元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは『企業文化との相性を見極める - 規模』です。
転職活動をするときに陥りがちな罠は、応募した全ての企業に受かりたいと思ってしまい、書類選考で通らなかったり、面接で落ちたりするとガッカリしてしまうことです。たくさんある企業の中には、候補者と相性が良くない会社も存在します。一喜一憂しないで、自分にとってより働きやすい会社を探しましょう。
私は、企業文化を判断する指標は3つあると思っています。今日はその中から「規模」を取り上げます。事業規模が変われば、当然のことながら同じ業種であってもやるべき仕事の内容もスピード感もかなり変わってきます。ここでは私が実際に体験した「人事」という業務について実際の体験を元に説明します。社員数が3人、次に200人、最後に1500人を超える大企業の場合、業務内容がどう変わるのか。それぞれ具体例をあげながら説明していきます。
社員数3人
規模の小さな会社では、前職で培ったノウハウやスキルを最大限にいかしつつも、守備範囲外のことも対応できる柔軟性が求められます。また、自分に最終決定権がなくても会社全体を見渡すことで、視野が広がり経験値も高まります。
かつて、私はGE時代の大先輩とともに、3人で米系企業のアジア・パシフィックの本部を立ち上げたことがあります。今でこそ7100人以上もの社員を抱える大企業ですが、立ち上げ当初の社員はたった3人。アジア・パシフィックのCEOのエド(名前)と、人事の責任者である上司、人事のスペシャリストの私、という構成でした。
たった3人しかいない会社では、立場上一番下になる私がほぼすべての雑務を一人でこなさなければいけませんでした。前職で2人の部下持ちだった私としては、正直言って「なんでコピー用紙の発注などの雑務まで、私がやらなければいけないんだろう」と思うことも多々ありました。
そうはいっても、まだ立ち上げたばかりで人を雇う余裕もなく、かといって時給換算したら私よりも遥かに高い2人にやらせるわけにもいかない。なによりも彼らには本業で最大限にパフォーマンスを発揮してもらう必要があったのでため、すべて私がやるしかありません。「プライドを捨てて拾える球は拾う!」その覚悟で、(社内清掃から細かい連絡の確認、社員のヘッドハンティングまで、)思いつく限り、必要だと思われる業務はすべて行いました。
「事業規模が小さいと、雑務まで任されてイヤだな」と思うかもしれません。しかし、小さな企業ならではの醍醐味もあります。それは会社全体が見渡せること。たとえば、ブラジル、香港、アメリカから人材を東京で雇うにあたり、現在の家の処分や引越しにかかる費用はどのくらいなのか。それを算定する仕事の専門家を、誰に頼むべきなのか。さらに、CEOと上司は、雇い入れる人材をどのような基準で判断し、最終的にどう決断するのかなど。たった3人の社員だったからこそ間近で見ることができました。この経験は、のちに私が外資で人事部長になった時に大いに役立ちました。
社員数200人
次に、社員数が200人ほどになったときのことです。当時、総務部は存在しておらず、そのため他部署の部長から「文具の取りまとめは人事部でやってほしい」と依頼がありました。備品の発注は、本来人事部の仕事でないため引き受けてしまうと部署の負担が増えることになります。とはいえ、一括で買うとコストが下がり、経費削減になる。会社に貢献できる機会を自らが見逃す訳にいかないことから、スタッフに事情を説明して人事部で引き受けることにしました。
社員数200名とはいえ、まだほとんどの社員の顔と名前が一致するくらいの人数です。このような状態であれば、どの部署がどの程度忙しく、また個人がどのような問題を抱えているのかを把握することが可能です。
他部署の状況を見て、忙しそうであれば、本来の業務以外のことも受け入れて、全体の進行をスムーズにする。全体を俯瞰しながら柔軟性をもって働くことが求められます。
社員数1500人
次に、社員数1500人の時の例をお話します。社員数が3人、200人程度の時は備品の発注など総務部的なこともやっていましたが、さすがに1500人ともなると購買部があります。また、価格交渉についても外部の業者と直接やり取りをしてくれる専門家がつきます。そのため人事部としての本来の「職務内容」に専念することができるようになりました。また仕事のスケールも、社員数が多いと予算額が増え、より大きなことを手がけられるようになりました。
人事の仕事に集中できる環境で、仕事に対するモチベーションが上がり達成感も感じられるようになりました。その反面、ひとり一人の社員の顔と名前が一致しない、自分が把握していない人事の問題が出てくるなど、マイナス面もあり、組織の大きさを痛感させられました。また「職務範囲内」のことをやろうという意識が強くなるため、それ以外の仕事を依頼されることに対して抵抗感が出てきたのも、規模の大きな会社の特徴かもしれません。
まとめ
ハードワークながらもさまざまな業務に携われる小規模な会社、人事としての仕事を中心に行いながらも必要があれば業務外の仕事も引き受ける中小規模の会社、会社全体の業務には関わらないものの、専門職に専念できる大規模の会社。
あなたはどのような働き方を望みますか? 会社の規模によって企業文化は大きく異なります。職種や業種で選ぶだけではなく、どの程度、どの業務に携わりたいのかについても、面接に行く前に考えておきましょう。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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