転職してから「社風が合わない」「思っていた仕事と違う」といったミスマッチに気づくことを防ぐには、徹底した企業研究が重要です。志望する業界や職種を正しく理解し、能力や資質を十分に発揮できる新天地の発見に活かしましょう。
本記事では、転職活動において企業研究が必要な理由と進め方のポイントのほか、代表的な企業研究の方法などについて解説します。
転職活動における企業研究とは、応募先企業を深く知り理解を深めること
転職活動における企業研究とは、自分が応募する企業を深く知り、理解を深めることを指します。
例えば、エンジニアがスキルアップを目指して転職活動をする場合、求人情報の仕事内容などの記載からだけでは、どのようなスキルが得られるかはほとんどわかりません。業務の裁量の範囲や、スキルアップを支援する制度の有無によっては、入社しても希望に沿ったスキルを身につけるのは難しい可能性があります。
腰を落ち着けて長く働きたい場合は、社員の平均年齢や平均勤続年数、年収アップを目指すなら平均年収や売上の推移なども把握しておく必要があります。
自分の転職軸に沿った転職を実現できるか判断するためには、事業内容や社風などの特徴を詳しく調べなければならないのです。
企業研究が必要な理由
企業研究は、入社後を見据えた場面でも、採用選考への通過を考える場面でも重要です。企業研究が必要な主な理由は、下記の3点に整理できます。
入社後のミスマッチを防ぐため
転職活動を始めるとき、憧れの企業や仕事が明確にある人や、転職活動が思うようにいかず停滞が続いている人は、得てして「入社すること」をゴールにしがちです。
しかし、早期離職につながるミスマッチは、このような入社をゴールに設定した転職で起きやすい傾向があります。こうしたケースでは、転職活動が入社するための活動になり、入社後の活躍にまで目が向きません。
すると、「入社することはできたが、企業のビジョンに共感できずモチベーションが上がらない」「体育会系の社風になじめず組織に溶け込めない」といった悩みが生じ、せっかく入社したのにすぐ退職してしまったり、実力に見合った活躍ができないまま過ごしたりといった事態を招きます。
転職活動の際には、まずしっかりと転職の軸を作ることが重要です。何のために転職をするのかを明確にし、転職後の活躍をイメージしましょう。
その上で、自身の転職軸に合った企業を探すという視点で企業研究を進めることが、ミスマッチ防止につながるのです。
書類選考や面接を通過するため
書類選考や面接で必ず問われるのが「志望動機」です。それだけ多くの企業が志望動機を重視しており、その分、適切な回答ができなければ不採用の理由になることも少なくありません。
例えば、下記のような特徴のある志望動機は、代表的なNG例です。
<志望動機のNG例>
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漠然としていて、「なぜその会社なのか」が伝わらない
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給与や制度にばかり言及する
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「成長したい」「勉強したい」など、戦力になる意思が感じられない
志望動機がなかなか思いつかなかったり、ありきたりな内容に終始したりしてしまうのは、企業や職種をよく知らないからです。
企業研究をすると、「この会社でしかできないこと」がわかります。すると、「なぜ、この企業でなければだめなのか」「ほかの企業とは何が違うのか」を言葉にして伝えられるようになり、採用担当者の心を動かすことができるでしょう。
企業分析によって自己理解も進むため
自分を客観的に理解できることも、企業研究をするメリットです。企業研究を進めることは、「自分にとって良い会社とは?」「自分にとって仕事とは?」「将来やりたいことを実現するには?」といった、仕事と自分に関する根源的な問いに向き合うことでもあります。自分の強みややりたいことを客観的に理解できていないと、活動を続けるうちに転職の軸がぶれてしまうでしょう。
企業研究を通して自己理解を深めれば、納得できる転職が実現できるのです。
企業研究をする際のポイント
転職時の企業研究は重要ですが、志望する企業について闇雲に調べても成果にはつながりません。絶対に調べなければならない内容を絞り込んで企業研究を行えば、転職成功の確率を高めることができます。
