2020年、拡大基調から一転して、急速な景気悪化で厳しい状況に陥った世界経済。日本でも、人手不足の影響から活発な動きを見せていた転職市場も、ポテンシャルがウリの未経験者や第二新卒の採用クローズが目立ち、少しずつ低迷の兆しが見えてきています。
転職を検討している人の中には、こうした状況下で転職をすべきか否か、悩んでいる人も多いでしょう。今回は、不況下でも採用が狙える業界とポジションについて、各業界を担当する転職コンサルタントに聞きました。
世界的不況の中、転職はできる?
長引く国内の個人消費の低迷に加え、インバウンド需要の低下、世界恐慌に匹敵するといわれるアメリカの景気低迷の影響などで、国内の景気は大きく落ち込んでいます。世界的な不況が続くといわれる今、希望どおりの転職をすることはできるのでしょうか。
知っておきたいのは、不景気ですべての業界が求人をクローズしているわけではなく、採用を止めていない業界もあるということです。転職を考えるなら、闇雲に活動するのではなく、積極的な採用が続く企業に対象を絞って考えることが重要だといえるでしょう。
ただし、注意したいのは、全体的に採用活動が冷え込む中、採用を継続している業界やポジションに応募が殺到する可能性があるということです。幅広く情報を収集し、気になる求人が出たら迅速に応募できる準備を整えておく必要があります。
今後も採用が続く業界は?
では、不況が続く中でも採用を続けると見込まれる業界は、どこになるのでしょうか。現役の転職コンサルタントに聞いてみました。
ヘルスケア業界
少子高齢化が進む日本において、医療費の抑制や健康寿命の延伸、介護負担の軽減は重要な課題です。医薬品や医療機器、健康食品、リラクゼーション、フィットネス、介護施設などが含まれるヘルスケア業界は、今後も確実な成長が見込まれています。遠隔診療・オンライン診療、ロボット手術といった医療におけるIT技術のニーズを受けて、ICT企業の参入も増加しています。
コンサルティング業界
不況が続き、繊細な経営判断が求められる中で、クライアントの価値を客観的に分析し、その成長・発展を支えていくコンサルティング会社のニーズは、ますます高まることが予想されます。戦略の企画だけでなく実行まで担うコンサルティング会社が増えつつあり、より幅広い人材が求められるでしょう。
スタートアップ企業
もともと場所にとらわれない働き方を行っていたり、急激な状況の変化への対応に慣れていたりすることの多いスタートアップ企業の中では、いち早く現在の状況に対応している企業が多く見られます。また、今まであまり注目されていなかった業界等でも現在の状況において需要が増しており、そのような業界では採用が増えることが見込まれます。
このように、スタートアップ企業、特に現在の状況下で需要の高いサービスを提供している会社を中心に、リモート面接などを駆使しながら継続して採用を行っています。
転職コンサルタントに聞く、各業界の今後
不況下でも転職を成功させるには、好調が予測される業界の、どのポジションを狙うべきなのでしょうか。
上記でご紹介した業界について、採用されやすい人物像や異業種からの転職の可能性、アピールの仕方などについて、各業界を担当する転職コンサルタントに聞きました。
1 業界の中で狙い目のポジションはある?
不況下でも採用を続けている業界がありますが、その中でもどのようなポジションが狙い目なのでしょうか?
ヘルスケア業界
ヘルスケア業界の専門職で採用拡大が見込めるのは、「デジタルマーケティング」「再生医療・バイオ医薬品に関連する職種」「ヘルステック関連」の3分野です。
デジタルマーケティングは、医療現場の急速なデジタル化の進行によって需要拡大が見込めるため。
再生医療・バイオ医薬品に関連する職種は、低分子化合物の探索がピークを越え、新たな化合物の発見が難しいことを背景として、世界的に低分子化合物からバイオ医薬品へのシフトが進んでいるためという理由があります。
ヘルステック関連は、テクノロジーの発展により、健康や医療等のヘルスケア業界に新たなテクノロジーを携えて参入する企業が増加しているためです。遠隔診療アプリや健康維持・疾病予防に役立つアプリなどがその一例です。
なお、専門職と同様に、ビジネスサイドでもデジタルの役割が今後も増え続けます。
患者は健康について自分で情報を探せるようになり、医師をヘルスケア関連の情報を得るためのリソースのひとつとして使用するようになりました。医師は今後、直接的な診断をするだけでなく、利用可能な最新の治療オプションについて継続的に学習することが求められるようになるでしょう。
医師を直接訪問するMRが時代遅れになりつつあり、多くの製薬会社では患者と直接つながるデジタルツールを導入していることにも注目すべきです。
コンサルティング業界
人々の生活をより良くするためのITによる改革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業の増加とともに、デジタルに精通した幅広い知見を持つコンサルタントのニーズが高まっています。今後、DXに詳しい人材は重宝されるようになるでしょう。
また、IT戦略の策定やシステムの最適化を行うITコンサルタントは業界内で慢性的に不足しているため、継続して募集されると予想されます。
スタートアップ企業(エンジニア職)
スタートアップ企業のエンジニア職は、アプリ、ウェブ、インフラ問わず、基本的にすべてのポジションで募集が増加傾向にあります。
理由としては2つあります。1つは現在の社会的状況によって、需要が増えているサービスがあるからです。たとえば、リモートワーク系のプロダクトやおうち時間系のサービスを中心に募集が増えています。また、飲食の領域においても、テイクアウト支援のようなプロダクトは堅調です。
逆に旅行系のサービスでは採用ストップしている会社もありますが、スタートアップ全体で見ると6月以降募集が増加している傾向にあります。
2つ目の理由は、リモートワークで完結できる仕事が多いという事です。スタートアップ企業は環境の変化に対応できる柔軟性を持っている企業が多く、フルリモートワークや時差出勤を活用しながら仕事ができるため、今回のような急激な環境の変化の中でも、業務そのものに大きな影響がなかった企業も多いようです。さらには、これを機にリモートワークを正式導入する動きもあり、柔軟な働き方ができる会社が増えている印象です。
また、リモートワークに抵抗がない人達が多いこともあり、選考もオンラインで完結する企業も増えています。早く転職をしたい・色々な会社を見たいという方には今の状況は良いかもしれません。
2 どのような人が採用されやすい?
