元・外資系人事部長、現・グローバル人材育成家の鈴木美加子です。本日のテーマは、「人生100年時代に備えて専門性を磨き、軸をずらして仕事を続ける方法を考える」です。
長くなる職業人生で「専門性」を持つことは重要です。20代は比較的簡単に転職できるので、やりたいことに次々とチャレンジするのも良いのですが、気がつくと履歴書の職歴がバラバラしていて何の専門家なのかが見えないキャリアになることもあります。日本企業勤務で異動が重なった末、専門性が築けない場合もあります。
外資は、即戦力を求めています。専門的知識・スキル・経験をもとに、なるべく早く会社に貢献できる人材を求めているのです。自分の専門領域を築くことは重要です。
2021年4月1日付けで「改正高年齢者雇用安定法」が施行されました。人生100年時代、職業人生は長くなる一方です。同法では、定年を65歳未満に定めている事業主は、高年齢者の安定した雇用を確保するために、①定年制の廃止、②65歳までの定年の引き上げ、③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度)の導入、のいずれかを実施することが義務付けられています。
定年の年齢は70歳。今、皆さんはおいくつですか? 特に外資に勤めている場合、70歳まで働き続けられると自信を持って言い切れますか? なかなかYESとは言い切れないのが現実でしょう。
専門性を磨いたら、次は社会の変化にアンテナを高く張り続けることも大切です。労働市場は「需要と供給のバランス」で成り立っているので、どうすれば自分の専門性を活かしながらも、需要が高く人材不足の分野に入っていくかの戦略を練るためです。
私の周りでは、先輩がリタイヤされ始めました。まだまだ非常にお元気ですが、年齢に対する差別の壁に阻まれて、会社員として再就職できる人はごくごく一握りで残念です。
急に自営に転じると言っても、今まで非常に忙しかったので、定年後どうするかを考える時間的ゆとりもなかったのでしょう。定年して初めて「あーこの先どうしよう」からスタートすることになります。起業にはそれなりに準備期間が必要ですが、準備を始められなかった方が多いです。
アーリー・リタイヤメントを希望する場合を除き、会社員として職業人生を長くするにはどうしたら良いでしょうか? 磨いた専門性の軸をずらすという方法があります。
具体的な例を2つ挙げます。
具体例①
● 日本の食品メーカー3社で経営企画として、56歳まで勤めた男性
彼は将来のことを考え、食品工場のプロセスを審査する外資機関の職員として転職しました。食品メーカーがどのように経営されているかを知っていることが必須で、その他には細かいことを見逃さないなど幾つか必要な基準があり、彼は全てを見事にクリアしています。56歳で転職のお声がかかる人材はあまりいませんが、新しい機会を得ることできたのです。
業界の協会に加盟したところ、なんと自分が最年少、上は78歳の方まで在籍していて、コロナ前は各地に出張して出張審査をしていたそうです。そんなに長く仕事したいかどうかは置いておいて、仕事を続けたいと思った時に「できる」選択肢があるのは大きいです。
具体例②
● 外資の金融機関で業務部のエグゼクティブ25年の女性
私の友人はリーマンショック時に海外駐在をしていて、職を失いました。その時に「これから先、同じような目に会わないで長く働き続けるには、どうしたらいいだろう」と真剣に考えたそうです。
現在、彼女は外資金融機関のコンプライアンス・オフィサーをしています。マネーロンダリング(資金洗浄)などに、口座が悪用されていないかをチェックする仕事です。金融の知識がありテクノロジーに強い必要があるので、こちらもすぐ出来る人材は限られており、ネット社会の発達でますます重要が高まる一方です。人材の需要と供給のバランスを見た時に、出来る人が少ないのでこちらも「しばらくは安泰」と言えるケースです。
まとめ
時代は変化していくので、10年後20年後の市場の需要を見越す事は不可能ですが、社会の変化にアンテナを高く立てておくことは肝要です。社会情勢にもしわりと疎かったら、情報を集めることが得意な友人・知人がいないか、人脈を見直すのが最初の一歩でしょう。
まずは専門性を磨き、社会の変化に応じて自分の持つ専門性の軸を、どうずらせば人材としての価値が上がるのかを意識するマインドセットが、これからますます求められます。自分が働きたいと思う間は、チャンスを得られる人材であり続けてください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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