そのためには、下記のような順番に沿って企業研究を進めることが重要です。
1. 自己分析をする
企業研究をする目的は、自分と企業の相性を知ることです。そのため、企業を知る前に下記の2点を明確にし、自分をよく知る必要があります。
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転職理由
自己分析で最初に行うのは、転職活動の出発点を明らかにすることです。慣れた現職を離れ、時間も労力もかかる転職活動をしようと決めた背景にある理由を明確にします。この点が曖昧なまま活動を始めると、転職活動の方向性にぶれが生じたり、転職することそのものが目標になったりして、納得感のない転職につながるおそれがあります。
「ワークライフバランスがとりにくい」「結果に見合った報酬が得られない」「もっとクライアントに近い場所で仕事がしたい」など、現職に対する不満や改善したい点に目を向け、転職したい理由を言語化することから始めましょう。 -
キャリアプラン
転職を決めた段階でできることと、将来的にやりたいことにはギャップがあって当然です。転職後は、そのギャップを埋める努力をしなくてはなりません。そのギャップを埋めるために立てるのがキャリアプランです。
今の自分の能力やスキルを客観的に洗い出し、「やれること」「できそうなこと」をまとめていきます。把握した現在の強みをもとに、キャリアプランを達成するために不足している要素を考えると、無理なくキャリアプランを立てることができます。
2. 業界研究を行う
企業研究をする際には、企業単体の研究を行う前に、企業が属する業界への理解を深めることが必要です。AIの発達やコロナ禍などの影響で働き方が大きく変わってきている昨今、将来性が不安視される業界や、規模の縮小が予想される業界も少なくありません。
描いているキャリアプランを実現するためにも、業界の将来性の有無を見極めることが重要となります。業界を代表する企業とそのシェア、市場規模、業界内における志望企業の立ち位置などを把握した上で、企業研究に移るようにしてください。
3. 企業の基本情報と業務内容を確認する
業界の状況がある程度把握できたら、志望企業の状況と求人内容を確認します。資本金額や売上高、拠点数、企業理念といった基本情報に加えて、必ず業務内容を確認しましょう。業務内容を知ることで、取引先が法人なのか個人なのか、どのような営業手法で何を売っているのか、どうやって利益を出しているのかといった企業のビジネススタイルがわかります。
ここで知り得た情報と自分の経験が重なる部分を見つけられれば、うまくアピールにつなげることも可能です。
4. 企業が求める人物像を把握する
企業は、原則として自社の価値観や信念に共感できる人を求めています。どんなに仕事内容と経験・スキルがマッチしていても、企業の方針や組織の雰囲気になじめなければ、長く働き続けるのは難しくなります。
経験・スキルというスペックとともに、コミュニケーション能力・主体性・積極性といった面でも、企業がどのような人物像を求めているかを立体的に情報収集することが重要です。
効率的な業界研究のやり方
転職時は、企業研究の前に必ず業界研究を行います。業界研究の目的は、業界の基本的な構造や動向、市場規模と推移、将来性などをつかむことです。そのために必ずチェックしたいメディアは、「新聞・ニュースサイト」「業界専門誌・業界紙」「業界WEBサイト」です。
新聞・ニュースサイトは、業界に関するリアルタイムな情報と見通しを知るのに役立ちます。社会情勢と業界への影響は、業界内の企業を志望する上での一般常識として面接で質問されることも多いため、日々最新情報をチェックするようにしてください。
業界専門誌・業界紙は、より詳しく深い業界情報を知りたいときに有効です。志望する業界が固まっている場合は、業界WEBサイトと併せて定期的に確認することをおすすめします。
ただし、未経験の業界の全体像を把握し、安定性・成長性について判断するのは容易ではありません。現職の仕事と転職活動を同時に進めている場合は、情報収集に割ける時間が限られる人も多いでしょう。
個人での情報収集に限界を感じたら、転職エージェントの利用も視野に入れるのがおすすめです。転職エージェントは、さまざまな業界の企業と求職者をつなぐ役割を担っているため、業界情報に関しても詳しい知識を保有しています。志望する業界に強いエージェントを活用すれば、効率良く業界研究を進められます。
企業研究に必要な情報を収集するには?
