業務の内容が業種に左右されない職種のひとつである経理は、転職が難しい職種といわれています。なぜなら経理は、どんな業種や企業でも、基本的な業務内容が大きく変わらないということもあり、業務の経験や専門的な知識の豊富さが問われる職種だからです。
そこで今回は、経理が転職したいと思う理由と、面接での転職理由の伝え方を解説していきます。経理の転職に役立つ資格もご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
経理の人が転職したいと思う主な理由
職種に関係なく、転職したい理由は人それぞれですが、経理の人はどのような理由で転職するのでしょうか。考えられる転職の理由は、主に下記の5つです。
同僚や上司との人間関係がうまくいかない
経理の転職理由で多いといわれているのが、「人間関係の問題」です。これは経理には限りませんが、人間関係が良好でない職場では、たとえ業務自体には問題がなかったとしても長続きしません。
具体的には、「上司や経営者とそりが合わない」「同僚や後輩との関係がギクシャクしている」などの理由が挙げられます。また、高圧的な上司や先輩によるパワハラなど、深刻な問題を抱えている場合もあるでしょう。
このような職場で働き続けるのは大きなストレスとなり、心身の健康に悪影響を及ぼすおそれがあります。会社で働く以上、人間関係は必ずつきまとうものです。そのため、人間関係が良好な会社へ転職したいと考える人は少なくありません。
残業が恒常化している
残業が多いことも、経理の転職理由のひとつです。例えば、経理担当者の数が少ないベンチャー企業や中小企業では、経理の業務の幅が広く、残業が増えるケースが多いようです。経理であれば決算期や年度末などは忙しいものですが、残業が恒常化していては問題です。
ワークライフバランスを重視する人の場合、あまりに残業が多い企業からは離れたいと考えるでしょう。
給与や人事評価に不満がある
給与や人事評価に不満を持って転職する人もいます。
経理は、会社への貢献度を数値化するのが難しい職種です。そのため、「どれだけがんばっても評価されない」といった不満を持つ人もいます。企業側が明確な評価制度を設けておらず、給与が上がりにくいという場合もあるかもしれません。
評価体制が整っていないため、給与がいつまでも上がらないという状況に陥っていた場合、「この会社には将来性がない」と考えて転職を考える人もいるでしょう。
経理から財務などのキャリアチェンジ
経理から財務など、キャリアチェンジを転職理由に挙げる人も少なくありません。
例えば財務は、経理が作成した財務諸表を参考にして資金計画を立てたり、資金調達をしたりする仕事です。そのため、経理として培ったスキルを活かして、財務を目指す人も少なくありません。
また、財務はその業務内容から計画性や行動力が必要となる仕事であるため、経理とはまた違ったおもしろさがあります。
自社内で経理から財務へキャリアチェンジすることもできますが、すでにポストが埋まっているなどして異動が難しい場合は、転職を検討するというケースもあるでしょう。
上位職へのキャリアアップ
上位職へのキャリアアップも、経理が転職したいと思う理由のひとつです。
企業によっては、同じ仕事しか担当させてもらえなかったり、担当したい業務に携われなかったり、役職が埋まっていたりする場合もあります。このような企業を離れ、キャリアアップしたいと考える経理の人もいるでしょう。
また、経理のキャリアプランとしては、「経理主任」などの管理職に昇進するのが王道ですが、資格を取得して「公認会計士」や「FP&A」などのスペシャリストを目指す人も少なくありません。
経理の転職理由を面接で伝えるときのポイント
続いては、経理の転職理由を、面接の際にどのように伝えるべきなのか解説します。
志望動機を明確に伝える
面接では、志望動機を明確に伝えましょう。起票や記帳、出納といった日常業務は、どのような企業もあまり変わりません。業務内容に違いがなければ、「この企業でなければいけない」という志望動機が必要になります。
そのためには、転職を希望する企業や業界の情報収集を、しっかり行うことが必要です。企業が扱うプロダクトやサービスだけでなく、経営理念や社風まで徹底して調査しましょう。企業研究を入念に行えば、「この企業に入社したい」といった志望動機を明確にすることができます。
転職理由をポジティブとネガティブ両方伝える
転職理由は、ポジティブとネガティブをセットで伝えることが大切です。なぜなら転職理由は、ネガティブに捉えられてしまうケースが多いからです。
例えば、残業の多さを理由に転職することを伝えると、「働くモチベーションがないのでは」「またすぐに辞めてしまうのではないか」と、マイナスに受け取られる可能性もあります。
しかし、「前職では残業が多かったが、これからは自己投資できる時間を増やして、経理としてのスキルアップに励みたい」など、ポジティブな要素も加えると印象は大きく変わります。残業時間が減る分、新たに資格を取得したいといった意思を伝えれば、採用担当者からの印象はそれほど悪くはならないはずです。
一方、ポジティブな理由だけを話すのも得策ではありません。
そもそも、転職活動の目的は、自分にとってより良い環境で働くことです。そのため、ネガティブな理由もしっかりと伝えなければ、たとえ選考を通過したとしても、企業と応募者のあいだでミスマッチが起きてしまう可能性があるのです。
原因別の転職理由の伝え方【例文つき】
続いては、面接における転職理由の伝え方を、原因別に例文と併せてご紹介します。
人間関係が原因の場合
人間関係が原因で転職をする場合、面接でストレートに理由を伝えすぎると、「トラブルメーカーなのでは」といった不安を与えてしまう可能性もあります。「周囲と連携してスムーズに仕事をしたい」など、チームワークを重視したいというような伝え方をするといいでしょう。
