外資系企業には、一般的に「同じ会社で長く働く人は珍しい」「年齢を問わず、キャリアアップのために数年で転職する」といったイメージがあります。スキルや実績があるミドル層のビジネスパーソンの中には、「外資系企業の仕事やカルチャーには魅力を感じるけれど、雇用の安定性がないのは不安」と、転職をためらっている人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、外資系企業における定年の考え方や日系企業との定年に対する考え方の違いのほか、定年間際でも評価されるポイントを紹介します。
外資系企業の定年は何歳?
そもそも、外資系企業には定年の概念があるのでしょうか。結論からいうと、日本国内で事業を展開し、定年制を導入している外資系企業は60歳、あるいは65歳まで働くことができます。
理由として、日本で活動する企業には、日本の労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの法律が適用されるからです。そのため、外資系企業が定年制を導入する場合、定年年齢について、60歳を下回る年齢に設定することはできません。
定年制の背景と変遷
本国と同様に定年制を導入していない外資系企業では、実力があれば、年齢にかかわらず何歳でも活躍できます。
海外では、年齢を理由に働き方を制限することは法律で禁じられていることが多く、ほとんどの国が定年制を廃止しています。例えばアメリカでは、40歳以上の個人に対し、年齢を理由とした採用、賃金、解雇、労働条件などの差別を禁じる「雇用における年齢差別禁止法」が存在しているのです。
一方、日本では、少子高齢化が進んで働き手が不足していることや、いつまでも社会と関わって働きたいと考えるシニア層が多く存在すること、年金受給開始年齢の引き上げに伴いシニア層の収入確保が喫緊の課題であることなどから、現在も多くの企業が定年制を導入しています。
また、2013年に改正された高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)によって、従業員が希望すれば、企業には65歳まで雇用を延長することが求められるようになりました。これは移行措置であり、2025年からは65歳までの雇用確保が義務化されます。
さらに、2021年4月の改正で、65~70歳の就業機会の確保も努力義務となっています。改正のポイントは下記のとおりです。
<2021年改正高年齢者雇用安定法のポイント>
-
70歳までの定年延長
-
定年制の廃止
-
70歳までの継続雇用制度の導入
現在の外資系企業では60~65歳定年がほとんどですが、近い将来、外資系企業であっても70歳定年の時代が来ることになります。外資系企業に転職後、長く働きたい人も、いずれは70歳まで働き続けられるのです。
外資系企業と日系企業の定年に対する考え方の違い
外資系企業と日系企業では、定年に対する考え方に根本的な違いがあります。ここでは、両者の違いについて解説します。
外資系企業の定年に対する考え方
外資系企業の多くは、年齢や入社時期、勤続年数にかかわらず、個人の能力と実績に応じて報酬や役職を設定する実力主義・成果主義を採用しています。そのため、勤勉さや周囲に対する気配りなど、成果を出すまでの姿勢やプロセスは評価対象になりません。残業をほとんどせず誰よりも早く帰っていても、成果さえ出していれば、給与もポジションも上がっていくのが一般的な外資系企業のカルチャーです。
反対に、成果を出せない人には厳しい評価が下されます。勤務期間に比例して給与が上がる年功序列の考え方はなく、それなりに働いているだけでは昇進・昇給につながりません。「1社に在籍し続けるほうがリスクである」として、2~3年ごとに転職してキャリアアップする人が多いのも特徴です。
雇用の流動性が高いため、そもそも定年まで働く意識が希薄であることが外資系企業の特徴だといえるでしょう。
日系企業の定年に対する考え方
日系企業には、終身雇用・年功序列の考え方が根付いています。終身雇用は、企業が倒産しない限り、従業員を定年まで雇用し続ける人事制度のこと。年功序列は、終身雇用を前提として、年齢や勤務年数に応じて給与や役職を決定する仕組みです。
つまり、新卒で入社して真面目に働き続ければ、年齢を重ねるにつれて高い給与を得られることになります。定年まで働けばまとまった退職金が得られることも、日系企業に在籍し続ける人が多い理由のひとつでしょう。
ひとつの会社で働き続けることを美徳とする日本人特有の考え方もあり、日系企業では定年まで働くことを好意的に捉える傾向があります。
外資系企業で定年まで働く際の注意点
外資系企業で働き続けて定年を迎えようとすると、いくつか気をつけなければならないことがあります。具体的に注意すべき内容について、詳しく見ていきましょう。
退職金制度がない
基本的に、多くの外資系企業は退職金制度を設けていません。そもそも退職金制度は、終身雇用・年功序列の仕組みの中で職務をまっとうした従業員を労う「慰労金」の意味合いが強い制度。具体的な金額は、退職段階での基本給に、勤続年数で変動する支給率と退職事由係数(定年退職や会社都合による退職の退職事由係数は概ね100%)を掛け合わせて算出します。
支給される金額は企業の方針や定年時の役職などによって大きく変わりますが、数百万円から数千万円単位のまとまった金額が支払われるため、第二の人生の元手にする人が多いのです。
一方、外資系企業にはそもそも終身雇用の概念がないので、慰労する制度も存在しません。また、給与が日系企業より高いので、働いているあいだに自分で老後資金を準備する考え方のほうが一般的です。
外資系企業で定年まで働こうと考えている場合、こうした違いを踏まえて老後の生活設計をする必要があります。
定年直前でもリストラに遭うことがある
外資系企業は、従業員の年齢に関係なく、成果主義を徹底している会社がほとんどです。そのため、「営業成績は今一つでも、定年間近までがんばってきたことを評価して役職を上げる」といったような、温情で評価が決まることはありません。成果次第では、定年直前でもリストラの対象になる可能性があります。
外資系企業で自身のキャリアを締めくくりたいなら、シニア層になっても仕事に手を抜かず、常に目標をクリアしていくために成長し続ける姿勢が求められます。
定年間際でも外資系企業で評価されるポイントとは?
