メンター制度は、若手を支えるための仕組みとして、多くの企業に注目されつつあります。ここでは、メンター制度とはどのような制度であるのか、導入することで企業や社員がどのようなメリットを享受できるのかについてご紹介します。
導入する上で知っておきたいデメリットも併せてご紹介しますので、メンター制度の活用に役立ててください。
メンター制度とは?
メンター(Mentor)は、古代ギリシアの叙事詩「オデュッセイア」に登場する、勝利を導く助言をする「Mentor(メントール)」が語源となっています。登場人物の特性から、「良き指導者」をメンターと呼ぶようになりました。企業における良き指導者とは先輩社員のことであり、メンターである先輩社員のサポートを受けることで、新入社員や若手社員は精神面で支えられ、ビジネスパーソンとしてのびのびと成長することができます。
メンター制度の導入によって、若手社員の早期離職を防ぐ効果が期待できるため、導入を検討する企業が増加しています。まずは、メンター制度とはどのような制度であるのか、概要を見ていきましょう。
メンターとメンティが1対1のペアを組む
メンター制度においては、指導する立場の先輩社員をメンター、指導される側の社員をメンティと呼びます。
メンターとメンティは、1対1のペアを組むのが決まりです。客観的なアドバイスができるよう、指導される社員であるメンティとは、別の部署に所属する社員をメンターに指名するのが一般的です。
実施する上で、新人社員との自由な対話を習慣化
メンター制度においては、メンターとなる先輩社員と、メンティとなる新入社員との対話が習慣化されます。
「月1回60分程度の面談を1年間行う」などのガイドラインが設けられ、自由な対話形式で実施されるケースが多いです。
新入社員の実務面や精神面の包括的なサポートを行う
メンター制度において、メンターはメンティの実務面だけでなく、精神面のサポートを行います。
実務面においては、メンティが目標を達成できないとき、うまくいかない原因がどこにあるのかいっしょに探ります。自分の経験と照らし合わせて助言をし、メンティが目標達成までの道筋を、自主的に切り拓けるよう導くのがメンターの役割です。
また、社会人経験が浅いうちは特に、慣れない仕事環境におけるライフスタイルの確立に困難を感じやすいものです。職場での人間関係の形成など、思い悩むことがありながら直属の上司には相談できないということもあるでしょう。そんなとき、メンターは気軽に相談できるようにヒアリングし、精神的なサポートを行います。
メンティの業務へのモチベーションが下がることのないよう、実務面でも精神面でも包括的に支えるのがメンターの役割です。
メンター制度は外資系企業を中心に導入されてきた
日本においてメンター制度は、主に外資系企業を中心に導入されてきました。
外資系企業の中には、新人研修の代わりにメンター制度を導入している企業があります。これは、新入社員に一定期間、面倒見役としてメンターをつけるというもので、入社したばかりで何か困ったことがあったら、メンターに相談することができます。
役員や管理職、女性社員を対象としたメンター制度もある
メンター制度の対象となるのは、新入社員や若手社員ばかりではありません。例えば、役員や管理職を対象としたメンター制度においては、社員がメンターとなります。役員や管理職の「若手に対して、どう接していいかわからない」という声を若手社員がヒアリングし、相談相手となるのです。
若手社員が、役員や管理職にSNSや流通するゲームアプリについての指導を行うなど、最新トレンドを伝えることで、社内にありがちな世代間ギャップを埋める効果があります。
また、近年、女性社員に対するメンター制度を実施する企業が増えています。仕事と子育ての両立や企業における女性のキャリア形成について、先輩社員が相談にのり、アドバイスをする制度であり、働く女性を支援するのが目的です。
メンター制度とその他の類似制度との違い
メンター制度に似た、新人や若手のサポートを行う制度が、ほかにもいくつか存在します。それぞれの特徴やメンター制度との違いについて見ていきましょう。
チューター制度
チューター(Tutor)は直訳すると、「家庭教師、指導者」となります。メンターと若干、意味が類似していますが、チューターは「業務面での教育を行う指導者」という意味合いが強くなります。
チューター制度において指導者は、実務面に関してのみアドバイスを行うのが一般的です。一方、メンターは精神面での悩みも含む、幅広い領域の相談役・指導役となります。
ブラザー・シスター制度(エルダー制度)
先輩社員が兄(Brother)や姉(Sister)のように後輩社員を指導するのがブラザー・シスター制度です。メンター制度との違いとして、ブラザー・シスター制度では、同じ部署の先輩が業務面で後輩をサポートします。
また、メンター制度の場合、中途入社の社員や役員も対象となりますが、ブラザー・シスター制度は新入社員のみが対象となることも異なる点といえるでしょう。
OJT
OJTとは、「On the Job Training」の略称であり、実務を通して行われる実践的な研修制度です。メンター制度とOJTはいずれも、先輩社員が若手社員に指導・助言をするという点で類似しています。
メンター制度とOJTの違いとして、メンター制度では年齢や社歴の近い先輩社員がメンターにつきますが、OJTの場合、先輩社員の年齢はさほど考慮されません。
コーチング
コーチングとは、「訓練すること、監督すること」という意味で、企業においては、部下や後輩に対して目標達成のためのサポートを行う取り組みを指します。メンター制度は、「精神的なサポートを行うことでビジネスパーソンとしての成長を促すこと」が目的とされますが、コーチング制度はあくまでも「ビジネスにおける目標を達成させること」が目的とされる点が異なります。