業界研究の後は、企業研究のために必要となる情報を集めます。志望企業の情報は、下記の5つの方法で多面的にアプローチすれば、十分に得られるでしょう。
コーポレートサイトで調べる
企業の情報を集める上で必ず確認しなければならないのが、コーポレートサイトです。「会社情報」のページなどに、企業の沿革やビジョン、業務内容といった情報が記載されています。
「社長の挨拶」や「社員の声」といったコンテンツから得られる情報も多いため、忘れずに確認して、会社の方針・方向性・社風・求める人材像などを把握するのが重要です。
会社四季報や業界地図で調べる
「会社四季報」は、企業の特色・注目材料・業績・財務内容・株価の動きなどをまとめた季刊雑誌で、3月、6月、9月、12月に発刊されます。証券取引所に上場している企業の情報であれば、網羅的に手に入れることができます。
また、業界内での企業の位置付けや業績、他企業との提携関係などを可視化して、マッピング形式でわかりやすく解説した「業界地図」という書籍もあり、業界の未来の見通しを知りたいときに最適です。
転職フェアに参加する
転職フェアは、中途採用の求人募集をしたい企業がひとつの会場に集まって自社の説明を行うイベントです。会社情報や採用情報を確実に手に入れられるほか、実際に働いている社員の生の声を聞く機会もあります。
志望企業と同業種のほかの企業も参加していることが多く、比較・検討もしやすいでしょう。効率的に多くの会社の情報を入手したい場合におすすめです。
口コミサイトを見る
現場の本音に近い声から情報収集するなら、口コミサイトも有効です。希望する企業で働いていた人と、現在も働いている人のコメントから、残業時間や評価制度、給与体系、職場の雰囲気などを調べることができます。
転職エージェントに聞く
業界研究と同様、企業研究についても情報収集が難しいと感じたら、転職エージェントに相談するのがおすすめです。
転職エージェントは、偏見なくフラットな目線で情報を提供してくれるため、個人で情報を収集している際に起こりがちな誤解や理解の偏りを防げるのもメリットです。
代表的な企業研究の方法
企業情報の収集が済んだら、その情報をもとに企業が置かれている状況の詳細な研究を行います。企業研究の方法にはさまざまなものがありますが、代表的なものは下記の2つです。
3C分析
「3C分析」は、企業を「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの切り口から分析する手法です。企業が自社の現状を把握するためにも用いられる方法で、各切り口について下記のように分析します。
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Customer
Customerの分析では、企業が属する市場の規模、成長性を考えます。同時に、顧客層の分析も忘れてはなりません。扱っている製品やサービスのデザイン、品質、価格などから特性を導き出し、どのような顧客層がいるのかを理解していきます。顧客層がわかると、顧客が求める製品・サービスの方向性も見えてきます。 -
Competitor
Competitorで分析すべき事項は、志望企業の代表的な競合他社の企業名、強み・弱み、業績、戦略などです。業界に新規参入してきた企業や参入障壁の高低、代替商材の有無なども調べておくと、より企業理解が進みます。 -
Company
Customer、Competitorでわかったことをもとに、志望企業の状況を把握していくのがCompanyの段階です。志望企業の強み・弱み、ブランド力、訴求できる顧客層、新たなビジネスチャンスの可能性、競合に対して有効な戦略などを分析していきます。
企業研究ワークシート
企業研究ワークシートを作って各社を比較するのも、代表的な企業分析の方法です。最低限知っておくべき項目について、上記で紹介したさまざまな情報源から広く情報を収集し、A4用紙で1~2枚程度にまとめます。
下記のようなフォーマットを作って項目を埋めていくと、複数の企業を簡単に比較できます。
■企業研究ワークシートの記載事項
企業の基本情報 | |
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企業名 | 企業名を記載します。「前株」「後株」なども含めてしっかり確認しましょう。英語のスペルや漢字表記も間違いがないよう気をつけます。よく使われている略称がある場合、正式名称を書くようにすることも大切です。 |
代表者名 | 企業の代表者の名前を記載します。コーポレートサイトの「社長の挨拶」などに目を通し、考え方や方針などについてもメモしておくのがおすすめです。 |
事業内容 | 何をして利益を獲得している会社なのかを記載します。特に主力事業については深掘りし、主力になった時期や理由も記載しておきましょう。 |
創業年 | 創業年を記載します。どのくらいの歴史があるのか、どのように事業が変化していったのかを知る手掛かりとして重要です。 |
従業員数 | 従業員数から、規模感や社風を推測できます。男女比も記載すれば、よりイメージがしやすくなります。 |
売上高 | 事業規模を把握するために、売上高の記載は必須です。可能であれば、事業ごとの売上も記載します。 |