<人間関係が原因の転職理由の伝え方>
現職ではチームメンバーや他部門との接点が薄く、経理としての仕事を個人でこなしているという実感を持っています。しかし、仕事をしている中で一人ではできないことも多く、今後はチームとして仕事ができる環境で働きたいと考えるようになりました。今後は経理業務だけでなく、経理の知識を活かして周囲の人がスムーズに仕事を進められるよう、サポートしていきたいと考えています。
残業の恒常化が原因の場合
残業の恒常化が転職理由の場合は、残業時間に対する不満ではなく、「もっと効率的に仕事を進めて成果を上げたい」など、企業の発展にどう寄与できるのかアピールすれば良い印象を与えられます。
<残業の恒常化が原因の転職理由の伝え方>
現職では、経理の業務内容の幅が広く、常に残業をしなければならない状況になっています。残業すること自体は問題ありませんが、業務プロセスの改善等を含め、もっと効率的に仕事を進めていけるようにしたいと思うようになりました。
しかし、現職では一社員の意見が通りづらい風土があり、労働環境の改善が難しい状況です。そのため、これからは一人ひとりがパフォーマンスを発揮し、仕事を効率的に進められる環境に身を置きたいと考え、転職を決意しました。
給与や人事評価が原因の場合
給与や人事評価に対する不満から転職する場合、例えば「給与面に不満があった」と面接時に伝えてしまうと、「お金分のことしか考えていない」と受け取られかねません。しかし、これを「自身の仕事を正当に評価してもらいたい」と言い換えると、印象は大きく変わるでしょう。
<給与や人事評価が原因の転職理由の伝え方>
現在勤めている会社は、管理職にならなければ給与が上がらない評価制度でした。経理としてどれだけスキルを磨いても評価されないという、つらさもありました。
しかし、私は経理のスペシャリストとして、生涯経理や会計の業務に携わりたいと考えています。そのため、自身が行った経理業務の成果を正当に評価してくれる会社に転職したいと考え、転職を決意しました。
キャリアアップ・キャリアチェンジが目的の場合
キャリアアップやキャリアチェンジは、そもそもポジティブな退職理由です。そのため、ストレートに今後やりたいことなどを伝えて問題ありません。「前職でやれなかった業務にチャレンジしたい」「資格を取得したい」など、具体的に伝えるといいでしょう。
<キャリアアップ・キャリアチェンジが目的の転職理由の伝え方>
現職では経理業務を担当していますが、仕事を通して企業の資金調達などに携わる財務に興味がわき、財務にかかわる仕事をしたいと思い始めました。しかし、現職ではすでに財務担当のポストが埋まっており、財務の業務にかかわることが難しいことから、転職を決意しました。
今後は今までの経験を活かしつつ、財務報告実務検定の取得などを通じて財務の知識を増やしながら、財務としてのスキルアップを図りたいと考えています。
経理の転職に役立つ資格
ここまで解説したように、経理では転職理由の伝え方が大切です。
しかし、それだけで転職活動がスムーズに進むとは限りません。経理としての転職を考えている人は、下記のような資格を取得すると選考において有利になるでしょう。
日商簿記検定(日商簿記)
「日商簿記検定」、通称「日商簿記」は、経理にとっては王道の資格です。日本における知名度も高く、転職活動に役立ちます。
ただし、3級は簿記の基礎中の基礎ともいえる部分であるため、「持っていないよりはいい」程度の認識でいたほうがいいでしょう。
転職に役立てるのであれば、2級以上を取得しておくのがおすすめです。2級を取得すれば財務諸表の仕組みがわかり、企業の財務状況をより正確に把握できるようになります。
また、1級は合格率10%程度の難関資格ではありますが、取得することで経理・会計全般への理解が深まり、キャリアの幅も広がります。
USCPA(米国公認会計士)
「USCPA(U.S. Certified Public Accountant:米国公認会計士)」は、アメリカの各州が認定する公認会計士資格です。合格すればその州で公認会計士として働くことが可能ですが、公認会計士になる予定がない人にも人気の資格です。
USCPAでは、会計に関する知識はもちろん、試験がすべて英語で出題されることから、高い英語力の証明にもなります。外資系企業やグローバル企業で経理として働きたい場合、取得していると転職に有利になるでしょう。
また、USCPAの出題範囲にはIT関連の内容も含まれるため、IT業界の経理に転職したい人にもおすすめです。
BATIC(国際会計検定)
「BATIC(国際会計検定)」は、世界標準の会計に関する理解度を証明できる資格です。試験はすべて英語で出題されるため、取得することで、実務レベルの英語が使える人材としてもアピールできます。
また、BATICは、東京商工会議所が主催しているため、日商簿記との親和性が高いことも特徴です。日商簿記を取得済みの人であれば、BATICの勉強もスムーズに進められるでしょう。
転職理由は「本音」を「ポジティブ」に伝えることが重要
今回は、経理の転職理由の伝え方を解説しました。転職理由は、ストレートに伝えるとネガティブに受け取られがちです。採用担当者に悪い印象を持たれないようにするためには、ポジティブな理由をセットにして伝えるのが大切になります。
しかし、選考を通過したいからといって、ネガティブな理由を一切伝えないのも問題です。転職活動はあくまで、「あなたにとってより良い会社に転職すること」が目的です。採用後のミスマッチを防ぐためにも、本音をポジティブに表現できるような伝え方を考えてみてください。
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