近頃、転職や採用、人材育成などの場面で聞くことの増えた「キャリアパス」という言葉。なんとなく意味を想像できても、どのようなことか明確に説明できる人は多くないのではないでしょうか。
今回はキャリアパスの意味のほか、キャリアパスを作成するための手順などについてご紹介します。
キャリアパスとは目標にたどり着くまでの道筋
キャリアパス(career path)とは、自分の目指す業務や職位などの目的へたどり着くまでの道筋のことです。主に、1つの企業内でどのようにステップアップしていくかを表していて、ここでのキャリアには単なる職歴ではなく、経験により培われた能力や、人材そのものの価値といった意味も含まれるでしょう。
役職に就くかどうかに限らず、ある業務や職位に就くまでの、その企業の中での昇給や携わる職務、異動の順番なども含まれています。
定めたゴールに向かって、どのような経験を積み、スキルを身につけていくのか。それは、どの段階でいつまでに実行するべきなのか。キャリアパスは、キャリアアップと成長の道順を明確化した、地図のようなものと考えるといいでしょう。
キャリアパスが注目される背景
キャリアパスが注目されるようになった背景には、これまで日系企業での慣習だった終身雇用や年功序列制度が機能しなくなってきたことがあります。
個人の働き方やキャリアの考え方は多様化し、新卒で入社してから定年まで1つの会社で勤め上げる働き方は減ってきています。年功序列が当たり前だった時代は、特に個人でキャリアの在り方を考えなくても、年齢とともに給与が上がったり、昇進したりといったことが可能でした。
しかし、現在は勤続年数が増えても、スキルや能力が認められない場合は、評価されない企業が増えています。また、より自分に合った働き方や待遇を求めて転職するケースも少なくありません。
個人が、継続的にスキルアップすることが働く上で必須となり、企業側でも優秀な人材の流出を防ぐため、キャリアパスの必要性が高まっているのです。
企業のキャリアパス制度とは?
人事制度として、「キャリアパス制度」を設ける企業が多くなっています。キャリアパス制度とは、企業内で社員がある職位や職務に就くまでに、必要な経験やスキル、順序などを表したものです。そのスキルや能力を身につけるための研修制度を設け、昇給の制度なども併せて示します。
前述したように、転職が当たり前になってきたことで、企業にはさまざまなバックグラウンドを持つ社員が在籍するようになりました。そういった状況で、企業は社員の待遇面の不満や将来への不安解消のほか、適切な人材育成や採用のミスマッチの防止のために、キャリアパス制度を定めるようになってきています。
外資系企業では特にキャリアパスを意識すべき
外資系企業は日系企業と比べ、企業と個人はより対等な立場にあり、高い報酬を得る代わりに相応の成果を出すことが必要です。
実力に応じた報酬やポジションを獲得するためには、常に学び、高い能力やスキルを身につけなければなりません。そのため、日系企業以上にキャリアパスを意識し、経験やスキルの向上を目指すことが求められるでしょう。
キャリアパスを描くメリット・デメリットとは?
キャリアパスを考えて行動することで、企業にも個人にもさまざまなメリット・デメリットがあります。それぞれについて、詳しくご紹介しましょう。
個人でキャリアパスを描くメリット・デメリット
キャリアパスは、目指すべきゴールを定めた上で、そこに到達するための道筋を考えるものです。目指す道が明確になることで、日々の業務も目標に近づくための行程だと捉えられるでしょう。前向きにモチベーションを保ったまま働くこともできます。
また、キャリアパスを設計することで、最終的なゴールに到達するために、自分に不足していることを具体化することが可能です。目標達成のために何を学び、経験しなければならないのか。そのために、これから準備することや、やらなければならないことなどをより明確にでき、行動に移せるようになるでしょう。
一方、詳細なキャリアパスを設計したために、キャリアの選択肢が狭まったり、偶然訪れたチャンスを逃してしまったりするリスクがあります。
今は変化の激しい時代ですから、自分の努力の範囲外の外的要因でキャリアが閉ざされてしまうこともあるでしょう。キャリアパスに沿って行動してきたことで、そういったときの立て直しは難しくなるかもしれません。
企業がキャリアパスを描くメリット・デメリット
キャリアパスを設計することで、ステップアップのために身につけるべきスキルや能力が明確になり、効率的な採用や人材育成ができます。出世の道筋が見えることで、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。社員が成長できる会社であることを示すことで、企業のブランディング効果も期待できます。
その一方で、社員が必ずしも設計したキャリアパスに沿ってステップアップできないケースがあります。必要なスキルや能力を備えた社員がいても、役職者の枠には限りがありますし、経営状況によってはキャリアパスどおりにできないかもしれません。その場合、社員の満足度は大きく下がってしまうでしょう。
キャリアパスに沿った道しか目指さなくなることで、社員の多様性が損なわれるおそれもあります。