アプレンティスシップ
アプレンティスシップとは、中世ヨーロッパに普及したギルドにおける「徒弟制度」のことで、弟子が師匠から仕事の技術とともに、仕事に対する姿勢を学ぶというものです。
アプレンティスシップにおいて、弟子は「見て学ぶ」「雑用をこなしながら学ぶ」のに対し、メンター制度においてメンティは、「対話を通して学ぶ」という点が異なります。
メンター制度がもたらすメリット
メンター制度は、企業、そして個人にさまざまなメリットをもたらす制度です。メンター制度を導入することで、会社や社員にどのような恩恵があるのか、具体的にご紹介します。
新入社員が自主的に行動し、企業に貢献できるようになる
メンター制度によって、メンターとなる先輩がメンティである新入社員を実務面だけでなく精神面でサポートすることで、新入社員の不安が取り除かれ、自主的に行動できるようになります。
新入社員が積極的にアウトプットできるようになり、結果的に企業に貢献するようになるでしょう。
新入社員の不安が解消され、早期離職を防ぐことができる
メンター制度により、メンターとなる先輩社員が新入社員と関わることで、新入社員の社内における精神面での支えができます。悩みがあってもメンターのサポートのもと、早期解決をすることが可能です。
何より社内に、気軽にコミュニケーションをとれる先輩がいるため、職場になじみやすくなる点が魅力でしょう。新入社員が早いうちに職場に定着することができるので、早期離職を防止できます。
メンティの目標達成へのモチベーションを保てる
メンターは、メンティが目標を達成するため、何をどのタイミングでするべきか、道筋をアドバイスします。具体的にやるべきことが明確になることで、メンティは仕事への意欲を維持しやすくなるでしょう。
メンターのサポートを受けながら、目標を達成するまでのモチベーションを保つことができるという点は、メンティにとって大きなメリットです。
社内コミュニケーションが活発化し、社員間の絆を強化できる
メンター制度によって部署を越えた人間関係の構築を図ることが可能となり、それによって社内のコミュニケーションが活発化する点もメリットといえるでしょう。メンター制度では、業務で直接的な関わりがない社員間でのコミュニケーションが生まれ、社内全体の雰囲気づくりのきっかけとなることがあります。
メンター制度を継続して行うことで、社員間の絆が強化される効果が期待できるでしょう。
新入社員に細かな指導内容や会社の文化を教授できる
メンター制度を導入することで、新入社員に対して細かな指導内容を、くまなく教授することができるという点は、企業にとってのメリットといえるでしょう。
集団で受ける研修では、新入社員に、どうしても伝えきれない内容が出てくる可能性があります。メンター制度のサポート役となる先輩社員は、別部署の社員ではありますが、メンティである新入社員にヒアリングして、取りこぼしていた内容がないか確認することはできるはずです。メンターが手配することで、新入社員が研修を復習する機会を設けることもできるでしょう。
また、メンター制度を通して、研修では教える機会が少ない会社独自の文化やノウハウを、新入社員に伝えることもできます。
マネジメント力や責任感の向上など、メンター自身が成長できる
メンター制度によってメンティに深く関わることで、メンターは自身の成長を感じることができるはずです。また、仕事に対する責任感をあらためて感じたり、今後のキャリア形成について考えるきっかけとなったりするでしょう。
ほかにも、メンティへの指導を通して、マネジメント能力を向上させることができる点は、メンターにとってのメリットといえます。
メンター制度のデメリット
メンター制度を導入することでさまざまなメリットを享受できますが、デメリットがあるのは確かです。導入する上での注意点として、確認しておきましょう。
メンターに業務の負荷がかかる
メンターとしてメンティのサポートを行いながら、通常業務もこなさなければならないため、メンターの仕事上の負荷がどうしてもかかってきます。
通常の業務量が増加する繁忙期には、人事がフォローを入れるなど、社内でメンターに協力する体制を構築する必要があるでしょう。
メンターとメンティの相性が良くない場合がある
メンターとメンティの相性が良くない場合、信頼関係の構築が難しくなる可能性があります。メンターとメンティのバックグラウンド、年齢、性格などの諸条件を考慮した上で、慎重なマッチングを行う必要があるでしょう。
メンターによってサポートの度合いが違う
メンターによって、メンティに対するサポートの度合いにバラつきが出てくることがあるかもしれません。それにより、メンティの成長に差が出てくるリスクも考えられます。
メンター制度におけるサポートの質をできる限り一定に保ち、メンティが公平に成長できるようにするためには、メンター候補の社員に対する十分なレクチャーが不可欠です。メンター研修など、事前のレクチャーによって、メンター制度における指導に対する意識統一を図る必要があるでしょう。
メンター制度は新入社員の成長ばかりではなく社内全体の成長につながる
メンターがメンティを実務面だけでなく精神面でサポートするメンター制度には、若手社員の早期離職防止や、メンティ・メンター双方の成長、部署を越えた社内コミュニケーションの活性化など、さまざまなメリットがあります。
メンター制度を導入する際には、ご紹介した注意点を参考に、社内の体制を整えることが大切です。準備が整ったらメンター制度を導入して、実りある人材育成に役立ててください。メンター制度の活用により、社内全体で成長していくことができるでしょう。
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