DXの推進に力を注ぐ企業が急速に増えています。DXの必要性が高まる一方で、それを担う知識とスキルを持った「DX人材」は不足傾向にあります。
DX人材は、具体的にどのような職種の人材で、どのようなスキルや知識、思考が求められているのでしょうか。需要が高まるDX人材について解説します。
DXはデジタル技術による変革
DXとは、デジタル技術を活用し、企業が製品やサービス、ビジネスモデル、さらには業務や組織、企業文化を変革することを指します。DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略であり、トランスフォーメーションとは変形、変質、変容などを意味する言葉です。
経済産業省は、2018年に取りまとめた「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」において、DXについて下記のように定義しています。
<経済産業省のDXの定義>
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること
ここで押さえておきたいポイントは、DXには企業内部の業務環境の変革と、外部に向けたビジネスの変革という、2つの側面があるということです。
内部の変革が必要な「2025年の崖」
経済産業省は、2018年9月に「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表しています。レポートでDXの推進を妨げる代表として挙げられているのが、国内の多くの企業が抱えている、老朽化・ブラックボックス化・肥大化が進んだレガシーシステム(既存システム)です。
レガシーシステムは、維持するだけで多くのリソースを費やします。もっと効率的で新しい技術に適合したシステムへ転換を図らなければ、IT人材の不足と相まって、企業経営が先細りになり、それどころか、一気に転落するおそれがあります。
DXレポートでは、2025年以降、このまま転換が進まなければ、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算しており、これを「2025年の崖」と呼んでいます。
ITの進化に伴うビジネスの変革が必要
DXは企業のIT化、レガシーシステムからの脱却のみを指す言葉ではありません。IT化は、DXを推進するための手段であり前提です。
IT技術、デジタル技術の進化は人々の生活環境を変化させ、消費行動も大きく変えました。商品を選ぶとき、まずインターネットで商品を探し、手に取って確かめたい場合、店に足を運ぶといった行動は、すでに当たり前のものとなっています。数年後、AIやIoTが今以上に普及すれば、デジタルとリアルはさらに融合し、補完し合う関係になるでしょう。この変化は、BtoCだけではなく、BtoBでも同様です。
こうした消費行動の変化・変容に対応し、商品、ビジネスモデル、企業の在り方そのものを変えていかなければならないというのが、DXの骨子です。DXの真の目的は、新時代に向けて、ビジネスの変革、組織の変革を成し遂げることにあります。
DX人材とは?
DX人材とは、企業がDXを実現しようとする過程で、高度なデータ活用やデジタル技術の導入を通じて、社内の組織変革やビジネスの変革を担う専門家、またはエンジニアのことです。
DXを遂行しようとするとき、レガシーシステムの存在とともに大きな障壁となっているのが、DX人材の不足です。DXの重要性について理解が進むにつれ、DX人材の需要が急増し、人材不足が深刻化しています。
では、具体的にDX人材は、どのような職種に就いているのでしょうか。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2019年4月に公開した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」で、DX推進人材の種類として6つの職種を定義しています。
ここでは、IPAが定義した6職種と、昨今DX人材として求人の多い2職種についてご紹介します。
プロデューサー
プロデューサーは、DXやデジタルビジネスの推進を主導するリーダー格の人材です。事業や業界、それを取り巻く環境を把握し、社会や市場の変化と将来動向を読み取りながら目的・目標を定めて組織を牽引します。投資や経営資源の配分についても関与し、社内外と連携して変革を進めること、ビジネスモデルを作り上げて事業化することなどがミッションとなります。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、製品やサービス、デジタルビジネスなど、DX実現に向けた具体的な企画を発想し、デザインする人材です。「事業化に結びつくアイディアやコンセプトを、魅力ある企画に落とし込む役どころ」と考えればわかりやすいでしょう。
ビジネスデザイナーには発想力、企画構築力、提案力、さらには社内外の協力を取りつけてプロジェクトに巻き込んでいくような高度なコミュニケーション能力と折衝能力などが求められます。
アーキテクト
アーキテクトは、DXやデジタルビジネスに関連したシステムを設計する人材です。DXの推進過程、あるいはデジタルビジネスを作り出す上で必要となる情報システムの構築に向けて、課題分析・要件定義・設計・開発サポートなどを行います。ITに精通したスペシャリストであると同時に、経営的視点も求められる職種です。
データサイエンティスト/AIエンジニア
データサイエンティストとAIエンジニアは、AIやIoTを駆使してデータを分析・解析し、DXやデジタルビジネスに活用可能な情報・知見を抽出する人材です。データサイエンティストとAIエンジニアは、統計解析や機械学習などを用いて有用なデータを導き出すための、重要な役割を担います。
