元・外資系人事部長、現グローバル人材プロデューサーの鈴木美加子です。本日のテーマは外国人上司とのつきあい方です。
GEからモルガン・スタンレーに転職した時、初めて上司がアメリカ人になりました。最初の頃は、結構苦労したことを今でも鮮明に覚えています。それから上司がずっと外国人になり、自分なりにまとめた外国人上司と上手につき合う方法を挙げます。
1. 上司のマネジメントスタイルを理解する
上司によって、細かいことも把握したいマイクロマネジメントなのか、任せるタイプのマクロマネジメントなのかが違います。どのくらいの頻度で、また、どのくらいの詳細を報告すべきかがかかってくるので、把握しておくことは重要です。
個人差がありますが、個人主義が強い欧米系の上司はマクロマネジメントを好むことが多いです。つまり一つ一つの進捗など細かいことを必要とせず、このまま行くと問題になりそうと察知したら抱えないですぐ報告し、サポートを求めることを良しとするスタイルです。日本人は真面目ですし丁寧なので、つい全てを報告しそうになりますが、「結果重視」と心得て途中の経過を細かく報告しすぎないことが大事です。
2. 言語化する
どの文化圏出身かにもよりますが、相手が日本人よりはローコンテクストの可能性は高いです。ローコンテクストとは、文脈や背景に依存しないで口から発した言葉通りに受けとめられるかどうかを指します。日本が世界でも最たるハイコンテクストで行間や空気を読む習慣が存在することを考えると、相手はその「空気」を読めなくて困ることがほぼ決まりです。相手が上司であればなおのこと、その状態は避けたいので「あ・うん」の呼吸を100%期待しないことが重要です。
自分が相手にして欲しいこと、して欲しくないこと、言われたことがよくわからない場合など、口に出して伝えましょう。
3. 結論ファースト
日本語の流れでは最後に結論が来るのが自然です。傾聴力を駆使してよく話を聞き、話し相手の結論を待つのが日本語ではマナーです。しかるに英語は結論が先にきて、そこから根拠や理由を話し、最後にもう一度結論を繰り返すのが自然な言語です。どちらが良い悪いではなく違うのです。
初めてのアメリカ人上司に私が指摘されたのもこの点です。”Micky, what is your conclusion?” (結論は何?)と、英語で一生懸命話している最中に言われたことが何回もあります。「そうか、結論を最初に言わないといけないのか」と気がついてから、コミュニケーションスタイルを変え、上司に指摘されることはなくなりました。これは上司だけでなく、英語で仕事をする際には基本になる点です。
4. 全てを報告しようとしない
英語で説明するので、日本人上司に日本語で説明するのとは楽さが全く異なります。ある時、メンタルバランスを崩した社員のケースで非常に複雑な内容を説明する時、頭を抱えました。全てを英語で説明できる自信がありませんでした。その時、ふと「全部説明する必要はあるのだろうか?」と思ったのです。
私の当時の上司は日本法人の人事のVPで多忙でした。そんな細かいことまで相手が知る必要はあるか、知りたいだろうかと考えてみるのは大事です。この時は考えた末、大まかな状況と会社にとってのリスクを説明できれば良いと判断し、話す内容をスリムダウンしました。結果として英語で話す分量も激減したので、私にとっても良い結果を生みました。
5. アドバイスを求めるかどうかに注意
前出のメンタルバランスのケースで、私は最後に”If you have any advice, please let me know.(アドバイスがあったら教えてください)”と、社交辞令で書きました。大失敗でした。”Can we fire him?(辞めてもらえないの?)” と返信があったからです。
私がその後でしたことは、日本の労働基準法の説明から始めて、この国では簡単には社員を解雇できないことを詳しく説明することでした。上司が疑問を抱いて会話が続くとさらに時間をとられるので、最初の1本のメールで全てを理解してもらい、辞めてもらう・もらわないの話にならないよう、かなりのエネルギーと時間を費やしてメールを書きました。
そうです、文化や商習慣に根ざしている件で上司を立てようと配慮することは、自分の首が締まりかねません。それ以降、私が使っているのは、”I will keep you posted on any further progress on this.”(この件での進捗は随時報告します。) 相手が知る必要あることだけを伝え、むやみにアドバイスを求めないことも外資では必要になります。
まとめ
相手が忙しいエグゼであればあるほど、相手の求めるコミュニケーションスタイルに合わせられると、気がきく仕事ができる部下になれます。外国人上司と上手につき合って、人間関係にストレスを抱くことなく、高い業績を出してください。
プロフィール
Mikako (Micky) Suzuki (鈴木美加子)
株式会社AT Globe 代表取締役社長
GE、モルガンスタンレーなど外資系日本法人の人事部を転職し、油圧機器メーカー現・Eaton)ではアジアパシフィック本社勤務、日本DHLでは人事本部長を務める。1万人以上を面接した経験を元に、個人向けに キャリア相談を提供している。自身が転職を8回しており、オーストラリアでビザ取得に苦労した体験もあるので、日本国内外、すべての転職相談に対応できるのが強み。
診断ツールLUMINA SPARK & LEADER 認定講
STAR面接技法 認定講師
ホフステード6次元異文化モデル 認定講師
お茶の水女子大学卒業。
著書
2019「やっぱり外資系がいい人の必勝転職AtoZ」(青春出版)
2020年6月「1万人を面接した元・外資系人事部長が教える 英文履歴書の書き方・英語面接の受け方」(日本実業)
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