採用が続くポジションを狙うにあたって、どのような人が採用されやすいかも知っておきたいところです。
・ヘルスケア業界
専門職の場合は、特定の業界で実務に携わった経験があり、サイエンスのバックグラウンドを持つ人が採用されやすいでしょう。
デジタルマーケティングの分野は、同業での経験をベースとして、プロジェクト管理の経験と英語のスキルがあるコンサルタント経験者のニーズが高まるでしょう。中でも、デジタル領域の経験者、若くてバイリンガルのマーケティングリサーチャーのニーズが高めです。
・コンサルティング業界
スピード感を重視する外資系コンサルティング企業では、指示を待って行動する人は仕事ができない人とみなされます。自主的に考え、行動できる能力は、これまでと変わらず必須だといえるでしょう。
また、相手の主張と、その裏にあるニーズを素早く理解し、時には相手が気づいていない隠れた課題まで発見して言語化する力が求められるコンサルタントには、地頭の良さも求められます。具体的には、質問の意図を瞬時に理解し、簡潔でずれのない解答をわかりやすく返せる力があるといいでしょう。特定の業界、もしくは特定の技術に関する豊富な経験や知見があるなど、何らかの強みを持っている人も採用されやすいと思います。
・スタートアップ企業(エンジニア職)
成長途中のスタートアップは、基本的に従業員数が少ないため、ひとりの入社が会社に大きな影響を与えます。
そのため、プロダクト、サービス、ビジョンに共感している人や柔軟性を持っている人は、採用されやすい傾向にあります。
ただし、ビジネスにおいて社員一人ひとりの重要性は大きいため、最低限求められる開発スキルのレベルを満たしている必要はあります。
3 異業界から転職することは可能か?
採用を続ける業界やポジションがあっても、経験したことのない業界の場合は転職できないのでしょうか。別の業界から転職しやすい業界やポジションについても聞いてみました。
・ヘルスケア業界
研究職などの専門職で活躍するには、医療や健康、介護といった専門知識が不可欠であり、基本的には異業種からの転職は不可能です。デジタルマーケティング分野や営業職でもこうした傾向は共通しており、異業種からの転職は他業界に比べて可能性が低いでしょう。
なお、デジタル化推進のための採用であっても、IT企業のデジタルマーケティング担当者や営業職経験者より、ヘルスケア業界のデジタルマーケティング担当者やコンサルタント経験者のほうが有利です。
・コンサルティング業界
30代までであれば、異業種からの転職も可能です。40代でも、専門的な知見があれば採用に至る可能性があります。特に、金融、通信、製造、公共、医療などの業界経験者はニーズがあるでしょう。SEからITコンサルタントへの転身も需要が高まっています。
・スタートアップ企業(エンジニア職)
異業界からの転職はエンジニア経験が無い限り、なかなかハードルが高いといえるでしょう。
逆に言うと、エンジニアの経験がある方は、現在他の職種を経験していても重宝されるといえるでしょう。
例えば、新卒でエンジニアとして活躍し、その後マーケティングやデータ分析の仕事をスタートアップで経験され、スタートアップ企業のプロダクト開発関連職を目指す事は可能です。
また、IT業界からWEB業界への転職は、需要が高いようです。
4 異業種から転職する際に気をつけること、アピールすべきことは?
未経験で転職をする場合、経験やスキルの伝え方にポイントがあります。
・ヘルスケア業界
専門性が非常に重視されるヘルスケア業界は独特で、ある意味、閉鎖的な業界です。どの職種も、異業種からの転職は非常に困難ですが、デジタルマーケティング分野で転職に挑戦するなら、デジタル領域の強化に寄与できることを強調するといいでしょう。これまで関わってきたプロジェクトの成功事例について、履歴書はもちろん、面接でも積極的にアピールすることをおすすめします。
・コンサルティング業界
コンサルティング業界へ、異業種からの転職を目指す場合は、「やりたいこと」より「できること」にフォーカスしてアピールすることを心掛けましょう。加えて、「なぜ転職するのか」「なぜコンサルティング業界なのか」「自分の強みが何か」を、しっかりと論理的に話せることが重要です。
・スタートアップ企業(エンジニア職)
「ご自身の経験された仕事でどんなスキルが異業種でも通用しそうか言語化しておくこと」、「これからチャレンジする仕事について自らどれだけキャッチアップしているか」という2つが重要です。
未経験で外資系企業への転職を考えている人は、こちらの記事もご覧ください。
未経験で外資系企業に転職できる?経験なしに外資系企業で働く方法
不況下の転職は業界とポジションを見極めて!
不況が続く中で転職を成功させるには、闇雲に応募するのではなく、不況の中でも採用を拡大・継続している業界とポジションを見極めることが重要です。事前にしっかりと情報収集をして、無駄のない転職活動につなげましょう。
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