすれば、会社にとっては合理的だからです。
4 採用した瞬間から即戦力として活躍が期待される
専門性とスキルを評価してスペシャリストを採用する外資系企業では、入社後すぐに現場に出ることになります。入社からほんのわずかの期間で、長年勤務している人たちと肩を並べて仕事することになりますので、成長意欲が高い人にはうれしい環境だといえるでしょう。結果次第では、20代で部下を持ち、大きなプロジェクトを率いることも珍しくありません。
「入社したばかりだから」という言い訳が通用しない厳しさはありますが、やりがいは日系企業以上に感じることができるでしょう。
昇進や昇給にはアピールも重要
外資系企業は、実力次第で昇進や昇給が可能です。重要なのは、求人票で提示しているスキルにマッチしていることと、十分な結果を出して評価されていること。そして、自身を売り込む力を持っていることです。
良い結果を出していても、「管理職になりたい」「成果に見合った高い報酬を得たい」という希望は、上司や経営陣にアピールしなければ知ってもらうことができません。
成果を出し続けることと並行して、上司や経営陣とのミーティングの際に「自分はどんな風にマネジメントして、どう組織を良くしていくことができるか」「会社にとってどんなプラスをもたらしているのか」を具体的に伝えることが必要です。
5 人間関係は良い意味でドライ
外資系企業の人間関係は、良い意味でドライです。「仕事は仕事、プライベートはプライベート」とはっきり区別する人が多いので、仕事の枠を超えて飲み会や食事などの付き合いや、社内イベントに強制的に参加させられることはないでしょう。
会社で飲み会やパーティーを開く場合はもちろん自由参加で、上司も先輩も組織を離れて楽しく過ごすのが外資系の特徴です。上司や同僚が程良い距離感を保って接してくれるのも外資系ならではでしょう。
海外との接点はレポートライン次第
高い英語力がないと外資系企業では働けないイメージから、転職に二の足を踏む人は少なくありません。しかし、実際には、必ずしも完璧な英語力が求められるわけではないのです。TOEICスコア900レベルが必要なポジションもあれば、TOEICスコア700くらいでも構わないポジションもあります。また、ほとんど日本語しか使わないポジションも意外と多くあります。
海外との接点もレポートライン(指揮命令系統)次第のため、プロジェクトやポジションによって異なります。
終身雇用ではないので、退職勧告もありうる
外資系企業に対して、結果が出せないとすぐクビになるという印象を抱いている人は多いでしょう。これは、当たらずとも遠からずといったところです。終身雇用ではないので、結果が出ない社員を異動させて可能性を探ったり、結果が出るまで上司や先輩がサポートしたりといったホスピタリティはありません。
しかし、一部企業を除いて「即、解雇」ということもないでしょう。一般的には、業績が悪い状態が続く社員に対してPIP(Performance Improvement Plan)という業績改善プログラムを実施し、その結果次第で進路を決めるという流れになることが多いです。
外資系企業の特徴は企業によっても異なる
ここで挙げた外資系企業の特徴は、あくまでも一般的なものであり、細かい部分は企業によって異なります。よくいわれる外資系企業のイメージをうのみにして後悔しないために、各企業の風土に詳しい転職エージェントを利用して、客観的な情報を十分に収集してから転職を考えましょう。なお、外資系企業への転職を目指すなら、知名度よりも外資系企業に強い転職エージェントを選ぶことをおすすめします。
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