キャリアプランやキャリアデザインとの違い
キャリアパスと似たような言葉に、「キャリアプラン」や「キャリアデザイン」があります。これらの言葉は、キャリアパスとどのような点が異なるのでしょうか。
キャリアプランは理想のキャリアを得るまでの計画のこと
キャリアパスが、主に1つの会社でキャリアを得るまでの道筋を示していたことに対し、キャリアプランは人生の中で理想とするキャリアを得るまでの計画を指します。キャリアプランは人生単位でキャリアを考えるものであり、その中には就きたい職位ややりたい仕事だけでなく、理想の働き方やプライベートと仕事の比率なども含まれています。
キャリアパスとの違いは、ステップアップの道筋を企業内で考えるか、人生単位で考えるかですが、実際には混同されて同じ意味で使われることも多いです。
キャリアデザインは理想のために主体的に計画を立てること
どんな仕事がしたいか、どのような自分になりたいかといった人生の理想に対し、理想を実現するために主体的に計画を立てることがキャリアデザインです。キャリアデザインは、キャリアパスやキャリアプランを描く上でのプロセスといえるでしょう。人生設計の上で、どのような自分になりたいのかを考え、ライフスタイルから職業や働き方を選択していきます。
キャリアパスの描き方
では、実際にキャリアパスを作成するにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、キャリアパスを描くためのステップを紹介します。
1. 自己分析を行う
キャリアパスを描く上で明確にしておきたいのは、現在の自分の状況、つまりスタートです。そのためには、まず自己分析を行います。
これまで経験から身につけた能力やスキル、やりがいを感じている業務などのほか、興味関心のあること、不得意なども洗い出しましょう。徹底的な自己分析によって、具体的で実現可能性が高いキャリアパスを作成することにつながります。
2. 自分なりのゴールを描く
スタートの状況がわかったら、キャリアのゴールを決めましょう。現場でスペシャリストになる、責任者として大きなプロジェクトを動かすなど、自分なりのゴールを設定してください。キャリアパスは主に一企業内でのキャリアの道筋なので、ゴールが「マネージャーとして転職する」でも構いません。
3. 達成までの課題を考える
スタートとゴールがわかったら、逆算して課題を考えます。例えば、ゴールの到達までに資格が必要だとしたら、「○年以内に勉強を始めて○歳までに資格を取得する」などと決めておきます。資格取得までに何時間の勉強時間が必要か、勉強時間確保のために何をすべきかなど、一つひとつの課題の解決方法を考えていきましょう。
また、自分が目指すポジションの求人条件をリサーチしてみることも有効です。募集要項を見るとどのような能力やスキルが必要とされているのかがわかるため、それを課題として捉えることができるでしょう。
4. 定期的に見直す
キャリアパスは作成した後に、定期的に見直すことも必要です。社会情勢や企業の状況は常に変化しており、作成したキャリアパスどおりにはいかない事態も出てくるでしょう。
自分自身の達成度や、興味関心の移り変わりによってもキャリアパスは変化します。定期的に見直し、柔軟に対応することも、キャリアの成功のために不可欠です。
転職の際にキャリアパスを聞かれる理由とは?
転職の際、面接でキャリアパスを聞かれることがあります。その場合、企業はどのようなことを求めているのでしょうか。また、どのように答えれば良いのかについてもご紹介します。
会社の方向性と合っているか
会社の方向性や配属予定先の業務と、応募者の希望が合っているか、確認の意味でキャリアパスを聞くことがあります。意欲があっても応募企業の方向性とかけ離れたものであれば、ミスマッチが生じることとなります。採用する側は、その会社に見合ったスキルを持ち、かつ長く働いてくれる人材を求めていますから、キャリアパスを聞くことでずれがないか確認しているわけです。
応募要項をしっかり読み、それと合わせた形でキャリアパスを説明してください。キャリアパスを示すことで、自分自身の希望や目標と会社の方向性が合っていると、説得力を持って伝えられるでしょう。
企業や業種について理解できているか
どれだけ具体的にその企業で働くことが想定できているかを、キャリアパスを聞くことで確認することもあります。キャリアパスが企業内のキャリアパスとかけ離れていれば、理解が足りない、志望度が低いとみなされるかもしれません。企業内の制度についてしっかり調べてから面接に臨みましょう。
調べてもわからないことがあれば、質疑応答の際に「ここまではわかったが、こういった場合はどうなるのか」などと、理解できているところを伝えた上で不明な点を聞いてみてください。
キャリアパスを描いて目標を達成しよう
自分なりのキャリアパスを描くことは、目標に着実に近づくためのカギとなります。
今の自分の状況を確認し、何をキャリアのゴールと考えているのかがわかるだけでも、今後のキャリア形成に役立つのではないでしょうか。充実したキャリアを目指し、キャリアパスを描いてみてください。
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