元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは、多国籍チームのメンバーになったら、日本流を持ち込むのをやめようです。
日本企業から多様性が高い外資系に転職した場合、最初に少し苦労するかもしれないのは、日本的な価値観・考え方・仕事のやり方を持ち出さないことです。育った文化の影響は大きいので、日本のスタイルを唯一無二と思ってしまい、違う文化を背負う同僚に押しつけていることに気がつかないことは多々あります。
具体的には何が日本流にあたるのかがわからないと修正できないので、本日は外国人が日本人と仕事をして戸惑うポイントを3点解説します。
1. ローコンテクストで明確に話して欲しい
日本は、行間を読む・阿吽の呼吸・空気を読むなど、その場の流れ(コンテクスト)に依存するハイコンテクストのコミュニケーションを良しとする国です。話し手がはっきり言わなくても、聞き手が推察して意味を理解してくれます。
ところが、ローコンテクストの、察するアンテナを必要としない国で育つと、言語化されていない部分を想像する作業ができず、何を言いたいのかが理解できないため、明確に言語化しないと仕事が進みません。
極端な例を出すと、上司が「この書類確認しといて」と言ったとします。この場合の「確認」の意味は、日本同士でも推察は難しいかもしれませんが、幾つか解釈が考えられます。
a. 書類の内容を確認して、間違いがないかどうかをチェックして欲しい。
b. 書類に誤字脱字がないかどうか、チェックして欲しい
c. 説明が足りていない部分がないかチェックして欲しい
などです。ローコンテクストの人に対して明確に話すには、「明日の15時までに、この書類に誤字脱字が無いかと、掲載しているエクセルが最新情報になっているか、確認して直しておいて」と具体的に何をして欲しいのかを伝える必要があります。
日常的に、相手の言いたいことがわかりづらいのは非常にストレスフルなので、日本人以外と仕事をする時は特に気をつけて、明確に話しましょう。
2. 「ジョブ型」の意味を理解する
外資系には、すべてのポジションにJD (Job Description)、つまりは職務記述書があります。ある社員の仕事の責任範囲、やるべき事がそこに書いてあります。
メンバーシップ制の日本は、まだまだ草野球型で全員参加。それぞれの職務範囲でなくても、ボールが落ちそうと思えば他の人が拾い、全員で成果を達成する傾向にあり、ここは大きく違います。
ジョブ型に慣れている人が、多国籍チームのメンバーになったときに気をつけるべき事は以下になります。
a) 仕事を任せる – 責任を持つ担当者が誰なのかが明確なので、頻繁に進捗などを確認する事は、相手を信頼していないと社員に取られます。最も嫌がられることなので避けたいです。
b) 基本的には口出ししない - それぞれに責任範囲が決まっているので、担当者でない人が頻繁に口出しするのは筋が通らないことになります。助言したいのであれば、相手を思ってのこととわかるような言葉遣いをすべきですし、どうしても納得ができないなど大きなことであれば、本人の上司を通した方が良いこともあります。
各自の仕事の責任範囲をリスペクトし、むやみに口出ししないようにしましょう。
3. お客様は神様ではないを理解する
お客様が神様なのは日本だけなのですが、この国で育つとそれが当たり前になってしまいます。お店の方を土下座させたりしたら、周りのお客さんが黙っていなくて、客をつまみ出すだろうと思われる国も、世界には沢山あります。
この「お客様は神様」を、多国籍チーム、外資、海外に持ち込むとトラブルの元になります。今回の契約がカバーするサービスはこの範囲と、明記されているのに後から、契約外のことを無料でやってくれるのが当然と誤解してしまうからです。
日本の大手IT企業に勤めている知り合いが、炎上したプロジェクトを収めるためにシンガポールに短期滞在したことがあります。IT企業のシンガポール法人と、別の日本企業のシンガポール法人との間に交わされた契約なので、親会社は本来無関係です。
先方が、「契約、契約と言うがこのぐらいは追加でやってくれるのが日本式だろう」とシンガポールで言いだして、「本社を呼べ本社を」になり、彼が行く羽目になったわけです。シンガポールにまで、日本式を持ち込んでいること残念です。このケースは、最終的に追加で発生するコストを、折半しました。グローバルスタンダードに照らし合わせると、異例の結論ですが、両方とも大手企業なので長期的な関係性を重んじたのかもしれません。
まとめ
多国籍チームのメンバーになったら、a) 推測しなくてもわかるように明確に話す b) 個々の責任範囲が明確に決まっていることを理解する c) お客様は神様ではないことが多い と理解して、日本流を他のメンバーに押しつけないようにして、グローバルな環境を楽しみましょう。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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