転職をする際、転職先が求めるスピードを考える方は、ほとんどいないかもしれません。同じ業界で転職する場合は変化しませんが、異業種への転職の場合、見落とすと致命的になるかもしれない要素です。
企業が人材に求めるスピードは、その企業の商品開発サイクルとモノづくりをしているかどうかに大きく左右されます。例えば、スピードが速いのは、IT、証券会社、コンサルティング、立ち上げ企業、ベンチャー企業です。
ITは、ハード、ソフト、どちらを扱っていても、競争が激しく、新しい商品の市場投入サイクルが速いので、自然とのんびり仕事ができる職場ではなくなります。証券会社は、「場」という市場の動きに連動して、仕事をしている部署がほとんどなので、求められる仕事のスピードは速くなります。立ち上げ企業・ベンチャー企業は、のんびりしていたら、企業そのものが立ち上がらないですし、競争に負けてしまうので、日々、速いスピードで切磋琢磨することになります。
一方、例えば、製薬会社は、10年という長い時間をかけて慎重に、新しい薬を開発しています。そもそも研究開発に膨大な時間がかかる上に、薬の安全性を最優先するため許認可のプロセスにもかなりの時間を要するので、商品開発のサイクルが非常に長いです。求められる人材のタイプは、「安定していて着実な仕事ができる」人で、日々の仕事に求められる最優先はスピードではありません。
中間に位置するのが、モノづくりをしている会社です。モノを作って販売している企業は、新商品開発にあたり、消費者のニーズを検証する・調達・製造・物流・マーケティング・営業・カスタマーサポートなど、関わる部署が多く作業も多岐に渡るので、スピード勝負の姿勢で毎日仕事をするのは無理です。会社が方向転換をするにも、規模が小さくなければ時間を要します。
スピードに、良い悪いはありません。ただ、自分に合っているかどうかは、働きやすさにつながるので大事です。例として、私の元部下と、私自身の体験をお話します。
まずは、生まれ持ったスピードが「ゆっくり」の人が、求められるスピードが速い企業に勤めた時の例です。あるIT企業に勤めていた時のこと、私の部下の一人に、いい人で仕事もできるけれど、スピードがゆっくりという人材がいました。米系のIT企業なので、それは速いスピードで物事が動いていましたが、彼は、どっしりとのんびり構えていました。他の部署の部門長からも、彼のスピードのことを指摘されることはあり、その時は自分の部下なので守っていました。
1年後に彼は、転職することになりました。外資の大手には、Exit Interview(退職インタビュー)という制度があり、退職する方になぜ辞めるのかを聞くのですが、彼の転職理由は、「スピードについていけないから、メーカーに戻る」でした。上司として納得の理由でした。
次に私の例です。私が持って生まれたスピードは、かなり速いと思います。GE、モルガンスタンレー、米系IT企業に2回勤務し、スピードの速い企業で仕事をすることを楽しみました。一度だけ、米系の製薬会社に転職したことがありました。日々の職場での動きを、とてもゆっくりだと感じ、その点は苦痛でした。良い会社でしたが、「スピード」という要素において、私は合っていいなかったと思います。
これは製薬会社が楽だという意味では全くありません。M&Aが加速し競争も激しくなってきている業界ですが、あくまで比較すると承認のプロセスなどがゆっくりだということです。他に、比較的ゆっくりの業界はエネルギー業界です。ガス・電力・水などは、もともと莫大な資本が必要で参入障壁が高いので競争が発生しにくい業界であることが最大の理由です。
転職をするとき、応募先企業が求める「スピード」を確認することをお勧めします。 生まれ持ったスピードが特に「速い人」「遅い人」は、自分にあった業界・会社に転職しないと不適合を起こして、再び転職をすることになるので要注意です。
3回に渡り、日系・外資系に関係ない「企業文化を見極めるポイント3点」について説明してきました。 転職先を決めるときには「企業の規模」「企業の成熟度」「業界・企業が持つスピード」を冷静に見極めて、自分にとって働きやすい職場を選ぶようにしましょう。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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