所在地 | 本社、および支店の所在地も重要な記載事項です。勤務地などの参考になります。 |
経営理念 | コーポレートサイトなどに掲載されている経営理念、ビジョンなどには目を通し、記載しましょう。短い言葉になっている場合はそのまま書けば問題ありませんが、長文の場合はキーワードをピックアップするのがおすすめです。 |
将来性 | 分析結果からわかった将来性についても記載します。 |
社風 | コーポレートサイトや口コミサイトから、推測できる社風も記載します。 |
社内制度(福利厚生) | 休日・休暇、産休・育休の取得率、各種制度の有無、社宅の有無なども重要な情報です。 |
製品、サービスの情報 | |
主力製品 | 看板製品や売上の多くを占めている製品、近年売上を伸ばしている製品などを調べて記載します。開発の背景や、売上が伸びている理由なども、調べて記載しておくことが重要です。 |
ターゲット顧客 | 主力製品のターゲットとなる顧客について、対象の性別、年齢層、個人・法人の別などを書き出します。 |
強み・弱み | 強みは分析結果やコーポレートサイトなどから、弱みは分析結果をもとに記載します。 |
競合優位性 | 同業他社と比較した際の優位性についても、ポイントを絞って記載しましょう。 |
採用情報 | |
採用予定人数 | 求人票などに記載されていれば、採用予定人数も記載します。 |
募集職種 | どのような職種が募集されているかは、採用情報の中でも特に重要です。 |
勤務時間 | 求人票などには勤務時間も記載されているはずなので、ワークシートにも記入します。 |
企業に対する自分の考え | |
興味を持ったポイント | 企業のどこに魅力を感じているのかを言語化します。 |
PRできること | 自分の保有資格やスキルが、募集職種のどのような点に活かせるのかを考え、記載します。 |
転職活動段階別の企業研究
企業研究が力を発揮するシーンは、「選考前」「選考中」「内定前」の3パターンがあります。シーンごとに適した企業研究の方法と、具体的な活用方法をご紹介します。
選考前の企業研究:業界研究・企業情報の収集
選考前の段階では、少なくとも業界研究と各企業の特徴などの情報収集までは行っておくのが一般的です。研究結果が活用できる場面としては、下記のタイミングが考えられます。
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求人を比較検討するとき
気になる企業が複数あったり、興味のある業界が多岐にわたっていたりして優先順位をつけるのが難しいときに、業界研究・企業研究の結果が役立ちます。研究の結果を照らし合わせて、自分のキャリアとスキルが最も活かせる企業、転職の軸がぶれない業界を見つけることができるでしょう。 -
応募書類を記入するとき、面接を受ける前
応募書類への記入や面接の準備のために志望動機を考える際は、企業研究の内容をベースにすると説得力が高まります。自身の具体的なエピソードと企業の特徴をうまく織り交ぜることで、求められる人物像にマッチしているとアピールできます。また、入念に下調べをしていることが伝わり、好印象を与えられるかもしれません。
選考中の企業研究:3C分析・企業研究ワークシート
複数の企業の選考が同時並行的に進んでいる選考中は、3C分析や企業研究ワークシートで各企業の特徴を整理しておくと、相性を見極めやすくなります。加えて、志望企業それぞれの書類選考や面接において、企業ごとに差別化された志望動機をはっきりと伝えられるようになります。
企業が求める人材、必要とされているスキルを理解した上で面接に臨めるので、「どう答えるべきか」「何をアピールすべきか」に迷うこともありません。自信を持って本番に臨み、面接官に強い印象を残すことができます。
内定前の企業研究:口コミサイトのチェック
複数の企業から内定をもらえそうな場合、どの企業の内定を承諾すべきか、本当に内定を承諾して良いのか、悩むかもしれません。そのような、内定直前の段階でも、企業研究が役立ちます。
3C分析や企業研究ワークシートを見直して自分の転職の軸ともう一度照らし合わせるとともに、口コミサイトなども活用すれば、参考になる情報が得られる可能性が高まります。口コミサイトは、いわばネット上のOB・OG訪問のようなものです。転職後の姿がイメージできる具体的な口コミを確認することで、検討におけるひとつの判断材料として利用可能です。
企業研究で選考を有利に進め、ミスマッチを防ごう
転職活動をスムーズに、かつ他者より有利に進めるには、企業を深く理解するための企業研究が欠かせません。今回ご紹介した方法を参考に企業研究を行い、転職成功を実現しましょう。
個人での企業研究に限界を感じたら、転職エージェントへの相談もご検討ください。転職エージェントはWEBサイトやジョブディスクリプション(職務記述書)に載っていない、企業の内部情報等も知っています。RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、職種や業界に精通したコンサルタントが企業研究をお手伝いしていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。