定年まで所属しても外資系企業で評価される人は、どのような強みを持っているのでしょうか。ここでは、定年間際でも外資系企業で評価されるポイントについて解説します。
スペシャリストである
日系企業では、職種や勤務地を限定せずに新卒を雇用し、スキルの定着度合いや向き・不向きを見て配属先を決める「メンバーシップ型雇用」であることがほとんどです。これにより、さまざまな部署と仕事を経験して、組織内のあらゆる業務に詳しいジェネラリストが育ちます。
一方、外資系の人材は、あらかじめ職種と仕事内容を提示し、専門性を評価して採用する「ジョブ型雇用」です。働いている人は、全員がそれぞれの領域に精通したスペシャリスト。自分の専門性を強みとして外に目を向け、転職を繰り返してキャリアアップしていく人も多くいます。
雇用の流動性が高く、次々と優秀なスペシャリストが入社する外資系企業において定年まで評価されるには、スペシャリスト集団の中で頭抜けた存在でなくてはなりません。今ある知識やスキルに満足せず、専門性を磨き続ける人は、定年間際であっても評価されます。
生産性が高い
外資系企業では「こんな遅い時間まで残業してがんばった」「人が休んでいるときにも仕事をしていた」といったアピールはほとんど意味がなく、短時間で効率良く成果を出す生産性の高さが評価されます。
日系企業から外資系企業への転職を検討している場合、評価の仕方がまったく異なる可能性があるため、働き方を見直して生産性を高める努力をする必要があります。
高いコミュニケーション力がある
外資系企業は成果主義で、従業員一人ひとりのライフスタイルや志向を重視します。極めてドライで個人主義の一面もありますが、仕事をする上では社内外との関係性づくりが欠かせません。そのため、コミュニケーション力の高さも評価ポイントです。
ただし、空気を読んで「察する」コミュニケーションよりも、わかりやすくシンプルに伝えるコミュニケーションが好まれます。ミドル層においても、コミュニケーション力を意識的に磨いていくといいでしょう。
英語力がある
外資系企業でも、求められる英語力のレベルはさまざま。外資系企業でも日本支社勤務であれば、基本的に高度な英語を使うシーンは少なく、取引先も同僚も日本人で、ほぼ日本語しか使わない部署もあります。
それでも、外資系企業の中でキャリアアップしようとすると、本社や海外の取引先とのやりとりも増えていくため、一定水準以上の英語力がないと高い評価を得ることはできません。
ミドル層であっても、英会話教室に通ったり、TOEICを継続的に受験したりして、英語力のアップを図りたいところです。
マネジメントや社内調整に長けている
日系企業と同様、一定年齢以上の人には、マネジメント能力や社内調整能力が求められます。スペシャリストとしてある程度まで専門性を高めてきたミドル層でも、マネジメント業務の経験は積んでおきたいところです。
外資系企業の求人においても、一定年齢以上になるとマネージャー職や幹部候補の求人が多くなります。専門性の向上と並行してマネジメントスキルを磨くことで、外資系企業への転職チャンスは定年間際でも広がります。
外資系企業への転職はいつまで可能?
転職にあたって定年を意識し始めるのは、主に40~50代のミドル層ではないでしょうか。何度も転職を繰り返してきた人も、そろそろ1ヵ所に腰を落ち着けたいと思う時期かもしれません。
しかし、日系企業に勤めていると、50歳前後に「役職定年」の壁にぶつかるケースがあります。役職定年とは、正規の定年年齢を前に、企業が定めた一定年齢に達した人が「部長」や「課長」といった役職から外れる制度です。
40代は、やがて来る役職定年を見据えて、転職活動をスタートするのに適した時期といえます。「専門性を活かして働き続けたい」と考える人にとって、役職定年も定年制もなく、スキルと実績があれば歓迎してくれる外資系企業は、魅力的な選択肢です。
若手層をターゲットにした求人よりは求人数自体が少ないため、長期的な転職活動の計画を立て、転職エージェントに登録して求人情報をキャッチできるようにすることをおすすめします。
ミドル・シニア層転職は、転職エージェントへの登録・相談がおすすめ
ミドル・シニア層の転職では、限られた情報の中から自分のスキルや実績を活かせる求人を見つけ、タイミングを逃さず応募することが重要です。ハイクラス求人やスペシャリストを求める高収入の求人を効率的に見つけるため、転職エージェントを利用しましょう。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、ミドル・シニア層向けの非公開求人も多く取り扱っています。定年を気にせず働けるやりがいのある職場をお探しの方は、お気軽にご相談ください。
グローバル企業で働くことは、グローバルに働きたい人や語学力を生かして働きたい人だけでなく、自分の可能性やワークライフバランスを求める多くの方にとって、多くのメリットがあります。
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパンでは、外資系・日系グローバル企業の案件を中心に、国内外のさまざまな優良企業の採用活動を支援しています。そのため、それぞれの方が求める最適なキャリアの選択肢をご紹介可能です。
「グローバルに働いてみたい」「より自分が輝ける場所で働きたい」「自分の選択肢を広げたい」といった方は、一度ご相談ください。業界経験豊富なコンサルタントが、みなさまのキャリアを全力でサポートいたします。