UXデザイナー
UXデザイナーは、DX関連のシステムのユーザー向けデザインを担当する人材です。UXは、ユーザーインターフェース(UI)を発展させた、ユーザーエクスペリエンスを意味する言葉です。UXデザイナーは、わかりやすく使いやすいだけではなく、使って楽しい、心地良いデザイン、さらにはデジタル・リアルの両者を通じた顧客体験を作り出す能力が求められます。
エンジニア/プログラマー
エンジニアやプログラマーは、デジタルシステムの実装、インフラ構築、プログラミングなどを担当する人材です。プログラム言語としては、最近では機械学習や計算処理などのライブラリーが多く用意されているPython、統計解析に特化したRなどが注目されています。
PM
PM(プロジェクトマネージャー)は、DX関連のアプリケーション、製品・サービス、システムを開発するにあたって、プロジェクトの計画立案、メンバーの選定、ステークホルダーとの調整、進捗管理、品質管理、コスト管理などに携わります。
従来のシステム開発と異なるのは、AIなどの先端的なデジタル技術を扱うこと、アジャイル開発などの手法を取り入れる機会が多いこと、経営戦略と直結した案件が多いことなどです。
PdM
PdM(プロダクトマネージャー)は、DX関連の製品・サービスの開発から始まり、商品を市場に出して成長させるまでの戦略を立て、実行する責任者です。デジタル技術によって起こる市場の変容に対応したプロダクトを企画し、ユーザーのニーズや課題・解決方法を発見して価値を創造し、商品を成功へと導きます。DXにおけるPdMは、IoTデバイスなどによって収集されるデータを有効活用するための仕組みづくりなどにも関わります。
DX人材に求められるスキル
DX人材の職種についてご説明しましたが、具体的にはどのようなスキルや思考が求められるのでしょうか。続いては、職種にかかわらず、DX人材に求められるスキルをご紹介します。
IT関連の基礎知識
DX人材に必要不可欠なのが、ITに関する基礎知識です。コンピューター、アプリケーション、ネットワークを使いこなすITスキルやITリテラシーはもちろん、エンジニアとしての経験があれば、それも役に立ちます。
また、DX人材と呼ばれるには、国内外のIT活用の現状や課題、今後の動向予測についても精通しているべきでしょう。「超スマート社会」など、未来の理想的なITと社会の在り方についてビジョンを有していることも望まれます。
AI、IoTなど先進技術の知見
AI、IoT、ブロックチェーン、RPAなど、先進技術に関する知見も必要です。これらのデジタル技術を積極的に取り入れ、組み合わせて、新しい製品やサービス、ビジネスを生み出すことは、DXの大きなテーマのひとつです。
また、社内のシステムもこうした先進技術に適合したものへと刷新し、業務を変革していかなければなりません。;
データサイエンスの知見
IoTデバイスにより収集したデータを、AIを使って解析し、どのように使われているかを明らかにして製品開発にフィードバックする仕組みが、これからのビジネスを大きく変えると考えられます。
どのようなデータをどのように活用するかというデータマネジメントも、DX推進に欠かせない要素です。データを活用して新しい価値を作り出すための技術であるデータサイエンスに精通していれば、DX人材として大きな武器となります。
UI/UX志向
たとえ先進的なデジタル技術を使っていたとしても、そのシステムや製品、サービスが親しみにくく使いづらいものであっては意味がありません。DXは利用者の利便性が重視されており、利用者に優れた体験を提供し、新しい価値を生み出すようなデザインで構成されていることが求められます。
日進月歩でデジタル技術が進化し、市場が目まぐるしく変化する中、その時々で的確にユーザーのニーズを理解し、快適で心地良いUI・UXを提供することが重要です。
プロジェクトマネジメント能力
特に、PMやPdMに必須とされるのが、プロジェクトマネジメント能力です。DX関連のプロジェクトにおいても、既存のプロジェクト管理経験で培った戦略策定スキル、管理スキル、分析・問題解決スキル、コミュニケーションスキルなどが役立ちます。
DXは、部分的に新しいツールを導入するような単純なものではなく、社内の文化や仕事の進め方も変わるような、全社的な変革です。また、プロジェクトにおいては、実績のない新しい技術を採用したり、さまざまな部署が関わったり、要件や要求が定まっていないこともあります。そのような状況で、全体を俯瞰しつつ個々の状況を把握し、しっかり計画を遂行するプロジェクトマネジメント能力は重要といえるでしょう。
今後のDX人材発掘に向けて
DX人材への需要が急速に増加している背景には、さまざまな業界・業種の企業がDX推進に取り組み始めていることがあります。加えて、業務や既存事業のIT化・デジタル化が急務となり、DXへの対応が加速されていることも無視できません。
一方で、DX推進を担うために十分な知識・スキルを持つ人材は限られており、人材不足が顕著です。ただし、既存のシステムに従事しているエンジニアの中にも、DX人材やDX人材候補は埋もれていると考えられます。また、既存業務に携わっている人の協力もDXには必要です。DXの推進に向けて、今後はさらに多様な人材が求められるでしょう。
必要なスキルや経験を持っている人は、この機会にDX人材として活躍する道を選んでみてはいかがでしょうか。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。